「取引先に商品を納入したのに、代金が支払われない」
「売掛金の支払いを求めても、さまざまな理由を付けて支払いを先延ばしにされる」
「売掛金の金額が大きく、このまま回収できないと自社の経営も危うい」
取引先などから売掛金が回収できまま放置していると、時効や取引先の経営破綻により売掛金が回収できなくなる危険があります。売掛金の回収は、スピード勝負ですので、取引先から売掛金の支払いが滞ったらすぐに弁護士に相談することが重要です。
本記事では、
・売掛金の回収を弁護士に依頼すべき7つの理由
・弁護士が売掛金を回収する5つの方法
・売掛金の回収を依頼する弁護士の選び方
などについてわかりやすく解説します。
中小企業では、売掛金の回収不能により重大な経営危機が生じることもありますので、早期に適切な対応をするようにしましょう。
1 売掛金の回収を弁護士に依頼すべき7つの理由
売掛金を迅速かつ適切に回収するには、すぐに弁護士に依頼すべきといわれています。それには、以下のような7つの理由があります。
1-1 最適な売掛金の回収方法を選択できる
債権回収には、債務者との交渉や裁判手続きなどさまざまな方法があります。効率的に未払いの売掛金を回収するためには、状況に応じた最適な回収方法を選択することが重要です。
弁護士であれば、豊富な知識や経験に基づいて、最適な売掛金の回収方法を選択し、未払いの売掛金の回収を実行することができます。
1-2 相手に対して本気度を伝えられる
ご自身で売掛金を滞納する取引先に支払いを催促しても、返済を先延ばしにされるだけでまともに取り合ってくれないケースも多いです。
しかし、弁護士が窓口になって相手との交渉を行えば、相手に対して、債権回収に向けた本気度を伝えることができ、「このままでは訴えられてしまうかもしれない」というプレッシャーを与えることができます。その結果、裁判をするまでもなく任意に支払いに応じてくれる可能性も高くなります。
1-3 迅速に売掛金の回収を実現できる
売掛金の回収は、スピード勝負といわれています。経営状態の悪化により売掛金の支払いが滞っている場合、他にも債権者が複数いる可能性がありますので、売掛金の回収が遅れると、他の債権者に先を越されてしまうおそれがあります。また、取引先が破産などの手続きをとってしまうと、回収が事実上不可能になる可能性もあります。
弁護士に依頼をすれば、適切な債権回収の方法を選択して、迅速に売掛金の回収にとりかかることができます。
1-4 法的手続きにも対応できる
売掛金の回収にあたっては、仮処分、訴訟、強制執行などの法的手続きが必要になることがあります。取引先との交渉だけであれば、債権者自身でも対応することが可能ですが、このような法的手続きが必要になるケースでは、知識や経験がなければ、労力や時間がかかってしまい、適切なタイミングを逃してしまうおそれがあります。
弁護士に依頼すれば、事案に応じて即座に法的手続きに移ることができますので、債権回収の効率も大幅に向上します。
1-5 時間的な労力や精神的な負担を軽減できる
何度も支払いを催促しても、無視されたり、その都度理由を付けて返済を先延ばしにするなどの対応をされてしまうと、対応する担当者の時間的な労力や精神的な負担も大きくなります。
弁護士に依頼をすれば、売掛金を滞納する取引先との対応をすべて弁護士に任せることができますので、そのような時間的な労力や精神的負担も大幅に軽減することができます。それにより、経営や通常の業務に専念することができますので、機会損失や売上減少のリスクも回避することが可能です。
1-6 法的リスクを回避できる
売掛金の回収は、債権者としての正当な権利の行使にあたりますが、回収方法や態様によっては、相手から逆に訴えられてしまうおそれもあります。相手から民事または刑事事件として訴えられてしまうと、企業のイメージも悪くなりますので、それだけは避けなければなりません。
弁護士に依頼すれば、法的に正当な手続きに従って債権回収を進めていくことができますので、そのような法的リスクを排除することが可能です。
1-7 諦めていた債権を回収できる可能性がある
2020年4月1日から改正民事執行法が施行され、これまでよりも相手の財産の差し押さえが容易になりました。従来は相手の財産を特定できずに泣き寝入りしていたケースであっても、改正民事執行法により債権回収できる可能性があります。
弁護士に依頼すれば、適切な方法により相手の財産を特定し、差し押さえることで、これまで諦めていた債権を回収することもできます。
改正民事執行法に関する詳しい内容は、以下のコラムをご参照ください。
2 弁護士が売掛金を回収する5つの方法
