「残業代の平均はどのくらいなのだろうか?」
「自分の残業代は平均よりも少ない?」
「どうすれば平均以上の残業代をもらえるの?」
自分の残業代が平均的な残業代よりも多いのか、少ないのかは、多くの方が気になる事柄です。厚生労働省が公表している「毎月勤労統計調査 令和5年分結果確報」によると、一般労働者の残業代(所定外給与)の平均額は、2万6623円となっています。長時間の残業をしているにもかかわらず、ご自身の残業代が一般労働者の残業代の平均よりも少ないという場合には、適正な残業代が支払われていない可能性があります。このような場合には、早めに弁護士に相談して、残業代請求を行っていくようにしましょう。
本記事では、
業種・年代・都道府県別の残業代平均
平均的な残業代よりも少ないときに考えられる5つの原因
平均以上の残業代を請求する際のポイント
などについて、わかりやすく解説します。
残業代請求には、時効がありますので、未払い残業代がある場合には早めに行動することが大切です。
目次
あなたの残業代は適正?|業種・年代・都道府県別の残業代平均
残業代の平均といっても業種・年代・都道府県によって、支払われる残業代は大きくことなります。ご自身の残業代が適正なものであるかを判断するためにも、まずは、業界・年代・都道府県別の残業代平均を紹介します。
業種別の残業代の平均額
厚生労働省が公表している「毎月勤労統計調査 令和5年分結果確報」によると、業界別の1月あたりの一般労働者の残業代の平均額は、以下のようになっています。
年代別の残業代の平均額
年代別の残業代の平均額に関する資料は存在しなかったため、以下のような資料から円代別の残業代の平均額を推計してみたいと思います。
【年代別の平均残業時間】
大手転職サイトの「doda」によると、年代別の平均残業時間は、以下のようになっています。
引用:doda「なるほど!転職ガイド 平均残業時間ランキング91職種別」
【年代別の平均給与】
厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、年代別の平均給与は、以下のようになっています。
引用:厚生労働省 「令和5年賃金構造基本統計調査」
【年代別の残業代の平均額を計算】
1か月平均所定労働時間を160時間として、各年代の1時間あたりの基礎賃金を計算し、それを基準に各年代の残業代平均を計算すると、以下のようになります。
ただし、この結果はあくまでも推計ですので、正確な調査結果とは異なる点に注意してください。
都道府県別の残業代の平均額
厚生労働省が公表している「毎月勤労統計調査地方調査 令和4年平均分結果概要」によると、都道府県別の1月あたりの一般労働者の残業代の平均額は、以下のようになっています。
引用:厚生労働省「毎月勤労統計調査地方調査 令和4年平均分結果概要」表1より算出
平均的な残業代よりも少ないときに考えられる5つの原因
業種・年代・都道府県別の平均的な残業代を紹介しましたが、平均よりも残業時間が多いのに残業代が平均よりも少ないという場合には、以下のような原因が考えられます。
サービス残業
労働者には、残業時間に応じた残業代が支払われなければなりません。しかし、会社によっては、残業をしたにもかかわらず、適正な残業代が支払われない「サービス残業」が行われていることもあります。
このようなサービス残業により残業代を支払わないことは、違法となりますので、労働者は会社に対して、未払い残業代を請求することができます。
管理職を理由とする残業代の不払い
労働基準法上の管理監督者に該当する場合には、労働基準法が定める労働時間、休憩、休日に関する規制が適用外となります。そのため、管理監督者に対して残業代を支払わなかったとしても、違法ではありません。
しかし、労働基準法上の管理監督者は、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある人のことをいい、肩書ではなく実態に即して判断されます。店長や部長などの肩書が与えられていても、権限が与えられておらず一般の労働者と変わらない労働条件だった場合には、「名ばかり管理職」に該当する可能性があります。
名ばかり管理職に対しては、残業代の支払いが必要になりますので、未払いの残業代がある場合には、会社に請求することができます。
管理職の残業代・管理監督者該当性の詳細は、以下の記事もご参照ください。
固定残業代の違法な運用
固定残業代とは、一定の残業時間に相当する残業代が毎月の固定給に含めて支払われる制度です。たとえば、固定残業代30時間と定められている場合には、実際の残業時間が20時間だったとしても、30時間分の残業代を支払ってもらうことができます。
