コンサルタント会社に残業代を請求する方法と5つの違法な手口を解説

弁護士 若林翔
2024年08月03日更新

「コンサルタントとして働いているけど、激務でつらい」

「収入には満足しているけど、残業代が出ないのが不満だ」

「コンサルティング会社の社員でも残業代を請求できるのだろうか?」

コンサルタントの仕事は、「高額な収入を得られる」というイメージがありますが、その反面、仕事内容は非常にハードで長時間の残業を余儀なくされることも少なくありません。

実際にも外資系コンサルティング会社の「アクセンチュア」において、月140時間を超える残業をさせていたとして、労働基準法違反で書類送検されたという事例もありました。

東京労働局は8日、外資系コンサルティング会社のアクセンチュアと同社の管理職1人を労働基準法違反で東京地検へ書類送検した。東京都港区にある本社の社員に、違法な時間外労働(残業)をさせていた疑いがあるとしている。

同労働局によると、本社に所属するソフトウェアエンジニアの社員に昨年1月3~30日、法定の労働時間である週40時間を超えて計143時間48分の残業をさせていた疑いがある。残業時間の上限を定める労使協定(36〈サブロク〉協定)はあったが、無効だったという。

朝日新聞デジタルhttps://www.asahi.com/articles/ASQ386K5MQ38ULFA01K.html より引用

このように長時間残業が横行しているコンサルティング会社では、少しでも残業代を減らすためにさまざまな違法な手口で残業代を支払わないことがあります。

コンサルタントしては、会社側の違法な手口を理解した上で、しっかりと残業代を請求していきましょう。

本記事では、

・コンサルティング会社で残業が多い4つの要因

・コンサルティング会社による違法な残業代不払いの5つの手口

・コンサルタントが残業代を請求する手順

などについてわかりやすく解説します。

高収入のコンサルタントは、未払い残業代の金額も高額になる傾向がありますので、残業代を取り戻すためにもまずは弁護士に相談することをおすすめします。

コンサルタントに残業が多い4つの要因

コンサルタントに残業が多い4つの要因

コンサルタントは、一般に激務と言われ、残業の多い職業の一つとして知られています。

コンサルタントに残業が多いのは、主に以下の4つの要因があります。

資料作成に時間がかかる

コンサルタントは、クライアントとのやり取りで必要になる資料を作成する機会が多く、資料作成に時間がかかるのが残業の多い要因の一つとなります。

クライアントに対して説得的な提案をするためには、詳細でクオリティの高い資料の提供が必須となりますので、どうしても資料作成に時間がかかってしまいます。

複数のプロジェクトを抱えているコンサルタントだと、すべて並行して処理していかなければなりませんので、必然的に残業時間も長くなる傾向があります。

不測の事態に対応する必要がある

コンサルタント業務は、あらかじめ決められた定型的なものは存在せず、クライアントの業種や事業内容などに応じて対応していかなければなりません。

対応にあたっては、不測の事態が生じることも多く、それを処理するために残業をしなければならないケースもあります。

プロジェクトの納期までに成果を出す必要がある

コンサルタント業務は、クライアントから依頼されたプロジェクトがベースになります。

プロジェクトには、それぞれ納期が定められており、納期までに一定の成果を出すことが求められています。

クライアントの期待する成果を上げるためには、通常の労働時間だけでは足りず、残業をしてプロジェクトを完成させる必要があります。

コンサルタントは高額な報酬を受け取っていますので、クライアントからも質の高い成果を求められる傾向があり、必然的に残業時間も長くなってしまいます。

知識やスキルの習得に時間がかかる

コンサルタントが必要となる知識やスキルは、プロジェクトによって異なりますので、プロジェクトごとに新たな知識やスキルを習得していかなければなりません。

