残業代請求をするの3つの方法と5つの手順や注意点を弁護士が解説

残業代請求をするために必要な3つの方法と5つの手順を解説
弁護士 若林翔
2024年07月03日更新

「会社が残業代を支払ってくれない」

「残業代請求をしたいけど、どのような方法で進めればよいのだろうか?」

「残業代請求をする際にはどのような点に注意すべき?」

残業代が未払いになっていることが判明したときは、会社に対して残業代請求をしていくことになります。

残業代請求には、いくつか手順と方法があります。残業代請求を成功させるためにも、残業代請求の方法をしっかりと理解しておくことが大切です。

本記事では、

・残業代請求をするための事前準備とその方法

・残業代請求の3つの方法

・残業代請求の5つの手順・方法

・残業代請求をする際の注意点

などについてわかりやすく解説します。

個人で対応が難しいと感じるときは、弁護士のサポートが必要になりますので、早めに残業代請求に強い弁護士に相談するようにしましょう。

残業代請求をするための事前準備とその方法

残業代請求をするための事前準備とその方法

残業代請求を成功させるためには、事前の準備が重要になります。以下では、残業代請求をするための事前準備とその方法を説明します。

残業をした証拠を収集する

残業代請求が成功するかどうかは、証拠の有無にかかっているといっても過言ではありません。十分な証拠があれば残業代請求が認められる可能性が高くなりますので、まずは、残業をした証拠を集めることが重要です。

残業代請求に必要になる証拠としては、主に以下のようなものが挙げられます。

【残業代が未払いであることを立証する証拠】

  • 雇用契約書
  • 就業規則
  • 賃金規程
  • 給与明細

【残業時間を立証する証拠】

  • タイムカード
  • 勤怠管理システムのデータ
  • シフト表
  • 業務日報
  • PCのログイン、ログアウト履歴
  • オフィスの入退室記録
  • 業務上のメール、LINE、チャットなどの履歴
  • 残業時間をまとめたメモ

なお、残業代請求に有効な証拠についての詳細は、以下の記事をご参照ください。

タイムカードないけど残業代もらえる!あれば役に立つ証拠16選!

未払い残業代の金額を計算する

会社に対して残業代請求をするためには、労働者の側で未払い残業代の金額を計算しなければなりません。正確に残業代を計算しなければ、本来もらえるはずの残業代よりも少ない金額しかもらえないおそれもあります。そのため、残業代の計算に不安があるときは、自分で対応するのではなく、専門家である弁護士に計算してもらうとよいでしょう。

なお、残業代計算方法の詳細は、以下の記事をご参照ください。

【残業代を計算したい人へ】60時間超・深夜手当・休日手当までわかる

残業代請求の3つの方法

残業代請求の方法としては、上記のような手順以外にも誰に相談・依頼するのかという面もあります。そのような面からみると残業代請求の方法には、以下の3つの方法が挙げられます。

・自分で請求する

・労基書に相談する

・弁護士に依頼して請求する

残業代を請求する3つの方法

自分で請求する方法

残業代請求は、労働者が自分だけで行うことができます。自分で請求するメリットは、費用の負担がかからないという点です。費用負担なく残業代請求を行いたいという場合には、自分で請求することになりますが、あまりおすすめの方法ではありません。

なぜなら、残業代請求をするには、法的知識や経験が必要になるところ、一般の方では、知識や経験が乏しいため自分だけでは適切な対応が困難だからです。費用をかけずに請求できたとしても、本来もらえるはずの残業代よりも少ない残業代しかもらえなければ、トータルで見ればマイナスになってしまいます。

労働基準監督署に相談する方法

残業代の未払いは、労働基準法違反となりますので、労働基準監督署に相談をすることができます。労働基準監督署による調査の結果、残業代未払いの事実が明らかになれば、指導や是正勧告などにより、会社に対して残業代の支払いを促してくれます。

しかし、労働基準監督署による指導や是正勧告には、法的拘束力がありませんので、指導や是正勧告があったとしても会社が残業代の支払いに応じてくれるとは限りません。会社が未払い残業代の支払いに応じてくれなかったとしても、労働基準監督署が労働者の代理人として交渉や回収をしてくれるわけでもありません

