デリヘル等の風俗店経営者らが売春防止法違反で逮捕されることがある。
大手風俗グループが一斉摘発・逮捕される事例など、定期的に売春防止法違反の逮捕事例がニュース報道されている。
・そもそも風俗って売春ではないの?
・どういう場合に売春防止法違反で逮捕されるの?
・売春防止法違反で逮捕されないためにやるべきことは?
今回は、そんな疑問にお答えししつつ、
デリヘル等の風俗店経営者が売春防止法で逮捕・摘発されないための対処法を弁護士が解説をする。
売春防止法とは、昭和31年に作られた法律であって、「売春が人としての尊厳を害し、性道徳に反し、社会の善良の風俗をみだすものであることにかんがみ、売春を助長する行為等を処罰するとともに、性行又は環境に照して売春を行うおそれのある女子に対する補導処分及び保護更生の措置を講ずることによつて、売春の防止を図ることを目的とする」(売春防止法1条)法律だ。
ここでいう「売春」とは、対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交することをいう(売春防止法2条)。
要するに、「売春」といえるためには、以下の3つの要素を充たす必要がある。
1 お金をもらったり、お金をもらう約束をして
2 不特定の人と
3 性交(セックス)をする
風俗店との関係で言えば、お金をもらって不特定の客を相手にしているといえるだろう。
問題は、性交(セックス)の部分だ。売春防止法では、「性交」と記載されているので、フェラや素股などの性交類似行為は対象外だと考えられる。
風俗店との関係では、本番行為をしているかどうかが問題になるのだ。
全く本番をしていない風俗店であれば売春防止法違反で逮捕されることはないだろう。
前述のように、金をもらって不特定の人と性交するのが「売春」だ。
しかし、売春防止法は全ての売春に罰則を科しているのではない。単なる売買春に罰則はないのだ。
そもそも、売春防止法の保護法益(守るべきもの)は、売春助長行為のもたらす人としての尊厳という個人的法益と社会の善良の風俗という社会的法益だ。
売春を助長することによって、売春している個人の尊厳を侵害してるでしょ。それに社会を悪くしてるよね。
この2つが売春の悪いことだ! と定めているのだ。
そのため、売春を助長する行為を処罰対象としている。
具体的には、以下の行為を禁止している。
【売春防止法違反で逮捕される行為】
・公衆の目に触れるような場所での売春の勧誘行為
・周旋(しゅうせん、あっせん行為とほとんど同じ意味です。)
・困惑や暴行・脅迫により売春させる行為
・売春をさせる目的での前貸し等の利益供与
・売春をさせる内容の契約をする行為
・売春を行う場所の提供
・管理売春(管理する場所に居住させて売春させることを仕事とする行為)
・売春場所の提供や管理売春を仕事とする人に金や土地・建物を提供する行為
風俗で売春防止法違反が問題になる場合とは、本番行為がある場合だ。
そして、風俗店が売春防止法違反で逮捕される場合には、売春の周旋(あっせん、売春相手の紹介)で逮捕されることが多い。
なお、ソープランドや箱ヘルなどの店舗型風俗は、売春場所の提供により逮捕・摘発されることが多い。
すなわち、風俗店の経営者や従業者が、客に対して売春相手として女性キャストを紹介したり、売春する場所として風俗店のプレイルームを提供したりするのが売春防止法に違反するということだ。
風俗経営者を売春防止法違反になるには売春を周旋(あっせん)したことの故意が必要となる。
具体的には、風俗店側、経営者側が女性キャストが本番をしていると知りつつ(認識)、これを認めている(認容)ことが必要だ。
風俗店経営者が風俗嬢に本番をさせていた場合には、問題なく売春あっせんの故意が認められる。
他方で、実際のデリヘル経営者の売春防止法違反の逮捕事例でよくあるのが、黙認というやつだ。
未必の故意という言葉を聞いたことがあるだろうか?
