深夜残業は何時から?深夜残業代の正しい計算方法と請求の流れを解説

深夜残業代の計算方法と請求の流れ

深夜残業代の計算方法と請求の流れ

夜勤のある以下のような仕事に就いている方は、深夜残業代を請求できる可能性があります。

  • トラック運転手、タクシー運転手
  • 飲食店
  • キャバクラのキャストやボーイ
  • デリヘルのドライバーや内勤
  • ホストクラブの内勤やホスト(ホストについては争いあり)
  • 警備員
  • 看護師
  • コンビニスタッフなど

深夜残業は、一般的な残業に比べて、割増率が高いため、普段よりも多くの残業代をもらうことができます。「給与明細をみても、深夜残業代が支払われていない」、「残業手当という項目はあるものの、本当に正しい計算なのだろうか?」という疑問を感じる方は、会社から適正な残業代が支払われていない可能性もありますので、しっかりと会社に対して請求していくことが大切です。

本記事では

  • 割増賃金が請求できる深夜残業の基礎知識
  • 深夜残業代の計算方法
  • 深夜残業代の計算・請求にあたっての3つのポイント

などについて、わかりやすく解説します。

適切な深夜残業代が支払われているかどうか気になる方は、本記事を参考にして、深夜残業代を計算してみてください。

目次

深夜残業は割増賃金を請求できる!

業種や業界によっては、深夜まで残業をしなければならないこともあります。このような深夜残業に対しては、通常の1時間あたりの賃金だけでなく、割増賃金の支払いを求めることが可能です。

しかし、深夜残業の多い会社だと深夜残業代の計算が不正確であったり、コストを削減するために深夜残業代の支払いを行っていないこともあります。深夜労働や残業は、労働者の心身にも大きな負担となりますので、深夜労働が中心という方は、会社に対して、しっかりと深夜残業代を請求していくようにしましょう。

 

割増賃金が請求できる深夜残業とは?

割増賃金が請求できる深夜残業とは

深夜残業があった場合、割増賃金を請求することができますが、そもそも深夜残業とはどのように定義されているのでしょうか。以下では、深夜残業の基礎知識と通常の残業や深夜労働との違いについて説明します。

深夜残業の定義|深夜労働は何時から?

深夜残業とは、深夜労働の時間帯に残業を行うことをいいます。

深夜労働とは、午後10時から翌午前5時までの労働をいい、残業とは、法定労働時間または所定労働時間を超えて働くことをいいます。

たとえば、午後1時から午後10時までが所定労働時間とされている会社において午後1時から翌午前0時まで働いた場合、午後10時から翌午前0時までの2時間分が深夜残業にあたります。

深夜残業と通常の残業・深夜労働との違い

深夜残業と通常の残業とでは、法定労働時間または所定労働時間を超えた労働であるという点で共通しますが、残業する時間帯が深夜であるかどうかという違いがあります。

深夜残業と深夜労働とでは、深夜時間帯の労働である点では共通しますが、残業であるか通常の労働時間であるかという違いがあります。

このような違いから、深夜残業と通常の残業・深夜労働とでは、割増賃金の割増率にも、以下のような違いが生じます。

深夜残業代の割増率

深夜残業に対しては、通常の残業に対して加算される25%以上の割増率と深夜労働に対して加算される25%以上の割増率の双方が適用されますので、合計で50%以上の割増率となります。

 

深夜残業代の計算方法

深夜残業代の計算方法

深夜残業代は、「1時間あたりの基礎賃金×割増率×残業時間」という計算式により計算します。以下では、各項目の詳しい内容について説明します。

1時間あたりの基礎賃金

1時間あたりの基礎賃金は、時給制をとっている会社では時給額がそのまま基礎賃金になります。月給制の会社では、以下のような計算式により1時間あたりの基礎賃金を求めます。

1時間あたりの基礎賃金=月給÷1か月の所定労働時間

1か月の所定労働時間=1年間の所定労働日数×1日の所定労働時間÷12か月

なお、1時間あたりの基礎賃金の計算で用いる月給には、以下のような手当は含まれません。

  • 通勤手当
  • 家族手当
  • 別居手当
  • 住居手当
  • 子女教育手当
  • 臨時手当
  • 賞与、ボーナスなど1か月を超える期間ごとに支払われる手当

深夜残業の割増賃金率

深夜残業は、深夜労働と時間外労働(残業)が組み合わさったものですので、両者の割増率が合算されます。その結果、深夜残業に対しては、50%以上の割増率が適用されます。