クライアントと対等な立場でやり取りするためには、その業界に対する深い理解が不可欠となりますので、高いレベルでのインプットが必要になります。

また、外資系コンサルティング会社では語学力も必須のスキルとなりますので、会社の語学研修だけでは足りない場合には自己研鑽を積まなければなりません。

このようにコンサルタントとしての必要な知識やスキルの習得に時間がかかるというのも残業が多くなる要因の一つです。

コンサルタント会社による違法な残業代不払いの5つの手口

コンサルタント会社による違法な残業代不払いの5つの手口

コンサルタントに残業代が不払いになる違法な会社側の手口としては、主に以下の5つが挙げられます。

固定残業代を理由とする残業代の不払い

固定残業代とは、一定時間分の残業に対して定額で支払われる割増賃金のことをいいます。

残業の多いコンサルタントには、コンサルティング会社との契約で固定残業代制が導入されているケースも少なくありません。

たとえば、みなし残業時間として30時間が設定いる場合、30時間分の残業代は、固定残業代として支払い済みですので、みなし残業時間の範囲内の残業であれば別途、残業代を請求することはできません。

しかし、固定残業代制が導入されていたとしても、みなし残業時間を超えて残業をした場合には、別途残業代の支払いが必要になります。

そのため、固定残業代以外に一切残業代が支払われていないようなケースでは、違法な残業代の不払いである可能性があります。

なお、みなし残業代(固定残業代)制度でも残業代請求ができるケースについての詳細は、以下の記事をご参照ください。

みなし残業代(固定残業代)に追加の残業代を請求できる6つのケース

管理職を理由とする残業代の不払い

コンサルタントとして一定の経験を積むと、以下のような肩書が与えられることがあります。

・シニアコンサルタント・マネージャー

・シニアマネージャー

・ディレクター

コンサルティング会社からは、このような肩書が与えられたコンサルタントに対して、管理職であることを理由に残業代の支払いをしないことがあります。

労働基準法では、経営者と一体的な立場にある労働者を「管理監督者」と呼び、残業代の支払いを不要としていますが、管理監督者と管理職は同じ意味ではありません。

管理職としての肩書を与えられていたとしても、権限や労働時間の裁量、待遇などの観点から経営者と一体的な立場にあると評価できない場合には、管理監督者には該当しません。

形式だけの名ばかり管理職のコンサルタントであれば、会社に対して残業代を請求することができます。

なお、管理職の残業代・管理監督者該当性の詳細は、以下の記事をご参照ください。

「管理職の残業代は出ない」は間違い!違法なケースや請求方法を解説

年俸制を理由とする残業代の不払い

多くのコンサルティング会社では、年俸制が採用されています。

年俸制は、コンサルタントとしての仕事の成果に応じて収入が決まりますので、能力の高い人はより多くの収入を得られるというメリットがあります。

年俸制を採用しているコンサルティング会社では、年俸に残業代が含まれているとして、残業代の支払いを行わないことがあります。

年俸に残業代を含んで支払うことも可能ですが、そのためには年俸額のうちどの部分が残業代であるかが明確に区別されている必要があります。

また、年俸に含まれる残業代を上回る残業をしている場合には、その差額の支払いも必要となります。

このような区別なく単に年俸制だからという理由で残業代の支払いに応じないのは違法といえるでしょう。

なお、年俸制でも残業代請求ができるケースについての詳細は、以下の記事をご参照ください。

年俸制も残業代が支払われる!計算方法や支払い不要なケースを解説

裁量労働制を理由とする残業代の不払い

裁量労働制とは、業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分などを労働者の裁量に委ねる必要がある業務について、実際の労働時間とは関係なくあらかじめ定められた時間を労働時間とみなす制度です。

