「アルバイトでも残業代は支払われるの?」
「始業前や終業後の準備・作業時間には残業代は出ないと言われたけど本当?」
「アルバイトの残業代の計算方法を知りたい」
アルバイトであっても、労働者であることには変わりありませんので、残業をすれば、それに応じた残業代が支払われます。
しかし、アルバイトの勤怠管理がルーズな会社では、本来残業代の支払い対象となる労働時間であるにもかかわらず、適正な残業代が支払われていないこともあります。
アルバイトとして働く方は、どのような時間が残業代の支払い対象になるのかをしっかりと理解しておくことが大切です。
本記事では、
- アルバイトの残業代の基本的な考え方
- アルバイトの残業代でトラブルになりやすい4つのケース
- アルバイトの残業代の計算方法
などについてわかりやすく解説します。
最後までしっかり読んで、アルバイトの残業代についての正しい知識を身につけましょう。
目次
アルバイトでも残業代はもらえる!|アルバイトの残業代に関する基本の考え方
アルバイトでも残業代を請求することができます。以下では、アルバイトの残業代に関する基本の考え方を説明します。
アルバイトも労働者であるため残業代を請求できる
労働基準法では、使用者は労働者に対して、残業代を支払わなければならないと定められています。労働基準法上の労働者には、正社員だけでなくアルバイトやパートなどの非正規雇用の労働者も含まれますので、アルバイトも会社に対して残業代を請求することができます。
会社から「アルバイトだから残業代は出ない」と言われていたとしても、それは間違いですのでしっかりと残業代を請求していくようにしましょう。
法定労働時間と所定労働時間の違い
アルバイトが残業をした場合、通常どおりの賃金が支払われるのか、割増賃金が支払われるのかについては、法定労働時間と所定労働時間の違いを理解する必要があります。
法定労働時間とは、1日8時間・1週40時間として労働基準法により定められた労働時間の上限です。法定労働時間を超えて働くことを「法定外残業」といい、法定外残業に対しては、通常どおりの賃金に加えて、割増賃金の支払いが必要になります。
所定労働時間とは、会社とアルバイトとの労働契約により定められた労働時間をいいます。所定労働時間を超えて法定労働時間の範囲内での残業を「法定内残業」といい、法定内残業に対しては、通常どおりの賃金の支払いのみで足り、割増賃金の支払いは不要です。
アルバイトの残業が法定外残業と法定内残業のどちらに該当するかにより、割増賃金の支払いの要否が変わってきますので、しっかりと押さえておきましょう。
割増賃金の考え方|時間外労働・深夜・休日
アルバイトが残業をした時間によって、適用される割増賃金率が以下のように変わってきます。
このような割増賃金率は、重複して適用することができます。
なお、法定休日には、法定労働時間というものが存在しないため、時間外労働に対する割増賃金と休日労働に対する割増賃金は、重複して適用されることはありません。
アルバイトの残業代でトラブルになりやすい4つのケース
アルバイトの残業代では、以下のようなケースで残業代の支払い対象になるかどうかがトラブルになることがあります。いずれも法的には残業代の支払い対象になり得るものですので、しっかりと理解しておきましょう。
始業前の準備|着替え、朝礼、体操の時間
職場に出勤してすぐに働き始めるのではなく、制服に着替えるための更衣時間、始業前の朝礼やミーティング、作業開始前の体操の時間などが設けられていることがあります。
このような始業前の準備時間についても、使用者による指揮命令下に置かれていると評価できる場合には、労働時間に含まれますので、残業代を請求することができます。
たとえば、飲食店など制服の着用が義務付けられている職場であれば、更衣時間は、勤務を始めるために必須の時間といえますので、労働時間にあたるといえます。また、朝礼や体操の時間についても、参加が任意ではなく強制されているものに関しては、労働時間に該当するといえるでしょう。
終業後の作業|着替え、掃除、片付け
業務終了後であっても、着替え、掃除、片付けなどの作業を行わなければならないことがあります。このような終業後の作業についても、使用者の指揮命令下に置かれていると評価できる場合には、労働時間に含まれますので、残業代を請求することができます。
たとえば、制服のまま退勤が認められていない職場では、更衣時間が必須の時間になりますので、労働時間と判断される可能性が高いでしょう。また、終業後の掃除や片付けをアルバイトが任意で行っているものではなく、会社の指示によるものであった場合には、労働時間に含まれますので、残業代を請求することが可能です。
休憩時間|電話番や来客対応
