「会社に対して残業代を請求しようと思っているけど、相場はどのくらいだろうか?」
「会社と和解する場合の和解金の相場が知りたい」
「会社から提示された和解金が適正なものか判断できない」
会社に対して残業代を請求した場合、どのくらいの金額を支払ってもらえるのかは、非常に気になると思います。会社と和解により解決したときは、和解金が支払われますが、和解金には明確な相場はありません。しかし、和解金を決める際にはいくつかの要素を踏まえて判断しますので、和解金の決め方しっかりと理解しておけば、不利な和解を防ぐことができるでしょう。
本記事では、
- 残業代請求の和解金の金額を決める7つの要素
- 残業代請求を和解金で解決するメリット・デメリット
- 残業代請求で和解に応じるべき4つのケース
などについてわかりやすく解説します。
残業代請求を和解で終了させることができれば早期解決が可能となりますので、和解金の額によっては、和解も積極的に検討してみるとよいでしょう。
目次
残業代請求の和解金に相場はない
残業代請求にあたってどのくらいの和解金がもらえるのかは、多くの方が気になる事柄です。しかし、結論から言うと、残業代請求の和解金には相場はありません。
その理由は、残業時間や残業代計算の基礎となる給料額などは人それぞれだからです。慰謝料のように一定の相場があるわけではありませんので、実際に計算をしてみなければ、和解金の相場はわかりません。
ただし、残業代請求の和解金の相場ではありませんが、労働審判を利用して労働問題を解決した際に、支払われた解決金の金額についてまとめた資料があります。それによると、解決金の金額は以下のようになっています。
統計による解決金の中央値は120万円、平均値は195万円
この東京大学社会学研究所による「第2回労働審判制度についての意識調査 基本報告書」によると、解決金の中央値は120万円、平均値は195万円となっています。
上記のグラフをみると、解決金の金額には大きなばらつきがありますので、明確な相場がないことがよくわかります。
なお、この統計資料では、残業代請求以外のトラブルも含んだ解決金の金額になりますので、残業代請求における解決金の相場ではありませんので注意が必要です。
残業代請求の和解金の金額を決める7つの要素
残業代請求の和解金には相場はありませんが、どのような要素で和解金が決まるのかを理解すれば、適正な和解金を把握することができます。以下では、残業代請求の和解金の金額を決める7つの要素について説明します。
未払い残業代の金額
残業代請求の和解金は、未払い残業代の金額をベースにして決められます。そのため、未払い残業代の金額がいくらあるのかは、和解金を決める上で重要な要素となります。
ただし、労働者側が主張する未払い残業代の金額と使用者側が主張する未払い残業代の金額には、大きな差があることがありますので、どの金額で妥協するかによって、和解金の金額は異なってきます。
証拠の有無
未払い残業代の金額は、労働者側で証拠により立証していかなければなりません。裁判で残業代請求を行う場合、証拠による立証がない部分については、裁判所に残業代を認めてもらうことはできません。当然、和解になったときも証拠により立証できない部分は除いた金額での和解になります。
そのため、未払い残業代を立証するための証拠の有無は、より満額に近い支払いを受けるための重要な要素となります。
残業代請求にかかる労力や費用
残業代請求で和解する場面には、交渉、労働審判、裁判の3つの場面があります。
交渉→労働審判→裁判と手続きが進んでいくにつれて時間と労力がかかりますし、弁護士に依頼する場合には弁護士費用もかかります。早期に和解することができれば、労力や費用をカットできますので、ある程度金額面で譲歩して、交渉で和解するケースもあります。
他方、しっかりと残業代を支払ってもらいたいという場合には、交渉で譲歩せずに、労働審判や裁判へと進んでいきます。労力や費用はかかりますが、交渉よりも高い水準で和解できる可能性もあります。
このように労働者が早期解決を望むのか、それともしっかりと争っていくのかによって、残業代請求の和解金の相場は変化します。
遅延損害金
未払い残業代がある場合には、本来の支払い時期に遅れたことのペナルティとして遅延損害金の支払いが必要になります。
交渉での和解では遅延損害金を含めないのが一般的ですが、裁判での和解になれば、一定割合の遅延損害金が和解金に含まれるケースが多いです。そのため、遅延損害金も和解金の相場を決める一つの要素となります。
付加金
付加金とは、未払い残業代を請求する裁判において、裁判所の裁量により会社側に支払いが命じられる金銭のことをいいます。付加金は、一種の制裁的措置として、未払い残業代と同一額の金銭の支払いが命じられます。
付加金は、判決に至った際に裁判所の裁量で認められるものになりますので、和解では付加金が付くことはありません。しかし、判決になれば付加金が付く可能性が高い事案であれば、会社側から労働者側の請求額の満額に近い和解金が提示されるケースもあります。そのため、付加金の有無も和解金を左右する要素となります。
支払方法
和解金の支払い方法には、一括払いまたは分割払いの2種類があります。和解金の支払いが分割払いになると、途中で支払いが滞るリスクがありますので、和解金の額を譲歩する代わりに一括での支払いを求めることもあります。
そのため、支払い方法をいずれにするかによって、和解金の金額が変化します。
関連する請求の有無
残業代請求では、未払い残業代だけでなく慰謝料などの支払いも一緒に行うことがあります。このようなケースでは、関連する請求内容も踏まえて和解金が決められます。
