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SNSでも違法!スカウトを縛る3つの法律と逮捕事例・逮捕後の流れ

弁護士 若林翔 2022/09/09更新

昨今,スカウトマン,スカウト会社,スカウトの仲介会社など,風俗のスカウトの逮捕事例が相次いでいる

2022年5月にも,東京・大阪のスカウトマンが迷惑防止条例違反,職業安定法違反(有害業務の紹介)で逮捕された。

今回はスカウトの違法性,特に最近増えてきたTwitter等のSNSでのスカウトの違法性,逮捕される場合,起訴された場合の量刑などについて説明しよう!

スカウト・スカウトマン・スカウト会社って??

スカウトって言うとどんなイメージがありますか??

新宿スワンのイメージ??

スカウトとは,キャバクラ等の水商売や風俗,AVなどの経営者にそこで働く女性を紹介する仕事だ。

新宿スワンでもテーマになっていたが,2004年に当時の石原都知事がおこなった「歌舞伎町浄化作戦」により,スカウトの摘発が相次いだ。

歌舞伎町浄化作戦前は,歌舞伎町にはたくさんのスカウトマンが立っていた。

令和の現代では,スカウトマンは,SNS等でスカウト活動をするのが主流だ。

ただ,そんなスカウトの逮捕事例は,ここ最近でも多くある。

では,スカウトは違法なのか??

スカウトを縛る3つの法律

スカウトが違法だとして逮捕された過去の事例では,以下の3つの法律が適用されてきた。

① 各都道府県の迷惑防止条例

② 職業安定法(「有害業務紹介」)

③ 組織犯罪処罰法(「犯罪収益等収受」)

以下,それぞれの法律について,解説をする。

スカウトと迷惑防止条例違反

路上スカウトについては,各都道府県の迷惑防止条例により規制されている。

具体的には,風俗,キャバクラ,AVについては,公共の場での不特定の者へのスカウト全てが禁止されている。

風俗等以外の業種についても,執拗な勧誘行為が禁止されている。

罰則は,50万円以下の罰金又は拘留若しくは科料だ。

常習の場合には,これに6ヶ月以下の懲役が加わる。

 

東京都迷惑防止条例(公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例)

第7条 何人も、公共の場所において、不特定の者に対し、次に掲げる行為をしてはならない。

(5) 次のいずれかに該当する役務に従事するように勧誘すること。

イ 人の性的好奇心に応じて人に接する役務(性的好奇心をそそるために人の通常衣服で隠されている下着又は身体に接触し、又は接触させる卑わいな役務を含む。以下同じ。)

→風俗店,()内はおっぱぶかな。

ロ 専ら異性に対する接待をして酒類を伴う飲食をさせる役務(イに該当するものを除く。)

→キャバクラ,ホストクラブ

(6) 性交若しくは性交類似行為又は自己若しくは他人の性器等(性器、肛〔こう〕門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは他人に自己の性器等を触らせる行為に係る人の姿態であつて性欲を興奮させ、又は刺激するものをビデオカメラその他の機器を用いて撮影するための被写体となるように勧誘すること。

AV,FC2などのアダルト動画やライブチャット

(7) 前2号に掲げるもののほか、人の身体又は衣服をとらえ、所持品を取りあげ、進路に立ち ふさがり、身辺につきまとう等執ように役務に従事するように勧誘すること。

→上記以外でも執拗な勧誘はダメ

スカウトと職業安定法(有害業務の紹介)

職業安定法(職安法)は,有害な業務の職業紹介,募集等を禁止している。

スカウトが紹介した先が,有害な業務であれば,職安法に違反するとして違法となる。

これは路上スカウトだろうが,SNSスカウトだろうが同じだ。

そして,この職安法の罰則は,1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金と重い。

《職業安定法63条》

次の各号のいずれかに該当する者は、これを1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金に処する。
2号 公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行つた者又はこれらに従事した者

結論からいえば,現状の裁判例だと,AVや風俗店は有害な業務にあたると解釈されている。

詳細は以下の記事をみてほしい。

性風俗店は「有害な業務」(職業安定法)か!? スカウト・風俗店逮捕事例・判例を弁護士が解説!

