パチンコ店の店員が残業代請求可能な4つのケースと請求方法を解説

パチンコ店の店員が残業代請求可能な4つのケースと請求方法を解説

「パチンコ店で働いているけど、イベント前になると残業をしなければならない」

「残業代がきちんと支払われているか不安だ」

「パチンコ店に残業代請求をしようと考えているけど、どのように行えばよいのだろうか?」

パチンコ店は、営業時間が長く、閉店後やイベント前の作業が多いため残業時間が長くなりやすい業種の一つです。また、パチンコ店で働く人の多くはアルバイトなどの非正規社員が多いため、正社員は責任者としての肩書が与えられ、残業代が支払われないケースも多いです。

しかし、パチンコ店が残業代を支払わない手口の中には違法な手口も含まれていますので、会社の言い分を素直に信じるのではなく、自分自身でも残業代に関する正しい知識を身につけることが大切です。

本記事では、

・パチンコ店で働く人の残業代が支払われない違法な4つのケース

・パチンコ店で働く人の残業代の計算方法

・パチンコ店に対して残業代を請求する方法

などについてわかりやすく解説します。

パチンコ店で働く方は、本記事を参考に残業代を請求できるケースに該当するかどうかをチェックしてみるとよいでしょう。

パチンコ店で残業が生じる3つの原因

パチンコ店で残業が生じる3つの原因

パチンコ店で残業が生じる原因としては、主に以下の3つが考えられます。

営業時間外でなければできない業務が多い

パチンコ店の営業時間は、都道府県の条例によって異なりますが、東京であれば午前10時から午後11時までが営業時間となります。営業時間が終了すれば従業員の業務も終了というわけではなく、営業時間外にも以下のような作業が必要になります。

・店内の清掃

・パチンコ台の調整

・設定の確認や変更

これらの業務は、営業時間外でなければ対応できませんので、社員などは残業をして作業を行わなければなりません。

アルバイトが多いため社員の負担が大きい

パチンコ店に勤務する従業員は、正社員よりもアルバイトなどの非正規社員の割合が圧倒的に多いです。営業時間中の接客業務などは、シフト制のアルバイトが対応することができますが、パチンコ台の調整や設定の変更などは責任のある社員でなければ対応することができません。

社員の人数が少ない店舗では、社員一人当たりの業務負担が大きくなってしまうため、必然的に残業をしなければ作業を終えることができません。

新台入替やイベント準備で忙しい

パチンコ店では、頻繁に新台入替やイベントを開催しています。これは、集客や稼働率アップを目的として行われるものですので、どの店舗でも一定の頻度で新台入替やイベントを行っていると思います。

しかし、新台入替は、営業時間外に行わなければなりませんので、新台入替の作業に関与する従業員は深夜残業になるケースが多いです。また、イベントを開催する場合には、イベントに向けた準備が必要になりますので、このような準備作業も基本的には営業時間外に行わなければなりません。

そのため、新台入替やイベントごとに対応しなければならない業務が増え、その都度残業になってしまいます。

パチンコ店で働く人の残業代が支払われない違法な4つのケース

パチンコ店で働く人の残業代が支払われない違法な4つのケース

パチンコ店では、以下のような違法な手口により、パチンコ店で働く従業員に対して残業代を支払っていないケースがあります。

サービス残業による残業代の不払い

上記のようにパチンコ店では、営業時間外に残業が発生することが多いですが、そのような残業をすべてサービス残業扱いにして残業代を支払わないケースがあります。

しかし、1日8時間・1週40時間の法定労働時間を超えて働いた場合、その時間は時間外労働にあたり、労働者には残業代を請求する権利が発生します。サービス残業が常態化している職場では、「残業代が付かないのは当然」と諦めてしまっている方も多いですが、残業代請求は法律上認められた労働者の正当な権利ですので、残業をしたときはしっかりと請求していくようにしましょう。

固定残業代を理由とする残業代の不払い

固定残業代とは、一定時間分の残業代をあらかじめ基本給に含めて支払う制度のことをいいます。固定残業代が支払われているパチンコ店では、「固定残業代を支払っているのだから、残業代は請求できない」と説明されることがあります。

しかし、固定残業代制度は、一定時間分の残業代の支払いを行っているに過ぎず、固定残業代を支払っているからといって、一切残業代請求ができなくなるわけではありません。実際の残業時間がみなし残業時間を超えていた場合には、固定残業代とは別に残業代を請求することができます。

