債権回収で示談するメリット・デメリットと示談時のポイントを解説

「債権回収で示談をするメリット・デメリットにはどのようなものがあるの?」

「債権回収で示談をする場合どのような手続きが必要になるの?」

「債権回収で示談する際に注意すべきポイントを知りたい」

示談とは、当事者間の話し合いにより紛争を解決する方法です。

債権回収の場面でも債権者と債務者の話し合いにより問題が解決すれば、示談となることもあります。

債権回収で示談をすると、早期かつ円満な解決ができるというメリットがある反面、一定の譲歩が必要になるなどデメリットもあります。

したがって、債権回収の示談においては、メリット・デメリットを踏まえて慎重に判断することが大切です。

本記事では、

・示談による債権回収の方法

・債権回収を示談で解決するメリットとデメリット

・債権回収で示談をする際の3つのポイント

などについてわかりやすく解説します。

債権回収で示談をすべきかどうかの判断に迷うときは、一人で決めるのではなく専門家である弁護士に相談してアドバイスしてもらうとよいでしょう。

示談による債権回収の方法

示談による債権回収の方法としては、「裁判外での交渉による示談」「裁判手続きでの示談」の2種類があります。

以下では、それぞれの示談の方法について説明します。

示談による債権回収の方法

裁判外での交渉による示談

裁判外での交渉による示談とは、裁判所の手続きを利用せずに債権者と債務者との話し合いにより債権回収のトラブルを解決する方法です。

お互いに話し合いをして、金額、支払方法、支払時期などの条件で合意が成立すれば、示談書(合意書)を作成してトラブル解決とするのが一般的です。

裁判手続きでの示談|訴訟上の和解

裁判手続きでの示談とは、裁判所に訴訟を提起し、訴訟手続きの中で示談をする方法です。

このような方法を「訴訟上の和解」と呼びます。

裁判というと裁判所が判決により結論を出す手続きをイメージする方が多いと思いますが、訴訟手続きでも示談(和解)という手続きが用意されています。

訴訟上の和解が成立すると、和解調書が作成され、裁判所の判決と同様の効果があることが特徴です。

したがって、債務者が和解した内容を守らず、支払いを怠ったときには、和解調書に基づき、強制執行の手続きが可能となります。

債権回収を示談で解決するメリットとデメリット

債権回収を示談で解決する4つのメリットと3つのデメリット

債権回収を示談で解決する場合、以下のようなメリットとデメリットがあります。

示談に応じるかどうかは、メリットだけでなくデメリットも踏まえた上で慎重に判断するようにしましょう。

債権回収を示談で解決するメリット

債権回収を示談で解決するメリットとしては、以下の4つが挙げられます。

【早期解決ができる】

債権回収を示談で解決するメリットの1つめは、早期解決ができることです。

債権回収において示談を選択しない場合、支払わない債務者に対しては、訴訟を提起するほかありません。

そして、訴訟となると、その準備だったり、裁判所の都合もありますので、どうしても解決までに相当な期間を要します。

一方、示談が成立すれば、その時点で債権回収に関するトラブルは解決となります。

それゆえ、早期に債権回収のトラブルを解決したいという場合には、示談による解決を目指すとよいでしょう。

【円満な解決ができる】

債権回収を示談で解決するメリットの2つめは、円満な解決ができることです。

示談は、債権者と債務者がお互いに納得して初めて成立します。

そのため、示談はお互いの合意に基づく円満な解決方法ということができます。

当事者同士の関係性によっては、裁判により白黒をつける関係になるよりかは、示談で円満に解決した方がよいケースもあるでしょう。

【柔軟な解決ができる】

債権回収を示談で解決するメリットの3つめは、柔軟な解決ができることです。

示談ではなく裁判による解決だと法律に基づいた判断になりますので、どうしても硬直的な判断になりがちです。

また、裁判では勝ち負けをはっきり決められるという点はメリットですが、どちらの結果になるかは裁判所の判決を待つほかありません。

これに対して、示談であれば勝ち負けがつくわけではありませんし、お互いが合意さえしていれば、法律にとらわれない柔軟な解決が可能です。

【示談成立後、任意の支払いが期待できる】

債権回収を示談で解決するメリットの4つめは、示談成立後、任意の支払いが期待できることです。

裁判だと判決が確定したとしても、判決内容に納得ができない債務者は、任意の支払いに応じてくれないことがあります。

一方、示談は、お互いに納得した解決内容としたうえで成立するものです。

それゆえ、債務者としても自分で納得した内容ですので、示談後、任意に支払ってくれる可能性が高いといえます。

債権回収を示談で解決するデメリット

債権回収を示談で解決するデメリットとしては、以下の3つが挙げられます。

【裁判外の示談には基本的に強制力がない】

債権回収を示談で解決するデメリットの1つめは、裁判外の示談には基本的に強制力がないことです。

裁判外の示談が成立すると、お互いが合意した内容については法的拘束力が生じます。

ですので、債権者は示談内容にしたがって、債務者に対して支払いを求めることができます。

しかし、当事者同士で作成する示談書(合意書)には、強制力まではありません。

それゆえ、債務者が示談内容に基づいた支払いをしないときは、強制執行を可能にするため、裁判を起こして確定判決を得なければなりません。

