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撮影罪(盗撮罪)の新設でデリヘル等の風俗盗撮犯の逮捕者が増加する!?

弁護士 若林翔 2024/03/30更新

2023年7月13日から、「撮影罪(性的姿態撮影等処罰法)」が施行される。

「撮影罪」は、盗撮を取り締まる罪だ。

「盗撮罪」と呼んでも良いだろう。

「撮影罪」の新設により、デリヘルなどの風俗での盗撮は逮捕されやすくなり、その罰則も重くなる

これまで、盗撮を取り締まる直接の法律は無かった。

スマートフォンの普及やカメラの小型化などから盗撮被害が増えてきており、盗撮が社会問題化していることなどを受けて、盗撮を直接取り締まる法律ができたのだ。

デリヘルなどの風俗での盗撮との関係においても、これまでは、各都道府県の迷惑防止条例により取り締まりをしていたが、条例は都道府県ごとに異なり、公衆の場所での盗撮行為に限定している条例もあり、風俗店の個室やデリヘルで利用する場合には適用がないという問題点があった。

これからは、風俗での盗撮も全国一律「撮影罪」が適用されることになり、盗撮犯を逮捕することが容易になった。

また、「撮影罪」は、3年以下の拘禁刑(懲役)又は300万円以下の罰金とこれまでよりも重い罪になっている。

グラディアトル法律事務所では、デリヘル等の風俗の盗撮事件など、風俗トラブルについて、2000件以上の相談を受けてきた。

風俗店の顧問先も500店舗を超え、風俗の店舗側・キャスト側からの盗撮被害のご相談を数多く受けてきた。

他方で、風俗で盗撮をしてしまった客側からの示談交渉についても数多くの依頼を受けてきた。

この記事では、風俗での盗撮について、圧倒的な実績を誇る弁護士が、盗撮を取り締まるために新設された「撮影罪」の内容とデリヘル等の風俗での盗撮犯への影響について解説する。

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【撮影罪が新設】撮影罪・性的姿態撮影等処罰法の概要を掴もう

撮影罪・性的姿態撮影等処罰法の概要

撮影罪とは

「撮影罪」とは、裸や下着、性行為など性的な姿態についての盗撮を禁止する罪だ。

「撮影罪」は、刑法ではなく、「性的な姿勢を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿勢の撮影に係わる電磁的記録の消去等に関する法律(性的姿態撮影等処罰法)」によって規定されている。

この法律では、撮影罪のほか、提供罪、公然陳列罪、保管罪なども定められている。

また、盗撮された動画のデータの削除等についても規定されている。

 

撮影罪はいつから施行されるか

撮影罪は、2023年7月13日に施行される。

撮影罪は、6月16日成立し、6月23日に公布された。

 

撮影罪の罰則

撮影罪は、3年以下の拘禁(懲役)刑、300万円以下の罰金が定められている。

撮影した動画をインターネットにアップするなど、不特定多数の人に提供(不特定多数への提供罪)したり、公然と陳列したり(公然陳列罪)する場合には、5年以下の拘禁(懲役)刑、500万円以下の罰金と、さらに重い刑が定められている。

 

撮影罪の国外犯

撮影罪は、日本人が海外で盗撮等をした場合にも適用される。

海外での盗撮や、盗撮動画の販売・ネット上でのアップロードも違法になので注意が必要だ。

 

撮影罪の時効

撮影罪の公訴時効は、3年だ。

3年以内であれば、起訴できる。

 

撮影罪で解消されたデリヘル等の性風俗での盗撮事件の今までの問題点

盗撮行為を処罰する「撮影罪」が新設された。

これまでは、デリヘル等の風俗での盗撮については、各都道府県の迷惑防止条例や軽犯罪法により逮捕をしていた。

また、盗撮動画をインターネット上で販売するなど拡散する行為はわいせつ電磁的記録の送信頒布罪で逮捕をしてきた。

もっとも、これまでの風俗盗撮での逮捕には、以下の3つの問題点があったのだが、「撮影罪」の新設で解消された。

風俗盗撮の今までの問題点と撮影罪での改善点

問題点① 条例の内容が各都道府県で異なる

デリヘル等の風俗での盗撮行為について、各都道府県の迷惑防止条例で逮捕される事例が多かった。

しかし、迷惑防止条例は、条例なので、都道府県ごとにその内容が異なるという問題点がある。

例えば、盗撮行為を処罰する場所が公衆の場所や乗り物などに限定されている条例だと、風俗店の個室やデリヘルで使用するホテルや自宅での盗撮行為を処罰できないという問題点がある。

「撮影罪」は、条例ではなく法律で定められた罪なので、全国一律どこでも「撮影罪」で逮捕することが可能だ。

 