固定残業代制度は、残業代不払いの隠れ蓑として利用されることも多い制度ですので、ご自身の残業代支払い状況を一度チェックしてみるとよいでしょう。

なお、みなし残業代(固定残業代)制度でも残業代請求ができるケースについての詳細は、以下の記事をご参照ください。

みなし残業代(固定残業代)に追加の残業代を請求できる6つのケース

管理職を理由とする残業代の不払い

パチンコ店では、一定の経験を積んだ社員に対して、以下のような肩書が与えられます。

・班長

・副主任

・主任

・副店長

・店長

このような肩書が与えられた社員に対して、パチンコ店側は「管理職にあたるから残業代は出ない」と説明することがあります。しかし、上記の肩書があるからといって直ちに残業代の支払いが不要になるわけではありません。

労働基準法では、経営者と一体的な立場にある労働者のことを「管理監督者」と定め、残業代の支払いを不要としています。管理監督者に該当するかどうかは、労働者に与えられた肩書ではなく、経営者と一体的な立場にあるかどうかという実態に即して判断することになります。

そのため、班長、副主任、主任などの肩書があったとしても、実態としては一般の平社員と権限や職務内容、待遇などが変わらない人がほとんどです。そのため、多くの人は残業代請求が可能な名ばかり管理職にあたるといえるでしょう。

なお、管理職の残業代・管理監督者該当性の詳細は、以下の記事をご参照ください。

「管理職の残業代は出ない」は間違い!違法なケースや請求方法を解説

残業指示を出していないことを理由とする残業代の不払い

会社に対して残業代請求をすると会社からは「残業を指示したことはないから、残業代は支払えない」などと反論されることがあります。

しかし、残業代の支払いが必要な労働時間に該当するかどうかは、使用者の指揮命令下に置かれていたかどうかにより判断しますので、明示的な指示だけでなく黙示的な指示がある場合にも残業代を請求することができます。

たとえば、閉店後の片づけや清掃、イベント準備、パチンコ台の調整などは本来の業務と関連性の強い作業であり、パチンコ店の営業に必要不可欠な業務といえます。そのため、会社から明示的な指示がなかったとしても、黙示的な指示があったとして、残業代を請求できる可能性が高いでしょう。

パチンコ店で働く人の残業代の計算方法

パチンコ店で働く人の残業代の計算方法

パチンコ店に対して残業代を請求するためには、労働者の側で未払い残業代の金額を計算しなければなりません。残業代の計算は、「1時間あたりの基礎賃金×割増賃金率×残業時間」という計算式により計算しますので、以下では、それぞれの項目についての詳しい内容を説明します。

1時間あたりの基礎賃金

1時間あたりの基礎賃金は、以下のような計算式によって計算します。

1時間あたりの基礎賃金=月給÷1か月の平均所定労働時間

1か月の平均所定労働時間=(365日-1年間の所定休日日数)×1日の所定労働時間÷12か月

なお、1時間あたりの基礎賃金を計算する際の「月給」は、「基本給+諸手当」で構成されていますが、以下の手当は除外する必要があります。

残業代計算の際に除外しなければいけない項目

割増賃金率

残業時間の種類に応じて一定の割増率により増額された割増賃金を請求することができます。具体的な割増賃金率は、以下のとおりです。

残業時間に対する割増賃金率

これらの割増賃金率は、重複して適用されます。たとえば、深夜残業に対しては、「25%以上+25%以上=50%以上」、深夜休日労働に対しては、「25%以上+35%以上=60%以上」の割増賃金率が適用されます。

パチンコ店で働く方は、深夜残業が多くなりがちですので、深夜分の割増率についても忘れずに適用するようにしましょう。

なお、深夜労働と残業代についての詳細は、以下の記事をご参照ください。

深夜残業は何時から?深夜残業代の正しい計算方法と請求の流れを解説

残業時間

残業時間の計算では、法定内残業と法定外残業を区別するのがポイントです。

法定内残業とは、所定労働時間を超えて法定労働時間の範囲内の残業をいい、割増賃金率の適用はありません。これに対して、法定外残業は、法定労働時間を超えた残業をいい、割増賃金率が適用されます。

