「○○ちゃん裏引きやってるでしょ。お客さんとのやり取りをスマホチェックしたら分かるからね」
裏引きの疑惑があったり、実際に裏引きをやっていたキャストを見つけたときの対処で悩んだ経験のある風俗店の経営者も多いのではないでしょうか。
裏引きは刑事でも民事でも違法です。
しかし、お店側はキャストが違法な行為としたからといって何をしても許される、というわけではありません。
そこで、今回は裏引きを事前に防ぐ風俗店側の対処法や、実際に裏引きが起きてしまった場合の損害賠償金の回収方法などを取り上げました。
是非この記事をご覧になって風俗店の健全な経営の参考にしてみてください。
色んなサイトで解説されている裏引きですが、風俗業界に数多く顧問先を持っている弊所独自の観点から裏引きがどういうものかを解説します。
ここで重要なのは、お店を通さずにお金を貰っていることです。
なぜ重要なのかというと、お店側が広告費とかを使って集客しているのに、キャストが裏引きをするとお店側としては売上は上がらずに経費だけかかってしまうからです。
お店にとっては、裏引きをされるだけで赤字になってしまいます。
裏引きと裏オプションとは似て非なるものです。
裏引きが風俗店に在籍するキャストがそのお店の利用客に対して個人的にサービスを持ちかけるものに対して、裏オプションはお店のいわば公認(対外的には非公認)の下に、キャストがサービスを提供してお金を貰うことです。
なぜ、裏オプションがあるのかというと、リフレやメンエスのように本来であれば風俗サービスを提供できない業態だけども集客のために、かつ警察に摘発されないようにこっそり行われる必要があるからです。
この2つは、キャストが直接お客からお金を貰うことについては同じですが、それをお店側が黙認しているかどうかで大きな違いがあります。
裏引きと聞けば単にキャストがお金を受け取っているようにも聞こえますが、その実態はお店側に対して法律上の責任を負うばかりか、警察に逮捕されてしまうリスクもあります。
キャストと客側それぞれの観点から、両者がどのような責任を負うことになるか解説します。
出勤中のキャストがお店に内緒で裏引きや裏オプション等を提供してその対価をもらい、そのことをお店に申告しなかった場合には、女性のキャスト自身が背任罪(刑法247条)や業務上横領罪(刑法253条)に該当する可能性があります。
背任罪では5年以下の懲役または50万円以下の罰金が、業務上横領罪では10年以下の懲役が予定されています。
客側としても、単にキャストの裏引きに応じただけで法的責任を問われることが少なからずあります。
もっとも、客側が裏引きによって負う責任の中でも、刑事責任(背任罪等の共同正犯)を警察に追求される可能性は一般的にみれば低いでしょう。
風俗店の経営者や店長が、裏引きを防ぐには以下のような方法があります。
①キャストに対して業務委託契約書で罰則等を設けておく
②既に雇い入れているキャストに対しても改めて誓約書にサインをしてもらう
③利用客に対しては同意書やHP等で違反した場合の罰金等を明示しておく
④キャストへの指導を徹底する
⑤夜の業界に強い弁護士と顧問契約をしておく
それでは上記の対処法を具体的にみていきましょう。
裏引きに対する事前の抑止力として、風俗店側としては業務委託契約書等で裏引きをした場合の罰金等(専門的に言えば「損害賠償額の予定」)の罰則を設けておくことが理想です。
実際の裏引きは密室で行われるため風俗店側がキャストの裏引きをすべて把握することは困難です。
民事上の賠償請求であれば、キャストの裏引きによってどれくらいの損害がお店側に生じているかを風俗店の経営者が立証しなければなりません。
しかし、把握の難しさから裏引きに対する罰金を一律に規定して立証の負担を軽くする方針の方が経営もスムーズにいくことでしょう。
ここで注意したいのが、ガールズバーやキャバクラの在籍キャストとは労働契約になっていることが多いです。
詳細は別記事で解説しようと思いますが、労働契約の場合には、罰金や損害賠償額の予定をしても無効になります(労働基準法16条)。
罰金等の金額を設定する際にも、過度に高額な金額にすると契約自体が無効になってしまう可能性が高くなります。