そのため、会社が支払いに応じてくれないケースでは、回収可能性の低い方法といえます。

弁護士に依頼する方法

残業代請求を弁護士に依頼すれば、すべての手続きを弁護士に任せることができますので、労働者個人の負担はほとんどありません。

また、交渉により解決できない場合でも、労働審判や訴訟などの法的手続きまで対応してくれますので、未払い残業代を回収できる可能性は他の方法よりも高いといえます。

唯一のデメリットとしては費用の負担があるという点ですが、着手金無料で対応してくれる弁護士であれば、回収した残業代から弁護士費用(報酬金)を支払うことができますので、経済的な負担は小さいといえるでしょう。

※関連記事

残業代請求を弁護士に依頼するメリットと本当に強い弁護士の選び方

 

残業代請求をするための5つの手順・方法

残業代請求をするための5つのの方法と手順

残業代請求の準備が整ったら、会社に対して未払い残業代の請求をしていきます。具体的な方法と手順は、以下のようになります。

内容証明郵便を送付する

まずは、内容証明郵便を利用して会社に対して残業代請求を行いましょう。

内容証明郵便とは、以下の事項を日本郵便株式会社が証明してくれる形式の郵便です。

・差し出した日付

・差出人の住所、氏名

・受取人の住所、氏名

・文書に書かれた内容

内容証明郵便自体には、未払い残業代の支払いを強制する法的効力はありません。

しかし、残業代に関する時効の完成を阻止するための有効な手段となります。すなわち、会社に対して残業代を請求することは、法律上の「催告」にあたり、6か月間時効の完成を猶予することができます。内容証明郵便を利用して残業代請求をすれば、催告をしたという証拠を残すことができますので、必ず内容証明郵便を利用して残業代請求を行うようにしましょう。

なお、残業代請求の内容証明の書き方や基本的なルールなどについては、こちらの記事をご参照ください

「残業代請求の内容証明郵便の書き方と基本的なルール・費用を解説」

会社との交渉を行う

内容証明郵便が届いたタイミングで会社との交渉を開始します。

会社が未払い残業代の存在を認めているのであれば、支払い方法や支払い時期など詳細な条件を詰める話し合いを進めていくことになります。その結果、合意が成立したときは、合意書を作成して、合意内容を明記するようにしましょう。

他方、会社が未払い残業代の存在を認めないのであれば、残業代計算の根拠となった証拠を提示しながら、残業代の支払い義務があることを説得していく必要があります。交渉では感情的になりがちですが、スムーズな話し合いを行うためにも冷静に対応することが大切です。

斡旋(あっせん)制度を利用する

斡旋とは、会社と労働者との間の労働問題を学識経験を有する第三者が間に入ることで、話し合いを促進し紛争の解決を図る制度です。斡旋制度を利用する場合には、労働基準監督署または都道府県労働局に、あっせん申請書を提出して申込みを行います。

あっせん手続きは、基本的には1回の期日で終了しますので迅速な解決が期待できます。また、無料で利用できるという点も経済的余裕のない労働者にとってはありがたい制度といえるでしょう。

しかし、第三者が介入するといっても争いのある事案をわずか1回の期日だけで解決するのは難しいことやあっせん手続きへの参加は強制ではないため、事案によっては斡旋制度では未払い残業代の問題が解決できないこともあります。

労働審判を申し立てる

労働審判とは、会社と労働者との間の労働問題をその実情に即して迅速かつ適正に解決するための裁判所の紛争解決手続きです。労働審判では、労働審判官(裁判官)1名と労働問題に関する豊富な知識と経験を有する労働審判員2名が審理・判断を行います。

原則として3回以内の期日で終了しますので、裁判に比べて迅速な解決が期待できる手続きです。また、まずは調停という話し合いによる解決が試みられますので、事案に即した柔軟な解決ができるというメリットもあります。

調停が成立しない場合、最終的に労働審判という形で判断が下されます。しかし、労働審判に不服があるときは、2週間以内に異議申し立てをすることで、労働審判の効力は失われ、通常の民事訴訟の手続きに移行します。

なお、労働審判で残業代請求をする流れについては、以下の記事をご参照ください

「労働審判で残業代請求をする流れ・費用・期間などをわかりやすく解説」

訴訟を提起する

会社との交渉が決裂したとき、または労働審判に対する異議申し立てがあったときは、最終的に訴訟により残業代請求を行っていくことになります。

訴訟では、証拠によって事実認定を行いますので、残業代を請求する労働者の側で未払い残業代の存在および金額を立証していかなければなりません。しかし、あらかじめ十分な証拠を確保していれば、残業代の支払いを命じる判決を出してもらえる可能性が高くなるといえます。