労働基準法上の休憩時間とは、労働から完全に解放されている時間をいい、その時間に対しては、賃金は支払われません。
しかし、休憩時間中に電話番や来客対応を任されている場合には、実際に電話や来客がなかったとしても、それに備えて待機していなければならず、労働から完全に解放されているとはいえません。このような手待ち時間については、労働時間に該当しますので、会社に対して残業代を請求することができます。
仕込み時間|開店前の準備、ランチとディナーの間の準備
飲食店のアルバイトでは、開店前の仕込みのために始業時間の前から準備をしなければならないことがあります。このような仕込み時間についても、当然、使用者の指揮命令下に置かれていると評価できますので、残業代を請求することができます。
また、通し営業をしている場合、ランチタイムとディナータイムの間に、客の少ない時間帯が生じます。そのような時間帯については、会社から「休憩時間として扱うから賃金は支払われない」を言われることもあります。しかし、通し営業をしている以上、客が来たら対応をしなければなりませんので、完全に店を閉めていない限りは、労働時間にあたりますので、残業代を請求することができます。
アルバイトの残業代の計算方法
アルバイトの残業代は、「1時間あたりの基礎賃金×割増率×残業時間」という計算式によって計算します。以下では、残業代の計算式に含まれる各項目を説明します。
1時間あたりの基礎賃金
アルバイトは、一般的に時給制で働いていますので、時給額がそのまま1時間あたりの基礎賃金になります。
月給制のような複雑な計算がいらないため、アルバイトの残業代計算の方が比較的簡単だといえます。
割増率
残業時間に応じて、以下のような割増率が適用されます。
残業時間
残業時間とは、法定内残業および法定外残業をした時間をいいます。法定内残業と法定外残業のどちらに該当するかによって、時間外労働に関する割増率の適用の有無が異なってきますので、しっかりと区別することが大切です。
なお、残業時間は、原則として1分単位で計算しなければなりません。15分単位や30分単位で計算し、端数が切り捨てられている場合には違法となります。
残業代計算方法の詳細は、以下の記事をご参照ください。
アルバイトの残業代計算の具体例
では、具体的なケースでアルバイトの残業代計算の方法を見ていきましょう。
飲食店のアルバイトAさんが、以下のような条件で働いていたとします。
・時給1200円
・1日の所定労働時間6時間
ある月の労働時間が150時間で、そのうち法定内残業が20時間、法定外残業が10時間だったとします。そうすると、Aさんの残業代は、以下のように計算します。
すなわち、Aさんの残業代は、合計で3万9000円ということになります。
未払い残業代は、3年分まで遡って請求することができますので、残業代がまったく支払われていない会社であれば、「3万9000円×36か月=140万4000円」も請求することができます。
アルバイトが未払い残業代を請求する手順
アルバイトが未払い残業代を会社に対して請求する場合、以下のような手順によって請求していきます。
残業代の証拠を集める
未払い残業代を請求するためには、アルバイトが残業代の立証をしていかなければなりません。そのため、残業時間を明らかにするための証拠が重要になります。
アルバイトが残業時間を立証する際の証拠になり得るものとしては、以下のものが挙げられます。
- タイムカード
- 勤怠管理記録のデータ
- シフト表
- 業務日報
なお、始業前および退勤後の作業に関しても残業代請求の対象となり得ますが、タイムカード上には記録されていないこともあります。そのような場合には、手書きのメモでもよいので、毎日何時から何時までどのような作業をしていたいのかを残しておくようにしましょう。
残業代を計算する
残業時間に関する証拠が集まったら、それに基づいて残業代を計算します。
月給制の正社員に比べて時給制のアルバイトの方が残業代計算は簡単といえますが、法定外残業・法定内残業の区別、適正な割増率の適用などが必要になりますので、自分だけで計算するのが不安だという場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
会社に対して残業代を請求する
未払い残業代の金額が明らかになったら、会社に対して、残業代請求を行います。
残業代請求をする際には、まずは配達証明付き内容証明郵便を利用するのが一般的です。配達証明付き内容証明郵便は、いつ・誰に対して、どのような内容の文書を送付したのかを証明できる形式の郵便です。内容証明郵便自体には未払い残業代の支払いを強制する効力まではありませんが、時効の進行を6か月間ストップすることができるという効果があります。
