【不当解雇】Twitter元社員へ捧げる解雇が違法な法的理由と裁判等で獲得できる金額とは?

弁護士 若林翔
2022年11月06日更新

Twitter社を買収したイーロン・マスク氏が、同社の社員の大量解雇、レイオフを始めた

全社員の約半分が解雇の対象となるという。

イーロン・マスク氏は、「Twitter社の人員削減は、残念ながら選択の余地はない。同社が1日あたり400万ドル以上の損失を出しているからだ。解雇された社員には、法的に決められているより50%多い、3カ月の退職金を提示した」とツイートした。

 

しかし、日本の労働法規からすれば、イーロン・マスク氏の解雇は違法、無効になるだろう!

そして、イーロン・マスク氏が提案する給料3ヶ月分の退職金・パッケージは、日本で不当解雇があった場合に会社から支払われる解決金相場より低額だ。

日本での不当解雇の場合の解決金では、6ヶ月〜1年分の解決金が支払われる事例も多い。

弊所弁護士が担当した、外資系企業の不当解雇事例においても、給与約1年分、数千万円の解決金を獲得した事例がある。

 

Twitter社から解雇された日本で働く従業員の方がいたら、すぐに弁護士に相談してほしい。

グラディアトル法律事務所では、Twitter社の解雇問題については、相談料・着手金無料で対応する。

 

この記事では、イーロン・マスク氏の大量解雇・レイオフが違法な理由、外資系の会社であっても日本法が適用されるのはどのような場合か、違法な解雇の場合のバックペイ・解決金について、解説をしていく。

Twitter社の解雇・レイオフは違法・無効!

 

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Twitter社の大量解雇・レイオフは「整理解雇」に該当する!

イーロン・マスク氏のツイートによると、Twitter社での解雇の理由は、日々の赤字にあるとのことだ。

整理解雇とは、会社が経営上必要とされる人員削減のために行う解雇のことをいう。

なお、解雇とは、使用者による労働契約の解約のことだ。

今回のTwitter社での解雇は、赤字回避という会社側の経営上の理由による人員削減、解雇といえそうなので、整理解雇といえるだろう。

普通解雇と整理解雇の違い

Twitter社の大量解雇・レイオフは”整理解雇”の違法性を判断する4要件に当てはめると「アウト」!

そもそも、民法上は、雇用契約の解除(解雇や退職)は、自由にできると定められている(民法627条1項)。

(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

民法

しかし、会社からの解雇については、労働者保護の観点から、労働関係法規や判例法理により修正されています。

具体的には、会社からの解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、権利濫用として無効になるとされている(労働契約法16条)。

この規定は、判例上確立されていた解雇権濫用法理を明文化したものだ。

(解雇)
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

労働契約法

整理解雇の場面においては、解雇権の濫用にあたるかどうか、以下の整理解雇の4要件と呼ばれる4つの要素により判断されている。

(1)人員削減の必要性
(2)解雇回避努力の相当性
(3)人選の合理性
(4)手続の妥当性

この4要件を全て満たさない限りは、解雇権の濫用にあたると考えている裁判例(4要件説)もあるが、近年は、この4要件を総合考慮して、解雇権の濫用に該当するかを判断する裁判例(4要素説)が増えてきている。

(1)人員削減の必要性

整理解雇によって人員を削減する必要性があるかどうかという要件だ。

不況などによる業績悪化により、会社の経営を維持していくためには、人員を削減する十分な必要がある場合に認められる。

財務状況の見通しが甘かったり、整理解雇後すぐに新規採用をしているような事案においては、この人員削減の必要性が否定されるだろう。

(2)解雇回避努力の相当性

整理解雇以外の経営改善のための努力を経営者がしていたか、その程度は相当かという要件だ。

言い換えれば、人員削減の手段として整理解雇を選択する必要性があったかという要件でもある。

具体的には、人件費以外の経費削減努力を行なったか、役員報酬の削減を行なったか、融資や助成金の申請等でなんとかならないか、出向や配置転換などにより解雇を避けられないか、希望退職者を募ることにより解雇を避けられないか、などの事情が考慮される。

(3)人選の合理性

リストラ・整理解雇の対象者の選定が客観的かつ合理的かどうかという要件です。

整理解雇をすることがやむを得ないとしても、誰を対象にするか、客観的かつ合理的な基準に基づいて判断していることが必要だ

客観的で合理的な基準の例としては、欠勤日数、遅刻回数、懲戒歴、勤務成績、勤続年数などの業務上の貢献度に関する基準が挙げられる。

(4)手続の妥当性

整理解雇を行うまでのプロセス・手続きが妥当であることが必要だという要件だ。

具体的には、整理解雇の必要性や時期、規模、方法、などについて、労働組合や労働者に対して納得を得るための説明をして、協議をすべきであると考えられている。

 

Twitter社の解雇は4要件にあてはめると違法・無効!

