個人間での借金の取り立てが違法になる9つのケースを弁護士が解説

個人間での借金の取り立てが違法になる9つのケースを弁護士が解説

「お金を返してくれないため、個人で取り立てをしようと考えている」

「個人間の取り立てが違法にならないか心配」

「どのような取り立て方法が違法になるのか知りたい」

お金を貸した相手が返済に応じてくれない場合、貸したお金を回収するために取り立てを行うことは1つの手段です。

個人間で借金の取り立てをしたとしても、それが直ちに違法になるわけではありません。

しかし、取り立て方法や態様によっては、違法と評価され、場合によっては犯罪になる可能性もあります。

簡単にいえば、以下のような取り立て方法については特に注意が必要です。

・暴力や脅迫を手段とする取り立て

・債務者の財産を勝手に処分する

・債務者の自宅に居座る

・債務者の自宅に張り紙や落書きをする

・SNSや掲示板などへの書き込み

・本人以外の家族に対する取り立て

・職場への取り立て

・違法な取り立て代行業者への依頼

・利息制限法や出資法に違反する利息の設定

本記事では、上記のような取り立て方法が違法になりうる9つのケースについてわかりやすく解説します。

個人での取り立てが不安な場合は、早めに弁護士に相談するようにしましょう。

個人間でも借金の取り立ては可能

個人間での借金は、銀行や消費者金融業者のように厳格に条件を定めているわけではありません。

それゆえ、お金を借りた人(債務者)がルーズになりがちで、返済期限を過ぎてもお金を返してくれないケースが残念ながらよくみられます。

このような借金の滞納があった場合、お金を貸した人(債権者)は、債務者に対して、取り立てを行うことはもちろん可能です。

「取り立て」というと貸金業者などが対象になるというイメージを持たれる方も多いですが、借金の取り立ては個人間であっても行うことができます。

ただし、個人間での取り立ての方法や態様によっては、下記で述べるように違法な取り立てと評価される可能性もありますので、十分に気を付けて行うことが大切です。

個人の借金の取り立て方法についての詳細は、以下記事もをご参照ください。

借金の取り立ての方法と個人で取り立てをする3つのリスクを解説

個人間で借金の取り立てが違法になりうる9つのケース

個人間での借金の取り立てが違法になりうるケースとしては、以下の9つのケースが挙げられます。

違法な取り立て行為法的リスクなど
暴力や脅迫を手段とする取り立て暴行罪、傷害罪、脅迫罪、恐喝罪
債務者の財産を勝手に処分横領罪
債務者の自宅に居座る不退去罪
債務者の自宅に張り紙や落書きをする名誉毀損罪、侮辱罪、器物損壊罪
SNSや掲示板への書き込み名誉毀損罪、侮辱罪
本人以外の家族に対する取り立て脅迫罪、恐喝罪、強要罪
職場への取り立て威力業務妨害罪
違法な取り立て代行業者への依頼共犯者として罪に問われる可能性
利息制限法や出資法に違反する利息の設定出資法違反、刑事罰の対象