なお、裁判で残業代請求をする流れについては、以下の記事をご参照ください。

裁判で残業代請求をすべき5つのケースと裁判の流れ・期間・費用

残業代請求をする際の注意点

残業代請求をする際の注意点

残業代請求をする際には、以下の点に注意が必要です。

残業代請求には時効がある

残業代請求には、時効がありますので、権利行使をせずに一定期間が経過すると、残業代を請求する権利が時効により消滅してしまいます。具体的な時効期間は、残業代が発生した時期に応じて以下のように定められています。

・2020年4月1日以降に発生した残業代……3年

・2020年3月31日以前に発生した残業代……2年

すでに説明したとおり、内容証明郵便を利用して残業代請求を行えば、時効の完成を6か月間猶予することができます。そのため、時効の完成が迫っているという場合には、必ず内容証明郵便で残業代請求を行うようにしましょう。

なお、残業代請求の時効と時効を阻止する方法についての詳細は、以下の記事をご参照ください。

残業代の時効は3年!時効を阻止する方法と残業代請求の流れを解説

残業代請求には証拠が重要

残業代請求を成功させるためには、事前に十分な証拠を確保してから残業代請求を行う必要があります。

会社を退職してからでも残業代請求はできますが、退職後だと残業代請求に必要な証拠収集が困難になりますので、できる限り在職中から証拠を集めておくようにしましょう。また、自分で証拠を集めるのが難しいという場合には、弁護士に依頼すれば証拠収集のサポートを受けることができます。そのため、残業代請求をお考えの方は、早めに弁護士に相談するのがおすすめです。

残業代請求を弁護士に依頼するメリット

以下のようなメリットがありますので、残業代請求は個人で行うのではなく弁護士に依頼するようにしましょう。

残業代請求を弁護士に依頼するメリット

残業代請求に必要な準備を任せられる

残業代請求に必要な準備としては、証拠収集と未払い残業代の計算という2つが挙げられます。

これらの準備は残業代請求を成功させるために非常に重要になりますが、知識や経験がなければ対応することが困難といえます。弁護士に依頼をすれば証拠収集や残業代計算のサポートを受けることができますので、残業代請求を成功できる可能性が高くなるでしょう。

会社との交渉や労働審判・訴訟手続きを任せられる

弁護士に依頼をすれば会社との交渉や労働審判・訴訟手続きを任せることができます。これらの手続きをすべて労働者個人で対応しなければならないのは大きな負担になりますが、弁護士に依頼することで大幅に負担を軽減することができます。

また、それだけではなく専門家である弁護士が残業代請求を対応ますので、適正な条件で解決できる可能性が高くなります

未払い残業代を回収できる可能性が高くなる

裁判所により残業代の支払いを命じる判決が確定しても会社が残業代を支払わないときは、強制執行の申立てをすることで未払い残業代を強制的に回収することができます。

しかし、強制執行の申立てにあたっては、会社の財産を特定して申立てをしなければなりません。このような場合でも弁護士に依頼をしていれば、会社の財産の特定・把握や強制執行の手続きなどを任せることができますので、未払い残業代を回収できる可能性が高くなります。

残業代請求を弁護士に依頼するメリットと本当に強い弁護士の選び方

残業代請求をお考えの方はグラディアトル法律事務所にご相談を

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残業代請求を成功させるためには、弁護士に依頼する必要がありますが、弁護士であれば誰でもよいというわけではありません。残業代請求の成功の可能性をより高めるには、残業代請求に強い弁護士に依頼することが重要です。

グラディアトル法律事務所で、未払い残業代の問題に関する豊富な実績と経験がありますので、業種や職種にかかわらずさまざまな事案に対応可能です。多くの方に相談にお越しいただけるよう、残業代に関する相談については初回相談料無料で対応しています。まずは相談だけでも結構ですので、未払い残業代の請求をお考えの方は、当事務所までお問い合わせください。

まとめ

残業代請求の方法には、さまざまな方法がありますので、事案に応じた適切な方法を選択して進めていくことが重要です。どのような方法が最適であるかは、事案によって異なりますので、自分で判断できないときは、まずは専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

会社に対する未払い残業代の請求をお考えの方は、グラディアトル法律事務所までお気軽にご相談ください。








弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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