ただし、固定残業代が支払われている場合であっても、固定残業代として定められた残業時間を超えたときは、固定残業代とは別に残業代の支払いが必要になります。固定残業代以外には一切残業代が支払われていないようなケースでは、固定残業代の違法な運用がなされている可能性がありますので、注意が必要です。
みなし残業代(固定残業代)制度でも残業代請求ができるケースについての詳細は、以下の記事をご参照ください。
裁量労働制の違法な適用
裁量労働制とは、実際の労働時間ではなく、あらかじめ会社と労働者との間で定めた時間を労働したものとみなす制度です。裁量労働制は、仕事の自由度が高く、会社が労働時間を管理することができない職種において適用されます。たとえば、あらかじめ8時間をみなし労働時間と定めていた場合、実際の労働時間が10時間であったとしても残業代を請求することはできません。
裁量労働制が適用される具体的な職種については、厚生労働省令および大臣告示により定められていますが、これらに該当しない職種についても裁量労働制がとられることがあります。しかし、そのような運用は違法ですので、会社と労働者との合意により裁量労働制がとられていたとしても、法定の要件に該当しないものについては、残業代を請求することが可能です。
裁量労働制の残業代請求についての詳細は、以下の記事をご参照ください。
年俸制を理由とする残業代の不払い
年俸制とは、労働者の給与額(年俸額)を1年単位で決定する給与体系をいいます。主に成果主義型の人事制度が導入されている会社で採用されています。
年俸制であっても労働基準法が適用されますので、残業をした場合には残業代の支払いが必要になります。年俸制を理由として残業代の支払いをしないことは違法となりますので、会社に対して、残業代を請求することができます。
年俸制の残業代請求についての詳細は、以下の記事をご参照ください。
平均以上の残業代を請求できる?残業代の計算方法
平均以上の残業代を請求するためには、残業代計算の基本を押さえておく必要があります。残業代の計算は、「1時間あたりの基礎賃金×割増率×残業時間」という計算式により算出します。正確な残業代を計算するには、各項目を理解しておくことが重要ですので、以下では、それぞれの項目を説明します。
1時間あたりの基礎賃金
月給制で働く労働者の場合、以下の計算式により1時間あたりの基礎賃金を算出します。
1時間あたりの基礎賃金=月給÷1か月あたりの平均所定労働時間
1か月あたりの平均所定労働時間=1年間の所定労働日数×1日あたりの所定労働時間÷12か月
たとえば、月給32万円、1日あたりの所定労働時間8時間、年間労働日数240日の条件で働く労働者の1時間あたりの基礎賃金は、以下のようになります。
1か月あたりの平均所定労働時間=240日×8時間÷12か月=160時間
1時間あたりの基礎賃金=32万円÷160時間=2000円
割増率
時間外労働、休日労働、深夜労働については、一定の割増率により増額された割増賃金が支払われます。具体的な割増率は、以下のようになっています。
これらの割増率は組み合わせて適用されることがありますので、「時間外労働+深夜労働」であれば、50%以上の割増率が、「休日労働+深夜労働」であれば60%以上の割増率が適用されます。
残業時間
残業時間をカウントする際に注意すべきポイントは、法定内残業と法定外残業を区別するという点です。
法定内残業とは、所定労働時間を超えているものの法定労働時間の範囲におさまっている残業をいいます。法定内残業に対しては、割増賃金の支払いは不要となります。
法定外残業とは、法定労働時間を超えた残業をいい、所定の割増率により増額された割増賃金の支払いが必要になります。
残業代計算方法の詳細は、以下の記事もご参照ください。
平均以上の請求を実現するために特に重要なポイント
平均以上の残業代の請求を実現するために特に重要なポイントとしては、以下の2つが挙げられます。
残業に関する証拠を集める
会社に未払い残業代を支払ってもらえるかどうかは、証拠の有無にかかっているといっても過言ではありません。十分な証拠がない状態で請求したとしても、適当に理由をつけてはぐらかされてしまいますし、裁判をしたとしても労働者側の請求を認めてもらうことはできません。
そのため、平均以上の残業代を請求したいのであれば、まずは残業に関する十分な証拠を集めることが重要です。どのような証拠が必要になるかについては、ケースバイケースですので、十分な証拠を確実に集めるためにも、まずは弁護士に相談するのがおすすめです。
タイムカードがない場合の残業代請求とその他の証拠についての詳細は、以下の記事をご参照ください。
時効になる前に請求する
残業代請求には、時効がありますので、残業代の発生から一定期間が経過してしまうと、残業代を請求する権利は、時効によって消滅してしまいます。具体的な時効期間は、残業代の発生時期に応じて、以下のように定められています。
・2020年4月1日以降に発生した残業代……3年
・2020年3月31日以前に発生した残業代……2年