暴力や脅迫を手段とする取り立て

返済期限を過ぎても支払いがなく、債務者に連絡しても無視されてしまうといった状況だと、債務者に対して怒りを感じることもあるとは思います。

しかし、債務者が不誠実な対応をしているからといって、暴力や脅迫を手段とする取り立てをすることは許されず違法となります。

たとえば、取り立ての際に債務者を殴ってしまえば暴行罪や傷害罪が、債務者を脅してしまうと脅迫罪や恐喝罪などが成立するおそれもあります。

実際の事案でも歌舞伎町のホストクラブの女性客から乱暴に売掛金を取り立てたとして、ホストの男性が逮捕されたというケースもあります。

債務者の財産を勝手に処分する

債権者には、債務者からお金を返してもらう正当な権利があります。

だからといって、債務者の財産を勝手に処分して返済にあてることは認められず違法となります。

このような行為を「自力救済」といいますが、法律上自力救済は禁止されているからです。

たとえば、債務者から預かっていた時計やカバンを勝手に売って、返済にあてる行為がこれにあたり
、場合によっては横領罪に該当する可能性まであります。

債務者の自宅に居座る

債務者の自宅に取り立てに行った際に、退去を求められたにもかかわらず自宅に居座る行為も違法です。

これは、債務者が支払いに応じてくれないからや不誠実な態度を取っているからなどの理由があってもです。

なお、債務者が自宅からの退去を求めたにもかかわらず、そのまま居座る行為は、不退去罪に該当する可能性があります。

債務者の自宅に張り紙や落書きをする

返済に応じてくれない債務者への嫌がらせとして、債務者の自宅に「金返せ」、「泥棒」などと記載した張り紙や落書きをすることも許されず、違法となります。

このような行為は、名誉毀損罪、侮辱罪、器物損壊罪などに該当する可能性があります。

SNSや掲示板などへの書き込み

近年では、自宅への張り紙や落書きではなく、SNSや掲示板などで債務者を誹謗中傷する書き込みによる嫌がらせを行うケースも増えてきていますが、もちろんこれも許されず違法となります。

このような行為は、同様に名誉毀損罪や侮辱罪などが成立する可能性があります。

誰でも簡単に書き込みができてしまうため、安易な気持ちで行動してしまう方もいますが、違法な行為ですので絶対にやってはいけません。

本人以外の家族に対する取り立て

本人が返済に応じてくれない場合、本人の家族に対して返済を求めようとする方もいるかもしれません。

しかし、借金の返済義務は、基本的には借金をした本人にしかありませんので、本人の家族には借金を返済する義務はありません。

それでも本人の家族に対して執拗に返済を求めたり、実際に返済を受けるなどすると、脅迫罪や恐喝罪、強要罪に該当すするおそれがあります。

したがって、本人の家族が保証人になっていない限り、本人の家族に対して借金の返済を求めることは違法になりえるので、行わないようにましょう。

職場への取り立て

債務者の自宅に行っても居留守を使われてしまい、話し合いができない状況だと、債務者の職場(勤務先)に行こうとする方もいるかもしれません。

貸金業者とは異なり、個人間の取り立てでは貸金業法は適用されませんので、職場への取り立てが禁止されてはいません。

しかし、職場に借金の取り立てで押し掛けて、会社の業務を妨害することになれば、威力業務妨害罪などが成立する可能性もあります。

したがって、職場への取り立ても違法になり得る行為ですので。基本的には避けた方がよいでしょう。

違法な取り立て代行業者への依頼

金融機関や貸金業者は、債権回収会社に依頼して取り立てを行うことがあります。

債権回収会社は、法務大臣の許可を得た企業ですので、正当に借金の取り立てを行うことができます。

しかし、債権回収会社が取り扱うことができる債権には制限があり、基本的には個人間の借金についての取り立てを依頼することはできません。

もし無許可の業者に対して、取り立てを依頼すると、依頼した債権者自身も違法行為の共犯者として罪に問われる可能性がありますので注意が必要です。

実際の事案でも、法務大臣の許可を得ずに債権回収業を営んだとして、債権管理回収業特別措置法違反の疑いで、貸金業者の社長ら数人が逮捕されたというケースもあります。

利息制限法や出資法に違反する利息の設定

借金の取り立ての際に、債務者と借用書や債務承認弁済契約書の取り交わしを行うケースがあります。

個人間の借金では、当初口約束だけで済ませてしまうことも少なくありませんので、お金を貸したことおよびその条件を明確にするためにも、借用書や債務承認弁済契約書の作成は有効な手段となります。

しかし、その際に年109.5%を越える金利の設定してしまうと出資法に違反する行為として、刑事罰の対象になることもあります。

たとえば、100万円の取り立てに行った際、払えなかったことを理由に利息50万を追加した150万を来月中に支払えとするような内容の契約がこれにあたります。

他方、刑事罰の有無にかかわらず、利息制限法では、貸し付け金額に応じて、以下のような上限金利を定めています。

貸付金元金上限金利
10万円未満年20%
10万円~100万円未満年18%
100万円以上年15%

利息制限法の上限金利を超える利息を設定してもその部分は無効になってしまいますので、注意が必要です。

実際の事案でも、法定利息の7倍~22倍の金利で貸付けを行い、利息として約350万円を受け取っていたことが、出資法違反にあたるとして、貸金業を営む会社の社長とその社員が逮捕されたというケースもあります。

