投資詐欺は、多くある詐欺のうち代表的な詐欺の1つといえます。
もっとも、ひとくくりに投資詐欺といっても投資の対象は多くありますので、対象別に呼び名があるものもあります。
たとえば、仮想通貨詐欺、FX詐欺、ポンジスキーム、原野商法などが挙げられます。
そしてもちろん、それぞれにおいて手口や対策に異なる点があることは否めません。
ただ今回のコラムにおいては、投資詐欺全般に共通する手口や対策などについて詳細に解説したいと思います。
投資詐欺とは?
投資詐欺とは、投資効果が未確実であるにも関わらず、確実に儲かるなどと断定的な判断を提供し、資金を投資させる詐欺のことをいいます。
未公開株や新株発行、外国への通貨、事業への投資話、最近では仮想通貨への投資に関する投資詐欺なども増えてきております。
元々は高齢者が多く被害にあっておりましたが、最近では、若年者に対する投資詐欺の被害も増えてきています。
投資詐欺は、刑法上の詐欺罪(刑法246条)に該当します。以下の構成要件をみたす場合に詐欺罪になります。
- 疑罔行為(嘘をつくこと)
- 錯誤(騙されてしまうこと)
- 財物の交付(お金を払うなど)
- 因果関係(嘘をつかれたから騙され、騙されたからお金を払ったこと)
(詐欺)
刑法
第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
また、法律上、投資助言や代理業を行う場合には、金融商品取引法上の登録を受けなければなりません。しかし、投資詐欺の事例では、詐欺師側がこの登録を受けていないことがあり、その点でも違法となります。
金融商品取引法の無登録営業は、5年以下の懲役、500万円以下の罰金です。
(登録)
第二十九条 金融商品取引業は、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ、行うことができない。第百九十七条の二 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
十の四 第二十九条の規定に違反して内閣総理大臣の登録を受けないで金融商品取引業を行つた者
金融商品取引法
さらに、出資法では、不特定多数の者に対して元本保証をして、出資の受け入れをすることを禁止しています。投資詐欺師は、元本保証をすることが多いですが、これも違法になります。
出資法違反(元本保証)は、3年以下の懲役、300万円以下の罰金です。
(出資金の受入の制限)
第一条 何人も、不特定且つ多数の者に対し、後日出資の払いもどしとして出資金の全額若しくはこれをこえる金額に相当する金銭を支払うべき旨を明示し、又は暗黙のうちに示して、出資金の受入をしてはならない。(その他の罰則)
出資法(出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律)
第八条 省略
3 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第一条、第二条第一項、第三条又は第四条第一項若しくは第二項の規定に違反した者
二 いかなる名義をもつてするかを問わず、また、いかなる方法をもつてするかを問わず、前号に掲げる規定に係る禁止を免れる行為をした者
投資詐欺を行う詐欺師の特徴
まず投資詐欺を行う詐欺師の特徴として、身なりや羽振りをよく見せている傾向にあります。
いかにも投資で儲けているというところを見せつけなければ、勧誘する言葉にも説得力がないからです。
具体的には、ブランドもののカバンや時計を身につけていたり、高級ホテルを利用していたりなどです。
しかし実際は、誰かから借りたものであったり、高級ホテルも泊まったことはなくロビーを使ったことがあるだけというのもままあります。
そういう意味では、詐欺師は自らを装うものではあるものの、投資詐欺の詐欺師はとくにその傾向が強いといえるでしょう。
また単独で行う詐欺師もいますが、グループや関係者がいたりなど複数で行われることが多い点も投資詐欺の詐欺師の特徴といえます。
主体となって勧誘する者以外にも、稼いでいると装う者がいた方が投資話に信ぴょう性を持たせやすいためです。
くわえて複数の人間がそれぞれの役割で対応することで、投資話にのるよう心理的に追い込みやすいこともあります。
