「残業をした場合の割増率ってどうなっているの?」
「時間外労働、深夜労働、休日労働の割増率が知りたい」
「割増率が適用されない残業があるって本当?」
労働者が残業をした場合、通常の労働時間に対する賃金(基礎時給)だけではなく、そこに一定割合を増額した割増賃金を請求することができます。
この割増賃金を計算する際の基準になるのが「割増率」です。割増率は、時間外労働、深夜労働、休日労働といった労働時間に応じて、以下のように異なっていますので、適切な割増率を選択して計算することが大切です。
時間外労働……25%以上
深夜労働……25%以上
休日労働……35%以上
本記事では、
・残業代の割増率とは
・割増率の適用される残業とは
・残業時間に応じた具体的な割増率
などについてわかりやすく解説します。
残業代計算は非常に複雑なものになっていますので、自分で計算するのが不安な方は、残業代請求に詳しい弁護士に相談するのがおすすめです。
目次
残業代の割増率とは
残業代の割増率とは、労働者が残業をした際に通常の賃金に加えて支払われる追加賃金の割合のことです。これにより、労働者は通常の労働時間を超える労働に対して正当な補償を受け、会社側は時間外労働の抑制を図ります。
割増率の種類
割増率は、労働の種類によって異なります。具体的には以下の通りです。
2、深夜労働(午後10時から午前5時までの労働):割増率は通常賃金の25%以上
3、休日労働(法定休日に行う労働):割増率は通常賃金の35%以上
労働者が通常の勤務時間外で働いた場合、その労働がどの時間帯に行われたかによって異なる割増率が適用されます。これにより、労働者には適切な補償が行われ、会社側には時間外労働の抑制が促されます。
割増率の適用される残業とは?
割増率の適用される残業とはどのようなものなのでしょうか。
法定労働時間の基本
労働基準法では、1日8時間1週40時間を法定労働時間と定め、原則として法定労働時間を超えて働かせることはできないとされています。会社が労働者に対して、残業を命じるためには、労働基準法36条に基づく協定(36協定)を締結し、それを労働基準監督署長に届け出なければなりません。
また、36協定の締結・届出があったとしても無制限に残業を命じることはできません。残業時間には、月45時間・年360時間という上限が設けられていますので、それを超えて残業をさせることは原則として違法となります。
法定外残業と法定内残業の違い
残業には、大きく分けて「法定外残業」と「法定内残業」の2種類があります。残業がどちらの残業にあたるのかによって、割増率の適用の有無が変わってきますので、法定内残業と法定外残業の違いを理解することが大切です。
【法定外残業とは】
法定外残業とは、法定労働時間を超えた残業をいいます。法定外残業に対しては、割増賃金の支払いが必要になりますので、労働者は、所定の割増率により増額した賃金を会社に対して請求することができます。
【法定内残業とは】
法定内残業とは、所定労働時間を超えて法定労働時間の範囲内の残業をいいます。たとえば、会社との雇用契約において、所定労働時間が6時間と定められている場合において、ある日に7時間の労働をすると1時間分の法定内残業となります。
法定内残業は、法定労働時間を超えてはいませんので、法律上、割増賃金の支払い義務はありません。すなわち、労働者は、割増率の適用されない通常の賃金の支払いができるにとどまります。
残業時間に応じた具体的な割増率
残業時間に応じた具体的な割増率は、以下のとおりです。
使用者に対して経済的負担を課すことで時間外労働などを抑止する観点から、労働者に生じる肉体的・精神的負担の度合いに応じて、上記のように異なる割増率が定められています。
以下では、各労働時間の種類に応じた割増率の詳しい内容をみていきましょう。
時間外労働に対する割増率
時間外労働に対する割増率は、法定労働時間を超えた時間外労働と月60時間を超える時間外労働の2つに区別され、それぞれ適用される割増率が異なります。
【時間外労働】
1日8時間・1週40時間という法定労働時間を超えて残業をした場合には、通常の労働時間に対する賃金に加えて、基礎時給を25%以上の割増率で増額した割増賃金の支払いが必要になります。
【具体例】
基礎時給1500円で働くAさんがある日に10時間の残業をした場合、その日のAさんの残業代は以下のように計算します。
2時間×1500円×125%=3750円