なお、強制力を持たせたい場合には、後述する執行認諾文言付き公正証書の形式にて示談書(合意書)を作成することがおすすめです。

【示談成立にあたって一定の譲歩が必要】

債権回収を示談で解決するデメリットの2つめは、示談成立にあたって一定の譲歩が必要なことです。

示談はお互いに譲歩し合って紛争を解決する手段です。

ですので、正当な権利を有する債権者であったとしても、金額や支払時期などに一定の譲歩が必要になります。

そのため、債権全額の全額回収や一括回収を目指すのであれば、示談ではなく裁判手続きをした方がよいといえます。

【示談内容に不満があっても後から覆せない】

債権回収を示談で解決するデメリットの3つめは、示談内容に不満があっても後から覆せないことです。

示談で合意した内容については法的拘束力が生じます。

したがって、示談内容に不満があったとしても、後から覆すことは基本的にできないことになります。

そのため、示談に応じる際には、示談内容をしっかりとチェックして、自ら納得できる内容かどうかを確認することが大切です。

債権回収を示談で解決する際の流れ

債権回収を示談で解決する場合、どのような流れになるのでしょうか。

以下では、裁判外での示談と裁判手続きでの示談に分けてそれぞれの手続きの流れを説明します。

債権回収を示談で解決する際の流れ

裁判外での示談の流れ

裁判外で示談をする場合には、以下のような流れで行います。

【債務者との話し合い】

裁判外での示談をするには、まずは債務者との話し合いを行う必要があります。

話し合いの方法には特に決まりはありませんので、直接会って話し合ってもよいですし、電話・メール・LINEなどでやり取りをすることも可能です。

債権回収に関する示談であれば、主に以下の事項を話し合っていくことになるでしょう。

・債権額

・返済方法(一括、分割、頭金の有無など)

・返済時期

・利息や遅延損害金の定め

・返済を怠ったときのペナルティ

【示談書の作成】

当事者同士の話し合いにより合意が成立したときは、口頭での合意で終わらせるのではなく、必ず示談書を作成してください。

示談書がないと、後日「言った言わない」の水掛け論になり、合意内容をめぐってトラブルになる危険性があるからです。

裁判手続きでの示談の流れ

裁判手続きで示談をする場合には、以下のような流れで行います。

【訴訟の提起】

裁判外での示談が成立しないときは、裁判所に訴訟を提起します。

訴訟の提起は、裁判所に訴状を提出して行います。

訴状が正式に受理されると、第1回口頭弁論期日として、訴訟提起から約1か月後の日付が指定されることが通例です。

【口頭弁論期日・弁論準備期日】

当事者は、指定された日時に裁判所に出頭して、口頭弁論期日を行います。

第1回口頭弁論期日では、訴状と答弁書の陳述と今後の進行について話をする程度で、次回以降の期日を定めて終了することが多いです。

2回目以降の期日についても原告・被告の双方から書面により主張立証が展開され、事件に関する争点の整理が行われます。

裁判期日は、基本的には1か月に1回のペースで行われ、争点整理が終わるまで続けられます。

【裁判所から和解の打診】

当事者からの主張立証が出そろった段階で、裁判所から和解の打診がなされることがあります。

裁判官は、その時点の証拠関係を踏まえて当事者双方に和解案を提示しますので、当事者双方は裁判官から提示された和解案に応じるかどうかを検討します。

【裁判上の和解の成立】

当事者双方が裁判所の和解案に応じる意向を示したときは、裁判上の和解成立となります。

和解が成立するとその時点で訴訟手続きは終了となり、和解内容が和解調書に記載されます。

和解調書は、確定判決と同一の効力を有しますので、債務者が和解内容にしたがって支払いをしないときは、強制執行の手続きを行うことができます。

債権回収で示談をする際の3つのポイント

債権回収で示談をする際には、以下の3つのポイントを押さえておくことが大切です。

債権回収で示談をする際の3つのポイント

全額かつ一括の回収にはこだわらない

債権回収で示談をする際の1つめのポイントは、全額かつ一括の回収にはこだわらないことです。

債権回収における示談は、債権者と債務者双方がお互いに譲歩し合って紛争の解決を図る手続きです。

債権者としては、もちろん債権全額かつ一括の回収ができればベストですが、示談をするのであれば債権全額かつ一括の回収にこだわるべきはありません。

多少の減額であったり、分割払いとしたとしても、裁判にかかる費用や時間を考慮すると、その意味で譲歩することにもメリットがあるといえます。

もし全額かつ一括の回収にこだわるのであれば、示談交渉は行わず、すぐに裁判の手続きに進むほうがよいかもしれません。

示談書を作成するなら公正証書にする

債権回収で示談をする際の2つめのポイントは、示談書を作成するなら公正証書にすることです。

前述のとおり、裁判外の示談には強制力がありません。

そのため、債務者が示談内容にしたがって支払いに応じてくれない場合には、訴訟を提起して、強制執行が可能となる確定判決を得る必要があります。

しかし、裁判外の示談であっても、示談書を公正証書にすることで強制力を付与することができます。

具体的には、強制執行認諾文言付公正証書であれば、債務者が示談内容にしたがって支払いをしなかった場合にも、裁判をすることなく直ちに強制執行の申立てをすることが可能になります。

