Kさんは、都内の女性用風俗店でセラピストとして働いている20代の男性です。
Kさんの働いているお店では、裏引き行為が禁止されており、裏引き行為をした場合、罰金として300万円払う必要があることが契約書に書かれていました。Kさんは、裏引き行為が禁止されていることはわかっていたものの、罰金300万円についてきちんと確認せず、契約書にサインして働き始めてしまいます。
お店がお客さんとセラピストで直接連絡しながらリピートを獲得するよう指導してきたため、Kさんはお客さんと直接連絡をとって仲を深めていました。
ある日、Kさんを指名してくれているお客さんからお店の外で直接会いたいと連絡が来ます。
Kさんは、お客さんと外で会えば裏引き行為にあたるとわかっていましたが、バレることはないだろうと思い、了承してしまいました。
お客さんと店外で会ったものの、15分ほど喋ったところでお客さんは用事が出来たと言って帰ってしまいます。結局お店で提供しているようなサービスをすることもなく、お客さんからお礼として2万円だけ受け取り、何事もなくその日は終わりました。
しかし、実はKさんの知らないうちに、お客さんがお店に裏引き行為を報告しており、後日、Kさんはお店から呼び出されてしまいます。
そして、お店から裏引き行為の罰金として300万円を支払うように要求されてしまいました。
はじめは支払いを拒否していたKさんでしたが、お店に「お前のせいで迷惑が掛かっている。罰金を支払うまで家に帰さないからな」と脅されてしまいます。Kさんは誰にも助けを求められない状況で脅されたことで、払わないと大変なことになると恐怖を感じ、お店から言われた通りその場でお金を下ろしてきて200万円を支払ってしまいます。
200万円を支払ったことでその日は家に帰ることができましたが、その後も、お店から残りの100万円を支払うように連絡が続きました。
Kさんはこれ以上のお店からの請求を止めたいと思い、風俗関係のトラブルに強い弁護士を探し、弁護士に相談することを決めたのです。
そもそも裏引き行為とは、お店を通さずに直接お客さんと金銭の授受やサービスの提供を行ったりすることを指します。
例えば、風俗店のキャストがお店で出会ったお客さんと直接交渉をし、お店の外で会ってサービスを提供することは裏引き行為にあたります。
裏引き行為をした場合、サービス代はお店を通さず全額キャストに支払われることになるため、お店の外でお客さんと会う方が、楽にたくさんのお金を得ることができるのです。
反対に、お店にとっては売り上げとなるはずだったお金が入ってこないことになり、広告料、店の設備費用等を多額の投資をしてお客さんを呼んでいる分、損害が発生してしまいます。
そのため、入店時の契約書に裏引き行為を禁止する文言を入れたり、裏引き行為をした場合の罰金を明記しているお店も少なくないのです。
そして、契約書に明記されているにも関わらず、裏引き行為をすることは契約違反にあたります。
裏引き行為は、お店との契約違反にあたるだけの行為ではありません。
自己の利益のためにお店に損害を与えているため、場合によっては刑事罰の対象となるでしょう。
具体的には、構成要件を満たしていた場合、背任罪(刑法247条)にあたるとして、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金という重い刑事罰を科される可能性があります。
つまり、裏引き行為は、お店との契約違反にあたるだけでなく、刑事罰を科されることもあり得る、リスクの高い行為なのです。
裏引きについては、以下の記事もご参照ください。
先ほど述べた通り、お店が裏引き行為の罰金をあらかじめ契約書に定めている場合があります。では、お店から罰金の支払いを請求された場合、必ず支払わなければならないのでしょうか。
今回の事件でも、Kさんの働いていた女性用風俗店は、契約書で明確に裏引き行為を禁止しており、裏引き行為の罰金についても明記されていました。
契約書にサインしている以上、必ず罰金を支払うべきだと思うかもしれません。
たしかに、ケースによっては、お店への損害賠償金として罰金を全額支払わなければならない場合もあるでしょう。
もっとも、罰金が異常に高額な場合や、お店がお客さんと共謀してわざと裏引き行為をさせて罰金を請求した場合などは、請求が不当であるとして、罰金自体を支払わなくて良い場合もありえます。
また、「罰金を支払わなければ家族に言うぞ」「痛い目に遭わせるぞ」等の脅迫をして支払いをさせた場合には、お店側の行為が恐喝罪(刑法249条)にあたる可能性もあります。
一度お金を支払ってしまうと、取り返すことは難しくなってしまいます。
お店に罰金を請求された場合は、支払う前に一度弁護士に相談し、まずは罰金を支払う必要があるのか相談してみてください。
Kさんは、弊所にご相談に来て、弁護士に対して以下の要望をされました。
Kさんの要望をかなえるため、弁護士は、Kさんの代わりにお店と連絡を取り、交渉を行うことにします。
弁護士にご依頼されると、トラブルになっているお店と直接やり取りすることなく、弁護士に対応を任せることができます。
Kさんの考えた通り、弁護士も、お店とお客さんが共謀してKさんに裏引きのような行為をさせ、罰金を請求していると考えましたが、お店とお客さんがつながっている証拠となるものはありませんでした。
しかし、Kさんとお客さんの過去のやりとりを確認すると、Kさんがお客さんにサービスを提供していない事は明らかでした。弁護士は、サービスの提供が一切ないにもかかわらず、高額な罰金を請求することは不当であると考えます。
また、Kさんを脅迫して正常な判断ができない状況でお金を下ろさせ、200万円の支払いをさせた行為は、恐喝罪にあたりうるとも考えました。
そこで、弁護士は、お店に対して罰金の支払い拒否と200万円の返金を請求しました。
弁護士がお店に連絡をしたところ、すぐにお店はKさんにこれ以上請求しないことを了承してくれました。
それだけでなく、Kさんが裏引きのような行為をしたことを反省しているのであれば、罰金として10万円だけ払ってもらう形で、残りの190万円については返金してもいいとの返事をもらうことができました。
全額返金とはなりませんでしたが、Kさんが事件を早急に解決することを希望されたため、その条件で互いに合意をする事になりました。もちろん依頼者が全額返金されるまで争うことを希望する場合は、そのように対応することも可能です。
そして、Kさんに190万円が返金され、それ以上お店からKさんに請求がいくことはありませんでした。弁護士の交渉によって、早急に事件は解決したのです。
今回は、女性用風俗の恐喝ブロック事件についてご紹介しました。
記事で解説した通り、裏引き行為はリスクの高い行為ではあり、お店に対して罰金を支払わなければならない場合もあります。
しかし、お店がわざと裏引き行為するように仕向けて高額な罰金を請求したり、恐喝したりすることは決して許されません。
そのような場合には支払いを拒否することができますが、不当な請求や恐喝行為をしてくる相手にひとりで対応しようとすると、さらに大きなトラブルに発展する可能性もあります。
早めに弁護士にご相談し、弁護士を通して相手方と交渉することが、事件解決への近道と言えるでしょう。
もし、お店から裏引き行為の罰金を支払うよう請求された場合は、弊所までご相談ください。弊所弁護士が、事件解決に向けて誠心誠意対応させていただきます。