残業代請求をすると会社から報復される?報復への対策と対処法を解説

残業代請求をすると会社から報復される?報復への対策と対処法を解説
弁護士 若林翔
2024年06月24日更新

「残業代請求したくても会社からの報復が怖くてできない」

「会社からの報復を防ぐにはどのような対策があるの?」

「会社から報復されたときの有効な対処法を知りたい」

残業代を請求することは労働者としての正当な権利行使ですので、それに対して報復や嫌がらせをするのは違法です。しかし、ブラック企業では、違法と知りながらも労働者に対して報復を行ってきますので、それが理由で残業代請求を諦めている方も少なくありません。

会社からの違法な報復行為については、事前の対策や事後の対処により被害を最小限に抑えることが可能です。

また、実際に報復を受けたとしても、報復行為自体が違法・無効になることも多いため、しっかりと争えば処分の無効や損害賠償請求を求めることも可能です。

報復を恐れて残業代請求を諦めてしまうのではなく、しっかりと対策をして残業代請求を進めていくようにしましょう。

本記事では、

・残業代請求をしたときに予想される会社からの5つの報復

・残業代請求への報復が予想されるときの対策

・残業代請求に対する報復があったときの対処法

などについてわかりやすく解説します。

残業代請求をしたときに予想される会社からの5つの報復

残業代請求をしたときに予想される会社からの5つの報復

残業代請求をしたことで予想される会社からの報復としては、以下の5つが考えられます。

いじめや嫌がらせなどのパワハラ

残業代請求をすることで上司や同僚から、以下のようないじめや嫌がらせなどのパワハラを受ける可能性があります。

・上司や同僚から無視される

・「残業代を請求するなんてありえない」と暴言を吐かれる

・雑用を押し付けられる

・自分だけ仕事を与えられない

・一人では到底処理できない量の仕事を与えられる

しかし、会社には、労働者が安全に労働できるように配慮する義務(安全配慮義務)があります。そのため、上記のようなパワハラがあった場合、安全配慮義務違反を理由として、会社に対して損害賠償請求ができる可能性があります。

左遷や降格などの報復人事

会社には、人事権が与えられていますので、労働者の配置、異動、人事考課、降格などを決める権限があります。そのため、残業代請求の報復として、地方への左遷、閑職への異動、降格などの報復人事が行われることがあります。

しかし、このような報復人事については、不当な動機・目的による人事権の行使にあたりますので、人事権の濫用と評価され、報復人事は無効になる可能性が高いです。

不当な懲戒処分

懲戒処分とは、労働者による企業秩序違反行為に対する制裁をいいます。会社によっては、残業代請求をしたことを理由に、戒告・譴責・減給・出勤停止・降格などの懲戒処分を行うことがあります。

しかし、会社が懲戒処分を行うためには、客観的合理的な理由と社会的相当性が必要になります。残業代請求は、労働者としての正当な権利の行使ですので、そのことを理由に懲戒処分をすることは認められず、懲戒権の濫用と評価される可能性が高いです。懲戒権の濫用にあたれば、懲戒処分は無効になりますので処分がなかった状態になります。

不当解雇

残業代請求をしたことによる報復として、解雇がなされることもあります。

しかし、解雇は労働者にとって重大な不利益が生じる処分となりますので、その有効性は厳格に審査されます。懲戒処分と同様に、客観的合理的な理由と社会的相当性が認められなければ、不当解雇となります。

残業代請求をしたことの報復として解雇をすることに正当な理由は認められませんので、解雇権の濫用と評価される可能性が高いです。そのため、労働者としては、不当解雇を理由に会社を訴えることで職場への復帰が認められるでしょう。

損害賠償請求

会社に対して残業代請求をすると、さまざまな理由を付けて会社から損害賠償請求をされることもあります。

労働者からの残業代請求をやめさせるために行われるものになりますが、基本的には会社から労働者に対する損害賠償請求は認められません。過去のミスなどを理由とする損害賠償制球であっても労働者側に重大な過失がない限りは、損害賠償請求が認められることはないでしょう。

なお、残業代請求により生じるリスクとその対処法については、以下の記事をご参照ください。

「残業代請求をする4つのリスクとそれを抑えるための3つの対策を解説」

残業代請求への報復が予想されるときの対策

残業代請求への報復が予想されるときの対策

残業代請求をしたことに対する報復が予想される場合には、以下のような対策が有効です。

会社にバレないように準備を進める

会社による報復を防ぐためには、会社にバレないように残業代請求の準備を進めることが重要なポイントになります。

会社に残業代請求の準備をしていることがバレてしまうと、残業代請求をさせないためにさまざまな報復をしてくるはずです。そのような状況になれば、残業代請求に必要な証拠収集も困難になりますので、できる限りバレないように進めていきましょう。

なお、残業代請求の勝率を上げるためのポイントについて、以下の記事をご参照ください。

「残業代請求の勝率はどのくらい?勝率を高める3つのポイントを解説」

退職してから残業代請求をする

残業代請求の準備は、会社にバレずに進めることができたとしても、会社に対して残業代請求をしたタイミングで報復をされる可能性があります。会社に在職中だとこのような報復を避けることは困難ですので、会社からの報復が予想される場合には、退職後に残業代請求をするのがおすすめです。

