「デリヘルで本番をしたら、逮捕されてしまうのか?」
「不同意性交等罪が新設されて、風俗の本番は逮捕されやすくなった?」
デリヘル、ピンサロ、メンズエステ等の風俗では、本番行為や本番強要に関するトラブルが後を絶たない。
本番をしてしまった人は、逮捕されるのではないかと心配していることだろう。
本番強要の被害にあったキャストとしては、加害者である客の逮捕や刑事処罰を望むこともあるだろう。
刑法が改正され、不同意性交等罪が新設された。
強姦罪→強制性交等罪→不同意性交等罪と改正されたのだ。
不同意性交等罪が新設されたことにより、暴行や脅迫がなくても、同意のない性行為が処罰対象となり、デリヘル等の風俗での本番についても、逮捕されやすくなるだろう。
本番行為をしてしまった客としては、逮捕を避けるために弁護士に依頼をして早期かつ適切な示談をすべきだ。
他方で、本番被害にあったキャストや風俗店は、泣き寝入りをせずに被害届・刑事告訴や損害賠償請求等の対応をすべきだ。
グラディアトル法律事務所では、これまで、1000件以上の風俗本番トラブルの相談実績がある。
本記事では、上記の経験に基づき、不同意性交罪の内容とデリヘル等の風俗での本番トラブルへの影響について、風俗トラブルに詳しい弁護士が解説をする。
不同意性交等罪とは、同意しない意思を形成、表明又は全うすることが困難な状態にさせること、あるいは相手がそのような状態にあることに乗じて性交等をする罪だ。
強姦罪→強制性交等罪→不同意性交等罪と改正がなされてきた。
不同意性交等罪の条文は刑法177条に規定されている。
(不同意性交等)
第百七十七条 前条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交、肛こう門性交、口腔くう性交又は膣ちつ若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(以下この条及び第百七十九条第二項において「性交等」という。)をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、五年以上の有期拘禁刑に処する。
強制性交等罪において、無罪判決が相次いだことから、そもそも同意のないせい行為を処罰対象とすべきであるとの議論がおこり、処罰範囲が拡大された不同意性交等罪が成立した。
不同意性交等罪の構成要件(成立要件)は以下の二つだ。
①被害者の同意なく
②性交等をする
被害者の同意なくの要件については、具体的には、同意しない意思を形成、表明又は全うすることが困難な状態にさせること、あるいは相手がそのような状態にあることに乗じていることが必要とされる。
強姦罪や強制性交等罪では、被害者が抵抗することが著しく困難な程度の暴行や脅迫が必要であったが、不同意性交等罪ではこのような強度の暴行や脅迫がない場合でも、単に拒否をしている場合や同意する時間的余裕がないような場合にも犯罪が成立するとして、その成立範囲を広げている。
また、準強姦罪や準強制性交等罪のように、抵抗することができない状態での性行為についても、不同意性交等罪にまとめて規定している。強姦罪・準強姦罪、強制性交等罪・準強制性交等罪をまとめて不同意性交等罪にしたのだ。
この不同意の原因については、「暴行・脅迫」「アルコール」など、同意できないような状態になる8項目が規定されている。
「不同意性交等罪の成立要件8項目」については、後述する。
不同意性交等罪の「性交等」は、性交(セックス)の他、肛門性交(アナル)、口腔性交(フェラ)、膣や肛門に体の一部や物を挿入する行為(手マンやバイブ挿入)が含まれる。
強姦罪では、処罰対象は性交に限定されていた。
強制性交等罪では、これに加えて、肛門性交と口腔性交が追加され、それまでは強制わいせつ罪にしかならなかった行為が強制性交等罪で処罰されるようになった。
不同意性交等罪では、さらに加えて、膣や肛門に体の一部や物を挿入する行為も強制わいせつ罪(不同意わいせつ罪)から格上げされて不同意性交等罪で処罰されるようになった。
強姦罪では、加害者となる主体は男性に限定されており、被害者は女性に限定されていた。
しかし、強制性交等罪、不同意性交等罪では、男性のみならず、女性も加害者となり得る。また、男性も被害者となり得る。
強姦罪の罰則は、3年以上の有期懲役だった。
強制性交等罪は、5年以上の有機懲役となり、厳罰化された。
不同意性交等罪も5年以上の有期拘禁刑という厳罰化された罰則を引き継いでいる。
なお、拘禁刑は、懲役刑と禁固刑を合わせたようなもので、刑事訴訟法改正で新設されたものだが、法律を勉強している人以外の一般の方は、懲役刑とほぼ同じと考えてもらって大丈夫だ。
強姦罪・強制性交等罪の時効は10年だった。
不同意性交等罪の新設、刑事訴訟法の改正により、不同意性交等罪の時効は15年に延長された。
不同意性交等罪は、2023年7月13日から施行された。
