退職後でも残業代請求は可能!退職後の請求の注意点や流れを解説

退職後でも残業代請求は可能!退職後の請求の注意点や流れを解説

「在職中は嫌がらせをされそうだから、退職後に残業代請求をしようと考えている」

「退職後でも残業代請求はできるのだろうか?」

「退職後の残業代請求で気を付けるべきポイントはあるの?」

在職中に残業代請求をすると、会社から嫌がらせや不当な扱いを受けるなどの不安があるなどの理由から退職後に残業代請求をしようと考えている方も少なくありません。

残業代請求は、在職中だけでなく退職後も可能ですが、退職後の残業代請求では時効のリスクもありますので、早めに行動することが大切です。

本記事では、

・退職後の残業代請求のメリット

・退職後の残業代請求の注意点

・退職後に未払い残業代を請求する流れ

などについてわかりやすく解説します。

退職後の残業代請求を検討している方は、退職前から弁護士に相談をしてアドバイスしてもらうとよいでしょう。

残業代請求は退職後でも可能!

労働者は、1日8時間・1週40時間という法定労働時間を超えて働いたときは、会社に対して残業代を請求する権利が発生します。この残業代請求権は、会社を退職したとしても消滅することはありませんので、退職前・退職後のいずれのタイミングでも行使することができます。

ただし、後述するように残業代請求権には、消滅時効がありますので、退職後に残業代請求をするのであれば時効により権利が消滅する前に行動することが必要になります。

 

退職後の残業代請求のメリット

退職後の残業代請求のメリット

退職後に残業代請求をする場合、以下のようなメリットがあります。

会社に気兼ねなく請求できる

会社に在職中は、長年世話になった会社に遠慮してしまい、積極的に残業代を請求することができません。残業代請求をしたとしても、会社からの不利な提案を断ることができず、不利な内容で和解に応じてしまう可能性もあります。

しかし、会社を退職後であれば、会社に気兼ねする必要はありませんので、未払い残業代の支払いに向けて徹底的に争っていくことができます。

嫌がらせや不利益を受ける心配がない

会社に在職中に残業代請求をすると、会社から嫌がらせや不当な扱いを受けるなどの不利益が生じるリスクがあります。すぐに会社を辞めることができない状態で、そのような不利益を受けると、精神的にも大きなストレスになってしまいます。

しかし、会社を退職後であれば会社から不利益を受けるリスクはありませんので、不安なく残業代請求を行うことができます。

年14.6%の遅延損害金を請求できる

年14.6%の遅延損害金を請求できる

遅延損害金とは、支払期限に遅れた場合に発生するペナルティの一種で、一定の利率により計算した賠償金を請求することができます。

残業代は、各給料日に支払わなければならないお金ですので、未払い残業代があるということは、支払期限までに残業代が支払われていないことを意味します。このような未払い残業代に対しては、民法に基づき年3%の利率による遅延損害金を請求することができます(民法404条2項)。

ただし、会社を退職後は、「賃金の支払い確保等に関する法律」が適用されますので、遅延損害金の利率は、年14.6%にアップします(賃金の支払い確保等に関する法律6条1項)。

(退職労働者の賃金に係る遅延利息)

第六条 事業主は、その事業を退職した労働者に係る賃金(退職手当を除く。以下この条において同じ。)の全部又は一部をその退職の日(退職の日後に支払期日が到来する賃金にあつては、当該支払期日。以下この条において同じ。)までに支払わなかつた場合には、当該労働者に対し、当該退職の日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該退職の日の経過後まだ支払われていない賃金の額に年十四・六パーセントを超えない範囲内で政令で定める率を乗じて得た金額を遅延利息として支払わなければならない。

