デリヘル等の風俗店では、さまざまなトラブルが生じます。
当法律事務所の若林翔弁護士がYouTubeの「ホンクレch」に出演し、よくある風俗トラブルについて解説しました。
「ホンクレch~本指になってくれますか?~」は、2020年2月、風俗業界をもっと明るく!をテーマに、デリヘル嬢「まりてん」とM性感嬢「すーちゃん」の風俗嬢2人組で立ち上げたYoutubeの人気チャンネルです。
今回の動画では、お二人から以下のような風俗トラブルについての相談を受け、弁護士が解説しています!
などなど。
本記事では、YouTube動画の中で解説しきれなかった点について詳しく解説をしていきます。
まずは、動画をご覧ください。
風俗トラブルで最も多いと言っても過言では無いトラブル類型は、盗撮トラブルです。
近年のスマートフォンの普及や高性能・小型カメラの普及などから、盗撮被害は増えてきています。
そして、盗撮被害にあってしまうと、その盗撮動画が流出してしまう危険性がつきまといます。盗撮されてしまった風俗店のサービス中の動画が一度インターネット上で公開されてしまうと、ネット上から完全に消去することは難しくなってしまいます。
インターネット上にアップロードされてしまった動画自体を削除することはできますが、その動画を保存した別の人が再度アップロードしてしまう危険性があるからです。
そのため、風俗嬢や風俗店経営者にとって、盗撮の被害は甚大です。
まずは、盗撮を予防することが大切になります。
盗撮を予防するために、まずは盗撮犯の特徴や過去の盗撮犯発見事例を学びましょう。
今まで、盗撮犯を発見できた事例では、以下のような事情がありました。
こららは一例ですが、盗撮犯の傾向として、知っておくと良いでしょう。
次に、基本的な盗撮の予防法について説明します。
盗撮機器となりうるスマートフォンや小型カメラの可能性があるものを遮断しましょう。
具体的には、スマホには貴重品を入れる袋に入れてもらうようにする、ジャケットはポケットを壁に向けて掛け、鞄には布をかける、などです。
加えて、YouTube動画でも、盗撮に使われた車の鍵型カメラやスプリンクラー型のカメラの話題が出ましたが、どのような小型カメラが盗撮に使用されるかを知っておくことも予防法として大切です。
盗撮カメラの種類や盗撮予防法の詳細については、以下の記事をご参照ください。
前述のように、デリヘル等の風俗店での盗撮事件は増えてきています。
警察も盗撮事件の増加傾向を受けて、取り締まりの強化をしています。
ここ1〜2ヶ月だけでも、デリヘルでの盗撮の逮捕事例が4件あります。
盗撮事件においては、盗撮をした証拠が盗撮犯のスマホや盗撮用カメラに保存されていることが多く、それが直接的な証拠になるため、警察も逮捕しやすいのです。
盗撮犯は、主に、各都道府県の迷惑防止条例によって逮捕されます。
もっとも、条例によっては、風俗店やデリヘルで使用する住居やホテルでの盗撮が処罰対象になっていない場合もあるので注意が必要です。
条例が定める処罰される盗撮の場所が「公共の場所」などに限定されている場合には、風俗での盗撮が処罰対象外になっています。なぜなら、風俗店のプレイルーム、住居やホテルは公共の場所ではないからです。
改正後の東京都の迷惑防止条例のように、「住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所」が対象になっていれば、風俗での盗撮も処罰対象となります。住居は例示されており明らかだし、プレイルームやホテルについても、住居同様に「人が通常衣服の全部又は一部を付けない状態でいる」可能性がある場所だからです。
この場合には、デリヘル等の風俗での盗撮犯が逮捕される可能性があります。
盗撮被害にあったお店の都道府県の迷惑防止条例が風俗店のプレイルームやデリヘルで利用する自宅やホテルの部屋での盗撮が処罰対象外の場合には、軽犯罪法により逮捕される可能性があります。
東京都:公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例
(粗暴行為(ぐれん隊行為等)の禁止)
第5条第1項 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。
(1) 省略
(2) 次のいずれかに掲げる場所又は乗物における人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。
イ 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所
ロ 公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所又は乗物(イに該当するものを除く。)(罰則)
第8条第2項 次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
