キャバクラ、クラブ、ホストクラブなどの水商売、デリヘルなどの風俗店などいわゆる夜職について、辞めたいのに辞められないという相談は多い。
夜職では、キャストといわれる、キャバ嬢、ホスト、風俗嬢の仕事や人気がそのまま店舗の売上につながる。
また、店舗経営者側は、キャストの求人について、多額の広告を出して採用活動をしている。
キャストに辞めて欲しくないというのが経営者側の本音だろう。
そのため、辞めたいと言ってきたキャストに対してもなんとか店に留まって欲しいと説得をするケースが多い。
また、夜職では、罰金やバンスと言われる借金・前借りが制度として残っていることも多い。
そうすると、そのお金を払うまで辞めさせないなどと言われることもある。
具体的な退職時の水商売・風俗(夜職)のトラブルとしては、
・風紀違反や爆弾の罰金を完済するまで辞めさせない!
・お金を借りていて辞められない!
・辞めたら水商売で働いていたことを家族や次の職場にバラすと脅された!
・トラブルを解決せず辞めたら家や職場に押しかけられた!
・未払分の給料を払わないと言われた!
などなど。
昨今、退職代行なるサービスが流行っている。
しかし、夜職では、退職代行サービスが流行る前から同様のサービスがあった。
退職代行とはなんだろうか?
夜職の場合、退職代行をお願いするとどのようなメリットがあるのか。
まずは、水商売・風俗などの夜職の退職代行のYouTube解説動画を見て欲しい。
退職代行とは、労働者に代わって退職の意思表示をするサービスのことをいう。
一般には、会社等の勤務先を辞めたいのに、人手不足などから、強い慰留や長期間かかる引き継ぎを頼まれるなど、辞めたいと言えない環境にある人や辞めたいと言っても辞めさせてくれないという人のために、業者が代わって退職の意思を伝え、その後の退職の手続きを代行する業務だ。
2018年頃からメディアで取り上げられ、その存在に世間の注目が集まった。
退職代行サービスを利用する人も増えてきているようだ。
水商売・風俗などの夜職では、これに加えて、罰金やバンス、脅迫・恐喝、給料の未払などのトラブルを抱えているケースがあり、退職の代行とともに付随するトラブルの解決交渉も行うことが多く、退職代行が流行する前から同様の相談は多かった。
退職代行について、弁護士が行うサービスもあるのだが、そもそも流行のきっかけになった業者が弁護士でなかったことから、弁護士以外の業者が退職代行業務を行なっているケースも多い。
退職代行をインターネットで調べてみると格安で「すべてお任せ!退職するならココ!!」と弁護士ではなく退職代行業者が引き受けていることが散見される。
このことから「退職代行を利用することでトラブルも解決するのでは?それなら安いほうを選ぼうかな」と考えるユーザーは多いかもしれない。
しかし、実際は上記で紹介した「風紀違反や爆弾の罰金や借金の請求」「関係者へ口外するとの脅し」などのトラブルは退職代行業者を利用したとしても解決することはない。
また、弁護士以外の業者が退職代行サービスを行うことは、弁護士法が定める非弁行為に該当するのではないかという問題がある。
非弁行為とは、弁護士以外の者が法律事件に関する法律事務などを業務として行うことをいう。
この点について、退職代行業者側の主張はおおむね以下の内容だ。
・退職の意思を伝えるだけ!
・交渉等の法律業務はやらないからセーフ
・代理ではなく代行だからセーフ
なお、退職代行業者大手のEXIT株式会社さんのHPによると、その業務内容は以下の内容だ。
・本人に連絡をしないようにお願い
・有給休暇の消化についても確認
・返却物や離職票等の必要書類を郵送するよう伝える
・社宅の退去日についても確認
・退職するまで何度でも電話・メール対応
それでは、退職代行業者は非弁行為に該当するのであろうか?
まずは、弁護士法の条文を見て欲しい。
弁護士法
第七十二条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
第七十七条 次の各号のいずれかに該当する者は、二年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
三 第七十二条の規定に違反した者
まず、「法律事件」とは、法律上の権利義務に関し争いや疑義があり,又は,新たな権利義務関係の発生する案件をいうもの
(条解弁護士法647頁及びその記載文献,裁判例参照)をいう。
退職代行は,会社との間の労働契約の解除およびこれに伴う権利義務を新たに発生させるものだ。
そのため、退職代行は「法律事件」に該当する。
次に、「その他の法律事務」とは、法律上の効果を発生,変更する事項の処理のみではなく,確定した事項を契約書にする行為のように,法律上の効果を発生,変更するものでないが,法律上の効果を保全,明確化する事項の処理もあたる(条解弁護士法654頁及びその記載文献,裁判例,東京地判平成29年2月20日判1451号237頁参照)。
退職代行は,会社との間の労働契約の解除という法律上の効果を発生させるものであり,これを会社に知らせることにより労働者の地位の変更を保全し,明確化させるものだ。
そのため、退職代行は「その他の法律事務」に該当する。
したがって、弁護士でない退職代行業者は非弁行為に該当し、違法だ!