コンサルタントというと業務の性質上、一定の裁量が与えられていることも多いため、コンサルティング会社では裁量労働制を理由に残業代を支払わないこともあります。

しかし、裁量労働制では、対象業務が20の業務に限られており、コンサルタントが対象となり得るのは、いわゆる「システムコンサルタント」の業務に限られます。

すべてのコンサルタントに対して裁量労働制が適用されるわけではありませんので、適用対象外の業務に従事するコンサルタントについては、残業代を請求することができます。

なお、裁量労働制と残業代請求についての詳細は、以下の記事をご参照ください。

裁量労働制で残業代はどうなる?未払分を請求するための必携知識

深夜労働の割増賃金の不払い

コンサルタントは、深夜の時間帯(午後10時から翌午前5時まで)に残業をするケースも多いです。

このような深夜残業は、通常の時間外労働の割増賃金に加えて、深夜労働の割増賃金も加算されますので、会社に対してより多くの割増賃金を請求することができます。

残業代の不払いをするコンサルティング会社では、深夜労働の割増賃金も同様に不払いとする傾向がありますので、しっかりと計算して請求していくようにしましょう。

なお、深夜労働と残業代についての詳細は、以下の記事をご参照ください。

深夜残業は何時から?深夜残業代の正しい計算方法と請求の流れを解説

コンサルタントが残業代を請求する手順

コンサルタントが残業代を請求する手順

コンサルタントが会社に対して残業代を請求する場合、以下のような手順で行います。

内容証明郵便の送付

会社に対して残業代請求をする場合、まずは内容証明郵便を利用して残業代請求の通知書を送付します。

内容証明郵便とは、以下の事項を日本郵便株式会社が証明してくれる形式の郵便です。

・差し出した日付・差出人の住所、氏名

・受取人の住所、氏名

・文書に書かれた内容

労働者が会社に対して残業代請求をすることで、残業代の時効の完成を6か月間猶予することができます。

内容証明郵便を利用することで、残業代請求をしたという客観的証拠を残すことができますので、残業代の時効の完成を阻止する手段として有効です。

なお、内容証明の書き方と残業代請求の時効と時効を阻止する方法についての詳細は、以下の記事をご参照ください。

残業代請求の内容証明郵便の書き方と基本的なルール・費用を解説

残業代の時効は3年!時効を阻止する方法と残業代請求の流れを解説

コンサルティング会社との話し合い

内容証明郵便が届いたらコンサルティング会社との間で未払い残業代の支払いに関する交渉を進めていきます。

会社側が支払いに応じない態度を示している場合には、労働者側で残業代が未払いになっていることを示す証拠を提示して、会社を説得していかなければなりません。

会社側が真摯に取り合ってくれない場合には、弁護士に交渉を依頼するのもおすすめです。

労働審判の申立て

会社側との交渉では解決が困難な場合、労働審判という手続きを利用することで未払い残業代の問題が解決できる可能性があります。

労働審判とは、裁判官1人と労働審判員2人による労働審判委員会が紛争の実情に即して、原則3回以内の期日での解決を目指す手続きです。

裁判に比べて迅速な解決が期待できる方法ですので、早期解決を希望する場合にはおすすめの方法といえます。

なお、労働審判で残業代請求をする流れについては、以下の記事をご参照ください

労働審判で残業代請求をする流れ・費用・期間などをわかりやすく解説

訴訟の提起

会社との話し合いや労働審判でも解決しない場合は、最終的に訴訟を提起して解決を図る必要があります。

しかし、訴訟では証拠に基づいて法的主張を展開していかなければならず、労働者個人で対応するのは非常に困難な手続きだといえます。

そのため、未払い残業代請求の訴訟を提起する際は、労働問題に詳しい弁護士に相談するのがおすすめです。

なお、裁判で残業代請求をする流れについては、以下の記事をご参照ください。

裁判で残業代請求をすべき5つのケースと裁判の流れ・期間・費用

コンサルタントが残業代請求をするために必要な証拠

コンサルタントが会社に対して残業代請求をする際に重要になるのが「証拠」です。

残業代請求では、証拠の有無によって勝ち負けが左右されますので、確実に残業代を取り戻すためには、あらかじめ十分な証拠を確保しておく必要があります。

残業代請求に必要になる証拠は、実際の状況に応じて変わってきますが、代表的な証拠を挙げると以下のようになります。

・タイムカード・勤怠管理システムのデータ

・業務日報

・パソコンのログ履歴

・オフィスの入退室記録

・交通系ICカードの利用履歴

・帰宅時のタクシーの領収書

・業務用のメールの送信履歴

・残業時間を記載した手書きのメモ

なお、残業代請求に有効な証拠についての詳細は、以下の記事をご参照ください。

タイムカードないけど残業代もらえる!あれば役に立つ証拠16選!