問題点② 軽犯罪法の罪は軽すぎる

デリヘル等の風俗での盗撮行為について軽犯罪法違反で逮捕された事例もある。

迷惑防止条例での逮捕が難しいような

軽犯罪法も法律なので、全国一律の適用はある。

しかし、軽犯罪法の定める罰則は拘留(1ヶ月未満の身体拘束)、科料(1万円未満罰金)と極めて軽い罪で、盗撮被害の重大さに見合わないという問題点がある。

「撮影罪」は、3年以下の拘禁(懲役)刑、300万円以下の罰金なので、軽犯罪法よりははるかに重い罪が定められている。

 

問題点③ 無修正でないと盗撮動画の拡散の逮捕が難しかった

盗撮された動画がFC2動画などのアダルトサイトで販売されたり、インターネット上のアダルトサイトにアップロードされてしまい、拡散されるケースがある。

このような場合、これまでは、無修正動画であれば、わいせつ電磁的記録の送信頒布罪等で逮捕されていた。

しかし、無修正ではなく、モザイクがかけられていた場合、わいせつ電磁的記録の送信頒布罪等での逮捕は難しかった。

また、理論上は、リベンジポルノ防止法による逮捕が可能で、逮捕事例もあるのだが、警察はなかなかリベンジポルノ防止法で動いてくれない現状があった。

今回の「撮影罪」と同時に定められた「提供罪」や「公然陳列罪」であれば、無修正ではない盗撮動画についても逮捕・処罰が可能だ。

 

デリヘル等の風俗で撮影罪等に該当する4つの行為

撮影罪が新設され、デリヘルなどの風俗での盗撮行為は、撮影罪で逮捕・処罰されるだろう。

具体的には、風俗での盗撮については、以下の4つの行為が処罰対象になると考えられる。

① ひそかに撮影(盗撮)罪

ひそかに撮影罪は、盗撮を処罰する罪だ。

(性的姿態等撮影)
第二条 次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。
一 正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為
イ 人の性的な部位(性器若しくは肛こう門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
ロ イに掲げるもののほか、わいせつな行為又は性交等(刑法(明治四十年法律第四十五号)第百七十七条第一項に規定する性交等をいう。)がされている間における人の姿態

性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」E-GOV法令検索参照

被害者が撮影されることを認識していない状態で、性器、肛門、胸、尻などの性的な部位、ブラジャーやパンツなどの下着姿、性行為等のわいせつな行為を撮影する行為が処罰対象となる。

デリヘル等の風俗での盗撮においては、具体的に、以下の行為が処罰対象となる。

  • 風俗嬢の性器、肛門、胸、尻などの性的な部位を盗撮する行為
  • 風俗でのサービス・プレイを盗撮する行為
  • メンズエステなど服を着ているキャスト・セラピストの下着を盗撮する行為

 

②  不同意撮影罪

不同意撮影罪は、撮影対象である被害者の真意に基づく同意なく撮影する行為を処罰対象とする。

第2条 二 刑法第百七十六条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為

性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」E-GOV法令検索参照

同意していない被害者を撮影する行為や、暴行・脅迫、アルコールや薬物、睡眠中など、真意に基づく同意ができない状況下で撮影する行為が処罰対象になる。

デリヘル等の風俗での不同意撮影罪に該当する行為としては、以下の行為が処罰対象となる。

  • 風俗嬢を脅迫したり暴行したりして撮影する行為
  • 風俗嬢を酔いつぶして撮影する行為
  • 風俗嬢に薬を盛って昏睡させて撮影する行為

 

③ 誤信撮影罪

誤信撮影罪は、性的な行為ではないと誤信させたり、特定の人以外が見ることがないと誤信させて撮影する罪だ。

第2条 三 行為の性質が性的なものではないとの誤信をさせ、若しくは特定の者以外の者が閲覧しないとの誤信をさせ、又はそれらの誤信をしていることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為

性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」E-GOV法令検索参照

デリヘル等の風俗での誤信撮影罪に該当する行為としては、以下の行為が処罰対象となる。

  • 販売する意図を隠して「撮影コース」やオプションを利用して撮影する行為
  • ネットにアップロードする意図を隠して自分で見るだけだからと伝えて撮影する行為

 

④ 盗撮動画の拡散は提供罪・公然陳列罪に該当する

提供罪・公然陳列罪は、盗撮動画などを第三者に提供したり、ネット上で拡散したりする行為を処罰する罪だ。

風俗での盗撮動画をFC2動画等のアダルト動画サイトで販売する被害が散見される。

これらの行為について、今までは、無修正であればわいせつ電磁的記録の送信頒布罪での逮捕・摘発ができたが、モザイクがかかっている場合には、警察が逮捕・摘発に前向きではなかった。

しかし、性的姿態撮影等処罰法が新設され、盗撮等の動画の提供罪や広告規制罪が新設された。

デリヘル等の風俗での盗撮動画を第三者に提供したり、ネット上にアップロードしたり、販売したりする行為は、提供罪や公然陳列罪に該当し、逮捕・摘発されることになるだろう。

 

