労働審判で残業代請求をする流れ・費用・期間などをわかりやすく解説

労働審判で残業代請求をする流れ・費用・期間などをわかりやすく解説
弁護士 若林翔
2024年07月02日更新

「会社との交渉では解決できなかったため、労働審判で残業代請求をしようと考えている」

「労働審判で残業代請求をする場合、どのような流れになるのだろうか?」

「労働審判で残業代請求をすべきケースは、どのようなケース?」

会社との交渉で残業代の問題が解決しないときは、裁判所に労働審判を申し立てるという方法があります。

労働審判は、裁判とは異なり迅速かつ柔軟に残業代の問題を解決することができますので、早期解決を希望する方にとってはメリットの大きい方法といえるでしょう。

ただし、労働審判には、メリットだけではなくデメリットもありますので、まずは残業代請求に詳しい弁護士に相談してアドバイスしてもらうとよいでしょう。

本記事では、労働審判で残業代請求をすべき以下の4つのケースなどについてわかりやすく解説します。

・当事者同士の交渉では話し合いが進まないケース

・客観的証拠がそろっているケース

・早期解決を希望するケース

・柔軟な解決を希望するケース

労働審判の手続きを行うなら弁護士のサポートが必要になりますので、早めに弁護士に相談するようにしましょう。

労働審判とは

労働審判とは労働審判とはどのような手続きなのでしょうか。以下では、労働審判の概要と裁判との違いについて説明します。

労働審判とは

労働審判とは、残業代不払いや解雇などの労働関係のトラブルを、実情に即して迅速かつ適正に解決するための裁判所の紛争解決制度です。労働審判は、原則として3回以内の期日で終了することになっていますので、裁判よりも迅速な解決が期待できます。早期解決を希望する方は、労働審判の利用を検討してみるとよいでしょう。

労働審判と裁判の違い

労働審判と裁判の違いを簡単にまとめると以下のようになります。

裁判と労働審判の違い

なお、残業代請求の裁判の詳しい内容については、こちらの記事をご参照ください。

※「残業代請求 裁判」の記事完成後リンク

労働審判で残業代請求をするメリットとデメリット

労働審判で残業代請求をするメリットとデメリット

労働審判の利用を迷っているという方は、以下のメリットとデメリットを踏まえて、労働審判を利用するかを検討してみましょう。

労働審判で残業代請求をするメリット

労働審判で残業代請求をするメリットとしては、以下の点が挙げられます。

【早期解決が期待できる】

労働審判は、原則として3回以内の期日で審理を終えることになっていますので、裁判と比較すると迅速な解決が期待できる手続きといえます。実際の平均審理期間も労働審判が90.3日であるのに対して、金銭請求をする労働事件の裁判だと17.2か月もかかりますので、圧倒的に労働審判の方が解決期間が短いことがわかります。

【実態に即した柔軟な解決が期待できる】

労働審判では、労働問題に関する専門的な知識や経験を有する労働審判員が審理に加わりますので、実態に即した解決が期待できます。また、審理の方法としては、まずは当事者同士の話し合いによる調停が試みられますので、裁判のような勝ち負けではなく柔軟な解決も期待できます。

【裁判よりも費用を安く抑えることができる】

労働審判の申立ての際に裁判所に納める手数料(印紙代)は、裁判の場合の手数料の半額となっています。そのため、裁判よりも費用を安く抑えることができます。

労働審判で残業代請求をするデメリット

労働審判で残業代請求をするデメリットとしては、以下の点が挙げられます。

【裁判所に出向く必要がある】

労働審判は、当事者同士の話し合いの手続きになりますので、弁護士を依頼したとしても、当事者本人が裁判所に出向く必要があります。裁判であれば弁護士に依頼すれば、基本的には本人の出頭は不要ですので、裁判に比べると負担が大きいと感じる方もいるかもしれません。