未必の故意とは、法律に違反する事実が起こるかもしれない(可能性の認識)が止むを得ない(認容)という心理状態だ。
殺人罪で考えてみると、殺傷能力の低いカッターで切りつける場合に、当たりどころが悪ければ被害者が死んでしまうかもしれないけれど、死んでしまっても止むを得ないと考えている場合には、未必の故意があるといえるのだ。
売春防止法違反でいえば、風俗の女性キャストが本番をしているかもしれないが止むを得ない。黙認しているよ。という場合には、未必の故意が認められて有罪になりうるのだ。
風俗の売春防止法違反の事案では、この本番の認識、黙認、未必の故意が争点になることが多い。
その際に、風俗店経営者が自衛をするため、逮捕されないためにやるべきことを以下で説明する。
実際に、デリヘル経営者らが売春防止法違反で逮捕された事例については、以下の記事を参照してほしい。
デリヘル等の風俗店経営者が売春防止法違反で逮捕され、有罪になる場合として多いのが、女性キャストの本番を知りつつ黙認していた場合や、本番をしている可能性を知りつつ黙認していた場合だ。
すなわち、売春防止法違反で逮捕されず、有罪にならないようにするためには、本番を黙認していない!といえることが重要だ。
要するに、本番を厳格に禁止していたといえればいいのだ。
具体的には、女性キャストの入店時、入店後、退店時の3つのフェーズで本番を厳格に禁止した証拠を残すとともに、本番を許容していたと疑われるような証拠を排除する必要がある。
風俗店に女性キャストが入店するときに、業務委託契約書や誓約書を作成していると思う。
その契約書などに必ず、本番行為を禁止する旨の条文を入れよう!
可能であれば、本番行為が発覚した場合には本業務委託契約を解除する旨の条文も入れておきたいところ。
できれば、内勤男性やドライバーにも本番行為をさせない、発覚した場合には必ず報告するなどのルールを定めて書面化しておくことが望ましい。
サービス内容についての技術講習を行ったり、講習動画を作成したり、業務マニュアルを作成しているデリヘル店も多いだろう。
このような講習において、店がどのようなサービスを想定しているのか明記し、そこに本番行為の禁止を明記しておくことも重要だ。
誓約書書いてたって、そんなん読んでないんでしょ?女の子は認識してないでしょ?と警察に言われてしまうことが多い。
そのため、待機所に本番禁止ルールの張り紙をする。定期的に女性キャストにルールの周知(LINEなど)をすることも重要だ。
HPで本番禁止を周知する。待合室に張り紙をする。
プレイ前に店のルールを書いた紙にサインをさせるなど、客側人も本番禁止を周知し、その証拠を保存しておこう。
ホスラブや爆サイといった掲示板に、風俗店の店スレやキャストの個スレが立ち、さまざまな書き込みがなされていることが多い。
ネット上の掲示板は、警察も見ている。
「本番できた」等の書き込みが多いと捜査対象となってしまうリスクがある。そのため、本番に関する書き込みがあれば速やかに削除すべきだ。
本番店と勘違いした客からキャストが本番強要の被害にあうリスクを減らすことにもなるだろう。
グラディアトル法律事務所では、ホスラブ・爆サイともに1レスあたり5万5000円で削除対応可能だ。
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風俗店の女性キャストが本番強要被害にあうこともあるだろう。
その際には、本番強要被害に対して、断固とした処置(被害届の提出や損害賠償請求)をして、その証拠(示談書など)をしっかり残しておこう。
本番を認めている店であれば本番強要相手に刑事告訴や損害賠償請求などはしないでしょ。ということで、売春防止法違反を否定する有利な証拠になるのだ。
これが最重要だ。
色々やってるみたいだけど、どうせ本番黙認してるんでしょ?と言われることが多い。
そこで一番重要な証拠は、本番が疑われたり発覚したりした女性キャストに対して厳格な対応を取っていることだ。
具体的には、本番行為の有無の聴取(LINE等で証拠を残す)、本番が発覚した場合に厳重注意をする、違約金を請求する、契約を解除(クビにする)するなどが重要だ。
そして、これらの行為内容について、録音やLINE等の文字で証拠化する、合意書などを作成して証拠化するなど、日頃から売春・本番を黙認していないという証拠を作っておくことが重要だ。
また、売春・本番をしたキャストをクビにしたのであれば、従業者名簿の退職理由のところに「本番・売春行為をしたため」と記載しておくのが良いだろう。これらをクビリストを保管しておくのも良い対策だ。
本番・売春の調査のために、いわゆる「忍者」「ミステリーショッパー」を利用して調査するのもよいだろう。
本記事では、デリヘル経営者が売春防止法違反での逮捕を避けるための7つの対策についてお伝えした。
グラディアトル法律事務所では、大手グループを含む数百店舗の風俗店の顧問弁護士を担当している。
本記事の記載内容についても、顧問先からよく聞かれる質問や、実際に売春防止法違反で逮捕・摘発された店舗の刑事弁護の中で経験上重要だと考える点を記載した。
実際に、グラディアトル法律事務所の顧問先の風俗店では、内偵捜査に入られたものの、上記証拠を保持していたことにより売春防止法違反の事実が認められず刑事事件化しなかったケース、不起訴になったケースがある。
また、売春防止法に限らず、風営法、職安法など、風俗店を経営するために必要な法律知識やトラブル解決法についての経験が豊富だ。
デリヘル等の風俗店を経営している方は、是非一度、ご相談ください。