会社を退職してしまえば、会社から報復を受けるリスクはゼロとなりますので、会社からの報復を恐れることなく残業代請求を進めていくことができます。ただし、会社を退職してしまうと残業代請求に必要な証拠を集めるのが難しくなりますので、在職中から必要な証拠をしっかりと集めていくようにしましょう。

なお、退職後の残業代請求についての詳しい内容について、こちらの記事をご参照ください。

「退職後でも残業代請求は可能!退職後の請求の注意点や流れを解説」

残業代請求に対する報復があったときの対処法

残業代請求に対する報復があったときの対処法

会社から残業代請求に対する報復があったときは、以下のような対処法を検討してみましょう。

報復行為の証拠を残しておく

残業代請求に対する報復のほとんどが違法なものになりますので、今後、労働審判や裁判などで報復行為の違法性を主張するためにも、報復行為の証拠を残しておくようにしましょう。

具体的には、パワハラであれば暴言や叱責を受けたときの録音や録画が報復の証拠となります。報復人事であれば不利益な処分がされた経緯がわかるメールや書面などが証拠となります。録音や録画などの証拠が残せない状況なら、報復内容を記録した日記なども証拠になります。

労働基準監督署に相談する

労働基準監督署は、企業による労働基準法などの法令違反を監督・是正する行政機関です。

残業代請求を理由としてパワハラ、報復人事、懲戒処分、解雇などの報復を受けた場合には、労働基準監督署による指導・是正勧告により状況が好転する可能性があります。未払い残業代がある場合には、報復への対応とともに未払い残業代への対応も行ってくれますので、残業代請求を理由に報復を受けたときは、労働基準監督署に相談してみるとよいでしょう。

ただし、労働基準監督署による指導・是正勧告には、強制力がありませんので、会社が任意に従わない場合には効果が期待できません。

弁護士に会社との対応を依頼する

会社から報復を受けた労働者は、精神的にも大きなダメージを被ります。そのような状態で違法な報復や未払い残業代の問題に対応していくのは非常に困難といえるでしょう。

そのため、ご自身での対応が難しいと感じるときは、弁護士に会社との対応を依頼するのがおすすめです。

労働基準監督署に相談しても、実際に対応しなければならないのは労働者個人ですが、弁護士に依頼すれば、弁護士が代理人として会社との交渉を行うことができます。法的観点から会社による報復の違法性・不当性を主張することで、解雇や懲戒処分などの違法な報復行為の撤回をしてもらえる可能性が高くなるといえるでしょう。

会社からの報復が不安なときはグラディアトル法律事務所に相談を

会社からの報復が不安なときはグラディアトル法律事務所に相談を

会社からの報復が不安で残業代請求を躊躇しているという方は、まずはグラディアトル法律事務所までご相談ください。

会社からの報復に備えた対策をアドバイスできる

会社からの報復が予想される事案については、会社にバレないように残業代請求の準備を進めていく必要があります。残業代請求の準備として特に重要なのが証拠の収集です。

弁護士であれば具体的な状況に応じて必要な証拠をアドバイスできますので、要領よく証拠収集を進めることで会社に残業代請求の準備をしているのがバレるリスクを減らすことができます。

グラディアトル法律事務所では、残業代請求に関する相談については、初回無料で対応していますので、お気軽にご相談ください。

報復行為があったときに代理人として対応できる

会社から残業代請求に対する報復があった場合、労働者個人で対応するのは困難ですので、会社との対応は弁護士に依頼するのがおすすめです。

もっとも、依頼する弁護士は、弁護士であれば誰でもよいというわけではありません。弁護士によって得意分野が異なりますので、残業代や報復に関するトラブルであれば労働問題に詳しい弁護士に相談するようにしましょう。グラディアトル法律事務所では、残業代請求をはじめとする労働問題について豊富な実績と経験を有していますので、会社からの報復への対応も当事務所の弁護士にお任せください。

豊富な実績と経験に基づき問題を適切に解決に導ける

残業代請求に対する報復があった場合、残業代請求の問題と会社からの報復の問題という2つの問題に対処しなければなりません。法的にはさまざまな問題点が含まれていますので、これらの問題を適切に解決するためには、労働問題についての豊富な実績と経験が不可欠となります。

グラディアトル法律事務所には、労働問題に関する経験豊富な弁護士が多数在籍していますので、会社との間で生じるさまざまなトラブルを適切に解決に導くことができます。相談の受付は24時間365日対応していますので、まずは当事務所までお気軽にご相談ください。

なお、残業代請求の勝率と負ける可能性のあるケースについては、こちらの2つの記事をご参照ください。

「残業代請求で労働者が負ける6つのケースと負けを防ぐ4つの対策」

 

「残業代請求の勝率はどのくらい?勝率を高める3つのポイントを解説」

まとめ

会社からの報復が怖くて残業代請求を躊躇してしまうという気持ちもよくわかります。しかし、残業代請求には時効がありますので、報復が怖いからという理由で残業代請求を躊躇していると大切な残業代が日々失われていくことになります。

会社からの報復は、基本的には違法な行為ですので、弁護士をつけて争うことで労働者側の主張が認められる可能性が高いといえます。そのため、会社からの報復が予想される場合には、早めに弁護士に相談をして、今後の対策を検討していくようにしましょう。

会社に対する残業代請求をお考えの方は、グラディアトル法律事務所までお気軽にご相談ください。



弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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