2022年5月8日,日本最大規模のハプニングバーである「「Sleeping Beauty 〜眠れる森の美女〜」(スリーピングビューティ)」の経営者や従業員,そして,利用客が公然わいせつ罪で逮捕された!
ハプニングバー(ハプバー)といえば,いやらしいイメージが強いのだが…
どうやら,最近はクラブ感覚で遊びにいく若い女性が増えいてきているとか。
女性は安いしね。
他方で,ハプニングバーの摘発事例,客が逮捕されるような事例もある。
そこで,今日はハプバーについて解説をする。
「日本最大規模」ハプニングバー摘発 従業員ら10人逮捕 渋谷
客同士がわいせつな行為を見せ合う「ハプニングバー」を営業したとして、警視庁保安課などは8日、公然わいせつ幇助(ほうじょ)の疑いで、東京都渋谷区の「Sleeping Beauty(スリーピング ビューティ)」経営、〇〇容疑者(40)=東京都足立区中川=や従業員の男女9人を逮捕した。バーは交流サイト(SNS)などで「日本最大規模」とうたっていた。
逮捕容疑は、7日深夜、同店で男女2人がほかの客に見られる状態でわいせつ行為をする場所を提供したとしている。同課などは男女2人も公然わいせつの疑いで現行犯逮捕した。
2022/5/9 産経ニュース https://www.sankei.com/article/20220509-4OYTOSA6LBPK3F6ZYNRSSLVOJM/
客がの男女2人が、他の客から見える場所でわいせつ行為をしたとして、公然わいせつ罪で現行犯逮捕された。
そして、ハプニングバーの経営者らは、この客による公然わいせつ行為を助けたとして幇助(共犯)犯として逮捕された。
「ハプニングバー」とは、「性的にいろいろな趣味を持った男女が集まり客同士で突発的行為を楽しむ、バーの体裁をとった日本の風俗」。ハプバーなどと略される。by Wikipedia
主な特徴は以下の感じだろうか。
・会員制
・入会時に身分証の提示が必要
・厳重な二重扉
・お酒が飲める
・コスプレなんかもあったり
・プレイルームと呼ばれる小部屋がある
・料金は,単独女性<男女カップル<単独男性(女性は安い)
風営法上,ハプニングバーを規定する条文はない。
言い換えれば,ハプニングバーという業態は風営法上定められた業態ではないのだ。
では,どのような根拠で営業しているのだろうか?
ほとんどのお店が,風営法上の深夜酒類提供飲食店営業として,届出を出している。
俗に言う,深酒営業(ふかざけえいぎょう)というやつだ。
普通のバーとか,居酒屋とか,ガールズバーなんかがこれにあたる。
ハプニングバーでの逮捕ニュースは多い。
その罪名は,公然わいせつ罪とその幇助罪だ。
ハプニングバーの経営者や従業員は,公然わいせつ罪の幇助罪で逮捕される。
客は,公然わいせつ罪で逮捕される。
《公然わいせつ罪》刑法第百七十四条
公然とわいせつな行為をした者は、六月以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する
ここでいう,「公然」とは,不特定または多数の人が認識することができる状態をいう。実際に認識していたことまでは必要がなく,認識し得ればよいと解釈されている。簡単にいえば,たまたまそこに人がいなかったとしても,路上でわいせつ行為をしていたら,それは不特定・多数の人が認識する可能性があるから,公然なのだ。
「わいせつ」とは,いたずらに性欲を興奮・刺激させ,正常な性的羞恥心を害し,善良の性的道義観念に反するものをいう。何がわいせつかというのはその社会の状況や時代背景によっても変わってくるものだ。現在の警察の動きを見ていると,性器の露出,性行為がわいせつ行為にあたることは間違いないだろう。
ハプニングバー類似の事業であるカップル喫茶の経営者が公然わいせつ罪の幇助犯で有罪になった判例(公然わいせつ被告事件、東京地判平成8年3月28日、罰金15万円)がある。
この判例の事件では,検察官は公然わいせつ罪の共同正犯で起訴したが、共同正犯の成立を否定して、幇助犯の成立を認めた。
性的な行為をするかどうかは客の自由意志に委ねられていたことなどから、積極的に自らの犯罪として公然わいせつ行為をしたとはいえず、共同正犯ではなく幇助に留まると判断している。
そして、店の構造、宣伝文句や客が性的な行為をしても静止をしなかったことなどから、公然わいせつ行為を容易にしたとして幇助犯の成立を認めている。
【判例が共同正犯を否定した理由】