(1) 第5条第1項(第2号に係る部分に限る。)の規定に違反して撮影した者第7項 常習として第2項の違反行為をした者は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
軽犯罪法
第一条 左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
二十三 正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者
デリヘル等の風俗での盗撮と逮捕・犯罪該当性については、以下の記事もご参照ください。
ここで、直近のデリヘルでの盗撮逮捕事例を見てみましょう。
多くの事件では、盗撮被害にあった風俗嬢や、風俗店のスタッフが110番をして、駆けつけた警察官が現行犯逮捕するというケースが多いです。
もっとも、前述のように、盗撮については、その直接の証拠が映像として残りやすいので、証拠が残っていれば現行犯ではなくても逮捕される可能性があります。
デリヘル嬢を無断撮影 新潟県警の警察官を盗撮疑いで逮捕
新潟県警は11日、女性の裸を盗撮したとして、長岡署地域第一課の〇〇巡査(23)=小千谷市若葉=を県迷惑防止条例違反の疑いで逮捕した。取り調べに対し「間違いありません」と容疑を認めている。
調べによると、〇〇巡査は3月31日午後4時ごろまでの約1時間20分の間に、中越地区のホテル室内でデリヘル嬢の裸を無許可で撮影した疑い。〇〇巡査のスマートフォンに当時の映像が残されていた。この日は非番だった。
県警は余罪があるとみてさらに捜査を進めている。
県警の阿部吉晴首席監察官は「警察官がこのような事案で逮捕されたことは極めて遺憾で、被害者や県民に深くおわび申し上げる」と謝罪。「捜査・調査を尽くし、明らかになった事実に即して厳正に対処する」と述べた。
2021.5.11 https://www.sankei.com/affairs/news/210511/afr2105110009-n1.html
その他の直近の風俗盗撮逮捕事例については、以下の記事をご参照ください。
本番強要などの本番トラブルは、盗撮に次いで多い風俗トラブル類型です。
多くの風俗店では、本番行為(性行為)が禁止されています。
また、売春防止法は、売春を禁止し、売春のあっせんなど、売春を助長する行為を処罰対象として規定しております。そのため、デリヘル等の風俗店の経営者は、本番行為を容認していると、売春防止法違反で逮捕・摘発されてしまう恐れがあります。
売春防止法
(定義)
第二条 この法律で「売春」とは、対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交することをいう。(売春の禁止)
第三条 何人も、売春をし、又はその相手方となつてはならない。(周旋等)
第六条 売春の周旋をした者は、二年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
2 売春の周旋をする目的で、次の各号の一に該当する行為をした者の処罰も、前項と同様とする。
一 人を売春の相手方となるように勧誘すること。
二 売春の相手方となるように勧誘するため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと。
三 広告その他これに類似する方法により人を売春の相手方となるように誘引すること。
風俗での本番行為であっても、一般の方への被害と同様に、強制性交罪の構成要件を満たせば、強制性交罪になります。
強制性交罪は、刑法における強姦罪が改正されたものです。
この改正によって、非親告罪となり、法定刑が3年以上の有期懲役から5年以上の有期懲役へと重罰化されるなど厳しい処罰が規定されました。
(強制性交等)
刑法第百七十七条 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛こう門性交又は口腔くう性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。
風俗での本番強要が強制性交罪に該当するかどうかは、強制性交罪の構成要件のうち「暴行」を用いて性交をしたかどうかが問題になることが多いです。
ここでいう暴行とは、被害者の反抗を著しく困難にする程度の不法な有形力の行使のことをいいます。
被害者である風俗店のキャストが、本番強要に対して抵抗して拒否することが著しく困難な程度の暴行を加えるような場合に、強制性交罪の「暴行」に該当することになります。
キャストの腕や体を押さえつけるような場合が本番強要での暴行の典型例でしょう。
強制性交致傷罪は、強制性交を犯した犯人が、その際に、被害者に怪我をさせる場合の犯罪です。
強制性交致傷罪は、無期又は六年以上の懲役という重罪です。
(強制わいせつ等致死傷)
刑法第百八十一条 2 第百七十七条、第百七十八条第二項若しくは第百七十九条第二項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は六年以上の懲役に処する。