不同意性交等罪では、被害者が同意をしない、同意ができない原因となる8項目を成立要件として定めている。
正確に言えば、8項目ないしはこれに類似する行為により同意がないことが要件となる。
不同意性交等罪の成立要件8項目とは、以下のとおりだ。
①暴行又は脅迫
②心身の障害
③アルコール 又は 薬物の影響
④睡眠その他の意識不明瞭
⑤同意しない意思を形成、表明又は全うするいとまの不存在(不意打ちなど)
⑥予想と異なる事態との直面に起因する恐怖 又は驚愕(フリーズなど)
⑦虐待に起因する心理的反応(虐待による無力感・恐怖心など)
⑧経済的 又は 社会的関係上の地位に基づく影響力による不利益の憂慮(上司・部下、教師・生徒など)
デリヘル等の風俗での本番トラブルとの関係でいえば、「⑤同意しない意思を形成、表明又は全うするいとまの不存在(不意打ちなど)」が重要となる。
不同意性交等罪の新設で、デリヘル等の風俗本番トラブルは逮捕されやすくなる。
その理由は、強姦罪や強制性交等罪とは異なり、被害者である風俗嬢が抵抗するのが著しく困難な程度の暴行や脅迫がなくても不同意性交等罪は成立し得るからだ。
不同意性交等罪は、被害者である風俗嬢が同意するいとまがない状態(不意打ち)で挿入されれば成立する。
デリヘル等の風俗では、本番に関するトラブルが非常に多い。
本番トラブルの行為態様は様々だ。
例えば…
・客がキャストの手を押さえつけて本番を強要するような悪質なケースから
・素股プレイ中に挿入してしまうケース
・客がキャストの同意があると勘違いして挿入するケース
・悪質な店やキャストが美人局のために挿入を誘導するケース
・客が金を渡して本番をする円盤ケース
など。
不同意性交等罪が成立する前、強姦罪や強制性交等罪のときには、デリヘル等の風俗での本番行為の逮捕は難しい部分がああった。
強姦罪や強制性交等罪では、被害者である風俗嬢が抵抗することが著しく困難だといえる程度の暴行や脅迫行為がなければ、強姦罪や強制性交等罪が成立しなかったからだ。
本番トラブルの類型として、客がキャストの手を押さえつけて本番を強要するような悪質なケースで、被害者の手に押さえつけられた痕が残っているなどの証拠がある場合には、暴行・脅迫があったとして逮捕することは可能だった。
しかし、素股プレイ中に挿入してしまなどのケースや、客がキャストの同意があると勘違いして挿入するケースでは、暴行や脅迫があったといえるかの評価が難しく、また立証も難しく、逮捕することは難しかった。
不同意性交等罪では、被害者である風俗嬢が抵抗することが著しく困難な程度の暴行・脅迫がなくても、本番についての同意がなければ同罪が成立し得る。
具体的には、不同意性交等罪は、被害者である風俗嬢が同意するいとまがない状態(不意打ち)で挿入されれば成立する。
・素股プレイ中に挿入してしまうケース
・客がキャストの同意があると勘違いして挿入するケース
についても、被害者である風俗嬢がどういするいとまがない状態での挿入といえることが多いだろうから、この場合にも、不同意性交等罪が成立することになる。
他方で、
・悪質な店やキャストが美人局のために挿入を誘導するケース
・客が金を渡して本番をする円盤ケース
については、本番について同意があったと考えられるため、不同意性交等罪は成立しないことになる。
デリヘル等の風俗での本番類型と不同意性交等罪の成否についてまとめると、以下の表のようになる。
デリヘルでの本番強要事例で、不同意性交等罪での逮捕事例を紹介する。
青森・五戸町の中学校教諭、10代風俗店従業員への不同意性交疑いで逮捕
青森県警は24日、不同意性交等の疑いで、青森県八戸市沼館3丁目、地方公務員の容疑者の男(51)を逮捕した。東奥日報の取材によると、容疑者は五戸町の中学校教諭。容疑を認めている。
逮捕容疑は20日午前11時40分ごろ、青森県内のホテル室内で県内に住む風俗店従業員の10代女性に対し、同意することが困難な状態でわいせつな行為をした疑い。女性にけがはない。
容疑者は風俗サービスを受けるため、ホテルに女性を呼んでいた。同日、女性の関係者から通報があり発覚した。
五戸町教育委員会は取材に対し「事実確認中であり、現時点でコメントできない」とした。
県教育委員会の風張知子教育長は「今回の事件が事実とすれば、生徒を指導し守るべき立場にある教員として、絶対にあるまじき行為であり、極めて遺憾。今後は早急に事実関係を確認の上、厳正に対処する」と文書でコメントを出した。
2023年8月25日(金) 東奥日報 https://news.yahoo.co.jp/articles/a3034ff5beef1b8a10d240a9356a1feb1f135711
この事例では、同意することが困難な状況での性行為があったとのことなので、被害者である風俗嬢が同意するいとまがない状態(不意打ち)での本番行為があったものと推測される。