関係証拠によれば、「乙山」は、男女の同伴客でなければ入店できないことになっていたが、入店した後は、同伴客において何らかの性的行為をしなければならないような決まりがあったわけではなく、他の客に迷惑をかけない限り、どのような行動をとるかは同伴客の自由に委ねられていたことが明らかである。すなわち、前記のとおり、「乙山」は、同伴客が店内で性的行為をし、これを相互に見せ合うことにより更に行為をエスカレートさせることを営業の狙いとし、その狙いに従って店内の雰囲気作りなどがされていたが、店側の働きかけはそれにとどまり、入店した同伴客が性行為など過激な行為に及んでも、それを制止することはなかったし、その逆に、同伴客が何もしなくても、性的行為をするよう求めたりすることもなく、あくまでも店内の行動は客の自由に委ねられていたことが明らかである。また、「乙山」では、同伴客から入場料を取っていたが(一組につき、当初は時間制限なしで二五〇〇円であり、営業時間を延長した平成七年四月ころ以降は、午後〇時から午後六時までは時間制限なしで一律二五〇〇円、午後六時以降は一時間二五〇〇円、延長料金は一時間一〇〇〇円であった。)、これは客一人に一本ずつ提供されるジュース類の代金のほか、公然わいせつ行為をするのに適した雰囲気及び構造の場所提供の対価に相当するものと認められる。
このようにみると、被告人の立場は、同伴客のそれとは異なり、自らも客と共同して公然わいせつの犯罪行為を実現しようとするものではなく、本件喫茶店の客室を提供することにより、同伴客の公然わいせつの犯罪行為を容易ならしめようとするものであったというべきである。したがって、本件において、被告人には、公然わいせつ罪の共謀共同正犯の成立は認められず、公然わいせつ罪の幇助犯の成立が認められるにとどまる。
【判例が幇助犯を認めた理由】
3 「乙山」を含むカップル喫茶は、「相互鑑賞喫茶」などと称され、店内の客席で男女の同伴客が性的行為をし、同伴客が互いにその姿態を見せ合うことによって更に性的感情を刺激し、高めることを狙いとして営業されていた。
本件「乙山」は、被告人が決めた営業方針に従い、夜の公園の雰囲気を醸し出すために、照明を薄暗くした上、店内中央部に飛び石を置き、これを囲むようにして点々と合計一二脚の木製長椅子ないし背もたれ式椅子を配置し、さらに、その周囲に観葉植物の植木鉢を置くなどし、その観葉植物の間から相互に他の同伴客の姿態を観察できるような工夫がされるとともに、同伴客の使用に供するために、各長椅子の上などに座布団、バスタオル、ウエットティッシュ等が置かれていた4 被告人は、夫婦交際誌に、「丙川が華麗に変身」「覗いてウヒヒ…! 覗かれてドッキリ!」「新しい形の相互鑑賞サロンが誕生!」「都会の公園の夜をリアルに再現しました」などという宣伝広告を掲載し、店長ら数名の従業員が店内の接客等の営業に当たったが、右の宣伝広告のほか、週刊誌やテレビ番組が店の営業実態を報じたことなどから、次第に客足が増えた。そして、「乙山」に入店した同伴客は、店側の狙いどおり、店内でわいせつ行為を行い、中には行為をエスカレートさせて性交そのものに及ぶものもあった。
二 右の事実によれば、被告人は、カップル喫茶「乙山」の経営者として、Aら同伴客に対し、わいせつ行為をし易く、かつ、その姿態を互いに見せ合って更に性的感情を刺激し、高めるような雰囲気及び構造となっている本件喫茶店の客室を提供したことにより、同人らの公然わいせつ行為を容易ならしめてこれを幇助したものと認められる。
なお、被告人は、当公判廷で、客が店内で性交や性交類似行為に及ぶことは予想もしていなかったと供述するが、前記認定のとおり、「乙山」は、もともと同伴客が店内で性的行為をし、これを相互に見せ合うことにより更に行為をエスカレートさせることを営業の狙いとしていたものであり、実際に、「乙山」店内で同伴客が性交や過激な性交類似行為に及ぶことがあったが、そのような場合でも、店側が制止することはなかったと認められる。そのほか、被告人が「乙山」の営業実態についての週刊誌などの報道内容や、本件摘発前に大阪で同種の営業が摘発された事実を知っていたことなどからみて、被告人が店内での客の行為の実態について認識がなかったとは到底認め難い。被告人の供述は採用できない。公然わいせつ被告事件、東京地判平成8年3月28日
以上を踏まえて検討すると…
警察がハプニングバーに来て,現行犯逮捕をするというときに
・全裸になった客
・性行為をしていた客
については,逮捕されるリスクが極めて高いと言える。
他方で,普通に服をきて酒を飲んでいるだけの客は逮捕されないだろう。
性行為をしている人たちに混じっているような場合は,状況次第だが,逮捕リスクがあるといえるだろう。
なお,2021年5月に,ピンクサロン(ピンサロ)にて全裸でサービスを受けていた客が公然わいせつ罪で逮捕された事例が公表された。このケースについては,以下の記事を参照して欲しい。
また,風俗店が摘発された場合に客が逮捕されるケースについては,以下の記事を参照して欲しい。