【月60時間を超える時間外労働】
1か月の時間外労働が60時間を超える場合、60時間を超えた部分については、50%以上の割増率が適用されます。月60時間を超える時間外労働は、労働者に対する肉体的・精神的負担が大きいため、通常の時間外労働に対する割増率よりも高い割合を課すことで、長時間残業を抑止するのが狙いです。
以前は、中小企業に対しては月60時間超の時間外労働があっても25%以上の割増率とされていましたが、2023年4月からは、中小企業に対しても50%以上の割増率が適用されています。
【具体例】
基礎時給1500円で働くBさんがある月に230時間の労働(所定労働時間:160時間、時間外労働:60時間、月60時間超の時間外労働:10時間)をした場合、その月のBさんの残業代は、以下のように計算します。
60時間×1500円×125%+10時間×1500円×150%=13万5000円
深夜労働に対する割増率
深夜労働とは、午後10時から翌午前5時まで労働をいいます。深夜労働をした場合には、通常の労働時間に対する賃金に加えて、基礎時給を25%以上の割増率で増額した割増賃金の支払いが必要になります。
また、深夜労働と時間外労働の割増率は、重複して適用されますので、深夜残業を行った場合には、通常の労働時間に対する賃金に加えて、基礎時給を50%以上の割増率で増額した割増賃金の支払いが必要になります。
【具体例】
基礎時給1500円で働くCさんの所定労働時間は午前10時から午後7時(休憩1時間)であるところ、ある日に10時から午後11時まで働いたとします。その日のCさんの残業代および深夜残業代当は、以下のように計算します。
3時間×1500円×125%+1時間×1500円×150%=7875円
なお、深夜労働と残業代についての詳細は、以下の記事をご参照ください。
休日労働に対する割増率
休日労働とは、法定休日における労働のことをいいます。労働基準法では、毎週少なくとも1回の休日または4週を通じて4日の休日を与えなければならない旨規定されています。これを「法定休日」といいます。
休日労働をした場合には、通常の労働時間に対する賃金に加えて、基礎時給を35%以上の割増率で増額した割増賃金の支払いが必要になります。法定休日に深夜労働をした場合には、休日労働と深夜労働の割増率が重複適用され、60%以上の割増率になりますが、休日労働と時間外労働の割増率は重複適用されませんので注意が必要です。
【具体例】
基礎時給1500円で働くDさんが法定休日に午前10時から午後7時まで(休憩1時間)働いた場合、その日のDさんの賃金は以下のように計算します。
8時間×1500円×135%=1万6200円
なお、休日労働と残業代についての詳細は、以下の記事をご参照ください。
※「残業代 休日出勤」リンク
時間外・休日・深夜と残業代の発生根拠が重なる場合
【時間外労働と深夜労働が重複する場合】
深夜労働と時間外労働の割増率は、重複して適用されますので、深夜残業を行った場合には、通常の労働時間に対する賃金に加えて、基礎時給を50%以上の割増率で増額した割増賃金の支払いが必要になります。また、月60時間超の時間外労働と深夜労働が重なる場合には、基礎時給を75%以上の割増率で増額した割増賃金の支払いが必要になります。
【深夜と休日労働が重複する場合】
法定休日に深夜労働をした場合には、休日労働と深夜労働の割増率が重複適用され、60%以上の割増率になります。
【時間外労働と休日労働が重複する場合】
休日労働と時間外労働の割増率は重複適用されません。
割増率を踏まえた残業代の計算方法
残業代の割増率の基本を理解したところで、次は、割増率を踏まえた残業代の計算方法を見ていきましょう。
1時間あたりの基礎賃金
1時間あたりの基礎賃金は、以下のような計算式によって計算します。
1時間あたりの基礎賃金=月給÷1か月の平均所定労働時間
1か月の平均所定労働時間=(365日-1年間の所定休日日数)×1日の所定労働時間÷12か月
なお、1時間あたりの基礎賃金を計算する際の「月給」は、「基本給+諸手当」で構成されていますが、以下の手当は除外する必要があります。
・家族手当
・通勤手当
・別居手当
・子女教育手当
・住居手当
・臨時に支払われた手当
・1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
割増率