賃金の支払の確保等に関する法律 e-gov参照

すわなち、退職後の方がより多くの遅延損害金を請求できるということになります。

退職後の残業代請求も付加金の対象となる

付加金とは、残業代を支払わない会社に対するペナルティの一種で、裁判所が未払い残業代と同額の金銭(付加金)の支払いを命じることができる制度です。

付加金は、裁判所が支払いを命じる金銭ですので、会社との交渉では付加金の支払いを求めることはできません。会社との交渉が決裂して、裁判所の未払い残業代の支払いを求める訴えを提起し、裁判所が残業代の支払いを命じる場合に、裁判所の裁量で付加金の支払いが命じられます

このような付加金は、退職前の残業代請求だけでなく、退職後の残業代請求も対象となります。

退職後の残業代請求の注意点

退職後の残業代請求の注意点

退職後の残業代請求は、上記のようなメリットがありますが、いくつか注意すべきポイントがあります。

時効により残業代請求権が消滅するリスクがある

残業代請求権には、消滅時効がありますので、一定期間権利行使をしないと時効により残業代を請求する権利が消滅し、残業代を請求できなくなってしまいます。具体的な残業代請求権の時効期間は、残業代の支払い時期に応じて以下のように定められています。

  • ・2020年3月31日以前に発生した残業代……2年
  • ・2020年4月1日以降に発生した残業代……3年

残業代請求権の時効は、給料日の翌日からカウントされますので、残業代請求が遅れると、1か月ずつ残業代が失われていくことになりますので、早めに請求することが重要です。退職前でも時効の問題は生じますが、退職後の残業代請求の方が時効の成立するリスクが高くなりますので、特に注意が必要です。

なお、残業代請求権の時効が迫っている場合には、内容証明郵便を利用して残業代請求をすることで、6か月間時効の完成を猶予することができます。一時的な措置にはなりますので、その間に会社と示談をするか、労働審判または裁判の準備を進めていくとよいでしょう。

なお、残業代請求の時効と時効を阻止する方法についての詳細は、以下の記事をご参照ください。

残業代の時効は3年!時効を阻止する方法と残業代請求の流れを解説

在職中に比べて証拠収集が困難

退職後に残業代請求をする場合、在職中に比べて証拠収集が困難になります。十分な証拠が集められなければ、交渉や裁判で未払い残業代の支払いが認められない可能性が高くなりますので注意が必要です。

退職後に残業代請求をしようと検討しているのであれば、会社を退職する前から必要な証拠を集めておくようにしましょう。退職してしまうと、在職中は簡単に入手できた就業規則、賃金規程、タイムカード、業務日報、パソコンのログイン・ログアウト履歴などの証拠が入手困難になってしまいます。

会社側に任意の証拠開示を求めることも可能ですが、証拠を改ざんされたり、処分されるリスクがありますので、できる限り在職中から証拠収集を進めていくことをおすすめします。

なお、残業代請求に有効な証拠についての詳細は、以下の記事をご参照ください。

タイムカードないけど残業代もらえる!あれば役に立つ証拠16選!

退職後に未払い残業代を請求する流れ

退職後に未払い残業代を請求する流れ

退職後に未払い残業代を請求する場合、以下のような流れで行います。

残業に関する証拠収集

退職前・退職後を問わず、会社に対して残業代を請求するためには、証拠が不可欠です。証拠がなければ残業代請求は認められないといっても過言ではないほど証拠が重要になります。すでに説明したとおり、退職後の証拠収集は簡単ではありませんので、できる限り退職前から必要な証拠を集めておくようにしましょう。

退職前に証拠収集ができなかったとしても、会社への証拠開示請求や裁判所への証拠保全の申立てにより証拠を確保できる可能性もありますので、諦める前に弁護士に相談するようにしましょう。