 

また、類似事例として、デリヘルやセクキャバなどの風俗店が、自らの店の求人広告を出すことは、職安法の有害業務の募集に当たり違法なのであろうか?

この点については、以下の記事を参照して欲しい。

【職業安定法・有害業務の募集の判例解説】求人サイトでの募集も違法!?セクキャバの逮捕事例

 

スカウトと組織犯罪処罰法(犯罪収益等収受)

スカウトやスカウトマンの逮捕事例について、ほとんどのケースが迷惑防止条例違反か、職業安定法違反だ。

もっとも、2021年6月に、組織犯罪処罰法違反(犯罪収益等収受)でスカウトマンが逮捕された事例が出てきたため、同法違反にも注意すべきだ。

この事例では、スカウト会社が風俗店に女性を紹介することを知りながら、スカウト会社へ女性を紹介したスカウトマンが、スカウト会社から紹介料を受け取ったことが犯罪収益を収受したと判断された。

スカウト会社が風俗店に女性を紹介する行為は、職業安定法違反の違法行為だ。

その違法行為による犯罪収益である紹介料を受け取ったという理屈だ。

詳細は、以下の記事を参照してほしい。

スカウトマンが組織犯罪処罰法違反(犯罪収益等収受)で逮捕!?

 

スカウトマンの逮捕事例

SNS利用のネットスカウト(Twitter利用)の逮捕事例(職業安定法 有害業務紹介)

ツイッター25アカウントで風俗勤務を勧誘か スカウト容疑の男

風俗店で働くようSNS上でスカウトしたとして、警視庁は、不動産仲介会社役員の男(37)を職業安定法違反(有害業務の紹介)の疑いで逮捕し、17日発表した。25個のツイッターアカウントを使いこなし、昨年だけで50人の女性を風俗店につないでいたという。容疑を認め、「ツイッターなら警察に捕まらないと思った」と供述しているという。

生活安全特別捜査隊によると、男は2020年10月、ツイッターで勧誘した20代女性に東京都台東区の吉原地区にあるソープランドを紹介して働かせた疑いある。男はツイッターで、「今よりもっと稼ぎたい」「スカウトに話を聞いて欲しい」「お金持ちのパパと知り合いたい」などの項目を挙げ、「当てはまった方はご連絡ください」と呼びかけて女性を募っていた。

男は約15年前からスカウト業をしており、以前は新宿・歌舞伎町などの路上でスカウト行為をしていたが、警察に摘発されるリスクが高いと考え、約5年前からツイッターを使うようになったという。紹介した女性の売り上げに応じて風俗店から報酬を受け取り、正業の不動産仲介会社の収入とは別に月60万円程度を得ていたとみられるという。

同隊幹部は「近年、路上スカウトの摘発逃れの目的で、ネット上での勧誘が目に付く。積極的に取り締まっていく」と話している

2022年5月17日 朝日新聞デジタル https://www.asahi.com/articles/ASQ5K41XXQ5KUTIL008.html

 

女性をAV事務所に紹介か “NO.1スカウト”逮捕

アダルトビデオ出演の仕事をさせると知りながら、女性をAVプロダクションに紹介したとして、スカウトグループの代表の男が逮捕されました。男は自らを「日本一フォロワーが多いスカウト」などとかたっていました。

警視庁によりますと、スカウトグループの代表・〇〇容疑者は、先月24日、ツイッターで知り合った女性にアダルトビデオ出演の仕事をさせると知りながら、女性をAVプロダクションに紹介した疑いがもたれています。

〇〇容疑者は、ツイッターに6万人あまりのフォロワーがいて、自らを「日本一フォロワーが多いスカウト」などとかたっていましたが、実際には6万人分のアカウントは7万円ほどで購入していたということです。調べに対し、容疑を認めているということです。

https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000229156.html

 