強制性交と致傷(怪我)の間には因果関係が必要ですが、この因果関係は広く認められる傾向にあります。
具体的には、致傷の結果は強制性交に随伴して又はそれを実行する際に生じた結果であれば足りると考えられています。
風俗での本番強要で言えば、本番強要の際に、手や体を押さえつける際に怪我をさせた場合や、本番強要後に逃げようとしてキャストを突き飛ばして怪我をさせた場合などが因果関係が認められる例といえるでしょう。
直近でも、デリヘルで本番強要をした際に、キャストの手を押さえつけて怪我をさせ、強制性交致傷罪で逮捕された事例があります。
デリヘル女性に性的暴行でけが、容疑で男逮捕 唐津署
東松浦郡玄海町内の住宅で20代女性に性的暴行を加えてけがをさせたとして、唐津署は5日、強制性交致傷の疑いで、自称福岡県春日市大土居2丁目、建設作業員の男(64)を逮捕した。
逮捕容疑は4日午前0時55分ごろから同1時55分ごろまでの間、男が所有する東松浦郡玄海町今村の住宅で、デリバリーヘルスの20代女性の両腕を押さえ付けるなどして性的暴行を加え、左腕などに約10日間のけがを負わせた疑い。「腕をつかんだだけで、けがをさせるつもりはなかった」と一部否認している。
同署によると、女性の送迎を務める男性から同署に通報があった。2人は初対面だったという。
2021,5,6 佐賀新聞LiVE
https://www.saga-s.co.jp/articles/-/671843
この事件の詳細や、本番強要と強制性交致傷罪については、以下の記事をご参照ください。
リンク:デリヘル本番強要逮捕事例【風俗トラブル/強制性交致傷罪】
盗撮被害や本番強要被害といった風俗トラブルの被害にあった場合には、加害者である客に対して、損害賠償請求ができます。
風俗店のHPなどでは、罰金を請求しますと記載されていることもありますが、ここでいう罰金も法律的にいえば、損害賠償のことだと考えられます。
前述のように、盗撮被害や本番強要の被害にあった場合には、警察に被害届を提出したり刑事告訴をしたりして、刑事事件化をして加害者の逮捕や処罰を求めることもできます。
一般に、「示談で済ます」という場合には、このような刑事事件化を求めずに、当事者間で損害賠償金額について話し合いをして解決することをいいます。
また、刑事事件化し、加害者が逮捕された後に、加害者についた弁護人から示談の申し入れがあることも多いです。
逮捕された被疑者にとっては、示談を成立させることにより、警察署の留置所や拘置所から早く出られる可能性が高まり、最終的な量刑が軽くなるなど、被疑者にとって示談をするメリットがあるからです。
風俗トラブルの被害にあった場合の損害賠償請求の法的根拠は、不法行為に基づく損害賠償請求です。
不法行為とは、民法709条に規定されており、故意や過失により、他人の権利を侵害した場合に、その生じた損害の賠償を請求できるというものです。
風俗トラブルの場合においても、盗撮や本番強要という故意による違法行為によって、キャストの権利を侵害し、損害を発生させているので、不法行為に基づく損害賠償請求ができます。
請求できる損害としては、慰謝料や、休業せざるを得なかった日数分の休業損害などが考えられます。
民法
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。(財産以外の損害の賠償)
第七百十条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。
以上でみてきたように、盗撮や本番強要といった風俗トラブルの被害にあった場合には、不法行為に基づく損害賠償請求ができます。
では、いくら請求できるのでしょうか?
示談金の相場はいくらくらいでしょうか?
盗撮が未遂に終わったケースと複数件盗撮されてネット上にUPされてしまったケースでは損害の大きさは違うでしょう。また、本番の同意が争われるようなケースと本番強要の際に怪我をさせて強制性交致傷罪が成立するようなケースでも損害の大きさは違うでしょう。
このように、具体的な事件の内容によって、妥当な損害額は異なってきます。
数多くの風俗トラブルでの損害賠償請求・示談の交渉や裁判を扱ってきた当法律事務所の弁護士の経験からすると、相場としては、50万円〜100万円の間の金額で示談が成立している事例が多いです。
もっとも、数万円での示談が成立するケースや、数百万円で示談するケースもあり、事案次第で金額は変わってはきますが。
損害額の判断要素としては、行為の悪質性、結果の重大性などを考慮して検討していくことになります。
そして、示談というのは、あくまでも双方の合意が成立する金額ですので、被害者の怒りや処罰感情の強さ、加害者側の経済事情や反省の程度、社会的地位などによっても示談金額は左右されてきます。
風俗トラブルと損害賠償請求・示談については、以下の記事もご参照ください。
このように盗撮や本番強要の被害にあった場合には、損害賠償を請求することができます。
では、具体的には、どのように請求したら良いでしょうか?
