「風営法に違反して無許可営業すると罰金が3億円になる?」
「無許可営業をすると数千万円もの売上げが没収・追徴される?」
「ガールズバーで接待すると無許可営業?」
「歌舞伎町のホストやキャバクラでは他人名義で風俗営業許可をとっている店が多いと聞くけど違法?」
キャバクラ、ホスト、ガールズバー、コンカフェ、サパーなど、夜のお店では、無許可営業で逮捕・摘発される事例が散見される。
無許可営業は、風営法違反の中でも最もリスクが高い。
罰則も最も重い罪が定められており、最新(2025年3月現在)の風営法の改正においても無許可営業に対する罰則として最大で罰金3億円に引き上げる旨の風営法改正案の閣議決定がなされた。
風営法の無許可営業は、逮捕や罰則のみならず、売上の没収・追徴で多額の金銭を持っていかれるリスクもある。
実際に、無許可営業で没収390万円・追徴金2億9000万円の判決が出た事例もある。
グラディアトル法律事務所では、キャバクラ、ホストクラブ、ガールズバー、コンカフェなど、風営法の無許可営業と密接に関連する店舗の顧問弁護士をやっている。
また、実際に、風営法違反・無有許可営業で逮捕・摘発されてしまった方の刑事弁護の経験も豊富だ。
本記事では、風営法が重要なナイトビジネスの顧問弁護士を長年経験してきた弁護士が、風営法の無許可営業について詳しく解説をする。
・無許可営業で逮捕される2つのパターン
・無許可営業の罰則、没収・追徴などのリスク
・無許可営業の逮捕事例
・無許可営業を回避する2つの方法
など。
風営法の無許可営業についての正しい知識とリスクを理解し、適法に営業をして欲しい。
風営法の無許可営業とは、風営法上、風俗営業の許可が必要な営業について、許可を受けずに営業することだ。
風営法は、キャバクラやホストなどの風俗営業は、健全に営まれれば国民の憩いや娯楽に有益な営業ではあるものの、不健全に運営されると風俗環境に問題を引き起こすおそれがあることから、あらかじめ法律で一律に禁止した上で、一定の要件を満たすものにその禁止を解除する許可を与えるという仕組みを採用している。
風営法は、キャバクラやホストクラブなど、「風俗営業」について許可を必要としている。
「風俗営業」は、1号から5号までの業種が定められている。
業種 | 風営法営業許可の種類 | 例 |
---|---|---|
風俗営業(接待飲食等営業) | 1号 | ホストクラブ、キャバクラ、スナックなど |
風俗営業(接待飲食等営業) | 2号 | 低照度飲食店、バーなど |
風俗営業(接待飲食等営業) | 3号 | 区画席飲食店、カップル喫茶など |
風俗営業(遊技場営業) | 4号 | 雀荘、パチンコ店 |
風俗営業(遊技場営業) | 5号 | ゲームセンター |
名義貸しでよく問題となる、キャバクラ、ホスト、ガールズバー、コンカフェ、サパーなどは1号営業だ。
風営法上、キャバクラやホストクラブなどの風俗営業1号営業では、営業時間が決まっており、深夜営業が禁止されている。
1号営業の営業時間は午前0時までで、午前0時から午前6時までは営業できない。歌舞伎町などの繁華街では、条件を満たせば条例で午前1時まで営業をすることができるが、その場合にも午前1時以降は営業ができない。
他方で、深夜も営業しているバーやガールズバーなどは、風俗営業許可ではなく、深夜酒類提供飲食店営業の届出で営業をしている。
深夜酒類提供飲食店営業では、深夜営業が可能だ。
そのため、深夜も営業したい店舗経営者は、深夜酒類提供飲食店営業の届出で営業をしているのだ。
もっとも、後述するように、深夜酒類提供飲食店営業の届出で営業をしている店舗が「接待」をした場合には、風俗営業に該当し、「許可」が必要になる。
実質的経営者が自らの逮捕や刑罰を逃れるために、店長や第三者を名義人にすることがある。
風営法違反などの罪で逮捕されるのは、通常、店舗の経営者として名義を張っている人だからだ。
もっとも、金の流れや実質的な決定権に関する証拠、従業員の証言などから実質的経営者が判明すれば、捜査の手から逃れることは難しい。
複数店舗を経営する人や会社が、経営上のリスクを分散するために名義を散らす場合がある。
風営法違反で営業停止などの行政処分がなされた場合、その処分対象者が経営する別の店舗にも行政処分の効力が及び、別の店舗も営業を停止せざるを得なくなるからだ。
風営法上、風俗営業の許可を取るためには条件がある。