Twitter社の解雇は整理解雇の4要件を満たさず、違法!

今回のTwitter社の解雇について、整理解雇の4要件に当てはめて、検討してみよう!

(1)人員削減の必要性

正確な情報がないので、定かなことは分からないが、毎日400万ドルもの赤字がでるなら、人員削減の必要性はあるかもね。

(2)解雇回避努力の相当性

イーロン・マスクさん、解雇回避努力ゼロ!全くしてないでしょ。

だって、買収して、速攻解雇だもの。

(3)人選の合理性

買収直後の突然の解雇、しかも、全社員の半数が解雇の対象となると。

合理的な人選はされていないだろう。

(4)手続の妥当性

手続の妥当性は皆無!

突然、メールで解雇を伝える。

何ら手続きを踏んでいないよ!

 

以上からすると、Twitter社の解雇は、解雇権の濫用で違法・無効!

どう考えても、Twitter社側がどんなに頑張って主張したとしても、解雇回避努力と手続の妥当性は皆無だと思う。

 

Twitter社のような外資系企業が相手でも日本法が適用される?→結論、されます

以上のように、Twitter社の解雇は、日本の法律では違法・無効となるだろう。

だが、Twitter社は、アメリカに本社をおく外資系企業だ。

日本法は適用されるのだろうか?

どの国の法律が適用されるかという問題については、法の適用に関する通則法という法律に基づいて判断される

この通則法によると、原則は、当事者が選択した地の法律が適用されることになる。おそらく、Twitter社との間の雇用契約書には、米国法を適用する旨が記載されているだろう。

しかし、労働者保護の必要性があるような法律の適用場面(判例法理も含む)では、その当事者に最も密接な関係がある土地の法律も適用できるとしている。

解雇無効についての法規は労働者保護のための強行法規だから、当事者である従業員と最密接関係にある地の法律が適用される。

日本で働く従業員や、日本のオフィスで雇用された従業員であれば、日本法が適用されることになる。

(労働契約の特例)
第十二条 労働契約の成立及び効力について第七条又は第九条の規定による選択又は変更により適用すべき法が当該労働契約に最も密接な関係がある地の法以外の法である場合であっても、労働者が当該労働契約に最も密接な関係がある地の法中の特定の強行規定を適用すべき旨の意思を使用者に対し表示したときは、当該労働契約の成立及び効力に関しその強行規定の定める事項については、その強行規定をも適用する。

2 前項の規定の適用に当たっては、当該労働契約において労務を提供すべき地の法(その労務を提供すべき地を特定することができない場合にあっては、当該労働者を雇い入れた事業所の所在地の法。次項において同じ。)を当該労働契約に最も密接な関係がある地の法と推定する。

3 労働契約の成立及び効力について第七条の規定による選択がないときは、当該労働契約の成立及び効力については、第八条第二項の規定にかかわらず、当該労働契約において労務を提供すべき地の法を当該労働契約に最も密接な関係がある地の法と推定する。

法の適用に関する通則法

 

解雇無効の場合には”解決金”や”特別退職金”というお金がしっかり貰えます

日本の解雇権濫用法理、整理解雇の4要件に照らせば、Twitter社の解雇は違法・無効だろう。

では、解雇されたTwitterの社員たちは、弁護士をつけて裁判するなどした場合、いくらの金がもらえるのだろうか?

解雇無効と解決金

法律上、解雇無効を争い、判決まで行く場合には、お金については、上記のバックペイの考え方で判断がなされる。

しかし、多くの事件では、労働審判や訴訟の途中で、会社が従業員に対して「解決金」を支払うことにより、和解によって解決する。

本音ベースでは、会社は解雇した従業員に残ってほしくない。

従業員も自分を解雇する会社に戻るのは気まずいし、戻りたくはないが、金はほしい。

こんな事例が多いのだ。

そのため、会社が従業員に「解決金」を払って和解をして終わることが多いのだ。

解決金の金額は、解雇に至る経緯などにもよって変わってくる。

今回のTwitter社のような会社に非があることが明なか不当解雇の場合、おおよそ、給料6ヶ月分〜1年分くらいだろう。

 

外資系の解雇とパッケージ(特別退職金)

外資系の会社における「パッケージ」とは、退職を促すために支払う特別退職金のことだ。

日本の会社でも、早期退職を募る際に、退職金額を釣り上げて退職を促すことがあるが、これと同様の考え方だろう。

「パッケージ」の相場は、給料3ヶ月分〜1年6ヶ月分程度と言われている。

 

Twitter社の提示額は低額!争うべき!