コンサルタントの残業代請求が認められた裁判例

以下では、コンサルタントの残業代請求が認められた裁判例を紹介します。

大阪地裁平成17年10月6日判決

【事案の概要】

Xは、主に公官庁の土木設計等を行うY社との間で雇用契約を締結し、建設コンサルタントとして勤務していました。Y社にはタイムカードなどの公式の勤怠記録が存在していなかったため、Xは、自ら作成した「勤務時間整理簿」に基づいて残業代を計算し、会社に対して請求しました。

【裁判所の判断】

裁判所は、Y社がX作成の勤務時間整理簿を確認し、正確な記載を求めていたことやその内容について争っていなかったことなどの理由から勤務時間整理簿に基づいて残業代を計算することを認めました。

この裁判例は、タイムカードによる勤怠記録がない場合でも、労働者作成の整理簿により残業代請求を認めた重要なものといえます。

この判決からは、タイムカードがないからといってすぐに諦めてしまうのではなく、日頃から残業の証拠を集めておくことが重要といえるでしょう。

大阪地裁平成14年5月17日判決

【事案の概要】

Xは、測量、土木工事の設計・監理、建設工事の設計・監理、地質調査等を業務とするY社との間で雇用契約を締結し、土地測量業務に従事していました。

Xの賃金は、年俸制で年額300万円とされており、時間外労働割増賃金・諸手当・賞与などを含めて年俸額が決められていました。

Xは、Yに対して残業代の支払いを求めたものの、YはXの賃金に残業代も含まれているとして残業代の支払いに応じなかったため訴えを提起しました。

【裁判所の判断】

裁判所は、年俸制で基本給に残業代を含めて支払ったからといって直ちに違法になるわけではないものの、割増賃金部分と基本給が区別して支払われていなければ、割増賃金部分が法定の額を下回っているかどうかが後から具体的に計算できないため、違法・無効となるとしました。

そして、本件では、Yの賃金の定め方からは、割増賃金部分と基本給部分を区別して確定することができず、残業代が支払われたとはいえないと判断しました。

コンサルタントの残業代請求はグラディアトル法律事務所にお任せください

コンサルタントの残業代請求はグラディアトル法律事務所にお任せください

コンサルタントは、年俸制や裁量労働制で働いている人も多く、一般の労働者に比べて複雑な雇用条件となっています。

このような雇用条件で働くコンサルタントは、残業代の不払いがあったとしても、それに気付かずに過ごしている方も少なくありません。

しかし、残業代請求には3年という時効がありますので、未払い残業代の存在に気付かずに放置していると大切な残業代が失われてしまうおそれがあります。

そのため、残業代に関して少しでも疑問が生じたときは、すぐに弁護士に相談するのがおすすめです。

グラディアトル法律事務所では、残業代の問題に関して豊富な知識と経験がありますので、コンサルタントの残業代請求の問題についても適切に対応することができます。

証拠収集や残業代計算などのサポートは、経験豊富な当事務所の弁護士が担当しますので、安心してお任せください。

また、当事務所では残業代請求に関する相談は、初回無料で対応していますので、まずはお気軽にご相談ください。

まとめ

コンサルタントは、残業の多い業種の一つです。残業が多くなれば、それだけ未払い残業代が発生するリスクも高くなります。

高収入のコンサルタントは、残業代も高額になる傾向がありますので、大切な残業代が時効により失われてしまう前に、弁護士に相談することが大切です。

コンサルティング会社への残業代請求をお考えのコンサルタントの方は、経験と実績豊富なグラディアトル法律事務所にお任せください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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