キャバクラやホストクラブなど、夜の業界では、風営法の許可名義と実際の経営者が違う場合がある。
「別人名義で経営するのは歌舞伎町のルールや常識だから」
「周りの人もやっているから大丈夫」
などと甘く考えてはいけない!
名義貸しは、風営法で一番重い罰則が定められている。
風営法改正案では名義貸しの罰則上限が引き上げられ、法人の罰金額の上限は3億円になることが閣議決定された。
行政処分としても営業廃止や営業停止などの重い処分が想定されている。
さらに、名義貸しにより名義を借りた人は、無許可営業として、その売上金が組織犯罪処罰法の「犯罪収益」に該当するとして、没収・追徴の対象となる。
また、風営法の名義貸しには、気づかずに名義貸しになってしまっているような落とし穴もある。
グラディアトル法律事務所では、数多くのキャバクラやホストクラブの顧問弁護士をしており、風営法の名義貸しなど、名義に関する相談を受けてきた。
本記事では、グラディアトル法律事務所の顧問弁護士としての経験も踏まえて、以下のような風営法の名義貸しについて解説する。
風営法の名義貸しの定義、罰則、名義貸し(経営実態)の判断基準、名義貸しが行われる理由、名義貸しに関する判例、名義貸しを避ける方法
など。
正しい知識を身につけて、適法に経営をして欲しい。
風営法の名義貸しとは、風俗営業の許可を受けたものが、自己の名義をもって、他人に風俗営業を営ませることをいう。
要するに、風俗営業の許可を受けた人が、自分で店舗の営業をせずに、他の人や法人に店舗の営業をさせることだ。
名義貸しをした人から名義を借りて実際に店舗を経営している人は、無許可営業となる。
たとえば、名義人Aさんが風俗営業の許可を取り、実質的経営者Bさんに名義を貸した場合
・名義人Aさん=名義貸し
・実質的経営者Bさん=無許可営業
となる。
風営法の無許可営業の詳細は、以下の記事を参照して欲しい。
ここでいう「風俗営業」は、1号から5号までの業種が定められている。
業種 | 風営法営業許可の種類 | 例 |
---|---|---|
風俗営業(接待飲食等営業) | 1号 | ホストクラブ、キャバクラ、スナックなど |
風俗営業(接待飲食等営業) | 2号 | 低照度飲食店、バーなど |
風俗営業(接待飲食等営業) | 3号 | 区画席飲食店、カップル喫茶など |
風俗営業(遊技場営業) | 4号 | 雀荘、パチンコ店 |
風俗営業(遊技場営業) | 5号 | ゲームセンター |
名義貸しでよく問題となる、キャバクラ、ホスト、ガールズバー、コンカフェ、サパーなどは1号営業だ。
デリヘルなどの性風俗店は、「風俗営業」には含まれないので、名義貸しの対象とならないことに注意して欲しい。
性風俗点の場合には、別途、無届営業という罰則があり、そちらの対象となる。
風営法の名義貸しの罰則は、二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金又はこの併科だ。
名義貸しは、風営法が定める罰則の中で一番重い刑罰が定められている。
風営法の改正で、名義貸しについて、罰金額の上限が3億円まで引き上げられる旨の閣議決定がされた。
風営法の改正についての詳細は、以下の記事を参照して欲しい。
風営法上、名義貸しといえるためには、風俗営業の許可名義と経営実態が違うことが必要だ。
では、経営実態はどのような基準で判断されるのだろうか。
基本的には、店舗の経営が誰の裁量(決定権)と計算(お金の支配者)で行われていたかが判断要素となる。
具体的には、以下のような要素が考慮される。
【風営法・名義貸し】経営実態の判断基準
・利益分配率(許可名義の人や法人がもっとも多く利益を得るべき)
・売上の管理者(許可名義の人や法人が管理すべき)
・経営上の重要事項の決定者(許可名義の人や法人が決定すべき)
・採用・人事についての決定者(許可名義の人や法人が決定すべき)
・不動産等の契約名義(許可名義の人や法人の名義で契約すべき)
なお、名義貸しと業務委託の区別について、許可名義人が他の人に業務の一部を委託すること自体は許容されており、通常、名義貸しとは判断されない。
もっとも、業務の大部分を委託しており、許可名義人が業務にほとんど関与しないような場合には、名義貸しになるだろう。
いわゆる法人なりの場合には許可を取り直す必要があるので注意が必要だ。
個人で店舗経営をしており、個人名義で許可を取得していた場合、法人化して法人経営に切り替える際には、法人で新たな許可を取得する必要があるのだ。
「名義貸し」をする理由としては、以下の理由がある。
・実質的経営者に欠格事由があり風俗営業の許可が取れないため
・実質的経営者が自らの逮捕を免れるため
・複数店舗を経営している場合に営業停止などのリスクを分散させるため