風俗の盗撮で撮影罪で逮捕された事例

最新の風俗盗撮逮捕事例は、2024年2月、デリヘルで風俗嬢の裸をスマホで盗撮したとして、撮影罪(性的姿態等撮影等処罰法違反)で逮捕された事例だ。

「女の子が盗撮された」派遣型風俗店の女性従業員を盗撮した疑い 46歳男を逮捕=静岡県警

2月24日午後、浜松市中央区の宿泊施設で、派遣型風俗店の20代の女性従業員の裸をスマートフォンで盗撮したとして、46歳の男が逮捕されました。

性的姿態等撮影の疑いで逮捕されたのは、静岡県浜松市中央区の土木作業員の男(46)です。

警察によりますと、男は浜松市中央区の宿泊施設で派遣型風俗店に勤務する20代女性の裸をスマートフォンで盗撮した疑いが持たれています。

女性が犯行に気付き、その後関係者から「女の子が盗撮された」と110番通報し、逮捕に至ったということです。

警察の調べに対して、男は容疑を認めているということです。

静岡放送(2024/2/24 ) https://news.yahoo.co.jp/articles/7c423d79ae03804a0884c47f600ec264bd202080

この風俗盗撮逮捕事例では、2023年7月に新設された撮影罪により逮捕されている。

デリヘルで盗撮をしてしまい、キャストが店に通報し、店が110番通報し、駆けつけた警察官がその場で現行犯逮捕という流れだろう。

撮影罪施行後は、風俗での盗撮は撮影罪で逮捕されている。

その他の風俗盗撮の逮捕事例については、以下の記事も参照して欲しい。

風俗(デリヘル)の盗撮で逮捕された事例【2024年最新版】

 

【盗撮してしまった方向け】逮捕を避けるために示談が重要!

風俗の盗撮を弁護士に依頼するメリット

盗撮については、社会問題化しており、警察も逮捕・摘発に積極的だ。

デリヘル等の風俗での盗撮についても、撮影罪新設前から逮捕事例は増えてきていた。

撮影罪の新設によって、今まで以上に、風俗での盗撮事件での逮捕者が増加するだろう。

逮捕されてしまうと、逮捕・勾留と最大で23日間警察署の留置施設に身体拘束されてしまう。

実名報道されて会社や家族に風俗で盗撮をしたことがバレてしまうリスクもある。

逮捕を避けるためには、早期に示談を成立させることが一番重要だ。

早期かつ適切に示談をするために、風俗での盗撮がバレてしまったら、すぐに、弁護士に相談してほしい。

風俗で盗撮がバレて逮捕されるケースと今すぐチェックすべき7の行動

風俗での盗撮で示談金を要求されたら|示談金の適正価格と注意点

 

【盗撮被害者(風俗店・キャスト)向け】泣き寝入りせずに刑事・民事で対応しよう!

盗撮被害に悩む風俗店経営者やキャストの方々も多いだろう。

盗撮され、盗撮動画が一度インターネット上にアップされてしまうと、次々と拡散され、完全に消し去ることは困難だ。

今回の撮影罪の新設により、盗撮犯を逮捕しやすくなった

盗撮犯を見つけたら、すぐに110番通報をして、刑事事件化することができる。

また、弁護士を通じて、損害賠償請求をすることもできる。

万一、インターネット上に盗撮動画が流出してしまった場合にも、性的姿態撮影等処罰法の新設により、提供罪や公然陳列罪により逮捕・摘発することが可能だ。

盗撮被害に泣き寝入りすることなく、しっかりと対応をしてほしい。

盗撮被害では、早期かつ適切な対応が重要だ。

示談金を要求する際も、注意をしないと恐喝罪で逆に逮捕されてしまうリスクもある。

被害届の提出や刑事告訴により逮捕を求める、損害賠償請求をする、流出してしまった動画を削除するなど、早期かつ適切な対応をするために、ぜひ、弁護士に相談してほしい。

盗撮を予防し、日常的に生じる様々な問題を解決するために、風俗業界に強い顧問弁護士をつけておくことも重要だ。

風俗での盗撮予防法と盗撮用機器,超小型カメラをまとめてみた!

風俗トラブルで示談金要求をした風俗店経営者が恐喝罪で逮捕!?

 

まとめ

性的姿態撮影等処罰法が新設され、撮影罪、提供罪、公然陳列罪などが新設された。

これにより、今まで処罰できなかった盗撮犯を逮捕・摘発することができるようになった。

デリヘルなどの風俗店では、盗撮事件が多いものの、逮捕に至らないケースもあった。

しかし、今後は、撮影罪等により、風俗での盗撮の逮捕事例も増えるだろう。

グラディアトル法律事務所では、風俗での盗撮事件について、1000件以上の相談を受け、解決をしてきた実績がある。

風俗での盗撮についてお悩みの方は、是非一度、ご相談してほしい。

LINEでの弁護士との無料相談も実施しているので、気軽に連絡をしてくれたら嬉しい。

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弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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