「エステサロンでの研修で残業をしているけど、残業代が支払われない」
「お客さまへの施術時間以外は残業代が出ないの?」
「エステサロンの店長になると残業代が支払われないって本当?」
メイク、ヘアアレンジ、ボディケアなど美容に興味や関心がある方はエステ業界の仕事に向いているといえます。好きなことを仕事にすれば熱意をもって働くことができますが、それに対する対価もきちんと支払ってもらわなければなりません。
エステ業界の残業に関しては、以下のような事例があります。
残業代未払い、エステ2店舗に是正勧告 労基署
エステ業界の労働環境改善に取り組むエステ・ユニオンは11日、エステサロン「ジェイエステティック」の東京都中央区と品川区の2店舗が残業代不払いなどで労働基準監督署の是正勧告を受けたことを明らかにした。2店舗の元従業員らは「人が足りず、昼の休憩も満足に取れなかった」などと訴えている。
産経新聞2017/1/11 https://www.sankei.com/article/20170111-XMYUMRZYUZIIJHFHA3D3GNNNVQ/
エステ会社会長「逮捕されても残業代は出せない」「会社の法律は俺」…従業員らが未払い残業代求め提訴
東京都内で「エステティックサロンさくら」2店舗を経営する株式会社ベルフェム(代表取締役・佐々木徹)を相手取り、エステティシャンの従業員と元従業員らが未払いの残業代支払いを求めて東京地裁に提訴した。
会見には、従業員や元従業員ら4人も参加。月70時間を超える長時間労働があったにも関わらず、残業代が支払われないなどブラックな労働実態が明らかにされた。
弁護士ドットコムニュース2017年11月20日 https://www.bengo4.com/c_5/n_6998/
このようにエステ業界でも残業代の不払いが発生していますので、ご自身の職場でも残業代の不払いが発生していなかどうかしっかりとチェックするようにしましょう。
本記事では、
・エステティシャンが残業をする主な4つの要因
・エステサロンによる違法な残業代不払いの5つの手口
・エステティシャンが残業代を請求する手順
などについてわかりやすく解説します。
エステサロンの言い分が正しいかどうか判断に迷うときは、専門家である弁護士に相談してみるとよいでしょう。
目次
エステティシャンが残業をする主な4つの要因
エステティシャンが残業をするのは、主に以下の4つの要因が挙げられます。
施術が長引く
エステサロンでは、サービスごとに施術時間が決まっていますが、延長を希望されたり、施術が長引くと予定していた時間には終わらず残業になってしまいます。
特に、新人のエステティシャンだと施術スピードが遅かったり、時間管理がうまくできず残業になるケースが多いようです。
顧客が時間どおりに来店しない
エステサロンは、事前の予約制を採用しているところも多いですが、顧客が時間どおりに来店しないことも少なくありません。予約時間から遅れて来店したとしても、施術時間を短縮することはできませんので、施術を終えるころには残業に突入しているということもあるでしょう。
施術以外の業務の処理
エステティシャンは、施術以外にも以下のような業務を処理しなければなりません。
・開店準備
・店内の掃除や片付け
・備品の補充や発注
・顧客の予約受付や予約管理
・施術記録の作成
顧客に対する施術中は、これらの業務を処理することができません。人気のエステティシャンになると、営業時間中は予約でいっぱいでこれらの業務を処理できず、残業をして対応することも多いようです。
施術の練習や指導
顧客に満足してもらうためには、エステティシャンとしての技術を向上させる必要があります。そのためには、施術の練習や指導を受ける必要がありますが、営業時間中は顧客の対応があるため、練習や指導が受けられるのは閉店後やエステサロンの定休日などになってしまいます。
そのため、技術の向上に熱心なエステティシャンほど残業が多くなる傾向があるといえます。
エステサロンによる違法な残業代不払いの5つの手口
エステサロンでは、以下のような違法な手口により残業代の支払いをしないことがあります。ご自身が働くエステサロンでもこのような残業代不払いが発生している可能性がありますので、しっかりとチェックしましょう。
サービス残業の強要
労働者は、法定労働時間を超えて働いた場合、会社に対して残業代を請求する権利があります。エステティシャンもエステサロンとの間で雇用契約を締結して働く労働者ですので、当然残業代を請求することができます。
