「内容証明郵便で残業代請求をしたい」
「残業代請求の内容証明は、どのように作成すればよいのだろうか?」
「内容証明郵便の書き方やルールにはどのようなものがある?」
会社に対して残業代請求をする際には、内容証明郵便を用いるのが一般的です。
内容証明郵便は、普段利用する郵便とは異なる形式の郵便で、書き方やルールなどが決められていますので、決められたルールに従って作成しなければなりません。
もっとも、内容証明郵便を利用したことがない方だと、どのように書けばよいのかわからないことも多いと思います。そのような方は本記事を参考にして内容証明郵便を作成してみるとよいでしょう。
本記事では、
・残業代請求で内容証明郵便を利用する3つの理由
・残業代請求の内容証明郵便の書き方(雛形・テンプレート)
・残業代請求の内容証明郵便を送る際の基本的なルールや費用
などについてわかりやすく解説します。
自分で内容証明を作成するのが難しいと感じるときは、弁護士に相談するとよいでしょう。
目次
内容証明郵便とは?
内容証明郵便とは、以下の事項を日本郵便株式会社が証明してくれる形式の郵便です。
・差し出した日付
・差出人の住所、氏名
・受取人の住所、氏名
・文書に書かれた内容
なお、内容証明郵便では、配達した事実の証明まではできません。そのため、いつ相手に配達されたのかを証明する必要がある場合には、配達証明付きの内容証明郵便を利用する必要があります。
残業代請求で内容証明郵便を利用する3つの理由
残業代請求で内容証明郵便が利用されるのは、主に以下のような理由があるからです。
時効の完成を6か月間猶予できる
残業代請求には、時効がありますので、権利行使をせずに一定期間が経過すると、残業代を請求する権利が時効により消滅してしまいます。具体的な時効期間は、残業代が発生した時期に応じて以下のように定められています。
・2020年4月1日以降に発生した残業代……3年
・2020年3月31日以前に発生した残業代……2年
このような残業代の時効は、会社に対して残業代請求(催告)をすることで、時効の完成を6か月間猶予することができます。猶予期間中は時効が完成することはありませんので、この間に交渉や労働審判・裁判の準備を進めていくことができます。
口頭での催告でも時効の完成猶予の効果は発生しますが、いつ催告をしたのかを客観的に証明するのが困難です。そこで、催告をしたという明確な証拠を残すために内容証明郵便が用いられます。
なお、残業代請求の時効と時効を阻止する方法についての詳細は、以下の記事をご参照ください。
会社側にプレッシャーを与えられる
内容証明郵便自体には、未払い残業代の支払いを強制する効力まではありません。
しかし、普段利用する郵便とは異なる特別な郵便になりますので、労働者側の残業代請求に対する本気度を示すことができ、会社側に対してプレッシャーを与えることができます。
普通郵便で残業代請求の書面を送るよりも内容証明郵便の方が会社側の真摯な対応を引き出せる可能性が高くなりますので、交渉による任意の支払いが期待できます。
裁判になったときの証拠になる
裁判になると会社から「残業代を請求されたことはない」などの反論が出ることもあります。
しかし、内容証明郵便を利用していれば、いつ、誰が、誰に対して、どのような文書を送付したのかを客観的に証明することができますので、そのような反論を封じることができます。
内容証明郵便は、労働審判や裁判になったときの証拠としても利用することができます。
残業代請求の内容証明郵便の書き方
残業代請求の内容証明郵便は、どのように作成すればよいのでしょうか。以下では、残業代請求の内容証明郵便の書き方を紹介します。
文書のタイトル
文書のタイトルには、特に決まりはありませんが、一見してどのような文書であるのかわかるタイトルを付けておくべきでしょう。一般的には、「通知書」、「請求書」、「催告書」などのタイトルが用いられます。
当事者に関する事項
当事者に関する事項として、差出人および受取人の住所・氏名の記載が必要になります。
残業代請求の内容証明郵便では、受取人は、会社(法人)になりますので、会社の住所、会社名、代表取締役の名称を記載します。
残業代の金額・根拠・計算方法
内容証明郵便には、請求する未払い残業代の内容を具体的に記載します。
・いつからいつまでの残業代を請求するのか
・時間外労働、深夜労働、休日労働の区別
・未払い残業代の計算方法
請求内容が十分に特定されていないと、内容証明郵便を受け取った会社側でも対応が困難になります。そのため、手元の証拠に基づいて、残業代の金額・根拠・計算方法をわかりやすく記載するようにしましょう。
未払い残業代を請求する旨
内容証明郵便で法律上の「催告」の効果を発生されるためには、残業代を請求する旨の意思表示が必要になります。上記の残業代の金額・根拠・計算方法を記載した後に、「未払い残業代として、金○○万円を請求します」など未払い残業代を請求する旨を記載します。
未払い残業代の支払い方法
未払い残業代をどのような方法で支払ってもらうのかを記載します。一般的には、銀行振込の方法を指定しますので、以下の事項を明記します。
・金融機関名
・支店名