【訴訟移行のリスクがある】

労働審判に不服がある当事者から異議申し立てがなされた場合、労働審判の効力は失われ、訴訟手続きに移行してしまいます。

相手からの異議が予想できるケースでは、最初から裁判を利用した方が解決までの期間は短いかもしれません。

労働審判で残業代請求をすべき4つのケース

労働審判で残業代請求をすべき4つのケース

上記のようなメリットとデメリットを踏まえると、労働審判で残業代請求をすべきケースとしては、以下の4つが挙げられます

当事者同士の交渉では話し合いが進まないケース

残業代請求をする場合、まずは会社との交渉を行うのが一般的です。しかし、当事者同士の交渉では、お互いの意見が対立し、話し合いがまとまらないケースも少なくありません。

このようなケースでは、交渉を続けても解決が難しいため、労働審判を利用するとよいでしょう。

労働審判では、中立的な立場の労働審判員が当事者の間に入って話し合いを進めてくれますので、当事者だけの話し合いに比べてスムーズな解決が期待できます。

客観的証拠がそろっているケース

残業をしたことおよび残業代が未払いになっていることを裏付ける十分な証拠があれば、基本的には残業代請求は認められます。労働審判の手続きでは、話し合いで解決できない場合、最終的に労働審判という形で判断が下されますが、客観的証拠がそろっていれば、会社に対して残業代の支払いを命じる判断が下されるでしょう。

会社が交渉に応じない場合には、労働審判に切り替えて争っていった方がより早期の解決が期待できます。

なお、残業代請求に有効な証拠についての詳細は、以下の記事をご参照ください。

タイムカードないけど残業代もらえる!あれば役に立つ証拠16選!

早期解決を希望するケース

会社との交渉では解決できない場合に選択できる手段としては、「労働審判」と「裁判」の2つがあります。

裁判になると事案によっては解決まで1年以上かかることも珍しくありませんので、労働者にとっては大きな負担となります。労働審判であれば裁判に比べて解決までの期間が大幅に短縮されますので、早期解決を希望する方は、労働審判を選択した方がよいでしょう。

ただし、会社側の態度によっては異議申し立てにより訴訟移行のリスクがありますので、労働審判は、会社側の態度も見極めたうえで選択することが大切です。

柔軟な解決を希望するケース

裁判になると基本的には法律に基づいた判断になりますので、白か黒かという結論になります。しかし、労働者側にもさまざまな事情がありますので、白か黒という勝ち負けではなく、グレーな判断を希望するケースもあります。

労働審判では、お互いの話し合いによる調停での解決も可能ですので、裁判とは異なり柔軟な解決が可能です。勝ち負けではなく柔軟な解決を希望するのであれば、労働審判を選択すべきでしょう。

残業代請求の労働審判の流れ

残業代請求の労働審判の流れ

労働審判で残業代請求をする場合、以下のような流れになります。

労働審判の申立て

労働審判の手続きを利用する場合、管轄する地方裁判所に労働審判の申立てを行います。申立てにあたっては、以下のような書類などが必要になります。

・労働審判手続申立書

・資格証明書(法人の代表者事項証明書、全部事項証明書など)

・予想される争点についての証拠書類(雇用契約書、就業規則、給与明細、タイムカード、出勤簿など)

・申立手数料

・郵便切手

なお、必要になる書類については、トラブルの内容や争点などによって異なりますので注意が必要です。

第1回審判期日

労働審判の申立てが受理されると、申立日から40日以内に第1回期日が指定されます。当事者は、指定されて期日に裁判所に出向かなければなりません。

第1回審判期日では、労働審判委員会が当事者から提出された書面や当事者の言い分を聞いて、争いになっている点を整理します。争点が明らかになると、労働審判委員会から和解による解決が可能であるかの打診が行われます。

和解の見込みがある場合には、調停による話し合いの手続きが進められますが、時間的に1回目の期日で和解の成立が難しい場合や持ち帰って検討したいという場合には、次回以降の期日が指定されます。

第2回・3回審判期日

第2回および第3回審判期日では、第1回審判期日で整理された争点に関する話し合いが進められていきます。和解の見込みがある事案では、和解に向けた話し合いが中心となるでしょう。