場所的な条件として、風俗営業ができない地域がある。
人的な条件として、過去に風営法違反で営業停止を受けた直後の人など、営業許可を取ることができない人がいる。
このように、風営法上の場所的・人的な条件を満たさないことを理由として、許可を取らない、ないしは別人名義で許可を取得するという無許可営業が行われる。
風営法の正確な知識がなく、許可の必要性を理解しておらず、それが理由で無許可営業をしてしまうことがある。
・許可が必要だと知らない人、
・接待」について詳しく知らずキャストが客の横に座らなければ風俗営業の許可は不要で深夜酒類提供飲食店営業の届出で足りると勘違いしている人
などが典型だ。
一般の方がイメージする無許可営業は,全く許可を得ないモグリのお店というイメージだろう。たしかに,全く許可を得ることなく営業しているお店もあるにはあるが、多くはない。
風営法違反の無許可営業で逮捕・摘発される多くの事例は、以下の2つの類型だ。
類型 | 風営法の根拠 | 概要 | 業種例 |
---|---|---|---|
①「接待」類型 | 深夜酒類提供飲食店営業の届出で営業 | 「接待」をしているため本来は許可が必要 | ガールズバー、コンカフェ、ゲイバー、ショーパブ、サパー、スナックなど |
②「名義貸し」類型 | 風俗営業の許可で営業 | 経営実態と名義人が異なるため本来は実際の経営者名義での許可が必要 | ホストクラブ、キャバクラなど |
客を接待する飲食店では,風営法上、「風俗営業」の許可が必要だ。
しかし、多くのガールズバーや、コンカフェでは、「接待」をしているにも関わらず、深夜酒類提供飲食店営業の届出で営業をしていることがある。
この場合には、本来必要な「風俗営業」の許可をとっていないということで、無許可営業となる。
「接待」類型での無許可営業で逮捕・摘発される業種としては、ガールズバー、コンカフェ、ゲイバー、ショーパブ、サパー、スナックなどが多い。
近頃では、SODランドやバーレスクなどの店舗もこの「接待」類型での無許可営業で逮捕・摘発された。
「接待」の定義や解釈について、カウンター越しなら大丈夫、キャストが隣に座らなければ大丈夫などと勘違いしている人も多いが、間違いだ。
法律上は、「接待」について、かなり広く解釈されており、ほとんどのガールズバーが接待をしている状況になっている。
「接待」の定義や解釈についても正しく理解をする必要がある。
「接待」の定義や解釈、具体例については、以下の記事を参照して欲しい。
「名義貸し」類型は、風俗営業の許可を取って営業をしてるものの、経営実態と名義人が異なるため本来は実際の経営者名義での許可が必要なのに、その許可をとっていないという類型の無許可営業だ。
この業界で弁護士をしていると、キャバクラとかホストとかでよく見る類型だ。
「名義貸し」類型の無許可営業をする理由としては、以下の理由がある。
・実質的経営者に欠格事由があり風俗営業の許可が取れないため
・実質的経営者が自らの逮捕を免れるため
・複数店舗を経営している場合に営業停止などのリスクを分散させるため
弁護士として争うならば、誰が実質的な経営者かという部分を争うことになるのだろう。
実質的な経営者かどうかの判断基準は、収益の分配割合、売上の管理をしているいか、経営上の重要事項について指揮監督をしていたかどうか、不動産の契約、人事の決定、現場に出ていたかなどになるだろう。
キャバクラやホストクラブ、風俗店などの経営者から、名義を分けたほうがリスクヘッジとして良いのではないかという質問を受けることも多い。
しかし、本件のような「名義貸し」類型の無許可営業となるリスクがあるので、その点を理解してほしい。
名義貸しについては、以下の記事も参照して欲しい。
風営法の無許可営業の罰則は、二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金又はこの併科だ。
無許可営業は、風営法が定める罰則の中で一番重い刑罰が定められている。
風営法の無許可営業の量刑相場は、初犯であれば、罰金は50〜100万円前後だ。
悪質性が高い事案などでは、懲役4〜6月、執行猶予3年程度となることもある。
2025年3月現在、風営法の改正案として、法人に対する無許可営業の罰金の上限を3億円に引き上げることが閣議決定された。
これは、現在の罰金額の150倍だ!