このように投資詐欺を行う詐欺師の特徴としては、身なりや羽振りがよく見える人間が複数登場してくることが挙げられます。
投資詐欺の勧誘手口・内容
投資詐欺の勧誘手口としては、過去は友人・知人等からの紹介・電話というのが定番でしたが、最近はインターネット、特にSNSで広告を用いて勧誘していることが目立ちます。
そして具体的な勧誘内容としては、まず元本保証や高配当・確実な値上がりなどローリスクハイリターンであるとうたい、容易に利益を上げられると伝えてくることが多いです。
本来、投資である以上リスクはつきものであるところ、そのリスクに対する警戒感やハードルを下げさせて財布のひもをできるかぎり緩ませたいからです。
また、上記の投資話について、極秘や紹介・人数限定など世間にはまだ出回っていない情報であるとアピールすることもよく見受けられます。
特別な勧誘であると思わせることで高揚感をもたせるとともに、今決めなければ利益を得られないと焦らせるためです。
さらに、前述した身振りや羽振りをよく見せることも勧誘の常套手段です。
勧誘している投資で実際に稼いでいると思わせ、投資話に信ぴょう性をもたせ安心感を与えたいがためです。
以上のように、投資詐欺の勧誘内容は、投資話に対する警戒感を下げさせる一方で安心感を与え、冷静な判断をできなくするべく高揚感や焦燥感をもたせるようにあおってくるのです。
投資詐欺に遭わない対策
投資詐欺に遭わない対策としては、相手方および勧誘話から投資詐欺かどうか判断するポイントがありますので、以下順に説明します。
相手方が投資詐欺の詐欺師かどうか判断するポイント
相手方が詐欺師である場合には、自らの名前や住所など個人情報を偽っていたり隠していたりすることがほとんどです。
ですので相手方の個人情報を確認したり調べることが、詐欺師であるかどうかを判断するのに有用といえます。
すなわち、自ら確認・調査した内容と伝えてきた内容に異なる点や不審な点があれば、詐欺師の可能性を疑うことが必要ということです。
具体的には、まず相手方が個人であれば、免許証やパスポートなど顔写真付きの公的な身分証を確認させてもらうよう要求しましょう。
もしここで要求を渋るようであれば、何か後ろ暗いことがあると思われる以上、詐欺師の可能性が高まるといえます。
一方、会社であれば、誰でも法務局で申請が可能ですので法人登記を確認しましょう。
また近年では、インターネットで相手方の情報を検索することも調査方法として効果的です。
実際に名前や会社名を検索すると詐欺情報のまとめサイトや掲示板が検索結果に出てきたり、住所を検索するとそもそも家や会社がなかったりなどということもしばしばあります。
このように公的な身分証や書面を確認、ネット検索で調査することによって、相手方が出していたり伝えてきた情報と整合性があるかを一定程度見極めることができます。
そして異なる点や不審な点があれば、相手方が詐欺師の可能性を疑うことができ、投資話に手を出さないという選択が可能になります。
したがって、相手方の情報を確認・調査することが投資詐欺に遭わない対策ということができます。
勧誘話が投資詐欺かどうか判断するポイント
そもそも投資とは、字のごとく資金を投入すること、そしてその資金投入は将来的に利益を得る目的で行うものです。
しかしながら、利益を得られるかどうかは未来のことである以上、不確実と言わざるを得ません。
具体的には、投入した資金が目減りしたりゼロになる可能性もある一方で、投入した資金以上の利益を上げられる可能性もあります。
すなわち投資は、不確実な将来の利益というリターンを得るために、減少や消滅することも踏まえて現在の資金を投入するというリスクを負う行為といえます。
そしてリスクとリターンは一般に正比例の関係、リスクが低ければリターンも低く、逆にリスクが高ければリターンも高いといえるものです。
以上が投資の基本であるといえるにもかかわらず、ローリスクハイリターンで勧誘してくる話は投資詐欺の疑いが濃厚でしょう。
とくに「元本保証」や「確実に儲けられる」などを内容とするものは、まず投資詐欺と思って間違いありません。
「元本保証」は、正規に認可された金融機関のみ行えるもので、原則として禁止されている行為だからです。
また上記のとおり投資は不確実なものであるのに「確実」と言っている時点でもはや投資ではないですし、もしそれが真実ならば他人を誘わずに自らだけで行っていれば利益を独り占めできる以上、勧誘する理由を見いだせないからです。
