残業代請求をする4つのリスクとそれを抑えるための3つの対策を解説

残業代請求をする4つのリスクとそれを抑えるための3つの対策を解説
弁護士 若林翔
2024年06月24日更新

「残業代請求をしたいけど、リスクが怖くて行動できない」

「残業代請求で生じるリスクにはどのようなものがあるのだろうか?」

「残業代請求のリスクへの対策や対処法を知りたい」

未払い残業代の存在が判明したとしても、リスクが怖くて会社に残業代請求ができないという方も少なくありません。

たしかに、残業代請求には一定のリスクがありますが、事前に以下のような対策をしておけば、リスクを最小限に抑えることができます

・十分な証拠を集める

・退職後に残業代請求をする

・残業トラブルに強い弁護士に相談する

 

また、万が一リスクが顕在化したときでも適切に対処することで被害を最小限に抑えることが可能です。

このようなリスク対策やリスクへの対処をするには、専門家である弁護士のアドバイスやサポートが不可欠となりますので、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

本記事では、

・労働者が残業代請求をする4つのリスク

・残業代請求のリスクを抑える3つの対策

・残業代請求に伴うリスクが顕在化したときの対処法

などについてわかりやすく解説します。

労働者が残業代請求をする4つのリスク

労働者が残業代請求をする4つのリスク

労働者が会社に対して残業代請求をすると以下のようなリスクが生じる可能性があります。

会社から報復されるリスク

残業代請求をすることで生じる可能性のあるリスクとしては、会社からの報復が挙げられます。残業代請求は、労働者としての正当な権利の行使ですので、それを理由に報復することは認められません。しかし、ブラック企業では、以下のような報復行為を行い、残業代請求をやめさせようとしてくることがあります。

・いじめや嫌がらせなどのパワハラ

・左遷や降格などの報復人事

・不当な懲戒処分

・不当解雇

・損害賠償請求

このような報復は基本的には違法な行為といえますので、処分の無効や損害賠償請求を行うことが可能です。

なお、会社からの報復とその対処法についての詳細は、こちらの記事をご参照ください。

「残業代請求をすると会社から報復される?報復への対策と対処法を解説」

会社との関係性が悪化するリスク

会社からの報復をされなかったとしても、残業代請求をしたことで会社との関係性が悪化するリスクがあります。

これまでは円満な関係を築いていた上司や先輩から、腫物に触るような扱いを受けるなどして、会社に居づらいと感じることも多くなるかもしれません。残業請求は、正当な権利行使であり、悪いことをしたわけではありませんので気にしなければよいですが、そのような対応が続くと精神的ストレスも大きくなってしまいます。

請求が認められず時間と費用が無駄になるリスク

残業代請求は、十分な証拠がそろっていれば基本的には認められる可能性が高いといえます。しかし、証拠が不十分であったり、時効が成立しているような事案では、残業代請求をしても負けてしまうリスクがあります。

残業代請求で負けてしまうと、それまで費やした時間と費用がすべて無駄になってしまいますので、勝てる見込みがあるかどうかは証拠関係を踏まえて慎重に判断しなければなりません。

なお、残業代請求の勝率と負ける可能性のあるケースについては、こちらの2記事をご参照ください。

「残業代請求の勝率はどのくらい?勝率を高める3つのポイントを解説」

「残業代請求で労働者が負ける6つのケースと負けを防ぐ4つの対策」

会社倒産など残業代請求が認められても未払いになるリスク

会社が任意に残業代の支払いに応じないときは、労働審判の申立てや訴訟の提起をする必要があります。裁判になったとしても十分な証拠があれば残業代請求が認められる可能性は高いといえるでしょう。

しかし、残業代請求が認められてとしても、高額な残業代の支払いを負担したことにより、会社の経済状況が悪化し、倒産してしまうリスクがあります。会社が倒産してしまうと未払い残業代を全額回収するのは困難になってしまいます。