そこで、金額としては「裏引きによって生じた損害額の2倍」程度を目安にすると良いでしょう。
既存のキャストと上記のような書面を交わしていない場合には、改めて罰則条項のある誓約書にサインをしてもらいましょう(キャストとの契約形態によって、業務委託契約書や労働契約書を巻き直すのもいいでしょう。)。
罰則について風俗店とキャスト両者の合意がなくそのような書面を交わしていない場合には、風俗店側としては実際に生じた損害を立証して請求しなければ裁判に勝つことが難しくなるからです。
仮に書面で交わさなくとも、LINEやメールで既存のキャストから合意をとりましょう。
その際の文面としては、
「○○(キャスト名または本名)が、△△店の承諾なく利用客にサービスを提供し、その対価を当該客から受け取り、その事実を△△店に申告しなかった場合には、○○は、△△店に対し、金●万円を支払う。」
というメッセージをキャストに対して送り、それに対してキャストの合意や承諾をとってください。
これまでにも説明したとおり、裏引きに対する損害の立証は難しく、利用客が1回だけしか裏引きに応じていなかった場合などは、お店側の損害も微微たるものになってしまいます。
そうすると、請求の手間や、弁護士費用などの方が多額になってしまい基本的には赤字になります。
それを防ぐためには、キャストのケースと同様に、予め受付時の同意書や誓約書、HP等の記載で裏引きをした場合の罰金を明示しておいてください。
そうすることで、客はお店を利用時に、裏引きに対する罰金に同意したことになる可能性が高いので、損害賠償の請求に関する手間が減らせます。
同意書・誓約書に追加する文言テンプレート
同意書や誓約書内に記載する文言としては、
「○○(利用客の氏名)が、△△店の承諾なく△△店に在籍するキャストからサービスを提供され、その対価をキャストに支払い、それらの事実を△△店に申告しなかった場合には、○○は、△△店に対し、金●万円を支払う。」
というような文言が有用かと思います。
HP等での記載例
HPで記載する際には、一般的な風俗店では盗撮や盗聴を禁止して罰則を設けていると思いますので、そこに並列して裏引きを禁止する文言を入れることをおすすめします。
HP等で上記のような堅苦しい文言を入れるスペースはないと思うので、
「裏引きが発覚した場合は、その料金の倍額をお支払いいただきます。」
と簡単に記載しておくだけで、同意の有無を争い易くなります。
入店時にキャストに誓約書等へのサインをしてもらうだけでなく、風俗店側としてはキャストに対して定期的な講習をして、裏引きをやってはダメなことなんだと意識付けを行うのがよいでしょう。
そうしないと、入店時に契約をしたさいの約束なんて日にちが経てばキャストは忘れてしまったり、違法性の認識が薄れてしまっている可能性があります。
そこで、定期的に裏引き=違法なんだということをキャストに指導することで、キャストの意識を改善させるようにしましょう。
東京だけでも星の数ほどの弁護士がいますが、風俗業界に特化した弁護士というのはそうそういません。
というのも、弁護士にはそれぞれ得意分野というものがあるのですが、風俗業界の法律問題では、一般的な民事事件や刑事事件とは違った法律を使う機会が多いです。
そのため、一般的な事件を扱う弁護士では風俗業界にまつわるトラブルを解決できる知識と経験が浅いのもまた事実です。
そこで、夜の業界に強い弁護士と顧問契約をしておくことで、気軽に相談できる環境を作っておくのもおすすめです。
とりわけ、風俗業界にまつわるトラブルは深夜に起こることが多いため、通常の法律事務所ですと対応できないことがほとんどです。
弊所では、顧問契約のプランによって営業時間外のLINEや電話対応も可能です。
そんなときにLINEや電話で対応してもらえる弁護士と契約をすれば、いざというときに心強い味方になること間違いなしでしょう。
ちなみに、弊所でも顧問契約のプランによって営業時間外でのLINE対応を行っております。
弁護士のLINEを知りたい場合には、是非顧問契約を検討してみてください。
では、実際に裏引きが起きてしまったときに風俗店の経営者や店長が取るべき行動はなんでしょうか。
単に、キャストと客を恫喝して罰金を取るだけでは、警察介入のリスクから経営者や店長が逮捕されて芋づる式に売上金まで没収、なんていう事態にもなりかねません。
