デリヘル等の風俗店やキャバクラの顧問弁護士をしているとよくある相談がストーカー被害だ。
風俗トラブルの中でも,本番強要,盗撮に次いで,ストーカー被害やつきまとい被害は多い。
今回は,そんなストーカー被害やネットストーカー被害について,ストーカー規制法,迷惑防止条例で定められている「つきまとい」について解説する。
近年,法律や条例が改正され,ネットストーカー,LINEやTwitterなどのSNSでのストーカー行為・つきまとい行為も規制対象になっているので,その辺にも触れたいと思う。
なお、風俗嬢向けのストーカー被害対策方法や予防方法の詳細ついては、以下の記事を参照してほしい。
風俗店員にストーカー容疑 九州工業大の特任教授を逮捕
客として通った風俗店従業員の20代女性を尾行し、「会いたい」などと繰り返しメールしたとして、警視庁は、九州工業大学の特任教授◯◯容疑者(68)=北九州市戸畑区仙水町=をストーカー規制法違反の疑いで逮捕し、29日発表した。
町田署によると、◯◯容疑者は女性=東京都町田市=に対し、8~10月ごろに「なぜ連絡をくれない」などの内容のメールを5回送り、10月27日には、女性宅前で待ち伏せして尾行した疑いがある。昨年6月から都内の風俗店を女性を指名して月3~4回利用。交際を求めたが断られ、今年2月には同店から出入りを禁じられたという。
調べに「探偵を使って女性宅を割り出した。メールは計数十件送った」と供述しているという。https://www.asahi.com/articles/ASMBY3HF9MBYUTIL00P.html
今回のケースでは,風俗店を利用し,女性キャストに惚れ,交際を申し込んだが断られストーカー化したようだ。
探偵を使って女性キャストの家を割り出し,待ち伏せするなどかなり悪質だ。
ストーカー規制法では,「つきまとい等」について定めている。
そして,この「つきまとい等」を身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により,反復して行う行為を「ストーカー行為」と定義しているのだ。
では,「つきまとい等」とは何だろうか?
「つきまとい等」は,3つの要素から構成される。目的,対象者,対象行為だ。
1 目的
特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的
→恋愛感情や好意の感情を満たす目的か,満たされなかったときの逆恨み目的だ。
2 対象者
当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者
→恋愛感情や逆恨み感情をもった相手か,その相手の家族などだ。
3 対象行為
⑴つきまとい・待ち伏せ・押し掛け・うろつき
⑵監視していると告げる行為
⑶面会や交際の要求
⑷乱暴な言動
⑸無言電話、拒否後の連続した電話・ファクシミリ・電子メール・SNS等
⑹汚物等の送付
⑺名誉を傷つける
⑻性的しゅう恥心の侵害
詳細は,警視庁のHPのリンクを参照して欲しい。
まず,つきまといやストーカーの被害にあった場合には,警察から警告や禁止命令を出してもらうことができる。
また,処罰を求めることも可能だ。
ストーカー行為の罰則は,1年以下の懲役,100万円以下の罰金だ。
禁止命令が出されているにも関わらず,これに違反してストーカー行為をした場合には,2年以下の懲役,200万円以下の罰金となる。
ストーカー行為等の規制等に関する法律
(罰則)
第十八条 ストーカー行為をした者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
第十九条 禁止命令等(第五条第一項第一号に係るものに限る。以下同じ。)に違反してストーカー行為をした者は、二年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処する。
2 前項に規定するもののほか、禁止命令等に違反してつきまとい等をすることにより、ストーカー行為をした者も、同項と同様とする。
第二十条 前条に規定するもののほか、禁止命令等に違反した者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
各都道府県の迷惑防止条例においても,ストーカー規制法類似の行為について規制され,罰則が設けられている。
東京都の迷惑防止条例では,盗撮の範囲拡大がなされた2018年7月に,つきまといについての処罰範囲が拡大され,厳罰化された。
具体的には,拒否後のメール,FAX,SNSでのメッセージ送信などが追加された。
また,罰則についても,1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(常習:2年以下の懲役又は100万円以下の罰金)に引き上げられた。
なお,盗撮についての迷惑防止条例については,以下のページを参照して欲しい。
ここまで,つきまといやストーカーについて法律や条例の規定を見てきた。
では,実際にストーカー被害,つきまとい被害にあった場合にはどう対処したら良いだろうか??
大きく分けて,以下の3つを心がけて欲しい。
・拒絶の意思を明確に表示する
・証拠を残す
・警察・弁護士に相談する
まず,拒絶の意思を明確にすることだ。
つきまといの要件には拒絶後の連続した電話,メール,SNS等がある。拒絶の意思を示すことが法律上の要件になっているのだ。
また,加害者としては,自分が被害者に好かれていると勘違いしているパターンや,本気で心配して連絡をしているパターンもあるので,連絡をしてくるな!と拒絶の意思を示すことが重要だ。
次に,証拠を残すことだ。
警察が加害者への対応をしていく際にも,弁護士が訴訟等をする際にも,証拠が必要になってくる。加害者からのメールやLINE,DMについては,消さずにスクリーンショットを撮って保存しよう。
電話や直接のつきまといについても,録音録画できればしてほしい。もちろん,身の安全が第一なので,少しでも危険を感じたらすぐに110番してほしい。
そして,警察や弁護士に相談することだ。
警察は,ストーカーやつきまとい事件に関してはすぐに動いてくれることが多い。まずは警察に相談しよう。
相手がお金の請求などの何らかの要求をしてきている場合には,その件も同時に解決する必要がある。そのような場合には,弁護士を間に入れて,弁護士と警察で連携を取りながらストーカー犯と対応していくのが良いだろう。
いずれにしろ,ストーカー被害は,対応を間違えると重大な被害に発展するおそれもあるので,早期に相談をするのが重要だ。