くわえて勧誘話が投資詐欺かどうか判断するにあたっては、パンフレットや契約書、ホームページなどの資料の有無や質も大きな判断要素になります。
というのも、投資詐欺の場合の多くは詐欺を行っているとの認識があるがゆえに、詐欺の証拠となるものをできる限り残したくないため、資料がなかったり杜撰なものである傾向にあるからです。
ですので勧誘話の資料がなかったり、あったとしても投資金額に見合うような質のものでなかった場合には、投資詐欺を疑うべきです。
なお、勧誘話についても、ネット検索で調べることは同様に効果的です。
まとめると、ローリスクハイリターンの勧誘話、資料がない・杜撰な勧誘話には手を出さないことが投資詐欺に遭わない対策といえます。
投資詐欺の返金方法
投資詐欺の被害にあってしまった場合の返金請求の法的根拠は、不法行為に基づく損害賠償請求権として請求することが多いです。
(不法行為による損害賠償)
民法
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
前述したように、投資詐欺の多くは、刑法上の詐欺罪に該当する違法行為です。
また、詐欺師が金融商品取引法上の登録を受けていなければ無登録の投資勧誘等で違法行為となります。
詐欺師が元本保証をして投資をさせた場合などには、出資法違反の違法行為になります。
このように、投資詐欺の被害にあった場合には、違法な行為により、財産権などの権利を侵害されて、損害を被っていますので、不法行為に基づく損害賠償請求ができます。
具体的な投資詐欺の返金方法としては、以下の方法が考えられます。
- 弁護士による内容証明郵便の送付・交渉
- 訴訟提起・仮差押・差押え
- 銀行口座の凍結(振り込め詐欺救済法)
- 被害届・刑事告訴→示談
投資詐欺に遭っているかも?と思った場合の対応
相手方とまだ連絡がつながっている場合には、投資詐欺だと疑っていることを気づかれないようにしましょう。
詐欺師であった場合には、疑っていることに気づくと連絡が取れなくなったり行方をくらましたりすることが往々にあるからです。
同時に、すぐさま弁護士に相談しましょう。
相談した結果、投資詐欺の可能性が高いとなった場合には、弁護士は依頼を受ければ、たとえば相手方と会う際に同行するなどして直接返金交渉を行うこともできるからです。
また、本人が返金交渉しても適当な言い訳を述べるだけだったのが、弁護士が交渉することで態度を一変させることもままあります。
さらに多くの人間に投資詐欺を行っている場合は、大ごとになることを避けるべく、弁護士が代理人となった者に対しては返金する行動に出ることも実際ある話です。
一方、相手方と連絡がつかなくなった場合も、ただちに弁護士に相談すべきといえます。
連絡がつかない期間が短ければ短いほど、相手方を見つけられる可能性が高いからです。
なお、警察に相談に行くのも1つの手段でありますが、すぐに刑事事件として取り扱うことは現実問題なかなかありません。
というのも、詐欺罪(刑法246条)といえるには、騙す行為により錯誤に陥り、それに基づき金銭など財物の処分行為をし財物が移転されたことが必要であるとされています。
ただ、それを立証するのは他の犯罪と比べると難しいことにくわえ、時間と労力も多く必要となるがゆえに、即座に動けないということです。
最後に、投資詐欺に遭ったかもと思った際には、遠慮なく当事務所にご相談ください。
投資詐欺の返金成功事例
ここでは、当法律事務所の弁護士が投資詐欺被害者から依頼を受け、投資詐欺の返金に成功した事例の一部をご紹介します。
投資詐欺返金成功例 オーナー商法被害で8割返金
被害者は東京都新宿区在住の20代の男性でした。知人の紹介で、投資セミナーに参加したことがきっかけで、オーナー商法の被害にあってしまいました。
オーナー商法の内容は、特許申請中の次世代空調機器を独占販売ができ、そのオーナーになって貰えば、相手方会社が商品を販売するなどして利益を出し、毎月一定額が配当される。出資分を回収したのちは全てが利益になるといった内容でした。
弁護士による内容証明郵便の送付・交渉によって、被害額の8割の返金・回収に成功しました。
しかも、そのすぐ後に、投資詐欺会社は倒産してしまいました。もう少し対応が遅れていたら回収はできなかったでしょう。詐欺被害の返金では、被害にあってからできる限り早く対応をすることにより、返金ができる可能性が高まります。