そこで、裏引きが起きた場合の行動指針を確認しておくことで、逮捕のリスクを極力減らしていきましょう。
事前に契約書等で裏引きに罰金が発生することにサインをもらっていたとしても、裏引きが発覚した場合には改めて合意書や示談書等で、裏引きをしたという事実をキャストに同意してもらいましょう。
前もって契約書にサインしてもらえれば十分でしょ!と思うかもしれません。
しかしながら、現場を抑えるかキャストに認めさせない限りは、裏引きがあった事実を客観的に証明することは難しいです。
そこで、改めて裏引きをしたという事実をキャストに認めさせサインをもらうことで、証明の難しさをクリアします。
また、予め決めておいた罰金が過大であっても、適正な金額で改めて合意をすることで有効性が認められやすくなります。
そのため、お店側としてはまず第一にキャスト(と利用客)に認めてもらうことを優先しましょう。
弊所では、たとえ現場に行かなくとも、担当弁護士が電話越しにキャストや利用客に対して状況説明と合意書締結のお手伝いをすることも多々あります。
1pointアドバイス「裏引きの証拠をおさえる!」
裏引きは、とにかく裏引きがあったという事実を証明することが一番の難関になることでしょう。
その証明にあたっては、キャストが利用客に裏引きを持ちかけた映像や音声データがあれば良いですが、個室などに防犯カメラを設置することにはかなりのリスクがあります(各都道府県の迷惑防止条例における「盗撮」に該当する可能性が高いからです)。
そこで、裏引きがあったその現場で、キャストや客に裏引きがあった事実を認めた書面を一筆書いてもらうのが得策です。
形式上は、誓約書や示談書、確認書、覚書など色々ありますが、書面のタイトルや書式などは正直なんでもいいです。
内容が大事なので、5W1Hを意識した上で、法律上の要件を満たすような文言を入れた書面にしてください。
是非このテンプレを使ってみてください。
「○○(キャスト名)と□□(客の氏名)は、△△店の客室において、△△のサービスを利用せずに、独自にサービスの提供とその受領、及び、その対価としての金銭の授受を行ったことを認め、それにつき、○○と□□は、△△店に対し、各々金●万円を令和 年 月 日までに支払う。
氏名:○○
住所:
氏名:□□
住所:
氏名:△△
住所 」
といった文言にサインをしてもらえれば、裏引きを行ったことの自白とそれに対する損害賠償を支払うことの合意がとれることになります。
これにより、裏引きの証拠として映像や音声データがなくとも、裁判上でも有益な証拠を獲得できます。
この文言はあくまでサンプルですので、お店毎に適宜変更してお使いください。
とんでしまったキャストがどこにいるか分からない場合は、まずは身分証の住所に内容証明などを送ってみましょう。
そうすることで、お店側としても裏引きを許さない姿勢を他のキャストに示すことができますし、とんでしまったキャストから連絡がくる可能性もあります。
そこに記載されていた住所が実家の場合には、本人と連絡が取れない場合に限って家族に事情を説明する、といった方法をとることも少なくありません。
これは、裏引き=風俗店に在籍している、という事実を第三者に話すこと自体が名誉毀損に該当することもあり、それを避けるためのリスクヘッジです。
電話番号から利用客の個人情報を取得する方法は、警察と弁護士しか認められていませんが非常に強力な手段となります。
一方で、お店から利用客に電話やSMSにて罰金を請求することも可能ではありますが、素直に罰金を支払ってくれない利用客もいます。
風俗店側としては電話番号しか客の情報を把握していない場合に、氏名住所を割り出す手段として弁護士に依頼する他ありません。
また、電話番号のみでは裁判を起こすことができないため、どうしても利用客に罰金を請求したい、ということであれば弁護士に依頼することが必須となります。
ここまで裏引きにどう対処していけばいいか、またその際のポイントなどを説明してきましたが、お店側だけでは対処することが難しいケースもよくあります。
そんなときに、弁護士に相談することを考えると思いますが、弁護士は果たして何をしてくれるのか?