大きく分けて、以下の4つの損害賠償請求の方法があります。
・自分(風俗店の人と一緒に)で請求する
・弁護士に依頼をして請求する
・被害届・刑事告訴をして示談する
・民事訴訟を提起する
自分(風俗店の人と一緒に)で請求する場合には、恐喝や脅迫にならないよう注意が必要です。この点については後述します。
また、証拠をしっかりと確保し、合意が成立した場合には、合意の内容を証拠化するために示談書や合意書を作成することが重要になります。
弁護士に依頼をして請求する場合では、上記のような懸念点についても、専門家である弁護士に任せられるので安心です。また、犯人が逃げた場合においても、弁護士であれば電話番号から犯人の住所等の契約者情報を調査して損害賠償請求ができる場合があるのもメリットです。
被害届・刑事告訴をして示談する場合というのは、前述したように、刑事事件化して、加害者が逮捕されるなどの捜査が開始されると、加害者としては、早期の身柄解放や処罰の減刑のために示談を成立させたいと考え、示談の申し入れをしてくるケースが多いです。
そのため、刑事事件化をして示談で損害賠償を受けて解決するという方法も有効です。
民事訴訟を提起する場合については、犯人である客側との交渉が決裂するなど、当事者間の任意交渉・示談交渉で解決ができない場合に取る手段です。
盗撮や本番強要は、不法行為に該当しますので、損害賠償請求の訴訟を提起してすることができます。
前述のように、風俗トラブルの被害にあった場合には、不法行為に基づいて損害賠償請求ができます。
とはいえ、客を脅すようなことがあってはいけないし、逆に恐喝罪などで逮捕されてしまうリスクもあります。
そもそも、脅迫罪は、人の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫する行為を処罰する犯罪です。
他方で、恐喝罪は、人を脅迫をし、畏怖させて財物を交付させる犯罪です。
損害賠償請求という金銭の交付をさせる場面において、相手を脅迫する場合には、恐喝罪に該当することになります。
刑法
(脅迫)
第二百二十二条 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。(恐喝)
第二百四十九条 人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
YouTube動画でも解説をしましたが、単に損害賠償を請求するだけでは脅迫や恐喝には該当しません。
請求をする側から金額を提示したとしても、それだけでは脅迫や恐喝に該当しましせん。
脅迫や恐喝というのは、相手方に対して害悪を告知することによって成立します。
害悪の告知というのは、金を払わなければ、殴るぞ(身体に対する害悪の告知)、職場にバラすぞ(名誉権に対する害悪の告知)などです。
実際に、風俗嬢や風俗店の店員が風俗トラブルにおいて損害賠償を請求する際に脅迫をしてしまい、恐喝罪で逮捕されてしまった事例もあります。
デリヘル客に恐喝疑い 愛知の経営者逮捕、2億円被害か
愛知県警中署は14日、デリバリーヘルス(派遣型風俗店)の男性客から現金計1千万円を脅し取ったとして、恐喝の疑いで、名古屋市瑞穂区八勝通のデリヘル店経営、〇〇容疑者(38)と店員の男女3人を再逮捕、同県稲沢市の店員の男(40)を逮捕した。
中署によると、〇〇容疑者は複数のデリヘル店を経営。客約200人が、同様の手口で2億円以上の被害に遭ったとみて調べている。再逮捕された4人は容疑を否認するか留保し、逮捕の男が認めている。 5人の逮捕容疑は共謀して昨年11月19日、名古屋市のホテルで、県内の自営業の男性(43)に「本番行為を強要したら100万円請求と誓約書に書いてある」「仕事をできなくする」と因縁を付け、現金を脅し取った疑い。男性は本番行為を強要していなかったという。
https://www.sankei.com/affairs/news/181014/afr1810140011-n1.html
風俗トラブルと脅迫・恐喝については、以下の記事もご参照ください。
ここまでは、盗撮や本番強要などの客との風俗トラブルについて解説をしてきました。
ここでは、風俗店とキャストである風俗嬢とのトラブルについて解説します。
YouTube動画でも話題になりましたが、風俗業界が健全化してきたとはいえ、まだまだコンプライアンスが意識されていない店舗もあります。
そのような店舗から、罰金や違約金という名目で損害賠償を請求され、支払うまで辞めるなと脅されるなどのトラブルも散見されます。
そこで、罰金・損害賠償の有効性と風俗店側がキャストである風俗嬢を辞めさせないことできるか、風俗店の退職代行の問題について解説します。
このような風俗店からの罰金・損害賠償は有効なのでしょうか?