したがって、もしもの不払いのリスクに備えるためにも、示談書は上記の公正証書の形式で作成するのがおすすめです。

訴訟と示談のどちらで解決するかを見極める

債権回収で示談をする際の3つめのポイントは、訴訟と示談のどちらで解決するかを見極めることです。

示談には早期かつ円満な解決が可能というメリットがある反面、譲歩が必要になるため全額の回収や一括の回収は難しくなるというデメリットがあります。

他方、訴訟には、十分な証拠があれば債権全額の一括支払いを命じてもらえるメリットがあります。

しかし、訴訟は、判決が確定するまでに相当な期間を要しますし、任意に支払いに応じてくれないときは強制執行の手続きが必要になるなどのデメリットがあります。

このように示談と訴訟にはそれぞれメリットとデメリットがありますので、それぞれのメリット・デメリットを踏まえて、どちらの手段を選択すべきかを見極めることが重要です。

債権回収の示談交渉を弁護士に依頼する3つのメリット

債権回収の示談交渉を弁護士に依頼すると、以下のような3つのメリットがあります。

債権回収の示談交渉を弁護士に依頼する3つのメリット

個人で対応するよりも示談になる可能性が高い

債権回収の示談交渉を弁護士に依頼する1つめのメリットは、個人で対応するよりも示談になる可能性が高いことです。

当事者同士の示談交渉では、債務者が真摯に対応してくれなかったり、連絡を無視されるなどスムーズに進まないケースも少なくありません。

しかし、法律の専門家である弁護士が代理人として示談交渉を行えば、債務者も適当な対応はまずできなくなりますので、真摯な対応が期待できます。

また、弁護士との示談交渉を拒否すれば、次は裁判されるだろうと容易に想像できるので、それなら示談で済ませようとの債務者の動機付けにもなります。

以上のことから、債権回収の示談交渉は、個人で対応するよりも弁護士に依頼する方が示談になる可能性が高いということができます。

適正な条件で示談できる

債権回収の示談交渉を弁護士に依頼する2つめのメリットは、適正な条件で示談できることです。

示談をする際には債権者側も一定の譲歩が必要になりますが、どの程度譲歩すればよいかには特に決まりはありません。

弁護士であれば示談の一般的な相場を理解していますし、債務者の状況や態度などを踏まえて示談条件を提示することができますので、適正な条件で示談を成立させることが可能です。

当事者同士の示談では、不利な内容となるリスクもありますので、示談交渉は専門家である弁護士に任せた方が安心といえます。

公正証書の作成をサポートしてもらえる

債権回収の示談交渉を弁護士に依頼する3つめのメリットは、公正証書の作成をサポートしてもらえることです。

前述のとおり、裁判外で示談を成立させるなら、示談書は公正証書で作成することがベターです。

ただ、公正証書の作成は、内容はもちろん作成する日時など公証人と諸々取り決めていかなければならず、慣れない個人にとってはかなりの労力や負担となります。

一方、法律の専門家である弁護士に依頼すれば、当然公正証書の作成もサポート可能です。

もしもの不払いのリスクを回避するためにも、労力や負担を考えずに公正証書の作成を視野に入れられる弁護士に頼むことが債権回収への近道です。

債権回収の示談はグラディアトル法律事務所にお任せください

債権回収で示談をお考えの方は、グラディアトル法律事務所までご相談ください。

債権回収の示談はグラディアトル法律事務所にお任せください

経験豊富な弁護士が示談交渉をサポート

債権回収の示談交渉は、債務者の反応や態度などを見ながら進めていく必要がありますので、債権回収に関する知識や経験が不可欠となります。

グラディアトル法律事務所では債権回収に関する豊富な経験と実績がありますので、示談交渉の進め方や対応方法なども熟知しています。

経験豊富な弁護士が示談交渉をサポートしますので、ご自身での対応が不安な方は、当事務所の弁護士にお任せください。

初回相談料無料で対応

当事務所では債権回収に関する法律相談は、初回相談料無料で対応しています。

相談をしたからといって必ず弁護士に債権回収の依頼をしなければならないわけではありませんので、まずはお気軽にご相談にお越しください。

債権回収はスピードが重要になりますので、債務者から支払いが滞ったらすぐに相談するのがおすすめです。

まとめ

債権回収は、債務者との示談により解決することができます。

示談で解決することにより早期かつ円満な解決が可能になりますが、一定の譲歩が必要となるため全額かつ一括の回収はできない可能性もあります。

債権回収で示談をするか裁判をするかは、状況に応じて異なってきますので、適切な選択をするためにもまずは弁護士に相談するのがおすすめです。

債権回収をお考えの方は、実績と経験豊富なグラディアトル法律事務所にお任せください。

Bio

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。
東京弁護士会所属(登録番号:50133)
男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。