この投資詐欺の返金成功事例についての詳細は、以下の記事をご参照ください。
投資詐欺返金成功例 友人の事業に関する投資詐欺被害で全額返金
被害者は、大阪府中央区に住む40代男性でした。20年来の友人から、定額でライブハウス行き放題のサブスクサービスを提供する事業を始めたいという相談を受けました。友人から頼まれたこと、事業に興味があったことから、600万円の出資をすることにしたのです。
しかし、出資後に契約書を巻いてくれと言っても友人は応じてくれず、だんだんと連絡もつきづらくなってしまい、事業の進捗の具体的な話も聞けず、最初の支払期限にも入金はなく、投資詐欺なのでは?と考え、弁護士に相談することになりました。
その後、相手方と会う機会に、弁護士が同席し、交渉をして、無事に返済の書面を巻き、600万円の返金に成功しました。
この投資詐欺の返金成功事例についての詳細は、以下の記事をご参照ください。
投資詐欺の逮捕事例・ニュース
大学生狙い投資詐欺、3300万円超の被害か 愛知県警、3容疑者を逮捕
投資名目で大学生らから現金をだまし取ったとして、愛知県警は27日、詐欺の疑いで、本籍名古屋市西区、無職小沢和也(24)、大阪市住之江区泉1、会社員津田将吾(22)、愛知県豊田市宮上町8、会社員渡辺正洋(22)の3容疑者を逮捕した。県警によると、大学生ら約30人から3300万円以上を集めたとみられる。
2020年10月27日 23時16分 (10月28日 00時33分更新) 中日新聞
逮捕容疑は、共謀して2018年10月23日、名古屋市中区の喫茶店で、当時大学生だった愛知県日進市の男性会社員(23)に「投資に使う。何倍にもできる」などとうそを言って、近くの消費者金融で3回にわたり計130万円を借りさせ、だまし取ったとされる。県警によると、3人は「詐欺とは思っていない」などと容疑を否認している。
県警は小沢容疑者が犯行を計画し、渡辺容疑者が出資者に話を持ち掛けたとみている。出資額の1割をもうけ分として即日、手渡しして信用させた上、2カ月後には全額を返済するとうたっていたという。昨年1月、県警豊川署に「金が返ってこない」と相談があり、捜査を開始。昨年10月以降、関係先の家宅捜索でスマートフォンや通帳などを押収していた。
知識や経験が比較的まだ少ない大学生を狙った投資詐欺は、昔からよく行われています。
昨年にも、マルチ商法(後出しマルチ)の手口を使った投資詐欺のニュースがありました。
詳しくは下記ページにて解説していますので、よければご覧ください。
大学生を狙った投資詐欺の悪質なところは、基本的に多額の貯金を持っているわけではないため、多くが本来は授業料で支払うべきお金を騙し取ったり、今回のニュースのように消費者金融に借金させたお金を騙し取ったりする点です。
どういうことかというと、お金を騙し取られた結果、被害者は授業料を捻出できなくなったり借金返済のためアルバイトなどに明け暮れざるを得ず、大学を留年や休学、場合によっては退学という状況に追い込まれることもしばしば見受けられるからです。
すなわち、未来ある大学生の進路を大きく狂わせ、被害者の人生に多大な影響をあたえてしまう詐欺であるといえ、詐欺のなかでも悪質な詐欺の1つです。
したがって、詐欺師は甘い言葉で勧誘してきますが、こちらの記事が少しでも被害者を減らす一助になればと思います。
未公開株の投資詐欺疑いで男女5人再逮捕、約6億円集めたか
嘘の未公開株への投資話で現金を詐取したとして、大阪府警生活経済課は1日、詐欺容疑で、大阪市東淀川区東中島、会社役員、内田正利容疑者(70)ら男女5人を再逮捕した。同課は認否を明らかにしていない。26都道府県の約350人から約6億円を集めたとみて調べている。
2020.11.1 15:09産経WEST
再逮捕容疑は平成30年11月、共謀し、大阪市の建設業の男性(50)に、「マーシャル諸島で太陽光の追尾型発電システムを造っている会社の未公開株を1口200万円で購入できる。10億にも20億にもなる」と嘘の投資話を持ちかけ、現金200万円をだまし取ったとしている。
同課によると、男性は株の購入代金や手数料名目でさらに242万円を支払っていたという。
未公開株に関する投資詐欺は、過去から多く使われている詐欺の手口の1つです。