すでに説明したとおり、残業代の割増率は労働時間の種類に応じて以下のようになっています。
残業時間
残業代を計算する際には、法定内残業と法定外残業を区別するのがポイントです。
すでに説明したとおり、割増率が適用されるのは法定外残業のみですので、その点をしっかりとおさえておきましょう。
なお、残業代計算方法の詳細は、以下の記事をご参照ください。
適正な割増率による残業代が支払われていない場合の対処法
適正な割増率による残業代が支払われていない場合には、以下のような対処法を検討しましょう。
会社と交渉
時間外労働、深夜労働、休日労働に対しては、所定の割増率により増額した割増賃金の支払いが必要になります。会社から割増賃金が支払われていないときは、その旨会社に伝えて支払いを促すようにしましょう。
単に計算ミスにより割増率が適用されていないようなケースであれば、労働者から申し出があればすぐに修正して支払いに応じてくれるはずです。万が一、故意に割増率の適用を除外しているようであれば簡単には応じてくれませんので、以下のような対処法を検討していきましょう。
労働基準監督署に相談
労働基準監督署とは、企業が労働関係法令を遵守しているかどうかを監督する行政機関です。適正な割増率を適用していない場合は、労働基準法違反となりますので、労働基準監督署に相談するのも有効な手段となります。
労働基準監督署では、労働者からの申告に基づいて事業主による労働基準法違反が確認できたときは、指導や是正勧告により違法状態の改善を図ることができます。
ただし、労働基準監督署による指導や是正勧告には、強制力がありあせんので、会社が任意に応じなければ割増賃金の支払いは期待できません。
弁護士に相談
労働基準監督署に相談しても強制力がなく、労働者個人で対応しなければならないため、自分で対応するのが不安だという方は、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士であれば、労働者の代理人として会社と交渉することができますので、労働者自身の負担はほとんどありません。会社側としても弁護士が窓口になることで、不誠実な対応はできなくなりますので、未払いとなっている割増賃金の支払いに応じてくれる可能性が高くなります。
割増率を踏まえた残業代計算は、非常に複雑な内容となっていますので、正確に計算するためにもまずは弁護士に相談するようにしましょう。
残業代請求の相談窓口や弁護士に依頼するメリットについては、以下の記事もご参照ください。
未払い残業代の請求はグラディアトル法律事務所にお任せください
未払い残業代の請求をお考えの方は、まずはグラディアトル法律事務所にご相談ください。
残業代トラブルに関する豊富な実績と経験がある
残業代請求を依頼する弁護士は、弁護士であれば誰でもよいというわけではありません。弁護士には、得意分野や取り扱い分野が異なりますので、依頼する弁護士によって結果に差が生じることも珍しくありません。そのため、残業代請求を依頼するのであれば、残業代請求に強い弁護士を探すことが重要なポイントになります。
グラディアトル法律事務所では、残業代請求に関する豊富な実績・経験がありますので、安心してお任せください。実績と経験豊富な弁護士が残業代請求のトラブルの解決に向けて全力でサポートいたします。
初回法律相談無料、着手金0円から対応
弁護士に相談・依頼する際に気になるのが弁護士費用です。「高額な費用がかかるのではないか」、「どのくらいの費用がかかるかわからず不安」など費用に関する不安から弁護士への相談を躊躇してしまう方も少なくありません。
当事務所では、初回法律相談無料、着手金0円から対応していますので費用面の不安なく相談にお越しいただけます。実際に残業代を回収できた場合には報酬金が発生しますが、会社から回収した残業代の中からお支払いいただけますので、実際の負担はほとんどありません。
まとめ
残業をすれば所定の割増率により増額された割増賃金を請求することができます。割増率は、時間外労働、深夜労働、休日労働といった労働時間の種類によって異なりますので、残業代計算の際には、状況に応じた適切な割増率を選択することが重要です。
自分だけでは正確に残業代を計算するのが不安だという方は、専門家である弁護士に相談して、残業代計算のサポートをしてもらうとよいでしょう。
会社への残業代請求をお考えの方は、実績と経験豊富なグラディアトル法律事務所にぜひお任せください。