施術時間が延びて残業になってしまったときに、エステサロン側から「技術が足りなくて残業になったのだから残業代は支払わない」と言われ、サービス残業を強制されることがあります。しかし、残業の理由が技術不足であったとしても、サービス残業を強制することは違法ですので、残業代を請求することができます。
準備や片付け時間を労働時間として扱わない
エステサロンでは、開店前の準備や閉店後の片付けなどが必要になりますが、このような作業をした時間を労働時間として扱わないところもあるようです。
残業代の支払いが必要になる労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間をいいます。開店前の準備や閉店後の片付け作業が、雇用主からの指示によるものであったり、指示がなかったとしても業務をする上で不可欠な行為である場合には、労働時間に含まれるといえるでしょう。
そのため、このような時間を労働時間から除外するのは違法となりますので、準備や片付けの時間も含めて残業代を請求することができます。
なお、労働時間と休憩時間のルールについての詳細は、以下の記事をご参照ください。
固定残業代制度の悪用
固定残業代制度とは、あらかじめ一定時間分の残業代を給料に含めて支払う制度のことをいいます。たとえば、みなし残業時間が20時間と設定されている場合、実際の残業時間が20時間に満たなかったとしても、固定残業代として20時間分の残業代の支払いを受けることができます。
エステサロンによっては、この固定残業代制度を悪用して、「固定残業代を支払っているのだから、別途残業代は支払われない」などと説明することがあります。しかし、固定残業代制度は、それ以外の一切の残業代の支払いを不要にする制度ではなく、みなし残業時間を超えて働いた場合は、固定残業代とは別に残業代を請求することができます。
なお、みなし残業代(固定残業代)制度でも残業代請求ができるケースについての詳細は、以下の記事をご参照ください。
名ばかり管理職として扱う
エステサロンの店長として雇われている方は、「管理職だから残業代は出ない」と説明されているかもしれません。
労働基準法では、経営者と一体的な立場にある人を「管理監督者」といい、管理監督者に対しては残業代の支払いは不要とされています。しかし、管理職=管理監督者ではありませんので、管理監督者としての実態を伴わないにもかかわらず、管理監督者として扱うことは、名ばかり管理職として違法となります。
エステサロンの店長であっても、経営に関与することはなく、労働時間の管理も他のエステティシャンと同様で、特別有利な待遇を受けているわけではないような場合には、名ばかり管理職にあたる可能性が高いでしょう。
なお、管理職の残業代・管理監督者該当性の詳細は、以下の記事をご参照ください。
労働者ではなく業務委託として扱う
残業代を請求できるのは会社と雇用契約を締結する労働者だけですので、業務委託契約を締結するフリーランスのエステティシャンについては残業代を請求することはできません。
しかし、労働者であるかフリーランスであるかは契約の形式ではなく実態に即して判断しますので、業務委託契約だからといって残業代請求を諦める必要はありません。
実態として労働者に該当するエステティシャンの方も多いため、まずは専門家である弁護士に相談して、判断してもらうとよいでしょう。
なお、労働者と業務委託の判断基準についての詳細は、以下の記事をご参照ください。
エステティシャンが残業代を請求する手順
エステティシャンが残業代を請求する場合、以下のような手順で行います。
内容証明郵便の送付
まずは雇用主であるエステサロン会社または代表者に対して、内容証明郵便で未払い残業代の支払いを求める通知書を送付します。
普通郵便ではなく内容証明郵便を利用する理由は、残業代を請求したという証拠を残すという点にあります。残業代請求をすることは、時効の完成猶予事由である「催告」にあたりますので、6か月間時効の完成を猶予することができます。すなわち、残業代の時効が迫っている場合でも一時的に時効の進行をストップすることができるのです。
内相証明郵便であればどのような内容の文書を送付したのかを後から証明することができますので、時効が争点になったときの重要な証拠として活用することが可能です。
なお、残業代請求の内容証明郵便の書き方と基本的なルールについては、以下の記事をご参照ください。
エステサロンとの交渉
内容証明郵便で送付した通知書には、回答期限を設けるのが一般的ですので、回答期限までエステサロン側の回答を待ちます。