未払い残業代の計算

残業代請求に必要な証拠を確保できたら、次は未払い残業代の計算を行います。

未払い残業代の計算は、以下の計算式によって計算します。

残業代=1時間あたりの基礎賃金×割増賃金率×残業時間

1時間あたりの基礎賃金=月給÷1か月の平均所定労働時間

1か月の平均所定労働時間=(365日-1年間の所定休日日数)×1日の所定労働時間÷12か月

なお、上記の月給には以下の手当は含まれませんので注意が必要です。

残業代計算の際に除外しなければいけない項目

また、「割増賃金率」は、残業時間に応じて、以下のように定められています。

残業時間に対する割増賃金率

なお、残業代計算方法の詳細は、以下の記事もご参照ください。

【残業代を計算したい人へ】60時間超・深夜手当・休日手当までわかる

内容証明郵便の送付

未払い残業代の計算ができたら、会社に対して残業代請求を行います。残業代には時効の問題がありますので、残業代請求を行ったという証拠を残すためにも、内容証明郵便を利用して残業代請求を行うのが一般的です。

会社との交渉

内容証明が届いたタイミングで、会社との交渉を始めます。

会社の担当者と直接顔を合わせてやり取りをするのが負担に感じるときは、お互いの主張を書面でやり取りするとよいでしょう。書面でやり取りをすることで、お互いの主張が明確になり、「言った言わない」の水掛け論を防ぐことができます。

なお、会社との交渉がまとまったときは、必ず合意書を作成し、合意内容を書面に残しておきましょう。

労働審判の申立て・訴訟提起

会社との交渉がまとまらなかったときは、労働審判の申立てまたは訴訟の提起を行います。

いずれも専門的な手続きになりますので、労働者個人で対応するのではなく、専門家である弁護士のサポートを受けながら進めていくことをおすすめします。

退職後の残業代請求はグラディアトル法律事務所にお任せください

退職後の残業代請求はグラディアトル法律事務所にお任せください

退職後の残業代請求をお考えの方は、グラディアトル法律事務所にお任せください。

証拠収集をサポートできる

残業代請求にあたって不可欠になるのが「証拠」です。未払い残業代があることおよびその金額については、労働者の側で主張立証していかなければなりませんので、証拠がなければ労働者側の言い分を認めてもらうことはできません。どのような証拠が必要になるかは、個別具体的な事案によって異なりますので、証拠の取捨選択にあたっては専門的な知識と経験が必要です。

グラディアトル法律事務所では、残業代に関するトラブルの豊富な解決実績と経験がありますので、事案に応じた証拠を適切に集めることができます。退職後から証拠収集を始めるという場合にも、会社への証拠開示請求や証拠保全の申立てなどの手段により、迅速な証拠収集が可能です。

労働者の代わりに会社との交渉を行える

会社を退職後は、すでに別の会社で仕事をしていたり、転職活動をしているなど忙しい日々を送っていると思います。そのような状況で会社との交渉まで行わなければならないのは大きな負担となります。また、不慣れな方では、会社から提示された条件が適切なものであるか判断できず、不利な条件であることに気付かず示談に応じてしまうリスクもあります。

そのため、会社との交渉により生じる負担やリスクを最小限に抑えるためにも、会社との交渉は、グラディアトル法律事務所の弁護士にお任せください。当事務所の弁護士は、残業代請求事案に関する豊富な知識と経験を有していますので、労働者の正当な権利の実現に向けて全力でサポートいたします。

労働審判や訴訟にも対応できる

会社との交渉が決裂したときも、弁護士に依頼をしていれば、引き続き労働審判や訴訟に対応してもらうことができます。

交渉と異なり労働審判や訴訟になると専門的な知識がなければ対応が困難となりますので、専門家である弁護士に任せるのが安心です。グラディアトル法律事務所では、残業代請求に関する労働審判や訴訟についても豊富な実績と経験がありますので、どうぞ安心してお任せください。

まとめ

退職後であっても残業代請求をすることは可能です。しかし、退職後の残業代請求では、時効により残業代が消滅してしまうリスクが高く、残業代請求に必要となる証拠収集も困難になりますので、早めに専門家である弁護士に相談するのがおすすめです。

退職後の残業代請求をお考えの方は、まずはグラディアトル法律事務所までお気軽にご相談ください。



弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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