残業代請求を和解金で解決するメリット・デメリット
残業代請求を和解金により解決することには、以下のようなメリットとデメリットがあります。
残業代請求で和解に応じるメリット
残業代請求で和解に応じるメリットは、残業代請求に関するトラブルを早期に解決できるという点です。交渉での和解で解決できれば、労働審判や裁判の手続きが不要になりますので、時間・労力・コストの発生を避けることができます。また、裁判でも和解により解決すれば、判決までの時間や労力を回避することができます。
また、和解はお互いに納得して解決する手段ですので、和解後に和解金が支払われないというリスクも少ないです。労働審判や判決だと、任意に支払われなければ強制執行という手続きが必要になりますので、そのような負担・労力・コストの発生を避けることができるという点もメリットといえます。
残業代請求で和解に応じるデメリット
残業代請求における和解では、お互いに譲歩をし合って解決をすることになります。そのため、和解による和解金は、労働者側が請求する金額よりも一定程度減額した金額になることが多いです。
判決までいけば、和解金よりも多くの残業代の支払いが命じられる可能性もありますので、和解に応じることでもらえる残業代が減るという点が和解のデメリットといえます。
和解に応じて早期に解決するか、時間をかけてでもしっかりと争っていくかは、労働者それぞれの事情があると思いますので、メリット・デメリットを踏まえてどちらが最適であるかを慎重に判断していきましょう。
残業代請求で和解に応じるべき4つのケース
残業代請求で和解に応じるべきケースとしては、以下の4つのケースが挙げられます。
早期の解決を希望するケース
残業代請求で和解に応じるメリットには、早期解決が可能という点があります。経済的余裕がないなどの理由ですぐに未払い残業代を受け取りたいという場合には、早期解決が可能な和解を選択すべきケースの一つになります。
円満な解決を希望するケース
和解は、お互いに納得した上で解決する方法になりますので、裁判に比べれば当事者同士の関係が悪化するリスクは小さいです。そのため、残業代請求後も引き続き会社で働く予定という場合には、会社との関係性が悪化すると働きづらくなってしまいますので、和解により円満な解決をした方がよいかもしれません。
証拠が不十分なケース
裁判になれば証拠の有無によって未払い残業代の金額が判断されることになります。証拠がなければ、労働者側が請求する金額の支払いを命じてもらうことは困難ですので、裁判をするかどうかは証拠の有無を踏まえて判断する必要があります。
裁判をしたとしても十分な証拠がないため交渉による和解金を上回る金額が認められる可能性が低いという場合には、和解により解決すべきでしょう。
納得できる和解金が提示されたケース
会社との交渉で労働者側の請求額に近い和解金が提示されたのであれば、労働審判や裁判によって争う必要がありません。交渉段階で納得できる和解金が提示されたのであれば、その金額での和解に応じるべきでしょう。
残業代請求の和解金に関するお悩みはグラディアトル法律事務所にご相談ください
残業代請求の和解金でお悩みの方は、グラディアトル法律事務所までご相談ください。
適正な和解金の相場をアドバイスできる
和解金には相場というものはありませんが、和解金を決定する要素を踏まえて、一定の解決水準を示すことは可能です。会社と和解する際には、どの程度の和解金が適正なのかを理解しておくことで、不利な条件で和解してしまうリスクを回避することができます。
グラディアトル法律事務所では、未払い残業代に関する豊富な解決実績がありますので、労働者ごとの個別事情を踏まえて、適正な解決金相場を示すことができます。ご自身の事案における解決金相場を知りたいという場合には、まずは当事務所までご相談ください。
交渉により有利な条件を引き出せる可能性がある
和解を行うためには、まずは会社と交渉を行う必要があります。会社と労働者では、労働者の方が圧倒的に不利な立場にありますので、労働者個人では交渉で有利な条件を引き出すことは困難です。そのため、会社との交渉は、弁護士に任せるのがおすすめです。
グラディアトル法律事務所では、残業代の交渉についての豊富な知識と経験があり、会社からの反論や残業代を支払わない手口などを熟知しています。当事務所にお任せいただければ、ご自身で対応するよりも有利な条件で和解できる可能性が高くなります。
和解に応じるべきかどうかを判断できる
交渉により会社から和解金が提示されたとしても、すぐに和解に応じてはいけません。和解に応じるかどうかは、和解金の額が適正であるか、裁判になった場合に判決により認められるであろう残業代の金額などを踏まえて判断しなければなりません。
グラディアトル法律事務所の弁護士は、未払い残業代請求に関する交渉・労働審判・裁判の豊富な実績がありますので、さまざまな事情を考慮して、和解に応じるのが労働者にとって本当に最適なのかを判断することができます。和解ではなく裁判で争った方がよい事案に関しては、当事務所の弁護士が労働者に寄り添ってしっかりと争っていきますので、安心してお任せください。
まとめ
残業代請求の和解金は、事案によって大きく異なりますので、相場というものはありません。しかし、未払い残業代の金額、証拠の有無などを踏まえて、適正な和解金を判断することはできますので、まずは労働問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
グラディアトル法律事務所では、未払い残業代請求に関する豊富な解決実績がありますので、残業代請求をお考えの方は、まずは当事務所までお気軽にご相談ください。