エステサロン側から回答が届いたら、その内容を踏まえて今後の対応を検討していきます。エステサロン側が残業代の存在を認めているなら、未払い残業代の金額、支払方法、支払時期などの詳細を取り決めます。他方、残業代の存在を否定している場合には、エステティシャン側で未払い残業代が発生していることを、証拠を提示しながら説得していかなければなりません。ご自身での対応が難しいと感じるときは弁護士に交渉を依頼するのも有効です。
労働審判の申立て
エステサロン側との交渉による解決が難しいと感じるときは、裁判所に労働審判の申立てをしてみましょう。
労働審判とは、労働者と使用者との間で生じた労働問題を実態に即して、迅速かつ柔軟に解決することができる制度です。労働審判は、原則として3日以内の期日で決着がつきますので、訴訟のように解決まで長期化する心配はありません。
ただし、労働審判に不服がある場合、適法な異議申し立てがなされると労働審判は効力を失い、訴訟手続きに移行してしまいます。
なお、労働審判で残業代請求をする流れについては、以下の記事をご参照ください
訴訟の提起
エステサロン側との交渉による解決が困難または労働審判に対する異議申し立てがあった場合は、裁判所に訴訟を提起する必要があります。
裁判では、労働者側で未払い残業代の存在とその金額を証拠により立証していかなければならず、手続きの非常に複雑なものとなっています。知識や経験がない状態では適切な対応が困難ですので、まずは弁護士の相談するのがおすすめです。
なお、裁判で残業代請求をする流れについては、以下の記事をご参照ください。
エステティシャンが残業代請求をするために必要な証拠
エステサロンに対して残業代請求をする際に重要になるのが、「証拠」です。裁判になれば残業代が未払いであることの証明は労働者側で行わなければなりませんので、証拠がなければ裁判に勝つことは難しいでしょう。また、エステサロンとの交渉でも証拠がなければ、適当にあしらわれてしまいますので、事前にしっかりと証拠を集めておくことが大切です。
タイムカードや勤怠管理システムで出退勤が管理されているのであれば、それらが重要な証拠となります。もっとも、個人経営のエステサロンだと、タイムカードなどできちんと勤怠管理がなされていないこともあります。そのような場合は、以下の証拠を集めるとよいでしょう。
・施術記録
・顧客からの氏名の履歴
・顧客からの予約管理のデータ
・閉店後に一緒に施術の練習をした同僚の証言
・残業時間をまとめた手書きのメモ
なお、残業代請求に有効な証拠についての詳細は、以下の記事をご参照ください。
エステティシャンの残業代請求が認められた裁判例|東京地裁平成30年4月18日判決
以下では、エステティシャンの残業代請求が認められた裁判例を紹介します。
【事案の概要】
Xらは、主にエステティック技術の施術などの美容業を提供し、全国に約30店舗を展開するY社との間で雇用契約を締結し、エステティシャンとして勤務していました。
Xは、残業代が未払いであることを理由に労働組合を通じて団体交渉をしましたが、Y社は、時間外労働時間に対する対価として、特殊勤務手当、技術手当および役職手当(以下「本件固定残業代」)を支払っており、未払い残業代は存在しないとして支払いに応じてくれませんでした。そこで、未払い残業代の支払いを求めて本件訴訟の提起に至りました。
【裁判所の判断】
裁判所は、以下のような理由から本件固定残業代の規定が労働契約内容となっていたとは認められないとして、会社に対して残業代の支払いを命じました。
・本件固定残業代に関する規定が労働契約の内容として合意されたことを裏付ける証拠は存在しない
・Xらは、就業規則の存在を知らず、店長から本件固定残業代についての説明を受けたことがない
・実際にYにおいて就業規則の閲覧の申出がなされ、閲覧の用に供された事例が見当たらない
・実質的にみて事業場の労働者集団に対して、本件就業規則の内容を知り得る状態においていたものとは認められず、就業規則の周知があったとはいえない。
エステティシャンの残業代請求はグラディアトル法律事務所にお任せください
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まずは相談だけでも結構ですので、残業代請求に関してお悩みの方は、グラディアトル法律事務所までご相談ください。
まとめ
エステティシャンの方は、顧客の都合や研修などで残業が生じることがありますが、適切な残業代が支払われていないケースも少なくありません。残業をしたのに残業代が支払われていないという場合には、エステサロンに対して残業代を請求することができますので、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
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