風俗店の面接に持参する身分証明書として、運転免許証があれば大丈夫と勘違いしている方も多いですが、運転免許証だけでは不十分だ。
どのような身分証が必要かは、風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)という法律で定められている。
本記事では、風俗店の面接で必要な身分証の種類とその理由、外国人の場合に必要な身分証などについて解説をする。
風俗店では、風営法上、しっかりとした身元確認が必要とされている。
上記の2点を満たした身分証が、風俗の面接では有効と判断される。
「顔写真入りなら運転免許証だけでも大丈夫なのでは?」と思うかもしれないが、運転免許証には本籍地の都道府県の記載がないので不十分だ。
風営法36条の2第1項は、風俗店の採用(従業者名簿への記載・確認)の際に、国籍と生年月日を内閣府令が定める書類で確認しなければならないと規定している。
そして、内閣府令26条1号は、風俗店で働く人の国籍と生年月日について、本籍地の都道府県名が記載されている住民票記載事項証明書などにより確認するよう規定している。
そのため、風営法と内閣府令が定める要件を満たす身分証、すなわち、本籍地の都道府県名が記載された身分証が必要となる。
本籍地の都道府県名が記載された身分証としては、以下の身分証がある。
<風営法>
(接客従業者の生年月日等の確認)
第三十六条の二 接待飲食等営業を営む風俗営業者、店舗型性風俗特殊営業を営む者、無店舗型性風俗特殊営業を営む者、特定遊興飲食店営業者及び第三十三条第六項に規定する酒類提供飲食店営業を営む者は、当該営業に関し客に接する業務に従事させようとする者について次に掲げる事項を、当該事項を証する書類として内閣府令で定める書類により、確認しなければならない。
一 生年月日
二 国籍
三 日本国籍を有しない者にあつては、次のイ又はロのいずれかに掲げる事項
イ 出入国管理及び難民認定法第二条の二第一項に規定する在留資格及び同条第三項に規定する在留期間並びに同法第十九条第二項の許可の有無及び当該許可があるときはその内容
ロ 日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(平成三年法律第七十一号)に定める特別永住者として永住することができる資格
2 接待飲食等営業を営む風俗営業者、店舗型性風俗特殊営業を営む者、無店舗型性風俗特殊営業を営む者、特定遊興飲食店営業者及び第三十三条第六項に規定する酒類提供飲食店営業を営む者は、前項の確認をしたときは、国家公安委員会規則で定めるところにより、当該確認に係る記録を作成し、これを保存しなければならない。
<内閣府令>
(確認書類)
第二十六条 法第三十六条の二第一項各号に掲げる事項を証する書類として内閣府令で定める書類は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定めるものとする。
一 日本国籍を有する者 次に掲げる書類のいずれか
イ 住民票記載事項証明書(住民基本台帳法第七条第二号に掲げる事項及び本籍地都道府県名が記載されているものに限る。)
ロ 旅券法(昭和二十六年法律第二百六十七号)第二条第二号の一般旅券
ハ イ及びロに掲げるもののほか官公庁から発行され、又は発給された書類その他これに類するもので、当該者の生年月日及び本籍地都道府県名の記載のあるもの
接待飲食等営業を営む風俗営業者、店舗型性風俗特殊営業を営む者、無店舗型性風俗特殊営業を営む者、特定遊興飲食店営業者及び第三十三条第六項に規定する酒類提供飲食店営業を営む者は、当該営業に関し客に接する業務に従事させようとする者について次に掲げる事項を、当該事項を証する書類として内閣府令で定める書類により、確認しなければならない。
一 生年月日
二 国籍
三 日本国籍を有しない者にあつては、次のイ又はロのいずれかに掲げる事項
イ 出入国管理及び難民認定法第二条の二第一項に規定する在留資格及び同条第三項に規定する在留期間並びに同法第十九条第二項の許可の有無及び当該許可があるときはその内容
ロ 日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(平成三年法律第七十一号)に定める特別永住者として永住することができる資格
風営法の従業者名簿の記載事項やテンプレートについて、以下の記事を参照して欲しい。
前述の通り、風営法上としては、「生年月日」と「本籍地都道府県名」が記載されている身分証を確認できれば問題ないとされてる。
もっとも、18歳未満の採用を防ぐという点では、顔つきの身分証も追加で確認すべきだ。
風営法上、18歳未満の未成年を風俗店でキャストとして働かせた場合、「一年以下の懲役または百万円以下の罰金」を受けることになる。
18歳未満であることを知らなかったことについて過失があれば、風営方違反で逮捕・有罪になる可能性がある。逮捕等を避け、過失がないといえるためには、年齢確認のためにも、顔つき身分証の確認をしっかりと行う必要がある。