退職代行業者によって退職手続きした場合は、トラブルの解決はおろか退職手続き自体が無効となってしまう可能性があるし、最悪の場合、非弁行為の共犯になってしまうリスクすらあるのだ。
退職代行業者の違法性、非弁行為については以下の動画も参照して欲しい。
日本国憲法では、「職業選択の自由」が保障されており、奴隷的拘束や意に反する苦役が禁止されている。
これは職業問わず退職希望者がどんな理由に関わらず自由に退職することが出来る、他人に侵害されることのない権利だ。
日本国憲法第十八条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。
第二十二条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
また、これらの憲法の規定を受けて、労働基準法では、「強制労働の禁止」を定めている。
具体的には、暴行や家族にバラすなどの脅迫などによって従業員に労働を強制することを禁止し、重い刑罰を定めている。
また、風紀違反や当日欠勤等の罰金(法律的には違約金・損害賠償額の予定)をあらかじめ定めておくことは、禁止されており、これにも罰則がある。
労働基準法(強制労働の禁止)
第五条 使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。第百十七条 第五条の規定に違反した者は、これを一年以上十年以下の懲役又は二十万円以上三百万円以下の罰金に処する。
(賠償予定の禁止)
第十六条 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。第百十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
一 第三条、第四条、第七条、第十六条、第十七条、第十八条第一項、第十九条、第二十条、第二十二条第四項、第三十二条、第三十四条、第三十五条、第三十六条第六項、第三十七条、第三十九条(第七項を除く。)、第六十一条、第六十二条、第六十四条の三から第六十七条まで、第七十二条、第七十五条から第七十七条まで、第七十九条、第八十条、第九十四条第二項、第九十六条又は第百四条第二項の規定に違反した者
なお、風紀違反について、キャバクラの経営者がキャストに対して損害賠償請求をした事案について、「真摯(しんし)な交際も禁じており、自由への介入が著しく、無効」だと判断をした裁判例もある。
また、上記の一連の法律は、キャバクラや風俗店等の従業者が雇用契約上の労働者(従業員)であった場合に該当する法律だ。
業務委託契約に基づく個人事業主である場合には、労働基準法などの法律関係は適用されない。
もっとも、業務委託なのか雇用なのかという労働者性については、契約書の書面のみで判断されるのではなく、どのように働いていたのかという実態を重視して判断される。
ホストクラブにおけるホストの労働者性については裁判例も割れており、事案に応じた判断が必要になるだろう。
他方で、業務委託契約であっても風営法は適用される。
キャバクラやホストクラブなどの水商売や性風俗店に適用される風営法の「拘束的行為の規制」だ。
これはキャバクラやホストクラブから退職する者に対して風紀違反や爆弾行為によって発生した債務やバンスの借金などについて、不相当な金額を負担させ、退職時には直ちに全額返させることを禁止している。
それによって間接的な拘束を防止するものだ。
風営法(接客従業者に対する拘束的行為の規制)
第十八条の二 接待飲食等営業を営む風俗営業者は、その営業に関し、次に掲げる行為をしてはならない。
一 営業所で客に接する業務に従事する者(以下「接客従業者」という。)に対し、接客従業者でなくなつた場合には直ちに残存する債務を完済することを条件として、その支払能力に照らし不相当に高額の債務(利息制限法(昭和二十九年法律第百号)その他の法令の規定によりその全部又は一部が無効とされるものを含む。以下同じ。)を負担させること。
このように、水商売、風俗などの夜職の退職については、様々な法律問題が絡んでくる。
とはいえ、退職自体ができないということはありえないので、安心をしてほしい。
だが、実際問題として自らの退職意思を伝えたとしても何かと理由つけ辞めさせてもらえない、また脅迫・恐喝によって辞められないことがあるのが現実だ。
ネット上で得た「自由退職の権利」という付け焼き刃の知識を基に、自らで主張したとしても軽くあしらわれたりするケースもある。このような状況に陥ってしまうと、「無知で解決できなかった自らの責任だ…」と泣き寝入りしてしまい辞めることが出来なくなってしまうケースもある。
そんなときには、是非とも弁護士による退職代行を利用して欲しい。
自分では辞めたくても辞められない。
退職代行業者は非弁にあたり違法だ。
どうしたらいいのだろうか?弁護士に依頼をするのが良いと思う。
弁護士による退職代行では、確実に退職ができる。
加えて、以下のような退職に伴う様々なトラブルについて、弁護士であれば一括して交渉をしていくことができる。
・未払給料の請求
・罰金やバンスなどお金の問題
・脅迫・恐喝
・店舗掲載されているHP・プロフィールの削除
・写メ日記の削除
そのため、キャバクラやホストなどの水商売、デリヘル等の風俗などの夜職を辞めたい場合には、弁護士による退職代行をお勧めする。
退職代行を弁護士に頼むべき理由の詳細については、以下の記事も参照して欲しい。
リンク:退職代行は弁護士がオススメな6つの理由と強い弁護士の選び方
具体的には、どのような退職トラブルがあるのだろうか?