風俗店とキャストである風俗嬢との契約は、個人事業主である風俗嬢との業務委託契約であることが多く、実際の働き方からみても業務委託契約と評価されるものが多いかと思います。
業務委託契約の場合、雇用契約と異なり、労働基準法が適用されず、あらかじめ違約金を定めておくことを禁止した労働基準法16条も適用されません。
労働基準法(賠償予定の禁止)
第十六条 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
そのため、公序良俗に違反するような罰金・違約金規定でなければ、有効になります。
民法(公序良俗)
第九十条 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。
YouTube動画でも例に上がっていた裏引き(うらっぴき。風俗嬢がお店を通さずに客から金銭をもらうこと)などは、店舗に対して損害を与える行為であり、業務委託契約でも禁止されていることが多く、これに違反した裏引きの場合の店からの損害賠償請求は有効になることが多いでしょう。
他方で、1年以内に辞めた場合には罰金100万円という合意であれば、それは無効になる可能性があります。
風俗店とキャストである風俗嬢とのトラブルで多いのが、辞めたくても辞められない。辞めさせてくれないという問題です。
風俗店側は、さまざまな理由をつけて風俗嬢が辞めないよう引き留め、場合によっては脅されてしまうケースもあります。
よくあるケースとしては、以下のようなものがあります。
・風紀違反や爆弾の罰金を完済するまで辞めさせない!
・お金を借りていて辞められない!
・辞めたら水商売で働いていたことを家族や次の職場にバラすと脅された!
・トラブルを解決せず辞めたら家や職場に押しかけられた!
・未払分の給料を払わないと言われた!
しかし、法律上、必ず退職はできます!
業務委託契約であっても、雇用契約であっても、働いている人からの解除は制限されません。
このように、風俗店を辞めたいのに辞められないといった場合には、弁護士に退職代行を依頼するとよいでしょう。
退職代行とは、労働者に代わって退職の意思表示をするサービスのことをいいます。
一般には、会社等の勤務先を辞めたいのに、人手不足などから、強い慰留や長期間かかる引き継ぎを頼まれるなど、辞めたいと言えない環境にある人や辞めたいと言っても辞めさせてくれないという人のために、弁護士が代わって退職の意思を伝え、その後の退職の手続きを代行する業務のことをいいます。
弁護士による退職代行を依頼するメリットとしては、まず、確実に退職ができるという点があります。
加えて、以下のような退職に伴う様々なトラブルについて、弁護士であれば一括して交渉をしていくことができます。
・未払給料の請求
・罰金やバンスなどお金の問題
・脅迫・恐喝
・店舗掲載されているHP・プロフィールの削除
・写メ日記の削除
そのため、キャバクラやホストなどの水商売、デリヘル等の風俗などの夜職を辞めたい場合には、弁護士による退職代行をお勧めします。
風俗や水商売の退職代行についての詳細は、以下の記事もご参照ください。
ここまで、さまざまな風俗トラブルについて解説してきました。
盗撮や本番強要などの客との風俗トラブルにおいては、客の行為が犯罪行為に該当し、場合によっては非常に重い罪に該当することもあります。
また、風俗トラブルの被害にあった場合には、損害賠償請求できることが多いです。
風俗店とのトラブルにおいても、風俗店から請求された罰金や損害賠償金は無効化もしれません。風俗店の人から辞められないと脅されたとしても自由に辞める権利があります。
このように、トラブルにあってしまったとしても、適切な解決方法があります。
知識が無いと、相手の言いなりになり、泣き寝入りしてしまうこともあります。
しっかりと知識をつけて、トラブルに対応できるようにしましょう。
とはいえ、難しい問題もありますし、ご自身や店舗での解決が難しいケースも多いです。
そのような場合には、早期に弁護士に相談することにより、適切に風俗トラブルを解決できることがありますので、一人で悩まず、ご相談いただけたら嬉しいです。