残業代請求のリスクを抑える3つの対策

残業代請求のリスクを抑える3つの対策

残業代請求をしたことにより生じるリスクを抑える対策としては、以下の3つが考えられます。

十分な証拠を集める

残業代請求で負けてしまうリスクを抑えるには、事前に十分な証拠を集めてから残業代請求を行うとよいでしょう。

残業代は、残業をすれば当然に請求することができるお金ですので、残業をしたことさえ立証できれば、残業代請求で負ける可能性は低くなります。そのため、十分な証拠があれば、残業代請求に費やした時間や費用が無駄になることはないといえるでしょう。

ただし、どのような証拠が必要になるかは事案によって異なりますので、まずは専門家である弁護士に相談して、必要となる証拠のアドバイスや証拠収集のサポートを受けるとよいでしょう。

なお、残業代請求に有効な証拠についての詳細は、以下の記事をご参照ください。

タイムカードないけど残業代もらえる!あれば役に立つ証拠16選!

退職後に残業代請求をする

会社からの報復や会社との関係性の悪化というリスクを回避するには、退職後に残業代請求をするとよいでしょう。

会社に在職中だと、どうしても会社からの報復や関係性の悪化というリスクは避けられません。適正な残業代を支払わないブラック企業では、違法であると知りながら報復行為をしてきますので、そのような企業で働き続けるのではなく、早めに転職先を探すことも必要です。会社を辞めてしまえば、報復行為を気にすることなく、正当な権利の実現に向けてしっかりと争っていけるでしょう。

なお、会社を退職してしますと残業代請求に必要となる証拠収集が困難になります。そのため、退職後に残業代請求をする場合には、会社に在職中から残業代請求に必要となる証拠を集めておくようにしてください。

なお、退職後の残業代請求についての詳しい内容について、こちらの記事をご参照ください。

「退職後でも残業代請求は可能!退職後の請求の注意点や流れを解説」

残業トラブルに強い弁護士に相談する

残業代請求により生じるリスクを回避するには、会社に対して残業代請求をする前に、残業トラブルに強い弁護士に相談するのも有効な対策となります。

残業トラブルに強い弁護士であれば、残業代請求により生じるリスクを熟知していますので、それに対する適切な対策を講じることができます。あらかじめ予想できるトラブルやリスクについては、弁護士のアドバイスやサポートにより回避できる可能性がありますので、無駄な争いを回避するためにも、まずは弁護士に相談するようにしましょう。

残業代請求に伴うリスクが顕在化したときの対処法

残業代請求に伴うリスクが顕在化したときの対処法

残業代請求により生じるリスクへの対策を講じていたいとしても、リスクが顕在化してしまう可能性があります。そのような場合には、以下のような対処法を検討しましょう。

労働基準監督署に相談する

残業代請求をしたことで会社から報復されたという場合には、労働基準監督署に相談してみましょう。

違法な報復人事や処分であった場合には、労働基準監督署による指導や勧告により違法状態が改善される可能性があります。

ただし、労働基準監督署による指導や勧告には、強制力がありませんので、会社が任意に従わない場合には十分な効果が期待できません。また、労働基準監督署が個別の紛争に介入して解決してくれるわけではありませんので注意が必要です。

会社役員への損害賠償請求

未払い残業代がある場合には、一般的には会社に対して請求することになります。しかし、会社に財産がなく、倒産してしまったような場合には、会社に対して残業代を請求しても回収することはできません。

そのような場合には、会社の役員に対して損害賠償請求をすることが考えられます。会社役員は、会社法429条1項に基づき第三者に対する賠償責任を負っており、「第三者」には労働者も含まれています。会社役員には、善管注意義務として、会社が労働者に残業代を支払わせる義務を負っていますので、残業代が支払われていないことを認識していながらそれを放置していたような場合には、会社役員の損害賠償責任が認められる可能性があります。