個人の無許可営業についても、罰金額の上限を1000万円まで引き上げられる。
また、懲役刑については、5年以下の懲役(拘禁)刑に引き上げられる。
これらの風営法の改正、無許可営業の罰則の強化は、悪質ホスト問題が原因となっている。
ホストクラブの客に対して、多額の売掛金債務を負わせ、売掛金を支払わせるために、立ちんぼ、風俗や海外出稼ぎの紹介、違法なスカウトへの紹介などをしていることが問題視されている。
このような流れの中で、ホストクラブの多額の売上額に比して、罰金額が低すぎるのではないかとの意見が出され、無許可営業の罰金額の上限の引き上げが議論されているのだ。
もっとも、ホストクラブ以外の小規模なスナック等も同様の規制が適用されるとなると、罰金額が過大になり過ぎてしまうのではないかという懸念もあるところだ。
風営法改正案についての詳細は、以下の記事もご参照ください。
風営法の無許可営業は、それ自体の罪が重いこともあるが、売上等の収益が没収・追徴されてしまうリスクがあるという点にも注意が必要だ。
組織犯罪処罰法(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律)における「犯罪収益」には、風営法上の無許可営業による収益も含まれると記載されている。
そのため、同法に基づいて、キャバクラやホストクラブの売り上げが犯罪収益として没収・追徴されてしまう可能性があるのだ。
実際の事例でも,無許可営業で逮捕された店の売り上げが同法に基づいて没収されてしまったケースもある。高額な没収・追徴の裁判例として、以下の事例がある。
キャバクラの無許可営業での高額な没収・追徴の裁判例
暴力団員の事例 :没収390万円・追徴金約2億9千万円
有名キャバ嬢の事例:没収100万円・追徴金4000万円
風営法の無許可営業と組織犯罪処罰法の犯罪収益の没収・追徴について、詳細は以下の記事も参照して欲しい。
三宮のガールズバー、無許可で客接待か 容疑で経営者と店長逮捕 三宮最大客引き集団の関係者か
神戸・三宮にあるガールズバーで客への接待を無許可でさせたとして、兵庫県警組織犯罪対策課と保安課、生田署などは4日、風営法違反(無許可営業)の疑いで、ガールズバー経営の男(27)=神戸市中央区=と店長の男(24)=同=を逮捕した。
2人の逮捕容疑は、共謀して2024年12月10日~今年1月9日、神戸市中央区中山手通1のガールズバーで、県公安委員会の許可を受けずに、女性従業員らに男性客に対する酒の提供などの接待をさせた疑い。同課は2人の認否を明らかにしていない。
同課によると、県警が24年12月に風営法に基づく指導を複数回繰り返したが、改善されなかったという。同課は、逮捕された男らを三宮で最大とされる客引き集団の関係者とみており、店の営業で得た資金の行方などを調べる。
2025/3/5 神戸新聞 https://www.kobe-np.co.jp/news/jiken/202503/0018716516.shtml
「名義貸し容疑で大手キャバクラ社長も逮捕/神奈川県警」
自らの名義で受けたキャバクラの風俗営業許可を代表取締役を務める会社に使用させたなどとして、県警生活保安課と戸部署は15日、風営法違反(無許可営業、名義貸しの禁止)の疑いで、横浜市神奈川区、会社役員◯◯容疑者を逮捕した。
同容疑者は、県内や都内、北海道で、少なくとも31店舗のキャバクラや飲食店などを経営する業界大手ーーの代表取締役社長。
逮捕容疑は、昨年3月8日、公安委員会の許可を受けずに横浜市内のキャバクラ4店舗を営業したとしている。また、自分の名義などで受けた営業許可をーー(会社)に使用させ、横浜市内のキャバクラ2店舗を実質経営させた、としている。
同課は、なんらかの違法処分で1店舗が営業停止処分を受けた場合、同一法人として営業許可を受けていると他店も営業停止になるため、こうした事態を防ぐために個別営業を装うのが目的だったとみている。
神奈川新聞 カナコロ http://www.kanaloco.jp/article/26189
風営法の無許可営業は、風営法上、もっとも重い罰則が定められており、さらに風営法の改正案では罰則が引き上げられる可能性が高い。
加えて、風営法の無許可営業では高額な没収や追徴がなされる可能性もある。
このように、無許可営業はリスクが高いので、以下の点を注意して回避すべきだ。
「接待」類型の無許可営業を回避するためには、「許可」を取得することが重要だ。
前述のように判例上、「接待」の解釈は広く、ガールズバーやコンカフェ、スナックなどの業態では「接待」をしてしまっているケースが多い。
「接待」に該当するおそれのある業態を営業するのであれば、風俗営業1号許可を取得すべきだ。
風俗営業1号許可を取得すると、深夜営業は禁止される。