性風俗に女性4700人あっせん、容疑でスカウト集団の男逮捕

繁華街で声を掛けた女性を性風俗店にあっせんしたとして、京都府警生活保安課と中京署は9日、職業安定法違反(有害業務の紹介)の疑いで、大阪市東成区中本5丁目、スカウト集団トップの男(39)ら男3人を逮捕した。

逮捕容疑は共謀し、昨年9月、京都市下京区の四条通河原町交差点周辺で、当時大学生の女性(22)ら2人に声を掛け、市内の性風俗店にあっせんした疑い。

府警によると、トップの男らはスカウト集団「フューチャーグループ」を自称し、京都、大阪、奈良の3府県で活動。繁華街や大学周辺で「楽して稼げる」などと女性を勧誘していた。

2017年2月以降に計約4700人の女性を性風俗店にあっせんし、1年間に約5億円の収益があったとみられる。トップの男は「自分は関係ない」と容疑を否認しているという。

https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/9072

路上スカウトで迷惑防止条例違反の逮捕事例

風俗店に女性勧誘 容疑で横浜の52歳男を逮捕

スカウトマンの男らと共謀して女性を風俗店へ勧誘したとして、神奈川県警戸部署は26日、同県迷惑行為防止条例違反の疑いで、横浜市中区竹之丸の自称無職〇〇容疑者(52)を逮捕した。「指示はしていないが、自分にも責任がある」などと供述している。

逮捕容疑は令和元年8月7日午後6時15分ごろ、スカウトマンの男ら2人と共謀のうえ、同市西区南幸の路上で、通行中の当時20歳の女性に対し、風俗店で働くよう勧誘したとしている。

同署によると、〇〇容疑者は事件当時、風俗店などを複数経営する会社の代表を務めていたという。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200226-00000591-san-soci

路上スカウトで逮捕→SNSスカウトも発覚して逮捕の事例

性風俗店に女性紹介、スカウトマン7人逮捕 SNSや路上で勧誘疑い

交流サイト(SNS)や路上でスカウトした女性を性風俗店に紹介したとして、大阪府警生活安全特別捜査隊と曽根崎署は16日、職業安定法違反(有害業務の紹介)容疑で、大阪市内を拠点とするスカウト集団のトップの男(34)ら19~34歳の男7人を逮捕したと発表した。

スカウト集団は約10人のスカウトマンで構成していたとみられ、「ベルグループ」と呼ばれていた。大阪・梅田の繁華街で声をかけるほか、SNSを駆使した勧誘も実施。男らは紹介した店に女性が勤務している間、売上金の一部を店から継続的に「紹介料」として受け取っていた。

逮捕容疑は令和2年11月~3年6月、共謀し、大阪市北区の路上やSNS上などで、当時18~33歳の女性計6人に「仕事探してませんか」などと声をかけ、大阪府内にある複数の性風俗店に紹介したとしている。

府警は昨年3月、通行女性にしつこく付きまとい、性風俗店の仕事を勧誘したとして、府迷惑防止条例違反で男2人を現行犯逮捕男のスマートフォンなどの履歴から同グループの関与が発覚した。

2022/5/16 産経NEWS https://www.sankei.com/article/20220516-KIG45FRPLZKXLKADILPFDXJZ2U/

量刑・裁判例

では,スカウトが迷惑防止条例や職業安定法に違反するとして逮捕された場合,その量刑はどのくらいになるのだろうか?

まず,迷惑防止条例についてだが,これは各都道府県により若干異なる。

ただ,初犯の場合は罰金20万程度,2回目で50万円程度の罰金となることが多いようだ。

 

次に,職安法だが,職安法違反の場合は初犯でも起訴される可能性が極めて高い。

初犯の場合には執行猶予は付くことが多いが,懲役1〜4年,執行猶予3〜4年くらいが多いようだ。

 

