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盗撮動画とリベンジポルノ防止法・わいせつ電磁的記録陳列について

弁護士 若林翔 2021/08/11更新

性行為中の動画やわいせつ動画を配信したり、販売したりして逮捕され、有罪になるケースは多い。

デリヘル等の風俗での盗撮動画をインターネット上で配信・販売するケース

FC2ライブで配信するケース

FC2動画で販売するケースなどだ。

 

これらはわいせつ電磁的記録の頒布罪等で逮捕され、処罰されている。

今回のニュースでちょっと珍しいのは,リベンジポルノ防止法(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)でも逮捕・起訴された点だ。

今回はこの点に重点をおいて解説したい。

なお、デリヘルなどの風俗での盗撮行為自体の違法性、逮捕事例については、以下の記事を参照してほしい。

デリヘルで盗撮をした客は逮捕されるか!?

風俗の盗撮で逮捕された事例【2021年最新版】

リベンジポルノ防止法とは

リベンジポルノは、リベンジポルノ防止法(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)により定義がされている。

リベンジポルノとは、本人が第三者に見られることを認識した上で撮影を許可した画像・動画以外の性交又は性交類似行為などを記録した画像・動画(私事性的画像記録)をインターネット上にアップするなどの方法で公表・流出させることをいう。

性交時の盗撮動画や、風俗店でのプレー中の盗撮動画については、本人が第三者に見られることを認識した上で撮影を許可した画像・動画以外の性交又は性交類似行為といえ、これを公表、公然陳列させることは、リベンジポルノ防止法に違反することになる。

リベンジポルノ防止法では、私事性的画像記録の公表と公表目的での提供について、罰則を設けている。

公表罪・公然陳列罪(3年以下 50万円以下)
公表目的提供罪(1年以下 30万円以下)

(定義)
第二条 この法律において「私事性的画像記録」とは、次の各号のいずれかに掲げる人の姿態が撮影された画像(撮影の対象とされた者(以下「撮影対象者」という。)において、撮影をした者、撮影対象者及び撮影対象者から提供を受けた者以外の者(次条第一項において「第三者」という。)が閲覧することを認識した上で、任意に撮影を承諾し又は撮影をしたものを除く。次項において同じ。)に係る電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。同項において同じ。)その他の記録をいう。

一 性交又は性交類似行為に係る人の姿態

二 他人が人の性器等(性器、肛こう門又は乳首をいう。以下この号及び次号において同じ。)を触る行為又は人が他人の性器等を触る行為に係る人の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの

三 衣服の全部又は一部を着けない人の姿態であって、殊更に人の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀でん部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの

2 この法律において「私事性的画像記録物」とは、写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物であって、前項各号のいずれかに掲げる人の姿態が撮影された画像を記録したものをいう。

(私事性的画像記録提供等)
第三条 第三者が撮影対象者を特定することができる方法で、電気通信回線を通じて私事性的画像記録を不特定又は多数の者に提供した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

2 前項の方法で、私事性的画像記録物を不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者も、同項と同様とする。

3 前二項の行為をさせる目的で、電気通信回線を通じて私事性的画像記録を提供し、又は私事性的画像記録物を提供した者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

リベンジポルノ防止法(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律

なお、リベンジポルノの削除依頼、削除方法については、以下の記事を参照してほしい

リンク:リベンジポルノの削除依頼・犯人特定・発信者情報開示の方法【2021年最新版】

リベンジポルノ防止法等での逮捕・送検時のニュース

女性とのわいせつ動画をネット配信 大阪の男送検

女性との性行為を盗撮した動画がインターネット上で有料公開されたわいせつ動画投稿事件で、兵庫県警人身安全対策課などは12日、わいせつ電磁的記録陳列リベンジポルノ防止法違反の疑いで逮捕した無職の男(30)=大阪市中央区=を神戸地検に送検した。

送検容疑は2017~18年、出会い系アプリで知り合った20代女性との性行為を隠し撮りした動画6本をネットの会員制投稿サイトで有料配信し、公然と陳列した疑い。

捜査関係者によると、容疑者は13年以降、同サイトに約200本の動画を投稿。大半は無修正のわいせつ動画といい、1本当たり1500~2千円程度で配信し、計約8800万円の売り上げを得ていたとみられる。

県警は、今回摘発した動画以外の投稿も、わいせつ電磁的記録陳列容疑に該当するとみて調べる。

被害女性は他にも複数いるとみられるが、投稿された動画が別のサイトに拡散されると、半永久的にネット上にとどまる恐れもある。

https://www.kobe-np.co.jp/news/backnumber2/201907/0012571956.shtml

 

リベンジポルノ防止法等での判決時のニュースと裁判例

女性との性行為を盗撮、ネットで有料配信 大阪の31歳男に有罪判決

女性との性行為を盗撮し、インターネット上で有料配信したとして、わいせつ電磁的記録陳列リベンジポルノ防止法違反の罪に問われた大阪府藤井寺市の派遣社員の男(31)の判決公判が9日、神戸地裁であった。安達拓裁判官は懲役3年、執行猶予5年、罰金100万円(求刑懲役3年、罰金100万円)を言い渡した。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200309-00000023-kobenext-l28

以上のように、わいせつ電磁的記録陳列とリベンジポルノ防止法違反の罪で有罪判決がなされ、懲役3年、執行猶予5年、罰金100万円が言い渡された。

この量刑の理由については、裁判所は以下のように判示している。

(量刑の理由)
本件は、判示のとおりの私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律違反わいせつ電磁的記録記録媒体陳列の事案である。被告人は、専ら利欲目的から、被害者の人格を何ら顧みることなく、その名誉や私生活の平穏を著しく侵害する本件各犯行に及んだものである。被害者数は8名、訴因の数は17にも及んでおり、本件は常習性が明らかに認められる職業的犯行というべきである。被害者らは、本件各犯行によって多大な精神的苦痛を被るとともに、性交場面の動画がインターネット上に拡散したことで、現在もなお不安な日々を送っているのであって、生じた結果は重大である。これらによれば、被告人の刑事責任を到底軽視することはできず、その責任を服役によって果たさせることも十分に考えられる。

しかしながら他方で、8名の被害者のうち、7名との間で示談が成立していること、罪を素直に認め、反省の態度を示していること、母親が情状証人として出廷し、監督を誓約していること等の事情も認められる。これらの被告人にとって酌むべき事情をも考えると、自由刑の前科がない被告人に対しては、なお懲役刑の執行を猶予することも許されるというべきである。

そこで、主文のとおりの刑を量定した上で、懲役刑の執行を法定の最長期間である5年間猶予し、今回に限り、社会内で反省と更生の日々を送らせる機会を与えることとした。

神戸地判令和2年3月9日

まとめ

以上でみてきたように、盗撮動画をアダルトサイトなどのインターネット上にアップロードしたり、販売をした場合には、リベンジポルノ防止法に違反することになる。

盗撮の被害にあった場合には、早急に削除対応をとり、相手方に損害賠償請求や刑事罰を求めていくなどの対応が可能だ。

それに加えて、万一、動画が流出してしまった場合には、リベンジポルノ防止法違反での被害届や刑事告訴といった対応も取りうるため、この点も頭に入れておいていただければと思う。

盗撮の被害にあってしまった場合には、早急に弁護士に相談してほしい。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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