第1回期日で労働審判委員会から追加の主張や証拠の提出を求められた場合には、第2回期日までに準備して提出しなければなりません。原則として3回までの期日で審理を終えなければなりませんので、第1回審判期日から充実した話し合いを行うためにも、主張や証拠がある場合には、早めに提出することが大切です。

調停成立

当事者同士の話し合いがまとまった場合、調停成立により労働審判の手続きは終了します。

調停で合意した内容については、調停調書に記載されますので、法的拘束力が生じます。会社側が合意内容に従って残業代の支払いに応じないときは、調停調書を債務名義として強制執行の申立てを行うことができます。

労働審判

3回までの期日で話し合いがまとまらないときは、最終的に労働審判委員会が事案を解決するための判断(労働審判)を下します。

労働審判に不服がある場合には、2週間以内に異議の申立てをすることで、労働審判の効力が失われ、自動的に訴訟手続きに移行します。訴訟手続き移行後は、裁判で未払い残業代の問題を争っていくことになります。

残業代請求の労働審判にかかる期間|平均審理期間は90.3日

裁判所が公表している「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」では、労働審判事件に関する概況がまとめられています。それによると、労働審判事件の平均審理期間は、90.3日となっています。また、審理期間別の既済件数と事件割合は、以下のようになっています。

労働審判事件の審理期間

この統計からもわかるように、半数以上の事件が申立てから3か月以内に終了していますので、労働審判が迅速な解決方法であることがわかります。

残業代請求金額の平均額・解決金額

厚生労働省が公表している「労働審判事件等における解決金額等に関する調査に係る主な統計表」によると、労働審判での残業代の請求金額・解決金額の平均は、以下のようになっています。

【残業代の請求金額】

労働審判での残業代の請求金額

これによると、労働審判での残業代の請求金額の平均値は219万7814円、中央値は102万8327円となっています。

労働審判での残業代の解決金額

この統計には残業代以外にも含まれていますが、労働審判での残業代の請求金額の平均値は285万2637円、中央値は150万円となっています。

労働審判の残業代請求では90.2%が弁護士つき

裁判所が公表している「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」によると、労働審判事件における申立人代理人の選任状況は、以下のようになっています。

労働審判事件における申立人代理人の選任状況

労働審判事件では、約9割の事件で申立人代理人(弁護士)が選任されていますので、労働審判事件における弁護士のニーズは、非常に高いといえます。

残業代請求の労働審判でかかる費用

残業代請求の労働審判でかかる費用

労働審判を利用して残業代請求をする場合に気になるのが、どのくらいの費用がかかるのかという点です。残業代請求の労働審判でかかる費用としては、裁判所に支払う「申立て費用」と弁護士を依頼した場合にかかる「弁護士費用」がありますので、以下では、それぞれの相場について説明します。

申立て費用

労働審判の手続きを利用する際に、裁判所に支払う必要のある費用としては、以下のものがあります。

【手数料(印紙代)】

労働審判の手続きを利用する際には、申立手数料を収入印紙で納める必要があります。手数料の金額は、労働審判で請求する未払い残業代の金額によって異なります。たとえば、100万円の残業代を請求する場合の手数料は5000円になります。

請求額に応じた手数料の詳しい金額については、こちらの裁判所のウェブサイトをご確認ください。

【予納郵券(郵便切手代)】

労働審判の申立ての際には、上記の手数料とともに予納郵券を納める必要があります。予納郵券とは、裁判所が書面などの郵送に使う郵便切手代をいい、申立人が負担しなければなりません。

予納郵券の金額は、申立てをする裁判所によって異なりますので、申立て予定の裁判所に確認してみるとよいでしょう。

弁護士費用

弁護士に依頼して労働審判の手続きを行うためには、裁判所に支払う申立て費用とは別に、弁護士費用が発生します。弁護士に依頼した場合にかかる費用としては、主に以下の項目があります。