風営法の未成年雇用とその罰則等については、以下の記事を参照して欲しい。
風俗の面接において有効な身分証は、以下の4点だ。
それぞれの取得方法について、詳しく解説する。
パスポートは海外旅行時に必須の身分証で、風俗の面接においても非常に有効だ。
ただし、発行にあたっては以下の点に注意が必要だ。
上記の理由から、「なるべく安く済ませたい」方には不向きだが、後述する運転免許証に比べたら短期間且つ安く取得できるのでオススメだ。
※パスポート申請方法については「外務省HP~パスポートの申請から受領まで~」を参考にしてほしい。
運転免許証は、定番の身分証明書だ。
様々な分野で活用可能だが、
長期的な観点で見たら取得するに越したいところではあるが、「なるべく費用をかけたくない」「近日、風俗の面接を控えている」方には不向きだろう。
一方で、普通自動車免許にこだわらなければ「原付免許」も有効だ。
原付免許は、最短1日で取得可能な上、費用も1万円程度なので、検討の価値あり。
マイナンバーカードは、日本国民なら誰もが取得できる万能身分証だ。
これまでは、身分証といえばパスポートや運転免許証が一般的であったが、マイナンバーカードの交付で、手軽且つ有効性の高い身分証の一つとして確立された。
ただし、仮ナンバーカード(顔写真が無い紙のカード)からマイナンバーカード移行には市役所(区役所)へ申請が必要で、発効までに約1ヵ月程度かかるので、早めに申請しておくことをオススメする。
住民票は、市役所(区役所)を始めとした各自治体で発行可能で、本籍を証明する書類として有効だ。発行手数料も300円と、比較的安価に入手できるのも特徴だ。
ただし、申請の際に「本籍地記載のチェック」が抜けてしまうと、本籍地の記載がない住民票が発行されてしまいますので、チェック漏れには注意しよう。
風俗店において、外国人の不法就労・滞在が発覚した場合、罰則の対象となる。
風営法36条の2第1項3号は、外国人を風俗店で採用する際には、以下の事項を確認するよう規定している。
そして、上記事項について、風営法36条の2第1項3号・内閣府令26条2号は、以下の身分証で確認するよう規定している。
特に注意したいのが、在留カードの「就労制限の有無」欄だ。風俗においては、「就労制限なし」以外の人を雇うことはできないので注意しよう。
在留資格が以下の資格であれば、外国人であっても風俗店で働くことが可能だ。
ネットには「外国人が風俗で働くことは違法」という情報も散見されるが、上記いずれかの在留資格を有していれば問題ないので安心してほしい。
内閣府令26条2号
二 日本国籍を有しない者(次号及び第四号に掲げる者を除く。) 次に掲げる書類のいずれか
イ 出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)第二条第五号の旅券
ロ 出入国管理及び難民認定法第十九条の三に規定する在留カード
風営法と外国人の採用については、以下の記事も参照して欲しい。
風俗店において、法律で定める身分証の提示を求めず雇ってしまうと、「100万円以下の罰金」を科せられることになる。具体的には、
上記に抵触すると風営法違反となるため、身分証の確認が必須なのは、ここに由来する。
先ほど、18歳未満の子の採用を防ぐために、顔つき身分証の確認が必要だと解説をした。ただ、近年において、偽造身分証なるものが世に出回るようになったため、より注力した身分証確認が求められるようになってきた。
偽造身分証の中でも、特に運転免許証の偽造が多く、パッと見では判断できないほど精巧な作りになっていますが、よく見れば「書体が違う」「光を照らしたとき透かしがない」などの判別がつくだろう。
ホストクラブの事例ではあるが、偽造身分証で未成年と見抜けなかったケースで逮捕されてしまったケースもある(結果として、弊所弁護士が対応をして不起訴となった)。
知らなかった、では済まないので、風俗の面接は偽造対策を行った上で行うようにしよう。
風俗店と聞くと、「身分証を悪用されるのでは?」と不安になる方もいるが、それは誤解だ。前述の通り、身分証の確認を怠ると風俗店側も厳しい罰則を受けることになるため、犯罪を未然に防ぐ目的として、身分証の確認が義務付けられているのだ。
「それでも不安だ。。」という方のために、身分証のコピーだけでは“できないこと”について、以下にまとめる。
風俗で免許証などの身分証が悪用されるリスクについては、以下の記事を参照して欲しい。
風俗の面接で必要な身分証について解説をした。
風俗の面接には、風営法上、「顔写真」「氏名」「生年月日」「住所」「本籍(国籍)」の確認が必須だ。
風営法を遵守している風俗店では、これを満たしていない身分証で働くことはできない。
風俗店側としても、確認を怠ると風営法違反で罰則を受けることになるので、身分証確認の徹底が重要だ。
風営法については、実績豊富なグラディアトル法律事務所までご相談ください。