「会社を辞めたい」と思っているが辞められない。
日々の膨大な業務やストレスのために弁護士へ依頼する余裕がない。
そういった人もいるのではないでしょうか。
今回は、当法律事務所で受任した退職代行案件の中から、ご家族からの問い合わせが受任のきっかけとなった事例をご紹介させていただき、併せて解決までのポイントなどを解説しようと思います。
目次
退職代行に至るまでの概要~弁護士との相談に至るまで~
はじまりは依頼者(Aさん)のお母様からの電話でした。
大学卒業まで実家で仲良く暮らしていたところ、一人娘のAさん就職のために大阪に行くことになりました。
当初は頻繁に娘とLINEなどで連絡を取っていましたが、徐々に連絡が少なくなり、内容もそっけないものになっていったそうです。
当初は働き始めで忙しいのかなと思っていたのですが、ついにはまともに連絡がつかない事態となりました。
そこで心配になったお母様は、直接会うためにAさんのマンションを訪ねました。
話を聞くと、Aさんから実は就職先がいわゆるブラック企業だったので悩んでいると告白されました。
さらに具体的に話を聞いていくと、Aさんの勤務する職場では、深夜にまでわたる残業が常態化しており、残業代に未払いがあったほか、パワハラとも受け取れるような威圧的な上司の言動もあり、Aさんはそのような会社で勤務することに疲弊しきっているということがわかりました。
Aさんはその会社を辞めたいという意思を有しておられたのですが、そもそも辞めさせてもらえないのではないか、退職の希望を会社に伝えると、上司が家に押しかけてくるかもしれない、さらには退職後に別の会社に再就職できたとしても同じ業界の会社だと圧力や嫌がらせがあるのではないかという不安をご家族に相談されていました。
そのような状況で、Aさんはついに鬱状態にまで陥り、仕事が手につかず会社を休みがちになってしまいました。
これを聞いたお母様は、居ても立っても居られず、土曜でも電話できる弁護士を探し、弊所にお電話くださりました。
弊所では土日でも弁護士と面談が可能ですので即日で面談を設定し、Aさんも連れてきてもらい、本人からもお話を伺うことになりました。
退職代行における弁護士との相談~方針決定~
Aさんと面談した弁護士は、まずAさんに労働者からの退職の申し入れは、労働者の権利として法律で認められている権利であること説明しました。
就業規則などによって伸長されているケースもありますが、民法上は2週間前までの申し入れで退職できることになっています。
また、退職代行を希望されるケースの多くは、いわゆるブラック企業に勤務されていることが多く,未払い賃金が溜まっていることや、上司からのハラスメントに対する慰謝料請求が可能な事案が多く、これらについても担当弁護士はAさんに説明させていただきました。
もっとも、今回はAさんはそれらの請求よりも、一刻も早い退職を望んでおられましたので、退職のみに絞って進める方針としました。
更に、退職に当たって、会社から引き継ぎが十分ではなかったとか、他の人員を雇ったために損害が生じたとして損害賠償を請求してくるケースがあります。
こういった損害賠償請求が裁判で認められるケースは少ないですが、たまにあることですので今回も注意が必要でした。
逆に、このような請求自体が嫌がらせやハラスメントであるとして労働者側からの損害賠償請求も可能です。
近時、弁護士ではない業者が行う退職代行サービスが存在していますが、このように退職に当たっては様々な注意点や交渉が必要となってくるもので、そういった対応は法律によって弁護士でなければできない(非弁行為)ということになっています。
非弁行為とは、主に、弁護士法72条に違反する行為を言います。弁護士法72条で禁止されているのは、弁護士以外の者が、有料で法律業務(弁護士業務)に該当する行為を行うことです。
退職代行業者と非弁行為については,以下の動画をご覧ください。
退職代行トラブル受任後の弁護士の活動~解決に至るまで~
Aさんは面談の場で委任状を作成し、退職代行を弊所に依頼されました。
弊所弁護士は早急に退職を申し入れる内容の内容証明郵便を作成し、これを会社に送付し、Aさんの退職は成功しました。
もっとも、Aさんのケースでは、会社側から、Aさんに交付されていた名刺の残りや、保険証、入館証などの返還が求められました。弊所弁護士はAさんからこれらの物を預かり、Aさんに代わり会社に返還させていただきました。
また反対に、Aさんが会社に残していた私物(中には高価な物品もありました)を返してくれるように会社に求め、弊所が窓口となって受領した上でAさんにお返しさせていただきました。
このような退職に付随する作業についても、法律上、弁護士ではない業者では対応できないことになっていますので、万が一弁護士ではない業者に依頼してしまった場合、こういった会社とのやりとりは原則としてご自身で行っていただかなければならなくなります。
弊所では、そのような会社との物品のやりとり等についても、ご自身で行うことに不安がある等、ご希望があれば退職代行に付随して代行して行わせていただいております。
関連記事:退職代行を弁護士にお願いする
退職代行における弁護士からのアドバイス
弊所に退職の手続きをお任せいただいたことによって、Aさんには安心感や心の余裕が生まれ、すぐに次の職場探しに専念することができたとのことでした。新しい職場はスムーズに決まり、最良の形で人生のリスタートを切ることができたと、後日お礼の連絡をいただきました。
このケースのように、最初のご相談は退職したいご本人でなければいけないということはありません。
ご本人が多忙であったり、弁護士への依頼を思い切れなかったりする場面は往々にしてあるのではないでしょうか。
そのようなときに、ご本人の不安や様子のおかしさを察知できるのはご家族をおいて他にいません。
ご本人が希望していないのに退職させるとったことはありえませんが、本当にご本人が困っていたり、鬱病になったりしている場合のご相談には躊躇されないでください。
弊所グラディアトル法律事務所でも、こうした退職代行の案件を数多く取り扱っており、そのノウハウも日々蓄積されているところです。
Aさんのケースと同じく、未払い賃金の請求や、パワハラに対する損害賠償請求、会社との交渉などの代行なども同時にご案内させていただきます。
その際は、雇用契約書(労働条件通知書や求人票)や就業規則をご用意いただけるとスムーズにご案内させていただくことができます。
また、未払い賃金の請求などもご希望の場合は、給与明細(賃金台帳)や賃金規定、タイムカード(出勤簿・点呼簿、業務日報、業務用PCログ、タイムカードアプリ、帰宅メール)なども必要となります。
退職のための内容証明郵便の作成、退職後の種々の作業等、退職に向けた方法を弁護士と直接相談できる無料相談を実施しています。
お困りのことがあれば、ぜひ一度お電話いただければと思います。