しかし、無許可営業の高いリスクを考えれば、深夜営業を諦めてでも風営法の許可をとるべきだろう。
また、風営法の深夜営業には罰則がなく、仮に、深夜営業をしてしまったとしても、深夜営業だけでは逮捕されることも有罪になることもなく、無許可営業で逮捕・摘発されることよりはダメージは少ないとも考えられるだろう。
深夜営業の詳細は、以下の記事を参照して欲しい。
「名義貸し」類型の無許可営業を回避するためには、許可名義と経営実態を一致させることが重要だ。
関係のない第三者の名義で許可を取って店舗経営をすることは論外だ。
他方で、グループ店舗など、複数店舗を経営する場合に、リスク分散などの観点から店舗ごとに別の名義で許可をとるということはあり得るところだろう。
その場合には、当該店舗については、当該店舗の許可をとっている人や法人で経営をしていくことが重要だ。
経営実態は、以下の事項で判断されるため、これらの事項について許可名義の人や法人でおこなうことが需要だ。
・利益分配率が高い(許可名義の人や法人がもっとも多く利益を得るべき)
・売上の管理(許可名義の人や法人が管理すべき)
・経営上の重要事項の決定(許可名義の人や法人が決定すべき)
・採用・人事についての決定(許可名義の人や法人が決定すべき)
・不動産等の契約名義(許可名義の人や法人の名義で契約すべき)
A 無許可営業となり、逮捕され、二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金又はこの併科という罰則が科せられます。売上の没収や追徴のリスクもあります。
A 風営法で無許可営業が行われる理由としては、以下の5つの理由があります。
A 現在の無許可営業の罰金の上限は200万円です。実際の事例では、50〜100万円程度になることが多いです。
2025年の風営法改正案では、罰金額の上限が3億円まで引き上げられることが議論されています。
A 深夜酒類提供飲食店営業の届出を出している店舗は、深夜0時以降も営業できます。
キャバクラやホストクラブなど「接待」をする風俗営業では、深夜0時以降(地域によっては1時以降)の営業は禁止されています。
無許可営業は、風営法で一番重い罰則が定められており、風営法改正案では無許可営業の罰則上限が引き上げられ、法人の罰金額の上限は3億円になることが議論されているなど、無許可営業はリスクが高い。
そうであるにもかかわらず、無許可営業状態のガールズバー、コンカフェ、キャバクラやホストクラブが存在していることも事実だ。
無許可営業を避けつつ、複数店舗の組織構造を作っていくには、風営法に詳しい顧問弁護士が重要だ。
「風営法にはこう書いてあるけれど、実際はどうすればいの?」と思った時には、ナイトビジネス業界を専門とする弁護士に相談すると、風営法に違反することなくスムーズにホストクラブやキャバクラを経営できる。
風営法違反による短期的な営業停止ですら経営が悪化したり人材が流出したりする可能性が高いため、弁護士と顧問契約を結んで些細なことでもすぐに相談できる関係を築いておこう。
弁護士事務所はたくさんあるが、グラディアトル法律事務所はナイトビジネス業界に特化しているので、キャバクラの経営者様に寄り添って必要な情報や対策法を提供することが可能だ。
風営法を正しく理解するためには風営法以外に政令や各都道府県の条例も合わせて知る必要があり、自力で風営法の具体的な規制内容や基準を理解するのはとても難しいものである。
政令や各都道府県の条例はたびたび改正されるため、法律に携わっている職業でない限り常に最新の規制内容を完璧に把握することはなかなかできることではない。
そこで、グラディアトル法律事務所にご相談いただくと、風営法の詳細なルールにも違反することなくスムーズにホストクラブやキャバクラの経営ができるようにサポートさせていただく。
風営法の規定は抽象的なので、警察署の担当者によって解釈が異なる場合がある。
そんな風営法のルールを守るためには、過去の判例や最近の量刑傾向をよく知る弁護士の手助けが必要不可欠だ。
グラディアトル法律事務所ではこれまで数々のホストクラブやキャバクラの経営に携わってきた実績があるので、風営法に違反しないための対策をご提供できる。
グラディアトル法律事務所はナイトビジネス業界を専門とする弁護士事務所の草分け的存在で、ナイトビジネス業界における実績が豊富である。
医者にも内科や外科といった専門分野があるように弁護士にも得意とする専門分野があるため、風営法が気になるホストクラブ・キャバクラの経営者様はナイトビジネス業界に強い弁護士に相談しなければならない。
グラディアトル法律事務所に所属する弁護士は風営法だけでなく周辺知識も豊富なので、キャバクラの経営者様のお役に立てると自負している。