弁護士に売掛金の回収を依頼すると、以下のような5つの方法により売掛金の回収を進めていきます。
2-1 内容証明郵便を送る
弁護士が相手に売掛金の支払いを催促する方法として、まずは内容証明郵便を送るのが一般的です。
内容証明郵便は、いつ・どのような内容の文書が、誰に対して送られたのかを証明できる形式の郵便です。内容証明郵便自体には、支払いを強制する効力まではありませんが、特殊な形式の郵便ですので相手に対して心理的なプレッシャーを与えることができます。
弁護士が送る内容証明郵便には、弁護士名が記載されていますので、「売掛金を支払わないと裁判を起こされてしまう」という考えを抱かせることができますので、任意に支払いに応じてくれる可能性が高くなります。
2-2 債務者と交渉する
内容証明郵便が届いたタイミングで、弁護士は、相手方との交渉を開始します。
これまでは債権者からの支払いの催促に対して、適当に扱っていた債務者でも、弁護士が交渉の窓口になればそのような態度はとれず、真摯に対応してくれる可能性が高くなります。
この段階で、返済の合意ができた場合には、将来の滞納のリスクにも配慮した内容の合意書を作成して、それに従った支払いを求めていきます。
2-3 仮差押えの申立てをする
売掛金を滞納する債務者との交渉が決裂した場合またはそもそも話し合いに応じてくれない場合には、訴訟手続きにより債権回収を進めていくことになりますが、その前に仮差押えという保全処分の利用を検討します。
仮差押えとは、裁判所が債務者の財産を仮に差押えることで、債務者による自由な処分を禁止する手続きです。後述する訴訟により勝訴判決を得たとしても、裁判中に債務者により財産を処分されてしまえば、売掛金の回収は困難になってしまいます。また、内容証明郵便の送付や交渉を行っていては、財産を処分されたり隠匿されたりする可能性もあります。そこで、このような事態を防ぐために、仮差押えの申立てが行われます。
2-4 訴訟を提起する
交渉による回収が困難だと判断すれば、迅速に訴訟を提起して、法的な債権回収の手続きに移行します。
裁判というと解決まで長期間かかるというイメージを持たれる方も多いですが、売掛金のトラブルに関しては、証拠が十分にそろっているケースも多いため、早期に判決まで至るケースも少なくありません。裁判所により売掛金の支払いを命じる判決が言い渡され、それが確定すれば、強制執行の手続きをとることができます。
2-5 強制執行を申し立てる
判決が確定後も相手が任意に支払いに応じないときは、強制執行の申立てを行います。
強制執行の申立てをして、相手の預貯金、売掛金、不動産などの財産を差押えることができれば、そこから強制的に未払いの売掛金を回収することができます。
3 弁護士に売掛金回収を依頼する場合の費用相場
弁護士に売掛金回収を依頼するときに気になるのが、どのくらいの費用がかかるのかという点です。以下では、弁護士に売掛金回収を依頼する場合の一般的な費用相場を説明します。
3-1 法律相談料
法律相談料とは、弁護士に売掛金の回収の相談をした場合に発生する費用です。法律相談料の相場は、以下のようになっています。
・30分あたり5000円(税別)
・1時間あたり1万円(税別)
初回法律相談料を無料に設定している法律事務所もありますので、費用負担を抑えたいならそのような事務所を探してみるとよいでしょう。
3-2 着手金
着手金とは、弁護士に売掛金の回収を依頼した場合に発生する費用です。着手金の一般的な相場は、以下のようになっています。
売掛金の回収を依頼する場合の着手金の経済的利益とは、未払いの売掛金の金額がそのまま経済的利益となります。
たとえば、500万円の売掛金の回収を依頼した場合の着手金は、以下のようになります。
500万円×5%+9万円=34万円
3-3 報酬金
報酬金とは、事件が終了した時点における具体的な成果に応じて支払わられる費用です。報酬金の一般的な相場は、以下のようになっています。
売掛金の回収を依頼した場合の報酬金の経済的利益とは、実際に回収できた売掛金の金額が基準になります。
たとえば、500万円の売掛金の請求を行い、実際に回収できたのが400万円であった場合の報酬金は、以下のようになります。
400万円×10%+18万円=58万円
3-4 実費・日当
実費とは、弁護士が事件処理にあたって実際に出費した費用です。具体的には、印紙代、郵便切手代、コピー代、交通費などがあります。
日当とは、弁護士が遠方の裁判所に出廷するなど時間的拘束を受けた場合に発生する費用です。日当の一般的な相場は、以下のようになっています。
・半日……3万円~5万円
・1日……5万円~10万円