以下では,京都地判令和元年5月29日の判例をみてみよう。

主   文

1 被告人を懲役3年に処する。
2 この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。

理   由

(罪となるべき事実)
第1 被告人は,分離前相被告人A,B及びCと共謀の上,平成29年3月2日頃,大津市ab丁目c番d号所在の店舗型性風俗特殊営業店「D」において,同店経営者Eに対し,同店が女性従業員に不特定の男性客を相手に手淫,口淫等の性交類似行為をさせる店であることを知りながら,同店の従業員として就業させる目的で,F(当時24歳)を女性従業員として紹介して雇用させ,もって公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で,職業紹介を行った。
第2 被告人は,A,B,G及びCと共謀の上,同年7月9日頃,同市ab丁目e番f号所在の店舗型性風俗特殊営業店「H」において,同店の採用担当者である前記Eに対し,同店が女性従業員に不特定の男性客を相手に手淫,口淫等の性交類似行為をさせる店であることを知りながら,同店の従業員として就業させる目的で,I(当時18歳)を女性従業員として紹介して雇用させ,もって公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で,職業紹介を行った。
第3 被告人は,A,分離前相被告人J,K及びLと共謀の上,平成30年1月23日頃,京都市g区h通i町j番地k所在のMビル内において,無店舗型性風俗特殊営業店「N」の人事を担当しているOに対し,同店が女性従業員に不特定の男性客を相手に手淫,口淫等の性交類似行為をさせる店であることを知りながら,同店の従業員として就業させる目的で,P(当時20歳)を女性従業員として紹介して雇用させ,もって公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で,職業紹介を行った。
第4 被告人は,A,分離前相被告人Q,R及びLと共謀の上,同年3月20日頃,前記Mビル内において,前記無店舗型性風俗特殊営業店「N」の人事を担当している前記Oに対し,同店が女性従業員に不特定の男性客を相手に手淫,口淫等の性交類似行為をさせる店であることを知りながら,同店の従業員として就業させる目的で,S(当時19歳)を女性従業員として紹介して雇用させ,もって公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で,職業紹介を行った。

(法令の適用)
罰条     いずれも刑法60条,職業安定法63条2号
刑種の選択  いずれも懲役刑
併合罪の処理 刑法45条前段,47条本文,10条(犯情の最も重い判示第3の罪の刑に法定の加重)
刑の執行猶予 刑法25条1項

(量刑の理由)
本件は,被告人が,共犯者らと共謀の上,公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で,女性4名を性風俗店の人事担当者等に女性従業員として紹介して雇用させたという事案である。
被告人らは,各種のマニュアル等を整え,指示役,女性のスカウト役,性風俗店側への紹介役や仲介役等の役割分担のもと,1年余りの間に4回にわたり,スカウト役が街頭で女性に声をかけ,性風俗等の仕事に興味を示した女性については性風俗店に紹介し,これに興味を示さない女性については,その後もスカウト役が繰り返し連絡を取り,一緒に食事をするなどして好意を抱かせて被告人ら運営の飲食店に誘い込み,スカウト役と交際するためには売上に貢献する必要がある旨言ったり,高額の飲食をさせたりした上で,稼げる店があるなどとして半ば強引に勧誘して性風俗店での就労を決意させており,巧妙な手口による組織的かつ職業的な犯行であって,公衆道徳上の有害性も顕著である。
そして,被告人は,前記飲食店の幹部あるいは経営者として,前記マニュアル等を作成・改訂し,共犯者に指示を与えたほか,一部の犯行では紹介役を担当するなどの中心的な役割を果たし,相応の利益を得ている。もとより紹介料欲しさなどという利欲的な動機に酌量の余地はない。
以上によれば,本件の犯情は相当に悪く,被告人の刑事責任は重い。
しかしながら,他方,被告人は,事実関係をいずれも認めるなどして反省の態度を示していること,前科前歴がないこと,父親が出廷して被告人に対する指導監督を約していることなどの被告人に有利な一般情状も相応に認められることから,被告人に対しては,今回に限り社会内で自力更生する機会を与えることとして,主文のとおり量刑した。
(検察官升田雅己及び私選弁護人岡村政和各出席)
(求刑・懲役3年)
令和元年5月29日
京都地方裁判所第1刑事部

 

youtubeでも解説したよ

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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