退職時のトラブルとして紹介したものをベースに解決策や関連する法律関係を考えてみよう。
・風紀違反や爆弾の罰金を完済するまで辞めさせない!
風紀違反や爆弾による罰金はキャバクラやホストクラブの損害防止のために設けられている。
しかし、多くの風紀違反や爆弾行為での罰金請求は適切ではないとし公序良俗違反で無効となり請求を拒否することができる可能性がある。
詳細は、前述したキャバクラでの風紀違反の記事を参照して欲しい。
そのうえで支払いの義務がないのにもかかわらず罰金支払いを命じられ、脅迫を受けた場合には恐喝罪が成立する。
脅して仕事を継続させることは強要罪となる。
また、退職時に罰金の未完済を理由に辞めさせないことは労働基準法の強制労働や風営法の拘束的行為の禁止に該当する。
・お金を借りていて辞められない!
また完済するまで退職を認めないや借金分としてあと2~3年働けと伝えられることがある。
このような場合、自ら個人の理由でお金を貸してもらったという心のブレーキがかかり、なかなか退職に踏み切ることができないケースも見受けられる。
この場合は完済の約束を書面にする、また高金利での貸し付けは借金の残りや過払い金を調査し整理することで金銭トラブルは解決しうる。
しかし、借金の未返済を理由に辞めさせないことや労働を強要することは強要罪や労働基準法、風営法に違反するため、その点も検討が必要だろう。
・辞めたら水商売や風俗で働いていたことを家族や次の職場にバラすと脅された!
退職意思を伝えると家族や次の職場にバラすと脅してくることもある。
世間一般が水商売や風俗(夜職)で働くことをよく思わないとの認識から生まれたトラブルだ。
まず家族や次の職場などの関係者にバラしその名誉を毀損すると伝え畏怖を与えたことは脅迫罪に該当する。
またそれらをネタに職場に拘束することは強要罪や労働基準法に違反することになる。
実際にばらした場合には、名誉毀損罪が成立する可能性があり、プライバシー権侵害の不法行為に該当するといえるだろう。
・トラブルを解決せず辞めたら家や職場に押しかけられた!
非常に稀なケースではあるが実際にあったトラブルだ。
家や昼職の職場に押しかけたのちに当人や家族・職場へ迷惑料などの請求や、退職手続きが完了していなかったとして労働の継続を強いることがある。
当人や家族に対して畏怖を与え金銭を請求したことは恐喝罪、退職を認めず労働を強いた場合は強要罪や労働基準法違反となる。
・風紀違反で罰金150万円!!完済するまで辞めさせない!
キャバクラで働く女性が、スタッフであるボーイ(黒服)とLINEのIDを交換しプライベートな関係を持ってしまった。
そのことがお店にバレて風紀違反として罰金150万円が請求された。
完済するまでは辞めることを認めず、逃げたら家族に請求するとも脅されたケースだ。
トラブル解決に当たった専門弁護士の対応を下記記事にまとめてみたので見てほしい。
・風俗店(ソープランド)経営者から携帯・社宅を与えられていて辞めづらい…
相談者が、店から携帯電話を与えられ、社宅に住んでいたケースだ。
この場合には、携帯電話の解約や社宅の立ち退きについての話し合いが必要になるため、単に辞めたいという通知をするだけでは解決をしない。
そのため、弁護士が退職代行業務を行い、付随する問題について、店舗側と話し合いをして解決をした。
以上のトラブルであっても法律は水商売で働く方々の味方であり弁護士による正式な退職代行によって脅迫・恐喝トラブルなどの退職に付随する問題も解決できる。
これらのように仕方ないと諦めていたものや、自らに非があるようなトラブルであっても法的根拠を用いて覗いてみれば解決の糸口が見えくるだろう。
当事務所ではホストやキャバクラなど水商売やデリヘル等の風俗店(夜職)に関するトラブルについて、数多くの相談を受け、トラブルを解決してきた。
そのため、水商売や風俗などの夜職・ナイトビジネス業界の裏の裏まで知り尽くした専門弁護士が在籍しているのでユーザーにとって話しやすく、抱えるトラブルをいち早く理解し解決できることが強みだと思う。
さらに、夜の退職代行事例においては、無料相談であることや休祝日含め24時間対応していることから昼夜逆転の生活を送っている夜職の方の対応も可能だ。
そういったフットワークの軽さからお客様がご相談しやすい環境が整っていると考えている。
「私が抱えているトラブルは弁護士が必要なのか?」と個人での判断が難しいかと思う。
当事務所では、まず相談者の要件をヒアリングしたうえで弁護士が対応すべきかどうかを判断をするので、一度当事務所の無料相談を利用してみることをオススメしたい。
水商売・風俗などの夜職から退職するに際して不安をなくしたい・トラブルを解決したいと考えている方は是非一度、当事務所に相談してください。