そして勧誘時における内容は時代時代によって異なりますが、今回のニュースのように海外の話であったり、その時代に合わせた最新のシステムなどを誘い文句とするのが常套手段です。
海外の話にする理由は、国内であるより虚偽であることが判明しにくいからといえます。
また、最新のシステムなど目新しい話にするのは、未公開株で勧誘するという特質上、信ぴょう性を持たせやすくするためにくわえ、上記と同様に真偽を見極めにくくする理由があるでしょう。
この手の投資話が投資詐欺かどうかを判断する大きなポイントとしては、ホームページやパンフレットなどの資料が重要となってくることが多い傾向にあります。
どういうことかというと、口頭ではいろいろと甘い言葉で誘ってきますが、案外ホームページやパンフレットなどの資料がなかったり、あったとしても杜撰なものであることがよくあるからです。
詐欺をする側は、最新の話や公にされていない話だからなどと言い訳を述べてきますが、実際はウソである以上、そもそも資料を用意できなかったり、ウソに対して多くの労力や費用をかけていないからといえます。
ですので、ホームページやパンフレットなどの資料がなかったり杜撰なものである場合は、気をつけた方がいいでしょう。
運用益かたり現金約1800万円だまし取る 詐欺疑いで逮捕
「新たな株を買うために金を出してくれれば2100万円を支払う」とうそを言って、現金およそ1800万円をだまし取ったとして都内にある投資会社の代表の男が神奈川県警に逮捕されました。
2020年11月4日 17時58分 NHK
逮捕されたのは株式への投資などを行う「匠マネジメント」の代表取締役で、杉本学武から改名した杉本道秀 容疑者(61)です。
警察によりますとおととし5月、「新たな株を買うために金を出してくれたら別の運用で利益が確定した2100万円を支払う」とうそを言って千葉県の男性から現金1780万円をだまし取ったとして詐欺の疑いが持たれています。
男性を信用させるため6000万円を投資して利益が確定したとする書類を偽造していたということです。
警察は捜査に支障があるとして認否を明らかにしていません。
弁護士などによりますと、杉本容疑者は「大手証券会社でトップセールスを記録した」と経歴をアピールして出資を募り、数十人から数十億円を集めたとされますが、「配当がなく解約を申し出ても金が返ってこない」などと各地で返金を求める訴えが起こされています。
約1500万円出資したという男性は
杉本容疑者に勧誘されておよそ1500万円を出資したという都内に住む40代の男性がNHKの取材に応じました。
男性によりますと出資する前の説明で、杉本容疑者から「普通の投資とは違う」とか「基本的に元本が保証される」などと言われたということです。
当初は、毎月、配当があったものの平成28年ごろから遅れ始め、翌年には全く配当がなくなったということです。
男性は出資額の返還を求める民事裁判を起こし、訴えが認められましたが、返金されたのは数万円だけだったということです。
男性は「この出資に関わったことで自分の人生の計画が大きく変わってしまいました。その憤りというか、じゅうりんされた気持ちがあります。私のお金をどのように運用したのかなど少しでも事実を明らかにしてほしいです」と話しています。
また、杉本容疑者については「気さくで話もうまく昔ながらの営業の人という雰囲気でした。大手証券会社の支店長だったということで怪しいとも思いませんでした」と振り返りました。
今回のニュースは、株式の運用で勧誘した投資詐欺のものとなります。
ニュースでは、名前を改名しているとありますが、詐欺案件においてはよくみられる手口です。
その理由として、たとえば過去に詐欺に関してニュースや話題になっている場合には別人と装うことで警戒されないためであったり、手持ちの金銭を改名後の名前で金融機関に預けて財産を隠匿するためであったりなどが挙げられるでしょう。
とはいえ前者については、最近ではインターネットで検索すれば顔写真が出てくることも十分ありますので、相手方を入念に調べることが詐欺被害に遭わないようにする手段となると覚えておいた方がいいでしょう。
また後者についても、改名後の氏名であっても同一人物であるとの証拠さえあれば、財産を差し押さえることも可能となるでしょう。
他方、過去の経歴を利用した詐欺事件も多く見受けられます。