残業代請求には、3年という時効がありますので、時効期間が迫っている場合には、内容証明郵便により時効をストップし、その間に、会社との交渉を進めていきましょう。
労働基準監督署に相談する
アルバイトの残業代が未払いになっているときは、労働基準監督署に相談することもできます。
労働基準監督署とは、労働基準法などの法令違反がないように企業を監督・指導する行政機関です。アルバイトへの残業代未払いは、労働基準法に違反しますので、労働基準監督署による指導・勧告により、未払い残業代が支払われる可能性があります。
ただし、労働基準監督署による指導・勧告には強制力がありませんので、会社が任意に従わない場合には未払い残業代が支払われることはありません。また、残業代が支払われなかったとしても、労働基準監督署がアルバイトの代わりに残業代を取り返してくれることもありません。
弁護士に相談する
会社から未払い残業代を支払ってもらいたいという場合には、弁護士に相談するとよいでしょう。
労働基準監督署では相談には乗ってもらえますが、実際に対応するのはアルバイト個人です。弁護士であれば、未払い残業代問題の解決に向けた法的アドバイスをしてくれるのはもちろんのこと、アルバイトの代理人として会社との交渉も行ってくれます。
アルバイト先を辞めるタイミングで残業代請求をするという場合には、退職代行の手続きも弁護士に任せることも可能です。
アルバイトの方が自分だけで対応するのが難しいと感じるときは、まずは弁護士に相談するようにしましょう。
アルバイトの残業代請求を弁護士に依頼するメリット
アルバイトの残業代請求を弁護士に依頼することで、以下のようなメリットが得られます。
証拠収集や残業代計算をサポートしてもらえる
未払い残業代を支払ってもらうためには、証拠が重要となります。アルバイトが残業をしたとしても、それを裏付ける証拠がなければ、たとえ裁判をしたとしても、残業代を支払ってもらうのは難しいといえます。
弁護士であれば、アルバイトの残業代を立証するために必要となる証拠を熟知していますので、状況に応じた適切な証拠を選択し、収集することができます。また、残業代計算も弁護士に任せることができますので、計算ミスにより残業代の金額が減るなどのリスクもありません。
会社との交渉を任せることができる
アルバイトなどの非正規雇用労働者は、正社員よりもさらに弱い立場にありますので、個人で残業代請求をしたとしても、まともに取り合ってくれない可能性が高いです。また、「不満があるなら辞めてもらってもいい」と言われてしまい、仕事まで失ってしまうおそれがあります。
弁護士であれば、アルバイトに代わって会社と交渉することができますので、会社も真摯に取り合ってくれる可能性が高くなります。また、正当な理由なくアルバイトを解雇すれば、不当解雇を理由に訴えられるリスクが生じるため、弁護士が代理人についている事案では、会社も簡単には解雇に踏み切ることができません。
労働審判や訴訟になっても対応してもらえる
会社との話し合いで解決できない事案については、労働審判の申立てや訴訟提起の手続きが必要になります。法的知識の乏しいアルバイトの方では、このような手続きを適切に進めていくのは困難ですので、専門家である弁護士に対応を任せるのが安心です。
弁護士であれば、アルバイトの方に寄り添って、最後までしっかりと争っていってくれるでしょう。
アルバイトの残業代請求はグラディアトル法律事務所にご相談ください
未払い残業代などの労働問題が生じたときは、弁護士に相談する必要がありますが、弁護士であれば誰でもよいというわけではありません。弁護士によって、取り扱う分野や得意とする分野が異なりますので、労働問題を相談するのであれば、労働問題に詳しい弁護士に相談すべきです。
グラディアトル法律事務所では、未払い残業代や解雇トラブルなどの労働問題の解決に力を入れています。豊富な解決実績やノウハウに基づいて、複雑な事案についても適切に解決に導くことができますので、まずは当事務所までご相談ください。
土日も相談を受け付けていますので、お仕事が忙しい方は、平日夜間や土日の相談も可能です。また、未払い残業代のトラブルについては、初回相談料無料で対応していますのでまずはお気軽にお問い合わせください。
まとめ
アルバイトも労働者ですので、残業をした場合には会社に対して残業代を請求することができます。大切な時間を犠牲にして働いた残業代が未払いになっている場合には、そのままにしていては、時効で消滅してしまう可能性がありますので早めに請求することが大切です。
立場の弱いアルバイトだと自分だけでは残業代請求が難しいこともあります。そのようなときは弁護士が代わりに請求することもできますので、まずはグラディアトル法律事務所までお気軽にご相談ください。