【相談料】

弁護士に未払い残業代のトラブルを相談するときには、相談料がかかります。相談料の相場としては、1時間あたり1万1000円(税込)となっています。

なお、グラディアトル法律事務所では、未払い残業代のトラブルに関する法律相談については、初回無料で対応しています。

【着手金】

着手金とは、弁護士に未払い残業代請求の事案を依頼した場合に発生する費用です。着手金は、残業代請求の成功・不成功にかかわらず発生するお金になります。

着手金の計算方法には、いくつかのパターンがあり、弁護士事務所ごとに異なっています。1つ目は、以下のように請求する未払い残業代の金額に応じて、計算する方法です。

弁護士に残業代請求を依頼した際に発生する着手金

2つ目は、未払い残業代の金額にかかわらず、着手金を定額で計算する方法です。この方法では、20~30万円程度が着手金の相場になります。

なお、当事務所では、タイムカードなどの証拠の有無により着手金の金額は変動しますが、着手金0円から対応しています。

報酬金

報酬金とは、弁護士に依頼した事件が終了した後に、具体的な成果に応じて発生する費用です。会社から残業代をまったく回収できなかった場合には、報酬金は発生しません

報酬金の計算方法も着手金と同様に弁護士事務所ごとにさまざまです。以下の表のように、会社から回収した未払い残業代の金額に応じて計算する方法もありますが、回収した金額の20~30%という形で計算する方法もあります。

弁護士に残業代請求を依頼した際発生する着手金

なお、当事務所の報酬金は、以下のようになっています。

成功報酬(労働審判)   22%+33万円

※成功報酬については、会社から支払われる金額を上限とします。

※労働審判・訴訟の場合は、別途日当がかかります。

実費

実費とは、弁護士が事件処理にあたって実際に支出した費用のことをいいます。実費には、主に以下のようなものが含まれます。

・印紙代

・郵便切手代

・コピー代

・交通費

労働審判は弁護士なしでもできる?

労働審判は弁護士なしでもできる?

労働審判は、必ず弁護士を付けなければならないわけではありません。裁判とは異なり話し合いによる解決がメインとなりますので、本人だけでも対応可能です。

しかし、原則として3回以内の期日で審理が終了しますので、充実した審理を実現するためには、申立て段階からしっかりと準備を行わなければなりません。また、実際の審理においても自分の口から意見を伝えなければなりませんので、初めての方には負担が大きいといえるでしょう。実際の統計を見ても9割以上の人が弁護士に依頼して労働審判を行っていますので、弁護士に依頼した方がよいといえるでしょう。

労働審判で残業代請求をするならグラディアトル法律事務所に相談を

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労働審判で残業代請求をお考えの方は、グラディアトル法律事務所までご相談ください。

相談料無料・着手金0円から対応可能

労働審判を利用する際には弁護士を利用した方がよいとはいっても、経済的な負担から弁護士への依頼を躊躇する方も少なくありません。

グラディアトル法律事務所では、そのような方も安心して弁護士に相談・依頼できるように、初回相談料無料・着手金0円から対応しています。まずは相談だけでも結構ですので、未払い残業代の請求でお困りの方は、当事務所までご相談ください。

労働審判に関する豊富な実績

労働審判を弁護士に依頼する場合、弁護士であれば誰でもよいというわけではありません。弁護士によって得意とする分野が異なりますので、労働審判で残業代請求をするのであれば、残業代請求のトラブルに強い弁護士に相談すべきです。

グラディアトル法律事務所では、残業代請求のトラブルや労働審判について豊富な実績と経験がありますので、どうぞ安心してお任せください。

まとめ

労働審判は、裁判とは異なり、迅速かつ柔軟な解決が可能な手続きです。早期に残業代のトラブルを解決したいという場合には、労働審判を利用することで希望を実現できる可能性があります。

ただし、労働審判を利用するにあたっては弁護士のサポートが必要になりますので、より自分の希望に近い形での解決を目指すのであれば、弁護士への相談をおすすめします。

労働審判で残業代請求をお考えの方は、まずはグラディアトル法律事務所までご相談ください。



弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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