残業時間がどちらに該当するかによって割増賃金率の適用の有無が異なるため、しっかりと区別することが大切です。

具体例に基づく残業代の計算

月給30万円で働くAさんが月40時間の残業をしたときの残業代は、いくらになるのでしょうか。以下の条件を前提として、残業代の計算方法をみていきましょう。

・1年間の所定休日日数……125日

・1日の所定労働時間……8時間

・ある月の残業時間……40時間

1時間あたりの基礎賃金=30万円÷{(365日-125日)×8時間÷12か月}=1875円

残業代=1875円×125%×40時間=9万3750円

すなわち、Aさんの月40時間分の残業代は、9万3750円になります。残業代請求の時効は3年ですので、過去3年分を遡って請求する場合には、

9万3750円×36か月=337万5000円

を請求することができます。

なお、残業代計算方法の詳細は、以下の記事をご参照ください。

【残業代を計算したい人へ】60時間超・深夜手当・休日手当までわかる

パチンコ店に対して残業代を請求する方法

パチンコ店に対して残業代を請求する方法

パチンコ店に対して残業代請求をする場合には、以下のような流れ・方法で行います。

残業に関する証拠収集

未払い残業代を請求する際に必要になるのが、残業に関する証拠です。裁判にまで発展すれば証拠がなければ請求は認められませんが、会社との交渉でも証拠がない状態だとまともに取り合ってくれません。そのため、まずは残業に関する証拠収集を行う必要があります。

パチンコ店で働く方が集めるべき証拠としては、以下のものがあります。

・タイムカード

・シフト表

・業務日報

・パソコンのログイン、ログアウト履歴

・パチンコ店のセキュリティ記録

・残業時間を記録したメモ

実際の働き方によって必要になる証拠も変わってきますので、どのような証拠を集めればよいかわからないときは、専門家である弁護士に相談してみましょう。

なお、残業代請求に有効な証拠についての詳細は、以下の記事をご参照ください。

タイムカードないけど残業代もらえる!あれば役に立つ証拠16選!

内容証明郵便の送付

会社と実際に交渉をスタートする前に、まずは内容証明郵便を利用して、未払い残業代の支払いを求める書面を送付します。

内容証明郵便とは、文書の内容やいつ・誰に届いたものであるかを証明できる形式の郵便です。内容証明郵便を利用することで、残業代請求を行ったという証拠を残すことができますので、時効の完成を猶予する手段として有効になります。なぜなら、残業代請求をしたことは法律上の「催告」あたり、6か月間時効の完成を猶予することができるからです。

残業代の消滅時効の成立が間近に迫っているという場合は、内容証明郵便で残業代請求を行い、その間に証拠収集や正確な残業代計算を進めていくとよいでしょう。

なお、残業代請求の時効と時効を阻止する方法についての詳細は、以下の記事をご参照ください。

残業代の時効は3年!時効を阻止する方法と残業代請求の流れを解説

会社との交渉

内容証明郵便が届いたら、会社との交渉を始めます。会社が素直に残業代の支払いに応じてくれればよいですが、ほとんどのケースでは簡単には応じてくれません。そのため、労働者側では、客観的な証拠を示しながら未払い残業代が存在していることを説明し、説得していかなければなりません。

なお、早期解決を希望する場合には、金額面で妥協して会社と和解するというのも一つの方法です。

労働審判の申立て・訴訟の提起

会社との交渉が決裂したときは、労働審判の申立てや訴訟の提起が必要になります。

いずれも専門的な手続きになりますので、労働者個人ではなく弁護士のサポートを受けながら進めていくのがおすすめです。

パチンコ店への残業代請求はグラディアトル法律事務所にお任せください

パチンコ店への残業代請求はグラディアトル法律事務所にお任せください

パチンコ店への残業代請求をお考えの従業員の方は、グラディアトル法律事務所までご相談ください。

残業代トラブルに関する豊富な実績と経験がある

残業代請求を弁護士に依頼する場合、弁護士であれば誰でもよいというわけではありません。弁護士には、それぞれ得意分野があり、取り扱う事件の内容や数にも差がありますので、残業代請求を依頼するのであれば、残業代トラブルに強い弁護士を探すことがポイントになります。

グラディアトル法律事務所では、残業代トラブルに関する豊富な実績と経験がありますので、パチンコ店への残業代請求も当事務所にお任せください。実績と経験豊富な弁護士がトラブル解決に向けて全力でサポートいたします。

初回法律相談無料、着手金0円から対応

残業代のトラブルを弁護士に相談したくても「高額な弁護士費用がかかるのではないか心配」など費用に関する不安から弁護士への相談を躊躇してしまう方も少なくありません。

当事務所では、そのような不安なく相談にお越しいただけるように初回法律相談無料、着手金0円から対応しています。実際に残業代を回収できた場合には報酬金が発生しますが、回収した残業代の中からいただくことになりますので、実際の負担はほとんどありません。

まとめ

パチンコ業界は、営業時間外の残業が多く、サービス残業が横行しているため、未払い残業代が発生している可能性が高いです。会社から適正な残業代が支払われていないと感じたときは、一度弁護士に相談して未払い残業代の有無を判断してもらうとよいでしょう。

パチンコ店への残業代請求をお考えの方は、残業代トラブルに関する豊富な実績と経験を有するグラディアトル法律事務所までご相談ください。

 

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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