深夜残業時間

深夜残業に対する残業代を計算するためには、1日の労働時間から深夜残業に関する部分を抜き出して計算する必要があります。

深夜残業は、午後10時から翌午前5時までの時間帯で、かつ、1日8時間・1週40時間の法定労働時間を超える部分になります。

深夜残業代計算の具体例

ある労働者が、下記の条件で働いていたとします。

  • 基本給27万5000円、精皆勤手当8500円
  • 1日の所定労働時間8時間
  • 年間の所定休日122日

このケースで、ある月に20時間の深夜残業をしたとすると、その場合の深夜残業代は、以下のように計算します。

1時間あたりの基礎賃金=(27万5000円+8500円)÷{(365日-122日)×8時間÷12か月}=1750円

深夜残業代=1750円×20時間×150%=5万2500円

すなわち、この労働者のある月の深夜残業代は、5万2500円ということになります。

 

会社に未払いの深夜残業代を請求する流れ

未払い残業代を請求する方法

上記のような計算の結果、未払いの深夜残業代がある場合には、以下のような流れで会社に対して請求していきます。

証拠収集

深夜残業代を請求するには、まずは深夜残業をしたという証拠を集めなければなりません。深夜残業代の証拠は、深夜残業代の計算に必要になるとともに、今後、交渉や裁判をする際の証拠として利用するためにも必要になります。

深夜残業があったことを立証するための証拠としては、以下のようなものが挙げられます。

  • タイムカード
  • ICカード
  • PCのログデータ
  • メールやチャットの送信履歴
  • タコグラフ
  • 入退室記録
  • 手書きのメモ

未払い残業代の計算

深夜残業代以外にも、通常の残業代や深夜手当、休日手当などが未払いになっている場合には、それらもあわせて請求していくことになります。未払い残業代の計算は、残業時間や労働日に応じた割増率を選択しなければなりませんので、残業時間が多くなればなるほど残業代の計算は複雑になります。

正確な計算ができないと、本来受け取れるはずの残業代が受け取れないリスクもありますので、自分だけでは計算に自信がないという場合には、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

会社との交渉

残業代の計算ができたら、次は、未払い残業代を支払ってもらうために会社と交渉を行います。会社との交渉方法には、特別な決まりはありませんが、時効により残業代が消滅してしまうリスクを回避するために、まずは内容証明郵便で未払い残業代の支払いを求める通知書を送付するのが一般的です。

その後、会社との交渉で、具体的な支払い条件の合意に達した場合には、合意書を作成して、未払い残業代を支払ってもらいます。

労働審判

未払い残業代がある場合には、労働審判という手続きを利用することも可能です。

労働審判とは、裁判官1人、労働審判員2人による労働審判委員会が会社と労働者との間に入って、トラブル解決に向けた話し合いを進めていく手続きです。まずは当事者の合意による解決を試み、それが難しいようであれば労働審判という形で紛争解決に向けた判断を行います。

労働審判は、裁判に比べて迅速かつ柔軟に解決できるというメリットがあります。しかし、労働審判に対して異議の申し立てがあると、労働審判は効力を失い、通常の訴訟手続きに移行してしまうというデメリットもあります。

訴訟

交渉や労働審判で解決できない場合には、最終的に訴訟を提起することも可能です。

訴訟では、交渉や労働審判のような話し合いの手続きではなく、証拠により事実を認定していくことになります。そのため、裁判所に深夜残業代の支払いを認めてもらうためには、労働者の側で、深夜残業代があることを証拠によって立証していかなければなりません。

その結果、労働者側の言い分が認められれば、未払い残業代の支払いを命じる判決が言い渡されます。判決が確定すれば、強制執行の手続きにより、会社の財産から強制的に未払い残業代を回収することもできます。

 

深夜残業代の計算・請求にあたっての3つのポイント

深夜残業代の計算・請求にあたっての3つのポイント

深夜残業代の計算や請求をする際には、以下の3つのポイントを押さえておきましょう。

管理監督者でも深夜手当を請求できる

管理監督者とは、経営者と一体的な立場にある労働者のことをいいます。労働基準法では、管理監督者に対して、労働時間、休憩、休日に関する規制が適用外とされています。そのため、管理監督者にあたる労働者は、会社に対して残業代や休日手当を請求することはできません。

しかし、管理監督者であっても、深夜労働に関する規定は適用されますので、深夜手当の請求は可能です。

固定残業代でも深夜残業代を請求できるケースがある

固定残業代とは、あらかじめ一定時間分の残業代(時間外労働手当、休日労働手当、深夜労働手当)を給料の含めて支払う制度のことをいいます。固定残業代が導入されている場合には、一定時間分の残業代はすでに給料に含まれていますので、残業時間が固定残業代で定められた時間内であれば、別途深夜残業代を請求することはできません。