個人間の違法な取り立てを防ぐには弁護士への依頼がおすすめ

個人間の違法な取り立てを防ぐには
弁護士への依頼がおすすめ

上記のとおり、個人間の取り立てでは、違法な取り立てになってしまうリスクがあります。

したがって、安全かつ確実に借金の取り立てを行うためには、弁護士への依頼がおすすめです。

正当な手段により債権回収を実現できる

金融機関や貸金業者であれば、貸金業法が適用されますので、法律の規制の範囲内での取り立てが行われます。

他方、個人間の取り立てでは貸金業法の規制が適用されませんので、債権者によっては厳しい取り立てを行ってしまう方もいます。

しかし、違法な取り立てをしてしまうと、債務者から逆に訴えられてしまうだけでなく、刑事罰の対象になるリスクまであります。

これが法律の専門家である弁護士であれば、法的に正当な手段を用いて、債権回収を実現可能です。

違法な取り立てによるリスクを軽減し、正当な手段で債権回収を実現するためにも、個人間での借金の取り立ては弁護士に依頼するのがよいでしょう。

相手が任意に支払いに応じてくれる可能性が高くなる

個人間の取り立てでは、債務者が支払いに応じてくれないという場合にも弁護士への依頼が有効です。

弁護士に依頼すれば、弁護士が債権者に代わって交渉の窓口になりますので、債務者に対して債権者の本気度を示すことができます。

債務者としてもいい加減な対応をしていると「裁判や強制執行をされるかもしれない」という焦りが生じますので、真摯に対応してくれる可能性が高くなるといえます。

このように弁護士に債権回収を依頼することで、相手が任意に支払いに応じてくれる可能性が高くなり、結果として早期に債権回収の問題を解決することが可能です。

法的措置が必要な場合も任せられる

債務者との任意の交渉では解決できない場合には、法的措置により債権回収を行う必要があります。

法的措置が必要になるケースだと個人では対応が難しいといえますので、早めに弁護士に依頼するのがおすすめです。

弁護士であれば状況に応じて最適な法的手段を選択して債権回収の手続きを進めてくれます。

最終的には強制執行により債務者の財産を差し押さえて、債権回収を実現することまで可能ですので、最後まで安心して任せることができるでしょう。

個人間の借金の取り立てでお困りの方はグラディアトル法律事務所に相談を

個人間の借金の取り立てでお困りの方はグラディアトル法律事務所に相談を

何度も述べたとおり、個人間での借金の取り立ては、違法になるリスクがどうしてもあります。

ですので、返済期限を過ぎても貸したお金が返ってこない場合には、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

その際には、弁護士であれば誰でもよいというわけではありません。

債権回収を依頼するのであれで債権回収に強い弁護士に依頼することが重要です。

はじめて弁護士に依頼する方は、どの弁護士が債権回収に強いのか判断に迷うことが多いと思います。

その際は、債権回収の実績や経験が豊富な弁護士であれば安心して任せることができるでしょう。

グラディアトル法律事務所では、これまで多数の債権回収事案を解決に導いてきた豊富な実績と経験があります。

もし、どの弁護士に依頼すればよいかわからないという場合は、まずは当事務所までご相談ください。

経験豊富な弁護士がお客さまの状況に応じた最適な債権回収の方法を選択し、問題解決に向けて全力でサポートいたします。

債権回収に関する相談は、基本的に初回相談無料となっていますので、お気軽にご相談にお越しください。

まとめ

個人間の取り立ては、取り立て方法や態様によっては違法になるリスクもあります。

したがって、不慣れな方は、自分で対応するのではなく、弁護士に依頼するのがおすすめです。

弁護士あれば、違法な取り立てになるリスクはなく、法的に正当な手段で債権回収を実現することが可能です。

最後に、個人間の借金に関する取り立てでお困りの方は、まずはグラディアトル法律事務所までお気軽にご相談ください。

Bio

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。
東京弁護士会所属(登録番号:50133)
男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。