4 弁護士に依頼しても売掛金の回収が難しいケース
売掛金の回収を弁護士に依頼すれば確実に回収できるというわけではありません。以下のようなケースについては、弁護士に依頼したとしても回収できない可能性があります。
4-1 売掛金の時効が成立している
売掛金には、時効がありますので、一定期間が経過してしまうと時効により売掛金の回収ができなくなります。
なお売掛金の時効期間は、以下のように定められています。
【2020年4月1日以降に発生した売掛金】
2020年4月1日以降に発生した売掛金については、改正民法が適用されますので、売掛金の時効期間は、以下のうちいずれか早いタイミングになります。
・権利を行使することができることを知ったときから5年
・権利を行使することができるときから10年
【2020年3月31日以前に発生した売掛金】
2020年3月31日以前に発生した売掛金については、改正前民法が適用されます。売掛金などの商事債権については、基本的には5年の時効期間が適用されますが、改正前民法では、職業別に以下のような短期消滅時効が定められています。
4-2 債務者に目ぼしい資産がない
債務者が任意に支払いに応じない場合には、裁判により勝訴判決を得たうえで、債務者の財産に対して強制執行を行っていくことになります。
しかし、債務者に差押えるべき財産がないような事案では、強制執行の申立てをしても空振りに終わってしまい、実際に回収することはできません。そのため、法的手段により売掛金の回収を行うかどうかは、債務者の資力も踏まえて判断してくことが大切です。
4-3 債務者の経営状態が悪化した
売掛金の滞納をするような債務者では、急に経営状態が悪化した、売掛金の回収が困難になることがあります。たとえば、倒産・破産などの速報ニュースが流れたとき、債務者の代理人弁護士から破産手続きの受任通知が届いたときなどは、弁護士に依頼して訴訟手続きを進めていったとしても、回収は難しいといえます。
4-4 売掛金の存在を立証できる証拠がない
裁判により売掛金の支払いを求めていくには、債権者の側で売掛金の存在を立証していかなければなりません。売掛金の存在を立証できる証拠が何もないというケースでは、裁判所に売掛金の支払いを命じる判決を出してもらうのは難しいでしょう。
ただし、企業間の取引で売掛金の存在を立証できる証拠が何もないというケースは、少ないため、何らかの証拠により売掛金の存在を立証できるケースが多いといえます。
5 売掛金の回収を依頼する弁護士の選び方
売り掛金の回収を依頼するのは、弁護士であれば誰でもよいというわけではありません。以下では、売掛金の回収を依頼する弁護士の選び方を説明します。
5-1 債権回収に関する豊富な実績がある
弁護士は、法律のプロフェッショナルですが、弁護士によって取り扱う分野が異なります。取り扱う分野が異なれば、経験や実績などにも差がでてきますので、売掛金の回収を依頼するなら、できる限り債権回収の実績豊富な弁護士に依頼するべきでしょう。
グラディアトル法律事務所では、開設当初から債権回収ができない方の助けとなるべく、債権回収の分野を重点的に取り扱ってきました。現在では、月平均100件以上の相談があるなど債権回収には豊富な実績と経験を有していますので、まずは当事務所までご相談ください。
5-2 迅速に対応してもらえる
売掛金の回収はスピード勝負といわれますので、迅速に対応してくれる弁護士に依頼するのがおすすめです。
グラディアトル法律事務所には、複数人の弁護士が在籍していますので、他の弁護士と協力しながら迅速に債権回収の手続きを進めていくことが可能です。在籍弁護士が少ない法律事務所だと、他の事件処理に忙しいなどの理由で後回しにされるおそれもありますが、当事務所であればそのような心配はありません。
5-3 弁護費用が明確
売掛金の回収を弁護士に依頼して、実際に回収できたとしても、それを上回る弁護士費用を請求されてしまったのでは意味がありません。そのため、売掛金の回収にかかる弁護士費用を明確かつ丁寧に説明してくれる弁護士に依頼すべきでしょう。
グラディアトル法律事務所では、相談者の事情や要望を踏まえて、わかりやすく弁護士費用の説明を行っています。費用倒れになりそうな事案については、相談時にしっかりとお伝えしますので、ご安心ください。
6 まとめ
売掛金の回収はスピード勝負といわれています。対応が遅れて回収不能になってしまう前に、早めに弁護士に相談・依頼することが大切です。
グラディアトル法律事務所では、初回法律相談を無料で対応していますので、売掛金の回収に関してお困りの方は、まずは当事務所までお気軽にご相談ください。