17歳の少女を使ってぼったくりバーに男を勧誘したとして,歌舞伎町のバー経営者らが児童福祉法(有害支配)違反で逮捕された。
歌舞伎町などの夜の街では,18歳未満の未成年については,ミテコと呼ばれている。
身分証の提示ができない子の略だとかなんだとか。
報道によれば,摘発されたバーは,ぼったくりバーらしいが,その経営者が児童福祉法(有害目的支配)違反で逮捕されるケースは珍しい。
初めてかな??
ということで,今回は,18歳未満のミテコと児童福祉法(有害支配)について解説する。
風営法とミテコ,客引きとぼったくり防止条例については以下の記事を参照してほしい。
風俗店と18歳未満(未成年)~女子高生ホステスにキャバクラ経営者ら逮捕~
客引きの逮捕事例増加!迷惑防止条例・風営法・ぼったくり防止条例,そして,電波法!?
児童福祉法(有害目的支配)違反で逮捕
17歳の少女を雇い、マッチングアプリを使って客を勧誘させ、上乗せした飲食代を請求していた新宿の歌舞伎町のバーが警視庁に摘発され、経営者の男ら5人が逮捕されました。
児童福祉法違反の疑いで逮捕されたのは、新宿区歌舞伎町にあるバー「Ark」の経営者の大当周容疑者(21)ら5人です。
5人は去年12月、従業員として雇った当時17歳の少女になりすましてマッチングアプリを使い、少女と男性客(20代)を引きあわせたうえ、少女に客を店に誘わせ、酩酊した客に上乗せした飲食代を支払わせるなどさせた疑いが持たれています。
警視庁によりますと、5人は少女に従業員であることを隠しデートを装わせ、客を勧誘させていたということです。バーは、少なくとも去年8月からの7か月間に数千万円を売り上げていたとみられ、取り調べに対し、大当容疑者は容疑を否認しています。(17日19:20)
TBSNEWS 配信 https://news.yahoo.co.jp/articles/564f02ae68096bb8a03dba70d015d3bb475ca9bc
まず,児童福祉法上,「児童」とは,満十八歳に満たない者をいう。
今回問題となった少女は17歳なので,児童である。
そして,児童福祉法では,「児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的をもつて、これを自己の支配下に置く行為」を禁止しており,三年以下の懲役,百万円以下の罰金が規定されてる。
ここでいう「児童の心身に有害な影響を与える行為」とは、社会通念上、児童の健全な育成を積極的に害することが客観的に明らかな行為をいう。
また、当該行為の有害性が客観的に認められる限り、被害児童を支配下に置いている者が、その有害性を主観的に認識している必要はないと解すべきとされている。
今回の事件についても,17歳の少女を装いマッチングアプリを使い、少女と男性客を引きあわせたうえ、少女に客を店に誘わせ、酩酊した客に上乗せした飲食代を支払わせる行為は,社会通念上、児童の健全な育成を積極的に害することが客観的に明らかな行為だと判断しての逮捕だろう。
深夜における飲食店営業では,風営法上,18歳未満を働かせてはいけないと定められている。
さらに,勧誘方法や,バーがぼったくりバーであることなどを考えれば,社会通念上、児童の健全な育成を積極的に害することが客観的に明らかな行為といえるだろう。
次に,「自己の支配下に置く」行為がなされたといえるのであろうか??
ここでいう「自己の支配下に置く」とは、児童の意思を左右できる状態の下におくことにより使用、従属の関係が認められる場合をいうが、必ずしも現実に児童の意思を抑制することがなくても客観的に児童の意思を抑制して支配者の意思に従わせることができる状態を顕現した場合をもって足りると解される。
ニュース記事の内容からは,児童を「自己の支配下に置く」行為がなされたのかは明らかではないが,なんらかの事情があるものと推測される。
児童福祉法
第四条 この法律で、児童とは、満十八歳に満たない者をいい、児童を左のように分ける。第三十四条 何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
九 児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的をもつて、これを自己の支配下に置く行為第六十条
○2 第三十四条第一項第一号から第五号まで又は第七号から第九号までの規定に違反した者は、三年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
福岡高判平成4年3月23日
二 被告人には、児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的がなかったとの主張について
弁護人の所論は、要するに、被告人は、被害児童に対し、ダイヤルQ2の電話の応対の仕事上で、異性交遊や売春につながりかねない行為を禁止するとともに、いかがわしい会話等には自分の意思で電話を切ってもよいと説明していたのであるから、被告人には、児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的がなかった、というのである。
そこで検討するに、児童福祉法三四条一項九号にいう「児童の心身に有害な影響を与える行為」とは、社会通念上、児童の健全な育成を積極的に害することが客観的に明らかな行為をいい、当該行為の有害性が客観的に認められる限り、被害児童を支配下に置いている者が、その有害性を主観的に認識している必要はないと解すべきところ、被告人は、いわゆるテレホンセックスや売春の申し込みの電話を受けうることを十分に認識していなから、本件業務に従事させていたのであり、右のような行為が社会通念上、児童の心身に有害な影響を与えるものであることは明らかである。三 被告人は、児童を自己の支配下に置いたものではないとの主張について
弁護人の所論は要するに、被告人は被害児童を雇用していたが、休日を与え、休み時間もとらせるなどしており、同人らを監視したり、同人らに本件行為を強制したものではないから、児童を支配下に置いたものではないというのである。
そこで検討するに、児童福祉法三四条一項九号にいう「自己の支配下に置く」とは、児童の意思を左右できる状態の下におくことにより使用、従属の関係が認められる場合をいうが、必ずしも現実に児童の意思を抑制することがなくても客観的に児童の意思を抑制して支配者の意思に従わせることができる状態を顕現した場合をもって足りると解されるところ、被告人は、被害児童をNコーポに住み込ませたうえ、被告人もしばしば同所に泊まり込んだほか、被告人の愛人やその配下の者を泊まり込ませるなどし、同所において、被害児童に時給五五〇円で深夜にわたる業務に従事させ、勤務時間中は、被告人らにおいて児童の勤務ぶりを監視するとともに、その自由な外出を示じ、食事もいわゆる店屋物をとらせたうえ、賃金も被告人の愛人が預かるなどし、また被害児童の一人にその勤務態度が悪いとして暴力を加えることもあったことか認められることなどを総合すれば、被告人は児童を支配下に置いたというべきである。
以上の次第で、被告人が児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的で、これを自己の支配下に置いた旨認定し、児童福祉法三四条一項九号違反の罪の成立を認めた原判決には、法令の解釈、適用の誤りはなく、事実の誤認も見当たらない、論旨は理由がない。