・預金の種別
・口座番号
・口座名義人
未払い残業代の支払い期限
未払い残業代をいつまでに支払ってもらうのかを明らかにします。支払期限については、特に決まりはありませんが、1週間~2週間程度の期間を設けておけば問題ないでしょう。
期限内に支払いがないときの対応
期限内に未払い残業代の支払いがない場合、労働審判や訴訟などの法的手続に移行する旨を記載しておけば、会社に対してプレッシャーを与えることができます。
残業代請求の内容証明郵便の雛形・テンプレート
残業代請求の内容証明郵便の雛形・テンプレートを作成しましたので、会社への残業代請求をする際の参考にしてみてください。
残業代請求の内容証明郵便を送る際の基本的なルール
内容証明郵便には、普通郵便とは異なる特別なルールが定められていますので、それに従って作成する必要があります。以下では、残業代請求の内容証明郵便を送る際の基本的なルールを説明します。
文字数・行数のルール
内容証明の文字数と行数には、以下のルールがあります。
使用できる文字のルール
内容証明郵便で使用できる文字は、かな(ひらなが、カタカナ)、漢字、数字、句読点、一般的な記号になります。
英字は、固有名詞(人名、地名、会社名など)でのみ使用することができます。
封筒のルール
封筒は、普通の手紙と同じものを利用することができます。
ただし、郵便局で文書のチェックをしてもらう必要がありますので、封をせずに郵便局に持参してください。
なお、内容証明郵便では、手紙以外のものを同封することはできません。そのため、残業代請求の計算の根拠資料や証拠などがあったとしても、内容証明郵便では送ることができませんので、資料などを送付する場合には、別途書留郵便などを利用する必要があります。
訂正のルール
内容証明郵便は、普通の郵便とは異なり、文書の内容を訂正する際のルールも明確に定められています。
・間違えた箇所を二重線で消す
・欄外に「○字削除、○字加入」と記載する
・訂正部分に差出人の印鑑を押印する
訂正のルールに不安があるという場合には、訂正ではなく書き直しをした方がよいでしょう。
用紙のルール
内容証明郵便で使用する用紙には、特に決まりはありません。紙質や原稿サイズなども原則として自由です。
ただし、内容証明郵便で送る文書が2枚以上にわたるときは、すべてのページを綴じ、ページの綴じ目に契印を押さなければなりません。
電子内容証明郵便を利用する際のルール
上記のルールは、郵便局に内容証明を持参して送る方法です。内容証明郵便には、それ以外にも「電子内容証明(e内容証明)」というサービスがあります。
電子内容証明とは、インターネット上で内容証明郵便を送付できるサービスで、24時間好きなときに内容証明郵便を出すことができます。電子内容証明郵便には、一般の内容証明郵便とは異なる以下のルールがありますので注意が必要です。
残業代請求の内容証明郵便の費用
内容証明郵便を利用する際には、以下の費用がかかります。通常の内容証明郵便よりも電子内容証明郵便の方が割安となっています。
通常の内容証明郵便の費用
電子内容証明郵便の費用
残業代請求を弁護士に相談するメリット
以下のようなメリットがありますので、残業代請求は弁護士に相談するのがおすすめです。
内容証明郵便の作成・送付を任せることができる
内容証明郵便の作成・送付にあたっては、さまざまなルールがありますので、不慣れな方では内容証明郵便を送るだけでも苦労するはずです。
弁護士であれば、迅速かつ適切に内容証明郵便を送ることができますので、内容証明郵便を送付する負担を軽減したいという場合には、まずは弁護士に相談するとよいでしょう。
弁護士名義で内容証明郵便を送付すれば、会社に強いプレシャーを与えることができますので、労働者個人で送付するよりも会社側の真摯な対応が期待できます。
内容証明郵便送付後の会社との交渉を任せることができる
弁護士に依頼をすれば、内容証明郵便送付後の会社との交渉も任せることができます。
未払い残業代の交渉は、不慣れな労働者では負担が大きく、不利な条件で示談に応じてしまうリスクもありますので、専門家である弁護士に任せるべきでしょう。
グラディアトル法律事務所では、残業代のトラブルに関する豊富な解決実績がありますので、どうぞ安心してお任せください。
労働審判や訴訟にも対応できる
会社との交渉が決裂したとしても、弁護士に依頼していれば、引き続き労働審判や訴訟などの法的手続きの対応も任せることができます。
労働審判や裁判になると会社からは残業代の支払いを免れるためにさまざまな理屈で主張がなされますが、グラディアトル法律事務所では、そのような会社側の手口を熟知していますので、適切な反論により対抗することが可能です。
まとめ
残業代請求をする際には、内容証明郵便を作成して、送付するのが第一歩となります。しかし、内容証明郵便は、普通郵便とは異なりさまざまなルールが設けられていますので、不慣れな方では対応するのが困難といえます。
そのため、残業代請求をする際には、内容証明郵便の作成・送付や会社との交渉などを含めてすべて弁護士に依頼すべきでしょう。会社への残業代請求をお考えの方は、グラディアトル法律事務所までお気軽にご相談ください。