しかし、あらかじめ定められた残業時間を超えて残業した場合には、その部分については、別途、会社に対して請求することができます。

残業代請求には時効がある

残業代請求には、3年という時効があります。過去に未払いになっている残業代がある場合には、給料日の翌日から起算して3年を経過すると、時効により残業代請求権が消滅してしまいます。

そのため、未払い残業代がある場合には、早めに会社に対して請求していくことが大切です。また、残業代の時効が迫っている場合には、内容証明郵便の送付、労働審判、訴訟など時効の完成を阻止するための方法を適宜講じていくことも必要です。

 

深夜残業代の請求を弁護士に依頼する4つのメリット

深夜残業代の請求を弁護士に依頼する4つのメリット

未払いの深夜残業代がある場合には、弁護士に依頼することで以下のようなメリットが得られます。

深夜残業代請求に必要な証拠収集のサポートができる

深夜残業代請求に必要になる証拠は、事案によって異なりますので、ご自身の状況に応じた適切な証拠を集めていかなければなりません。

しかし、どのような証拠であれば深夜残業代を立証できるかどうかは、専門的な判断が必要になります。そのため、ご自身では証拠の選別が難しいという場合には、まずは弁護士に相談して証拠収集のアドバイスをしてもらうとよいでしょう。その際に、弁護士に依頼をすれば、弁護士が証拠収集のサポートをしてくれますので、有利な証拠を効率的に収集することが可能です。

深夜残業代を正確に計算することができる

深夜残業代の計算は、非常に複雑な計算になりますので、知識や経験がない方だと、正確に計算するのが困難です。深夜残業代の計算に手間取ってしまうと、過去の残業代が時効によって消滅してしまうリスクも高くなりますので、残業代計算は、専門家である弁護士に任せるのが安心です。

弁護士であれば、迅速かつ正確に深夜残業代を計算することができますので、残業代計算にかかる手間や時間を大幅に短縮することができます。

会社との交渉を任せることができる

労働者が個人で会社と交渉をしても、まともに取り合ってくれなかったり、何らかの理由をつけて支払いを拒むケースもあります。

しかし、弁護士が労働者の代理人として交渉を行えば、会社も真摯に対応せざるを得なくなりますので、交渉に応じてくれる可能性が高くなります。また、弁護士が法的根拠に基づいて未払いの深夜残業代を説明することで、任意の支払いに応じてくれる可能性も高くなります。

会社が話し合いに応じてくれないようなケースでは、労働者個人での対応は困難ですので、早めに弁護士に相談するのがおすすめです。

労働審判や裁判も対応できる

会社との話し合いでは深夜残業代の支払いに応じてくれないときは、労働審判や訴訟の手続きが必要になります。労働者個人で対応できないこともありませんが、負担が大きく、主張立証を誤ると敗訴のリスクもあります。

そのため、労働審判や裁判の手続きは弁護士に依頼するのがおすすめです。弁護士に依頼すれば、交渉から引き続き労働審判や訴訟の手続きも任せることができますので、労働者の負担を大幅に軽減することができます。

 

深夜残業代に関するグラディアトル法律事務所での解決事例

深夜残業代に関するグラディアトル法律事務所での解決事例

【事例 水産仲卸業で深夜・早朝業務をしていたが残業代が支払われていなかったケース】

水産仲卸業で働く男性の深夜残業代請求の事案です。

マグロやカツオなどの水産物の仲卸業者で働いており、早朝(深夜)1時から14時頃まで勤務していました。しかし、深夜営業の割増分や深夜残業代が支払われていませんでした

そこで、弁護士が深夜残業代等を計算して、会社に対して残業代請求をしました。

弁護士からの内容証明郵便にて、深夜割増含む残業代請求をするも、交渉ではまとまらず、労働審判を起こすことにしました。

会社側は、深夜割増については、通達を引用しつつ、基本給に含まれている旨を主張しました。

法第41条(労働時間等に関する規定の適用除外)は深夜業の規定の適用を排除していないから、24時間交替勤務することを条件として賃金を定められている労働者について、同条第三号によって使用者が行政官庁の許可を受けて使用する場合にあっても、使用者は深夜業の割増賃金を支払わなければならない。但し、労働協約、就業規則その他によって深夜の割増賃金を含めて所定賃金が定められていることが明らかな場合には別に深夜業の割増賃金を支払う必要はない(昭和23.10.14基発(旧労働省労働基準局長名通達)第1506号)。

