風俗トラブルでよくある事例が盗撮だ。
最近はデリヘル等の風俗店で盗撮した客が逮捕されるケースも増えてきている。
今回は,風俗嬢が,出会い系で出会った男性から盗撮されたとして示談金を要求したところ,示談金の請求が恐喝にあたるとして逮捕されてしまった事例を紹介する。
アプリで知り合い「盗撮された」と60万円恐喝未遂
出会い系アプリで知り合った男性からホテルで全裸姿を盗撮されたことをきっかけに、現金60万円を脅し取ろうとしたとして、風俗店従業員の女2人が警視庁に逮捕されました。
恐喝未遂の疑いで逮捕されたのは、新宿区の風俗店従業員、小泉絢美容疑者(21)ら2人です。2人は、先月、出会い系アプリで知り合った40代の男性に新宿区歌舞伎町のホテルで全裸姿を盗撮されたことをきっかけに、男性に対し「1人30万ずつで60万円払え。警察に取り調べを受ければ会社にもばれる。奥さんに電話しようか」などと言って現金を脅し取ろうとした疑いがもたれています。
取り調べに対し、小泉容疑者は「裸の動画を撮影されたので示談金を請求しただけです」などと容疑を否認しています。2人は出会い系アプリを利用し、同様のトラブルを6件起こしているということで、警視庁が捜査しています。
2020/7/9 TBSNEWS参照
恐喝罪(刑法249条,10年以下の懲役)とは,人を脅迫して財産や財産上の利益を得ることをいう。
恐喝罪の保護法益は,被害者の財産及び被害者の意思決定ないしは行動の事由である。
恐喝罪における脅迫は,人を畏怖させるに足りる程度の害悪の告知をいい,その程度は人の反抗を抑圧するに至らない程度のものである(反抗を抑圧する場合は強盗罪となる)。
また,恐喝罪における脅迫は,脅迫罪における脅迫よりも対象範囲が広い。
脅迫罪においては,人の生命,身体,自由,名誉又は財産に対する害悪の告知が対象となるが,恐喝罪においては害悪の告知の対象・種類に制限がない。人の秘密をバラすなどブライバシー権の侵害に対する害悪の告知等も対象になる。
(恐喝)
刑法第二百四十九条 人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
今回のニュースのように,盗撮による示談金・損害賠償請求でも,人を人を畏怖させるに足りる程度の害悪の告知,脅迫をしている場合には,恐喝罪に該当しうる。
今回のニュースでは,逮捕された風俗嬢は,「1人30万ずつで60万円払え。警察に取り調べを受ければ会社にもばれる。奥さんに電話しようか」と盗撮犯に申し向けている。
「1人30万ずつで60万円払え」の部分は,単なる損害賠償の請求であって,これは脅迫にあたらない。
他方で,「会社にもばれる。奥さんに電話しようか」の部分は,盗撮という犯罪行為をしたことを勤務先である会社や妻に伝えるという意味であって,盗撮犯の名誉権やプライバシー権を侵害する旨の害悪の告知である。
また,盗撮の被害にあったからといって,会社や妻にそれを伝えることに正当性は認められないだろう。
そのため,今回,恐喝罪における脅迫にあたり,逮捕されたのだろう。
この風俗嬢は何度も同じようなことをしているとのことで,警察から目をつけられていたものとも考えられる。
また,脅迫かどうかは言葉のみならず,その言葉を使った場所,人数,口調などの状況にも左右されるため,執拗かつ悪質な請求態様だったのかもしれない。。
風俗店の店員が風俗トラブル(本番トラブル)を理由に慰謝料請求をして逮捕された事例については,以下を参照して欲しい。
また,風俗店の店員が恐喝罪で逮捕されるも,結果として不起訴になったケースについては,以下を参照して欲しい。
風俗トラブルの示談書と脅迫についての判例については以下の記事を参照して欲しい。