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風営法の許可と届出の違い!

弁護士 若林翔 2022/05/06更新

風営法に定められた「風俗営業及び性風俗関連特殊営業等」を営む方は、警察署(各都道府県公安委員)に「許可」を求めるか、「届出」を出すかしなければなりません。

あなたの営業する業種がどっちの書類を提出しなきゃいけないのか、あなたの働くところが許可を得たり、届出を出したりして営業されている安全なところなのか、確認できるように、2つの違いを見てみましょう。

許可と届出の違い

許可は、本来誰でも享受できる個人の自由を、公共の福祉の観点からあらかじめ一般的に禁止しておき、個別の申請に基づいて禁止を解除する行為です。

他方で、届出は、国民が行政庁に対して一定の事項を通知する行為です。

許可が一度禁止したもの個別の申請に基づき審査をし、審査基準を満たすものについてのみその禁止を解除するものであるのに対して、届出は行政側による審査が想定されておりません。

キャバクラと風俗、どっちが許可でどっちが届出?

風営法には許可制の業態と届出制の業態が区別して定められています。

では、キャバクラやホストクラブといった接待飲食店営業と、デリヘルなどの性風俗関連特殊営業、どちらが許可で、どちらが届出なのでしょうか?

前述のように、許可制とは、広く一般の国民が業務を行うことを禁止し、事前に審査を受けた上で、許可要件を満たし、許可を受けた人のみがその業務を行うことができるという制度で、届出制とは、その業務を行うことを禁止されていないものの、業務を行うときには、事前に規定された情報についての書類を提出(届け出る)ことが義務付けられている制度です。

このような制度趣旨からすれば、一般的に禁止されている許可制の方が規制が厳しいように思えます。

そして、キャバクラやホストクラブよりも風俗店の方が規制を強化する必要があり、だからこそ風俗店は「許可制」にすべきだあるようにも思えます。

しかし、風営法ではその逆で、キャバクラやホストクラブが許可制で、風俗店は届出制となっています。

なぜでしょうか?

許可制は、許可要件を満たした者に対しては、許可をする国(正確に言えば各都道府県の公安委員会)がその営業を認める、推奨するような側面を持ちます。

すなわち、許可を与えるということは、国がお墨付きを与えるということです。

そして、性風俗は、国が営業を認め、推奨するのには馴染まないと考えられているのです(『注解風営法Ⅰ』蔭山信平成20年8月20日参照)。

国は性風俗をいかがわしいものと考えており、お墨付きを与えることはできないと考えているのでしょう。

個人的には、性的な自己決定権や職業選択の自由など、個人の在り方を受け入れている現代において、国の考え方やこれに基づく風営法の規定には強い違和感を感じます。

風営法の許可申請と許可が必要な業種

そもそも、風営法では、様々な業種が規定されています。

風営法上の業種一覧については、以下の記事をご参照ください。

風営法業種一覧

風営法の許可申請

許可制は基本的に、営業をOKとするかの裁量を行政機関(公安委員会や警察)がもっています。そのため、営業しようとするあなたが提出する資料も、許可してくださいとお願いする「許可申請書」となります。

許可申請書記入モデル(風俗営業)
警視庁HP「記載例」より引用
許可申請書記入モデル(特定遊興飲食店営業)許可申請書記入モデル(特定遊興飲食店営業)
警視庁HP「記載例」より引用

許可が下りるためには、場所的要件だけでなく、人的要件(欠格事由に当たらないか)も充足しているか照度や設備、騒音対策などほかの細かな要件も充足しているかも判断されます。

提出書類や記入箇所も、届出書と比べて多くなります。

また、許可申請書を警察署の生活安全課に提出してからすぐに営業開始できるのではなく、「営業許可証」の交付を受けてから営業開始する必要があります。

営業許可証の交付については、申請時期等により処理に要する期間が変動し、個別具体的な処理を要するため、「標準処理期間」(行政手続法6条)を定めることはできないとされています。

とはいえ、各都道府県警察の実情に応じた期間を定めるとされており、東京都では原則55日以内とされています(※土日や祝祭日は含まれません)。

実務上は大抵、40~60日で許可が下りる場合が多いようです。
確実に申請から何日後に下りる!というものではないので、営業開始日よりも前に余裕をもって申請しましょう。

時には許可が下りない場合もありますからね…。

営業許可証をなくしたり、期限が切れたまま営業し続けていたりした場合には、無許可営業であるとして、営業停止処分などの対象となりますので注意してください。

風営法上許可が必要な業種

風営法上、許可が必要な主な業種は、風俗営業と特定遊興飲食店営業です。

風俗営業(風営法2条1項)

特定遊興飲食店営業(風営法2条11項)

 

風営法の届出書と届出が必要な業種

風営法上の届出書

性風俗店などを営業する際に必要なのが届出です。

場所的要件や形式的な要件をクリアしていれば、該当する業種の「開業開始届出書」を警察に提出するだけで、営業を開始することができます。

もっとも、実務上は、大家さんの使用承諾書が要求されるなど、そう簡単なものではありません。

届出書記入モデル(店舗型性風俗特殊営業)
警視庁HP「記載例」より引用
届出書記入モデル(深夜酒類提供飲食店)
警視庁HP「記載例」より引用

 

風営法上届出が必要な業種

風営法上、届出が必要な主な業種としては、性風俗関連特殊営業店と深夜種類提供飲食店営業があります。

性風俗関連特殊営業

店舗型性風俗特殊営業(風営法2条6項)

無店舗型性風俗特殊営業(風営法2条7項)

映像送信型性風俗特殊営業(風営法2条8項)

店舗型異性紹介営業(風営法2条9項)

無店舗型異性紹介営業(風営法2条10項)

深夜種類提供飲食店営業(風営法2条13項4号)

風営法上の許可と届出についてのまとめ

このように、届出を出せば済むのか、許可申請書を出した上で1か月以上営業許可証の交付を待つ必要があるのか、ナイトライフ・ナイトワークに関わる似た業種であっても、差があることにはお気づきいただけましたか?

届出も許可申請も、どっちも面倒だと、それらをないままにしていると、社員や働いてくれてる女の子・男の子たちを危険に晒すことになります。

風営法上、無許可営業や無届営業の罪は重いです。

正しい知識をつけて、適法に営業をしていきましょう!

 

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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