どれくらいの費用がかかるのか?
そんな疑問にお答えしていきます。
まず、弁護士としては裏引きに対する罰金を定めた契約書等の全てに目を通します。
弁護士が一からその契約書を作るケースもありますが、元々お店が使っている契約書をチェックすることも多々あります。
契約書をチェックしたうえで、裁判で不利になるような表現や条項があれば削除・修正していきます。
また、「今回のケースでは、○○のような条項を入れた方が良いですよ」とアドバイスをすることもあります。
風俗店の業態に即した契約書にはいくつかのパターンがあるので、やはり夜の業界に詳しい当事務所の弁護士が契約書をチェックするのが最適です。
その際の費用として当事務所では、
・一から契約書を作成する場合には10万円〜
・元々お店側が持っている契約書をチェックする場合には5万円〜
相談自体は無料で案内しているため、気軽にお問い合わせください。
裏引きをキャストに認めさせる際の示談交渉等を弁護士が代理で行うことも多々あります。
これは、法律に詳しくないお店の経営者や店長がその交渉を行う際に、密室でキャストに怒鳴ったりしながら示談交渉を進めることで、示談が無効になったり、それをきっかけに経営者や店長が逮捕されるリスクを回避する意味合いもあります。
また、裏引きの当事者でない第三者=弁護士が間に入ることで、キャストとしても冷静にお店側と話し合うことでき、納得して示談書にサインをしてもらうことができます。
この交渉は、キャストに限らず利用客とお店側の示談交渉においても同じことがいえますね。
その際の費用として弊所では、20万円(税別)となります。
もっとも、裏引きトラブルが夜に起きた際などは、いきなり弁護士が対応することも難しいため、顧問契約をしていただいているお店限定での対応になる可能性もあります。
当事務所では風俗トラブルを数多く扱っており、その経験と実績からスピーディーに裏引きについても解決できるよう取り組んでいます。
最後に今回の記事をおさらいしてみましょう。
◆裏引きとは
・風俗店に在籍するキャストがお店に内緒で客にサービスを提供して、お金を貰う行為
・裏オプションとは違う
◆裏引きをすると逮捕されるリスクがある
・裏引きをしたキャストには刑法でいう背任罪や業務上横領罪が成立する可能性がある
・客が裏引きに応じた場合には不法行為や、背任罪等の共同正犯になる可能性がある
◆裏引きを「事前」に防ぐための風俗店の5つの対処法
①キャストに対して業務委託契約書で罰則等を設けておく
②既に雇い入れているキャストに対しても改めて誓約書にサインをしてもらう
③利用客に対しては同意書やHP等で違反した場合の罰金等を明示しておく
④キャストへの指導を徹底する
⑤夜の業界に強い弁護士と顧問契約をしておく
◆裏引きが起きてしまった場合の風俗店の3つの対処法
・在籍キャストに対しては合意書や示談書等にサインをしてもらう
・とんだキャストに対しては入店時の身分確認書類に基づいて連絡をする
・利用客に対しては、予約時の電話番号から氏名と住所を割り出すことができる
◆裏引きトラブルで弁護士を入れる2つのメリット
メリット1 裁判で有利になる契約書が作成できる
メリット2 キャストとの交渉時における脅迫・恐喝での逮捕のリスクを限りなく低くする
この記事を是非参考にしてみてください。