「本番はやめて」デリヘルの女性に乱暴、美容師の男を容疑で逮捕 伊丹署 店からの電話で怖くなり110番
デリバリーヘルス(派遣型風俗店)の女性従業員(28)に乱暴したとして、兵庫県警伊丹署は29日、不同意性交の疑いで、伊丹市内に住む美容師の男(48)を逮捕した。
逮捕容疑は28日午後11時10分ごろ、自宅に呼んだ女性(28)に対し、同意を得ずに性交した疑い。調べに行為は認めつつ「同意があると思った」と話しているという。
同署によると、女性は「本番はあかん、やめて」と拒絶したが行為を続けられたため、男の自宅から退出。店側に被害を伝えたという。店から「どういうことか。今から家に行かせてもらう」と電話を受けた男が恐怖を感じ、29日午前0時ごろ、「家に来ると言っている。どうしたらいいか」と110番。署員が双方から事情を聴いたところ、女性に乱暴したことが分かり、男を逮捕した。
2023/9/29 神戸新聞NEXT https://www.kobe-np.co.jp/news/backnumber2/202309/0016867976.shtml
この事例の特筆すべきところは、風俗店で本番強要をした客が、店側から脅迫されるのではないかと怖くなって110番通報したところ、客側の本番強要が発覚し、不同意性交等罪で逮捕されたという点だ。
風俗での本番・盗撮などの風俗トラブルでは、風俗店側から客が脅迫・恐喝被害にあう事例もあるが、対応を誤ると自身が逮捕されてしまうため、慎重な対応が必要となる。
デリヘル等の風俗での本番行為についても、不同意性交等罪の新設により、逮捕されやすくなった。
新しい犯罪ができた場合には、警察も逮捕・摘発に積極的になる傾向もあり、実際に逮捕事例も増加することが予想される。
逮捕されてしまうと、逮捕・勾留と最大で23日間警察署の留置施設に身体拘束されてしまう。
実名報道されて会社や家族に風俗で本番をしたことがバレてしまうリスクもある。
起訴されてしまえば、有罪率が高く、不同意性交等罪は罪が重いため、実刑(刑務所に入る)こと可能性も低くない。
逮捕を避けるためには、早期に示談を成立させることが一番重要だ。
早期かつ適切に示談をするために、風俗で本番トラブルにあってしまったら、すぐに、弁護士に相談してほしい。
リンク:風俗トラブル逮捕事例(盗撮・本番強要)と逮捕されないための対処法!
デリヘル等での本番強要の被害に悩む風俗店経営者やキャストの方々も多いだろう。
しかも、本番をした客が「無理やり押さえつけたりはしていない」「抵抗されなかったから同意があると思った」などと言ってくることも多く、そのような場合には、強姦罪や強制性交等罪では暴行の立証が難しく、逮捕・刑事事件化が難しい部分があった。
しかし、今回の不同意性交等罪の新設により、本番客は逮捕されやすくなった。
不同意性交等罪は、被害者である風俗嬢が同意するいとまがない状態(不意打ち)で挿入されれば成立するからだ。
本番強要の被害にあってしまったら、すぐに110番通報をして、刑事事件化することができる。
また、弁護士を通じて、損害賠償請求をすることもできる。
本番強要被害に泣き寝入りすることなく、しっかりと対応をしてほしい。
本番強要被害では、早期かつ適切な対応が重要だ。
時間が経ってしまうと証拠の確保が難しくなってしまうこともあるからだ。
示談金を要求する際も、注意をしないと恐喝罪で逆に逮捕されてしまうリスクもある。
被害届の提出や刑事告訴により逮捕を求める、損害賠償請求をするなど、早期かつ適切な対応をするために、ぜひ、弁護士に相談してほしい。
本番強要被害を予防し、日常的に生じる様々な問題を解決するために、風俗業界に強い顧問弁護士をつけておくことも重要だ。
2023年7月13日から、不同意性交等罪が新設された。
不同意性交等罪とは、同意しない意思を形成、表明又は全うすることが困難な状態にさせること、あるいは相手がそのような状態にあることに乗じて性交等をする罪だ。
強姦罪→強制性交等罪→不同意性交等罪と改正がなされてきた。
不同意性交等罪の内容と改正での変更点等は、以下のとおりだ。
不同意性交等罪は、強姦罪や強制性交等罪のように暴行・脅迫が必要なく、被害者である風俗嬢が同意するいとまがない状態(不意打ち)で挿入されれば成立する。
そのため、逮捕されやすくなる。
以下のような本番行為の類型で逮捕可能になった。
そのため、本番行為をしてしまった客は、できる限り早く弁護士に相談をして、早期かつ適切な示談をして逮捕リスクを避ける必要がある。
他方で、本番強要の被害にあってしまったキャストや風俗店は、泣き寝入りする必要がなくなり、刑事・民事それぞれしっかりとした対応をしていくことができるようになる。
いずれにしろ、専門的な知識を有する弁護士に相談し、早期かつ適切な対応をするのが好ましい。
グラディアトル法律事務所では、数多くの本番トラブルについて、解決をしてきた実績がある。
弁護士とのLINE無料相談も受け付けているので、是非一度、ご相談してほしい。