残業代が時効になってしまうと、残業に関する十分な証拠があったとしても、残業代の支払いを受けることができません。そのため、平均以上の残業代を請求したいという場合には、早めに行動することが大切です。
残業代請求の時効と時効を阻止する方法についての詳細は、以下の記事もご参照ください。
未払い残業代の請求方法|平均的な残業代よりも少ないときは未払いの可能性あり
平均的な残業代よりも少ないという場合には、未払いの残業代がある可能性があります。そのような場合には、以下のような方法で、残業代を請求していきましょう。
証拠を集める
すでに説明したとおり、残業代を請求するには、証拠が不可欠です。そのため、まずは残業に関する証拠を集めるようにしましょう。
会社を辞めてからだと証拠収集が困難になりますので、できる限り会社に在籍中から証拠を集めておくようにしましょう。
残業代を計算する
残業に関する証拠が集まったら、証拠に基づいて未払いの残業代を計算します。
残業代計算は、非常に複雑な計算になりますので、自分だけでは計算に不安があるという場合には、専門家である弁護士に対応してもらうのがおすすめです。
会社と交渉をする
未払い残業代の金額が明らかになったら、内容証明郵便を利用して会社に対して、未払い残業代の請求を行います。内容証明郵便を利用するのは、時効期間の進行を一時的にストップすることができるからです。
内容証明郵便が届いた後は、会社との交渉により、未払い残業代の支払いを求めていきます。労働者側で計算した未払い残業代の金額やその根拠を示して話し合いを進めていき、お互いの妥協点を探っていきます。会社との間で合意に至ったときは、合意内容を書面にまとめて、未払い残業代を支払ってもらいましょう。
労働審判を申し立てる
会社との話し合いで合意に至らないときは、裁判所に労働審判の申立てを行います。
労働審判は、原則として3回以内に期日で終了する手続きですので、裁判に比べて迅速かつ柔軟な解決が期待できます。当事者同士で話し合いの余地が残されているのであれば、訴訟提起前に労働審判の手続きを利用してみてもよいでしょう。
訴訟を提起する
当事者同士の話し合いまたは労働審判でも解決できないときは、最終的に裁判所に訴訟を提起することになります。
訴訟になれば、争点によっては1年以上もの期間がかかるケースもありますので、解決までにある程度の時間がかかることは覚悟しておかなければなりません。また、訴訟手続きは、非常に複雑な手続きになりますので、専門家である弁護士のサポートが必要になります。
平均的な残業代よりも少ないときはグラディアトル法律事務所までご相談ください
会社から支払われた残業代が平均的な残業代よりも少ないという場合には、未払いの残業代がある可能性があります。このようなケースに当てはまる方は、まずはグラディアトル法律事務所までご相談ください。
迅速かつ正確に未払い残業代の有無を判断できる
平均的な残業代よりも少ないからといって直ちに残業代請求ができるわけではありません。残業代請求をするためには、その前提として、証拠収集や残業代の計算によって、未払い残業代の有無を明らかにしていかなければなりません。
グラディアトル法律事務所は、未払い残業代請求の事案を解決に導いた豊富な実績がありますので、迅速かつ正確に未払い残業代の有無を判断することができます。残業代計算に時間がかかると、残業代が時効になってしまうリスクが高くなりますので、残業代計算は当事務所にお任せください。
豊富なノウハウに基づいて会社との交渉を行う
会社との間で未払い残業代に関する交渉を行う際には、高度な駆け引きが必要になります。グラディアトル法律事務所では、労働問題に詳しい弁護士が多数在籍しており、残業代請求に必要となる知識やノウハウを有しています。そのため、会社との交渉でも豊富な知識やノウハウに基づいて交渉を行うことで、労働者側に有利な条件で解決できる可能性が高くなります。
労働審判や訴訟になっても実績豊富な弁護士なら安心して任せられる
会社との話し合いで解決できない場合には、労働審判や訴訟の手続きが必要になります。
グラディアトル法律事務所では、未払い残業代に関する労働審判や訴訟の解決実績も豊富ですので、安心してお任せください。経験豊富な弁護士が最後までしっかりと労働者の味方となり、未払い残業代の回収に向けて尽力します。
まとめ
残業代は、業種・年代・都道府県によって平均額が異なりますので、まずはご自身の属性を踏まえて、残業代の平均額を確認してみましょう。そのうえで、平均的な残業代よりも少ないという場合には、未払いの残業代がある可能性があります。そのような場合は、早めに弁護士に相談することが大切です。
グラディアトル法律事務所では、未払い残業代請求の事案に関する豊富な解決実績がありますので、会社に対する残業代請求をお考えの方は、当事務所までお気軽にご相談ください。