グループ店舗など、複数店舗を経営する場合に、リスク分散などの観点から店舗ごとに別の名義で許可をとるということはあり得るところだろう。
その場合には、当該店舗については、当該店舗の許可をとっている人や法人で経営をしていくことが重要だ。
前述した【風営法・名義貸し】経営実態の判断基準を参照してもらい、実態を名義にできる限り合わせるようにしてほしい。
風営法の名義貸しについての重要な判例として、最判平成12年3月21日(判時1707-112)がある。
この判例では、風営法の名義貸しについて、違法性の強いものだと指摘している。
具体的には、風営法の名義貸しについて、
・風俗営業許可制度を根底から危うくするもの
・無許可で風俗営業を営むことを助長し、隠ぺいする行為
・それ自体が法の立法目的を著しく害するおそれがある行為
などと指摘している。
法一一条に違反して名義貸しをすることは、右目的達成のため所定の基準を充足することが確認された者にのみその営業を認めることとする風俗営業許可制度を根底から危うくするものであって、それ自体が法の右目的に著しく反する類型の行為であることは明らかである。また、これを実質的にみても、一般に、他人の名義を借りて風俗営業を営む者は、自己の名義をもって許可を受けることに支障がある者であることが多いと推測されるのであり、名義貸し行為は、そのような者が公安委員会の監督を逃れて無許可で風俗営業を営むことを助長し、隠ぺいする行為であって、それ自体が法の立法目的を著しく害するおそれのある行為であるといわなければならない。法四九条一項三号が、名義貸し行為については、無許可営業行為、不正な手段により営業許可を受ける行為等と並んで、最も厳しい刑罰を科すものと規定しているのも、以上のような考えに立つものと理解することができるのである。そうであれば、形式的には名義貸しといわざるを得ないものの法の立法目的を著しく害するおそれがあるとはいい難いような特段の事情が認められる場合は別として、そうでない限り、名義貸しは、類型的にみて「著しく善良の風俗若しくは清浄な風俗環境を害し、若しくは少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれがある」場合に当たると解するのが相当である。
最判平成12年3月21日(判時1707-112)より引用
名義貸しは、風営法で一番重い罰則が定められており、風営法改正案では名義貸しの罰則上限が引き上げられ、法人の罰金額の上限は3億円になることが議論されているなど、名義貸しはリスクが高い。
そうであるにもかかわらず、名義貸し状態のキャバクラやホストクラブが存在していることも事実だ。
名義貸しを避けつつ、複数店舗の組織構造を作っていくには、風営法に詳しい顧問弁護士が重要だ。
「風営法にはこう書いてあるけれど、実際はどうすればいの?」と思った時には、ナイトビジネス業界を専門とする弁護士に相談すると、風営法に違反することなくスムーズにホストクラブやキャバクラを経営できる。
風営法違反による短期的な営業停止ですら経営が悪化したり人材が流出したりする可能性が高いため、弁護士と顧問契約を結んで些細なことでもすぐに相談できる関係を築いておこう。
弁護士事務所はたくさんあるが、グラディアトル法律事務所はナイトビジネス業界に特化しているので、キャバクラの経営者様に寄り添って必要な情報や対策法を提供することが可能だ。
風営法を正しく理解するためには風営法以外に政令や各都道府県の条例も合わせて知る必要があり、自力で風営法の具体的な規制内容や基準を理解するのはとても難しいものである。
政令や各都道府県の条例はたびたび改正されるため、法律に携わっている職業でない限り常に最新の規制内容を完璧に把握することはなかなかできることではない。
そこで、グラディアトル法律事務所にご相談いただくと、風営法の詳細なルールにも違反することなくスムーズにホストクラブやキャバクラの経営ができるようにサポートさせていただく。
風営法の規定は抽象的なので、警察署の担当者によって解釈が異なる場合がある。
そんな風営法のルールを守るためには、過去の判例や最近の量刑傾向をよく知る弁護士の手助けが必要不可欠だ。
グラディアトル法律事務所ではこれまで数々のホストクラブやキャバクラの経営に携わってきた実績があるので、風営法に違反しないための対策をご提供できる。
グラディアトル法律事務所はナイトビジネス業界を専門とする弁護士事務所の草分け的存在で、ナイトビジネス業界における実績が豊富である。
医者にも内科や外科といった専門分野があるように弁護士にも得意とする専門分野があるため、風営法が気になるホストクラブ・キャバクラの経営者様はナイトビジネス業界に強い弁護士に相談しなければならない。
グラディアトル法律事務所に所属する弁護士は風営法だけでなく周辺知識も豊富なので、キャバクラの経営者様のお役に立てると自負している。