会社に財産がなかったとしても、会社役員に財産がある場合には、会社役員への損害賠償請求を検討してみるとよいでしょう。

未払賃金立替払制度の利用

会社が倒産してしまった場合には、未払賃金立替払制度を利用することで、未払い残業代の一部の支払いを受けることができます。

未払賃金立替払制度とは、会社が倒産したために賃金が支払われないまま退職した労働者に対し、一定の範囲の未払い賃金を独立行政法人労働者健康安全機構が立替えて支払ってくれる制度です。未払賃金立替払制度を利用するためには、以下の要件を満たす必要があります。

【使用者側の要件】
  • ・1年以上事業活動を行っていたこと
  • ・法律上の倒産(破産、特別清算、民事再生、会社更生)または事実上の倒産(事業活動が停止し、再開見込みがなく、賃金支払い能力がない場合)をしたこと
【労働者側の要件】
  • ・倒産した会社に労働者として雇用されていたこと
  • ・退職日が倒産日の6か月前の日から2年の間であること

なお、未払賃金立替払制度により立替払いされる金額は、未払い賃金全額ではなく、未払い賃金総額の80%までの部分に限られます。

弁護士に依頼して対応してもらう

残業代請求によるリスクが顕在化してしまうと、労働者個人で対応するのは困難ですので、専門家である弁護士に依頼して対応してもらうとよいでしょう。

会社から違法な報復行為を受けたとしても、弁護士が代理人として処分の違法・無効を主張することで、報復行為を撤回してもらえる可能性があります。また、会社が倒産してしまった後の未払い残業代の回収についても、弁護士に対応を委ねることができますので、余計な負担なく再就職先を探すことができます。

残業代請求には時効があるため早めの行動が大切!

残業代請求には時効があるため早めの行動が大切

残業代請求にリスクがあるからといって、残業代請求をせずに放置していると、残業代が時効により消滅してしまうリスクがありますので注意が必要です。具体的な時効期間については、残業代の発生時期に応じて以下のように定められています。

・2020年3月31日以前に発生した残業代……2年

・2020年4月1日以降に発生した残業代……3年

残業代の時効期間は、各月の給料日からカウントされますので、時間が経てば経つほど請求できる残業代が減ってしまいます。少しでも多くの残業代を請求するためにも、未払い残業代の存在に気付いたときは、早めに行動するようにしましょう。

なお、残業代請求の時効と時効を阻止する方法についての詳細は、以下の記事をご参照ください。

残業代の時効は3年!時効を阻止する方法と残業代請求の流れを解説

リスクを抑えて残業代請求するならグラディアトル法律事務所に相談を

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残業代請求のリスクを抑えるなら、残業代請求に強いグラディアトル法律事務所にお任せください。

残業代請求のリスクを踏まえた適切な対策を講じることができる

残業代請求によりリスクには、さまざまなものがあり、労働者の置かれている状況によって顕在化し得るリスクが変わってきます。

経験と実績豊富なグラディアトル法律事務所の弁護士であれば、将来生じる可能性のあるリスクを正確に予測し、適切な対策を講じることでリスクの発生を回避することが可能です。当事務所では、残業代に関する相談は、初回相談料無料で対応していますので、まずはお気軽にご相談にお越しください。

リスクが顕在化したときの対応を任せることができる

適切な対策を講じていたとしても避けられないリスクも存在します。そのようなリスクが顕在化したときは、早期に適切な対処を行うことで被害を最小限に抑えることができます。

リスクが顕在化したときの対応は、労働者個人では困難ですので、弁護士に対応を委ねるのがおすすめです。

グラディアトル法律事務所では、残業代トラブルに関する豊富な知識と経験がありますので、顕在化したリスクに対する対応も得意としています。リスクが顕在化したときの対応は、当事務所にお任せください。

まとめ

残業代請求により生じるリスクについては、適切な対策を行うことでリスクの顕在化を防ぐことができます。また、顕在化してしまったリスクに対しては、早期に適切な対処をすることで被害を最小限に抑えることができます。

そのためには、残業代請求の問題に詳しい弁護士のアドバイスやサポートが必要になりますので、グラディアトル法律事務所までご相談ください。

 

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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