ニュース内容
県内で故意に交通事故2件を起こし保険金など約750万円をだまし取った詐欺事件で、長崎地裁は今月までに、県内在住の被告10人に有罪判決を言い渡した。狙われたのは民間の自動車保険と自動車共済(自賠責と任意)。複数の被告が逮捕後の県警の取り調べに「事故はもうかる」と動機を供述していた。捜査の舞台裏を取材した。
2020/3/29 12:00 長崎新聞
「この交通事故は保険金の不正請求が疑われる」
2017年7月。保険会社がそう県警に相談したことが発覚の端緒となった。捜査関係者は「運転手の過去の事故回数が多く、事故車の修理を当事者の店に出すなど不審な点が多かった」と明かす。
判決などによると、相談の5カ月前、雲仙市内のT字交差点でタイヤ販売業の男=当時(44)=ら3人が共謀し車2台で追突事故を起こした。通院費名目などで保険金を請求し、被害額は計280万円に上っていた。
県警はタイヤ販売業の男が主犯格とみて捜査を開始。共犯に店の客と知人が浮上した。裏付け捜査を進めているさなか、島原半島内で次の事件が起きた。
18年12月。タイヤ販売業の男は、暴力団幹部の男=当時(39)=のほか6人と共謀して島原市内で偽装事故を起こした。判決などによると、共済金計約470万円をだまし取った。首謀者は暴力団幹部の男。親交があったタイヤ販売業の男が偽装事故でもうけていると聞き付け、犯行を計画した。
捜査関係者は「反社会的勢力に不正に金が渡っており、資金源を断つためにも絶対に摘発しないといけない」と当時の状況を振り返る。事件の本丸を暴力団幹部に定め、県警は犯行グループの通話履歴をはじめとした各証拠をそろえ、最初の事件の容疑者から順に逮捕に踏み切った。
逮捕した10人の職業は船員、農作業員、会社経営などさまざま。年齢も21~71歳(いずれも逮捕時)と幅がある。犯行当日に初めて顔を合わせた者もいる。2事件目の共犯者の一部は暴力団幹部に借金があり、誘いを断れなかった。一方で、「事故はもうかる」との認識は共通していた。タイヤ販売業の男は「ニュースで手口を知った」「知り合い同士ならばれないと思った」と公判で語った。
なぜ保険金詐欺が起きてしまうのか。ある保険事業関係者は背景について「事故後、保険金を速やかに支払うために、厳格であるべき審査がやや甘くなる部分はある。請求を受理してから速やかに支払いが完了しないと違約金が出る場合がある」と実情を明かす。
今月18日、暴力団幹部に懲役3年の判決が言い渡された。県警幹部は「反社会的勢力まで摘発できたことが大きい。偽装事故による詐欺は計画的かつ悪質。今後も不正に目を光らせる」と力を込める。
弁護士からのコメント
今回のニュースは、故意に交通事故2件を起こし保険金など約750万円をだまし取った詐欺事件で、被告10人に有罪判決を言い渡したというものです。
そもそも「保険金詐欺」とは、故意に保険金が支払われる状況を作出し、保険金をだまし取る詐欺のことをいいます。
交通事故における保険金詐欺については、わざと交通事故を引き起こして、休業損害・入通院慰謝料や車の修理代金名目などで保険会社等に請求し、保険金をだまし取ることになります。
その手口の特徴として、今回のニュースにもあるよういわば保険金詐欺グループとして複数の人間で犯行に及ぶ傾向にあります。
交通事故を起こすことが前提であるので加害者・被害者となる者が必要である上、騙すために虚偽の目撃者や車の修理代金を見積もる業者などもいるに越したことがないからです。
このように様々な役割を分担した複数の人間が関与することで保険会社等を騙し、金銭を騙し取るのです。
保険金詐欺は立派な犯罪ですので、たとえ誘われたとしても絶対に断るようにしましょう。
最後に詐欺被害に遭ったと思った際には、遠慮なく当事務所にご相談ください。