こちら側(労働者側)は、就業規則に明記されていないこと、就業規則や賃金規定が周知されておらず、労働者は一度も見たことがないこと、給与明細においても深夜割増分が含まれている旨は記載されていないことなどから、基本給に深夜割増分は含まれていないと主張しました。

労働審判にて、こちら側(労働者側)の主張が概ね認められ、会社側が300万円の解決金を支払う旨を合意して和解をしました。

【事例 障害者施設で泊まり込みで業務をしていたが泊まり分は休憩時間とされ残業代が支払われていなかったケース】

障害者施設で勤務していた男性の深夜残業代請求の事例です。

夕方16時から朝9時まで泊まり込み勤務していました。
そのうち、21時から6時までは睡眠時間・休憩時間とされており、賃金が発生していなかった事案です。

しかし、勤務先からは、21時から6時までの間について、施設から出ることを禁止され、定期的に施設の入居者の面倒を見ることも指示されていました。

また、その時間に他に出勤している施設の従業員もおらず、何か問題が起きれば、相談者である男性が対応する必要がありました。

そのため、当該時間については、労働時間に該当するとして、深夜残業分も含めて請求しました。

当初、施設側は、21時から6時までは睡眠時間であり、休憩時間だから、労働時間に該当しないと主張していました。

相手方弁護士との交渉を重ねた結果、相手方弁護士も上司からの指示内容や働き方の実態等についてのこちらの主張を概ね認め、500万円で和解が成立しました。

 

【職業別Q&A】深夜残業に関するよくある疑問

深夜残業に関するよくある疑問

以下では、職業別によく問題になる深夜残業に関する疑問にお答えします。

トラックの運転手をしていますが、荷待ち時間が長く残業になったときも深夜残業代は請求できますか?

深夜残業代の請求は可能です。

荷待ち時間は、荷物の積み込みをするために待機しなければならない時間ですので、その間何もしていなかったとしても労働時間に含まれます。

風俗(デリヘル)の内勤・ドライバーをしていますが、深夜残業代は支払われますか?

深夜残業代の請求は可能です。

デリヘル等の風俗店では、残業代についての規定が定められていない店舗も多く、深夜労働の割増分も支払われていないことが多いです。そのため、デリヘル等の風俗店の内勤・ドライバーは、深夜労働の割増分、深夜残業代を請求できることが多いです。

もっとも、デリヘルのドライバーについては、働き方などによっては労働者ではなく、個人事業主(業務委託契約)とされる可能性もあるので弁護士に確認しましょう。

キャバクラのキャスト(キャバ嬢)として働いていますが、雇用ではなく業務委託だから深夜残業代は支払わないといわれています。深夜残業代を請求することはできないのでしょうか。

深夜残業代を請求できる可能性があります。

労働基準法が適用される労働者であるかどうかは、契約の形式ではなく実態で判断します。そのため、キャバクラでの勤務実態が労働者であると評価できれば、深夜残業代を請求することができます。

通常、キャバ嬢は、決められた時間に出勤し、給与の基礎は時給であり、店の指揮監督を受けている場合が多いので、労働者に該当し、残業代請求ができる可能性が高いです。

また、キャバ嬢は時給が高いことが多いので、請求できる深夜残業代の金額が多額になることも多いです。

ホストや銀座のママについて、労働者性が否定された判例はありますが、これらの判例の理屈に照らしても、キャバ嬢の労働者性は肯定され、残業代請求ができる可能性が高いです。

リンク:ホスト・ホステスの労働者性!ホストクラブ・キャバクラ・風俗での残業代・解雇について

キャバクラのボーイとして働いていますが、終業時間後もこまごました作業をさせられています。この時間についても深夜残業代を請求できるのでしょうか?

深夜残業代を請求できる可能性があります。

深夜残業代の支払いが必要な労働時間であるかは、使用者による指揮命令下におかれている時間であるかどうかが基準です。キャバクラの店長から終業時間後も作業を命じられているのであれば、労働時間と評価できる可能性があります。

 

まとめ

午後10時から翌午前5時までの時間は、深夜労働として扱われますので、この時間帯に残業をすれば、深夜残業にあたります。深夜残業は、50%以上の割増賃金率が適用されるため、一般的な残業や深夜労働に比べて、残業代の金額が高額になる傾向があります。

そのため、会社によっては、人件費削減のために適正な深夜残業代を支払わずに、未払いの状態になっていることもあります。

未払い残業代には、時効という期間制限がありますので、深夜残業代が未払いになっていることが判明したときは、早めに請求することが大切です。その際には、弁護士のアドバイスやサポートが必要になりますので、グラディアトル法律事務所までお気軽にご相談ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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