近年、「パパ活」という言葉をよく聞くようになった。
新型コロナウイルスの影響で、職を失った人や収入が減少した人がパパ活を始め、パパ活女子が増えているなどの記事もよく見かけるようになってきた。
パパ活とは、女性が経済力のある男性パパとデートや性行為をして、その対価として金銭を受け取ることをいう。
18歳以上の女性との単なる食事などのデートであれば、犯罪には該当しない。
では、大人の関係、性行為を伴うパパ活の場合には売春防止法違反になるのだろうか?
この記事では、パパ活と売春防止法について解説をする。
売春防止法は、昭和31年に作られた法律で、売春を禁止し、売春を助長する行為を処罰する法律だ。
売春防止法において、「売春」とは、対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交することと定義されている(売春防止法2条)。
簡単に言うと、お金をもらって不特定の人と性交をすることを売春という。
一方、「パパ活」とは、女性が経済力のある男性パパとデートや性行為をして、その対価として金銭を受け取ることをいう。
そのため、以下の2つの条件を満たした「パパ活」は、売春に該当する。
① 「パパ活」が単なる食事やデートのみではなく、性行為を伴う場合
② 「パパ活」相手が個人的に知り合った特定の相手ではなく、不特定の相手である場合
前述したように、不特定の相手との性行為を伴うパパ活は、売春防止法で禁止する「売春」に該当する。
売春防止法では、売春行為は禁止されている(売春防止法3条)が、単なる売春には処罰規定がないので、売る側も買う側も逮捕されたり、処罰されたりすることはない。
そのため、パパ活が売春防止法で禁止する「売春」に該当したとしても、単なる売春である場合には、売春防止法違反で逮捕されることはない。
他方で、売春防止法は、公衆の目に触れるような場所での売春の勧誘行為や、売春のあっせん、売春の場所を提供するような売春を助長する行為が処罰対象となっている。
前述のように、単なる売春・パパ活には処罰規定はないので、売春防止法違反で処罰されることはない。
一方で、パパ活についての以下の3つのケースでは、売春防止法違反で逮捕されることがあるので注意が必要だ。
① パパ活相手を路上で探す「立ちんぼ」行為
② パパ活相手をネット上で誘引する行為
③ パパ活のあっせん(周旋)行為
路上などの公共の場所でパパ活相手を探す行為は、「客待ち」や「勧誘」として売春防止法に違反し、逮捕される可能性がある。
公共の場での売春の「客待ち」や「勧誘」は、社会の善良の風俗という社会的法益を害する行為として処罰対象となっているからだ。
(勧誘等)
第五条 売春をする目的で、次の各号の一に該当する行為をした者は、六月以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
一 公衆の目にふれるような方法で、人を売春の相手方となるように勧誘すること。
二 売春の相手方となるように勧誘するため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと。
三 公衆の目にふれるような方法で客待ちをし、又は広告その他これに類似する方法により人を売春の相手方となるように誘引すること。売春防止法 E-gov
近年、新宿歌舞伎町のいわゆる「交援」前をはじめとして、繁華街での立ちんぼの増加や一斉摘発が増えてきている。
立ちんぼと犯罪・売春防止法についての詳細は、以下の記事を参照して欲しい。
出会い系サイトやSNSでパパ活相手を募集する行為は、公衆の目にふれるような方法で売春の相手方を誘引する行為にあたり、逮捕される可能性がある。
実際に、ネット上でのパパ活相手、売春相手の勧誘・誘引行為により逮捕された事例もでてきている。
売春に該当するパパ活をあっせん(周旋)している場合には、売春のあっせん(周旋)として、逮捕される可能性がある。
パパ活あっせん業者があっせんするケース、港区女子が他の女性をパパ活相手の男性に紹介するケース、などが考えられる。
(周旋等)
第六条 売春の周旋をした者は、二年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
2 売春の周旋をする目的で、次の各号の一に該当する行為をした者の処罰も、前項と同様とする。
一 人を売春の相手方となるように勧誘すること。
二 売春の相手方となるように勧誘するため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと。
三 広告その他これに類似する方法により人を売春の相手方となるように誘引すること。
もっとも、パパ活のあっせんが「売春」のあっせんとして処罰されるのは、売春あっせんの故意がある場合だ。
具体的には、パパ活をあっせんした人が、あっせんされた人が「売春」(お金をもらって不特定の相手と性交)をする可能性があることを知っていたことが必要だ。
「売春をする可能性があるが、それもやむを得ない。パパ活をあっせんしよう。」という心理状態であれば、売春あっせんの未必の故意があると言えるだろう。
売春のあっせんについては、ソープランドやデリバリーヘルスなどの風俗店経営者が売春防止法違反で逮捕されるケースが多い。
デリヘル等の風俗店と売春防止法や立ちんぼと売春防止法については、以下の記事もご参照ください。
パパ活については、売春防止法以外の犯罪も問題になる。
パパ活をする男性側については、以下の犯罪が問題になる。
パパ活をする女性側については、以下の犯罪が問題となる。
売春防止法違反以外のパパ活についての犯罪については、以下の記事を参照して欲しい。
リンク:パパ活は犯罪?犯罪になり得る具体的な10のケースと発覚の経緯を解説
パパ活行為やパパ活アプリについて、風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)では規制がされていない。
パパ活アプリやパパ活業者については、東京都の場合、交際クラブ・デートクラブと同様に、デートクラブ条例での規制を受ける。
東京都のデートクラブ条例では、「デートクラブ営業」とは、客と他の異性の客との間における対価を伴う交際を仲介する営業であると定義(東京都デートクラブ営業等の規制に関する条例2条1号)している。
パパ活も客と他の異性の客との間における対価を伴う交際であると考えられるため、この仲介をするパパ活業者は、「デートクラブ営業」をするものと考えられる。
そのため、パパ活業者などは、条例上、公安委員会への届出が必要となる。
以上のように、パパ活のあっせんやパパ活相手の募集は売春防止法に違反し、逮捕される可能性がある。
その他にも、以下のようなトラブルに巻き込まれて被害にあってしまうケースがあるので注意が必要だ。
パパ活トラブルについては、以下の記事をご参照ください。
リンク:パパ活トラブルの弁護士解説記事
以下の2つの条件を満たした「パパ活」は、売春防止法が定める「売春」に該当する。
① 「パパ活」が単なる食事やデートのみではなく、性行為を伴う場合
② 「パパ活」相手が個人的に知り合った特定の相手ではなく、不特定の相手である場合
パパ活が「売春」に該当するとしても、単純な売春だけでは逮捕されない。
パパ活が売春防止法違反で逮捕されるのは以下の3つのケース
① パパ活相手を路上で探す「立ちんぼ」行為
② パパ活相手をネット上で誘引する行為
③ パパ活のあっせん(周旋)行為
以上のように、パパ活は売春防止法によって逮捕されるリスクがあるだけではなく、さまざまなトラブルに巻き込まれる危険性がる。
犯罪に抵触する行為をしてしまった場合や、トラブルに巻き込まれてしまった場合には、できる限り早く、弁護士に相談しましょう。