今回、イーロン・マスク氏は、解雇対象者に3ヶ月分の給料を支払う旨のツイートをしている。

しかし、ここまで見てきたように、解雇が無効になれば、バックペイとして、争っている期間の給料相当額を請求できる。

1年〜2年程度、裁判をすると考えたら、給料1〜2年分を請求できる。

また、解決金の相場は、給料の6ヶ月〜1年分程度だ。

外資系企業のパッケージでも、給料の3ヶ月〜1年6ヶ月程度が相場だ。

特に、今回のTwitter社の解雇は、あまりにも突然・唐突で、必要な手続きを全く踏んでいない

このような場合には、解決金の金額も増額されやすい

そうだとすれば、たった3ヶ月分の給料の支払いで納得すべきではなく、弁護士をつけて争うべきだ。

 

知っておくべきバックペイという考え方と2つの注意点

前述した「解決金」や「パッケージ」という考え方は、従業員の方がTwitter社と争っている最中に、「和解」で終わる場合を想定している。

他方で、裁判で最後まで和解をせずに、判決となる場合のお金の問題は、「バックペイ」という考え方が重要となる。

バックぺイとは”解雇無効を争っている期間の給料をも請求できる”という考え方

解雇が違法・無効と判断された場合、従業員とTwitter社との労働契約が維持されていたことになる。

もっとも、解雇無効を争っている期間(訴訟等だと1〜2年とかかかることもある)は、Twitter社での仕事をしていない。

解雇無効を争っている期間の給料をも請求できるというのが、バックペイという考え方だ。

法律上は、民法536条2項の危険負担という概念が根拠となる。会社が従業員を不当解雇したせいで従業員は仕事ができなかったのだから、従業員には責任がなく、会社は給料を払いなさいという理屈だ。

民法536条

1. 当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。

2. 債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。

民法

注意点1 解雇を争っている間に別の会社で働いていた場合には、一定程度、もらえる金額が減らされてしまう

一つ目の注意点は、解雇を争っている間に別の会社で働いていた場合には、一定程度、もらえる金額が減らされてしまうという点だ。

民法536条2項後段の「自己の債務を免れたことによって利益を得た」ものと考えられるからだ。

もっとも、その金額は、休業損害の際にもらえる6割以下にならないようにすべきというのが判例の考え方だ。

最判昭37年7月20日 民集16巻8号1666頁(米軍山田部隊事件)

使用者の責めに帰すべき事由によって解雇された労働者が解雇期間中に他の職に就いて利益(以下「中間利益」という。)を得たときは,使用者は,当該労働者に解雇期間中の賃金を支払うに当たり中間利益の額を賃金額から控除することができるが,上記賃金額のうち労働基準法12条1項所定の平均賃金の6割に達するまでの部分については利益控除の対象とすることが禁止されているものと解するのが相当である。

注意点2 バックペイを得るには、Twitter社で働く意思と能力を有していると判断される必要がある

二つ目の注意点は、バックペイをもらうためには、従業員がその会社(今回はTwitter社)で働く意思と能力を有していると判断される必要があるという点だ。

東京地判平9年8月26日

労働契約に基づく労働者の労務を遂行すべき債務の履行につき、使用者の責めに帰すべき事由によって右債務の履行が不能となったときは、労働者は、現実には労務を遂行していないが、賃金の支払を請求することができる(民法五三六条二項)。そして、使用者が労働者の就労を事前に拒否する意思を明確にしているときも、労働者の労務を遂行すべき債務は履行不能となるというべきであるが、労働者は、同項の適用を受けるためには、右の場合であっても、それが使用者の責めに帰すべき事由によるものであることを主張立証しなければならず、この要件事実を主張立証するには、その前提として、労働者が客観的に就労する意思と能力とを有していることを主張立証することを要するものと解するのが相当である。

 

Twitter社の解雇を争う場合の注意点

労働審判や訴訟など、裁判所でTwitter社の解雇を争う場合には、以下の点に注意が必要だ。

解雇は、会社からの一方的な労働契約の解除だ。

もし、会社と合意して退職をしてしまうと解雇を争うことが難しくなってしまうのだ。

そのため、Twitter社から合意退職等の書面を提示された場合に、サインをするのはNGだ。

弁護士に対応方法を相談してから、対応してほしい。

 

Twitter社の提示額は低額!詳しい弁護士をつけて正しい手順で争うことをおすすめします!

Twitter社の解雇は、整理解雇の4要件を満たさず、違法・無効となるだろう。

日本で働いている方などは、日本法が適用され、日本の労働関係の法律や判例が適用される。

その場合、労働審判や裁判で争えば、6ヶ月〜1年分程度の給料相当額が獲得できる可能性がある。

バックペイや、解決金という形で。

Twitter社からの金額提示次第ではあるものの、イーロン・マスク氏がツイートをしている3ヶ月分の給与相当額で合意するべきではないように思う。

労働問題や解雇無効に詳しい弁護士に相談をして、適切に対応すべきだ。

グラディアトル法律事務所では、数多くの労働事件を取り扱ってきた。外資系企業相手の解雇無効についての経験もある。

Twitter社の不当解雇問題については、相談も着手金も無料で対応するので、是非一度、相談してほしい!

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弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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