今回のニュースのように証券会社であれば株式や為替、保険会社であれば保険商品に関して、自らの経歴や知識をひけらかすことで勧誘話に信ぴょう性を持たせやすいからです。
ですので立派な経歴があったとしても、安易に信用しないようにすべきといえます。
出会い系で独身女性を勧誘、恋愛感情も利用…FX詐欺被害500人超か
FX名目36億円集金か 詐欺疑い県内5人逮捕 いずれも容疑否認
外国為替証拠金取引(FX)などの出資名目で佐久市の女性から約780万円をだまし取ったとして長野、群馬両県警の合同捜査本部は10日、長野、上田、千曲市の男女5人を詐欺容疑で逮捕した。長野市高田の資産運用会社「SFP相談事務所」の経営者らで、高配当をうたって青森から沖縄まで1都2府23県の約600人から約36億円を集めており、被害の実態を調べる。
11月11日 信濃毎日新聞
逮捕したのは、同社の実質的経営者で千曲市生萱の自称個人投資家関沢里志(43)、同社社長で上田市浦野の自称会社員酒井陽介(46)、同市吉田の自称飲食業井出美奈子(58)、長野市妻科の伊藤俊英(61)、千曲市屋代の山田英智(40)の5容疑者。
逮捕容疑は2018年6〜9月ごろ、当時会社員だった佐久市の50代女性に「元本は保証する」「今なら3カ月で2倍になる」などとうそを言い、6回に分けて計約780万円をだまし取った疑い。
調べによると、18年6月28日に関沢容疑者が女性と小諸市内で会い、「FXで絶対に損をしない方法を見つけた」「1日の利益が少ないので、できるだけ多く出資をしてもらって分母を大きくしないといけない」などと勧誘した。
調べに対し、関沢容疑者は「金を借りただけ」、酒井容疑者は「だましたつもりはない」、井出容疑者は「SFPがだましていたとは知らなかった」、伊藤容疑者は「身に覚えがない」、山田容疑者は「(被害女性を)知らない。事実が違う」と供述し、いずれも容疑を否認している。
長野県警によると、同社は15年11月に設立。犯行当時、井出、伊藤両容疑者はともに取締役で、山田容疑者は社員だった。関沢、酒井、山田の3容疑者は外資系保険会社の元同僚。10年ごろ、関沢容疑者が出資を募り始め、出資者は同容疑者の知人から口コミで広がるなどした。約600人のうち県内は約400人で、新潟県約40人、東京都約30人。
19年6月ごろまでに集めた約36億円のうち2割程度をFXや仮想通貨に投資。約10億円は配当などに充てたが自転車操業状態で競馬や競輪、宝くじなどに使っていた。会社は少なくとも19年3月ごろには経営の実態がなかったという。
合同捜査本部は19年1月、金融商品取引法違反(無登録営業)の疑いで、別の投資グループを統括する男や長野市の男2人を逮捕。このグループの出資先の一つがSFP相談事務所で、捜査関係者によると、約4億円が出資されていたという。
今回のニュースも、外国為替証拠金取引(FX)の出資名目で詐欺の疑いで逮捕されたというものです。
勧誘の手口としてはよくある手口で、高配当をうたい、かつ元本保証でターゲットを集めています。
現在においては、残念ながら銀行など金融機関にお金を預けていても利息がほぼつかないので、元本保証で高配当といわれれば、勧誘話に耳を傾けてしまうことも致し方ないといえるでしょう。
また出資者が口コミで広がった背景については、約10億円は配当などに充てたとあることから、推測とはなりますが当初は集めた出資金から配当を捻出することで、出資者を信頼させて、いわば人が人を呼ぶ仕組みにしたものと思われます。
これはポンジ・スキームといわれる手法で、投資するといいながら実際は出資金から配当を出すものですので、配当を出し続けるには追加の出資か新たな出資者を継続して集めなければなりません。
しかし、それにはいずれ限界がきますので、ニュースにあるよう最後は自転車操業状態となります。
ポンジ・スキームの詳細については、下記ページをご覧ください。
このように高額の利益を得ることも可能なFXを題材として、元本保証・高配当をうたい、実際はポンジ・スキームという手法を用いたもので、典型的な投資詐欺といえる事件です。
ただ、典型的な詐欺であればあるほど、ある意味やり方が確立しているといえ、時代が変わっても詐欺被害に遭ってしまうといえます。
ですので、上でも述べているように、元本保証・高配当の勧誘話はまず投資詐欺と疑って手を出さないようにしましょう。