「貸したお金を返してもらえなくて困っている」
「債権回収をしたいけど、どのような方法で行えばよいのだろうか?」
「債権回収を成功させるためには、どのような点に気を付けるべき?」
期限までにお金の支払いがないときは、債権者の側で具体的な行動を起こして、お金の回収を行わなければなりません。
そして日常生活やビジネスでは、このような債権回収が必要になる場面が多々あるのが残念ながら現実です。
その際、状況に応じて適切な債権回収の方法(手段)をとることが、回収を成功させるためには最も重要です。
また、債権には時効がありますので、期限までに支払いがない場合には、迅速に債権回収に着手することも重要なポイントになります。
本記事では、
・債権回収として利用される9つの方法(手段)
・債権回収で注意すべき消滅時効の問題
・債権回収を成功させる3つのポイント
などについてわかりやすく解説します。
複数ある債権回収の方法から適切な手段を選択するには、弁護士のアドバイスが不可欠です。
したがって、まずは弁護士に相談するようにしましょう。
債権回収として利用される9つの方法(手段)
債権回収が必要になった際に利用される方法(手段)としては、以下の9つがあります。
電話やメール・SNSによる督促
もっとも簡単な債権回収の方法は、債務者に対して電話やメール、LINEなどのSNSにより支払いを催促する方法です。
債務者に支払いの意思があれば、電話やメール、LINEなどのSNSによる督促で自発的に支払いに応じてくれるはずです。
手間も費用もほとんどかからない方法ですので、まずは電話やメール、LINEなどのSNSによる督促から始めてみるとよいでしょう。
なお、督促する際は、電話であれば録音、メールやSNSであればバックアップするなどして保存しておきましょう。
後に法的手段に出るとなった場合、重要な証拠となり得るからです。
内容証明郵便の送付
電話やメール、LINEなどのSNSによる催促をしても債務者が支払いに応じてくれないという場合は、内容証明郵便を送付して支払いを求めていく方法が一般的です。
内容証明郵便とは、いつ・誰が・誰に対して・どのような内容の文書を送ったのかを証明できる郵便です。
内容証明郵便自体には支払いを強制する効力はありませんが、特別な形式の郵便が届いたことで相手に対して心理的なプレッシャーを与えることが可能です。
また、内容証明郵便を利用しての督促は、法的には消滅時効の完成を6か月間猶予する効果が発生します。
そのため、消滅時効が迫っているという場合にも、内容証明郵便は有効かつ必須な手段といえます。
弁護士による直接交渉
債権者本人から督促しても債務者が誠実に対応してくれないという場合には、弁護士による直接交渉を依頼するのも有効な方法です。
法律の専門家である弁護士が債権者に代わって債務者との交渉を行うことで、債務者に対して債権回収に関する本気度を示すことが可能です。
また、債務者としても弁護士が交渉の窓口になると適当な言い訳をして支払いを免れることはまずできなくなります。
したがって、弁護士による直接交渉は、債務者が自発的に支払いに応じてくれる可能性が高くなる手段といえます。
仮差押えの申立て
仮差押えとは、将来の債権回収の実現を確保するために、債務者の財産(給与、預貯金、不動産など)を仮に差し押さえて、債務者による財産の処分を禁止する手続きです。
法的手段により債権回収を実現するためには、基本的には訴訟を提起して、勝訴判決を得て、強制執行をするという流れになります。
しかし、その間に債務者により財産が処分されたり、隠匿されるリスクがあることは拭えません。
そして、訴訟になると判決が出るまで1年以上の期間がかかることもあります。
すなわち、訴訟を提起し、勝訴判決を得ても債務者の処分・隠匿により強制執行時に差し押さえるべき財産がなくなっていれば、それまでの時間・労力が無意味になってしまいます。
このようなリスクを回避するために行われるのが仮差押えです。
仮差押えの申立てを行うことで、債務者による財産の処分が禁止され、債権者は安心して訴訟を提起できることとなります。
なお、仮差押えは、債権回収をする直接的な手段ではありませんが、不動産や預貯金などが仮差押えをされたことで生活やビジネスに支障が生じた債務者から自発的に支払いがなされるという事実上の債権回収の効果も期待できます。
仮差押えについて、詳しく知りたい方は以下の記事をご参照ください。
民事調停の申立て
民事調停とは、裁判所の調停手続きを利用して、当事者同士の話し合いによる紛争の解決を図る手続きです。
民事調停では、裁判所の調停委員が当事者の間に入って、紛争解決に向けた話し合いを進めていくことになります。
したがって、当事者だけの話し合いではうまくまとまらない場合でも、民事調停を申し立てれば解決できる可能性があります。
また、お互いの合意に基づいて解決する方法ですので、調停が成立すれば、調停内容に従って、債務者が支払いに応じてくれる可能性が高いといえます。
支払督促の申立て
支払督促とは、債務者が金銭の支払いをしない場合に、簡易裁判所の書記官が債務者に対して金銭の支払いを命じてくれる制度です。
支払督促は、「支払督促の申立て」と「仮執行宣言の申立て」という2段階の手続きになっています。
仮執行宣言付き支払督促が発付されれば、確定判決と同様に債務名義になりますので、これに基づいて強制執行の申立てを行うことも可能です。
支払督促は、審理のために裁判所に出頭する必要はなく、書類審査のみでできるため、簡易かつ迅速な債権回収の手段といえます。
ただし、債務者から異議申立てがあった場合には、通常の訴訟手続きに移行してしまうのがデメリットです。
支払督促について、詳しく知りたい方は以下の記事をご参照ください。
支払督促とは?手続きの流れや異議・訴訟移行後の流れなどを解説
少額訴訟の提起
少額訴訟とは、60万円以下の金銭の支払いを求める場合に利用できる簡易裁判所の訴訟手続きです。
原則として1回の期日で審理が終了しますので、通常訴訟に比べて迅速に解決できるというメリットがあります。
請求額が60万円以下の場合しか利用できませんが、支払督促と同様に簡易かつ迅速な債権回収の手段ですので、ご自身で債権回収を行う際には利用を検討してみてもよいでしょう。
ただし、債務者が少額訴訟の利用に反対した場合には、通常の訴訟手続きに移行してしまうデメリットがあります。
通常訴訟の提起
交渉が決裂したり、当初から債権の存在などに争いがある場合には、裁判所に通常訴訟の提起を行います。
通常訴訟というと、少なくとも1年はと時間がかかるイメージがあるかもしれません。
しかし、債務者の主張に理由がない場合には、数回の審理で半年も経たずに勝訴判決が出ることもあります。
また、通常訴訟では、判決だけではなく、裁判所からの提案などにより和解で解決するケースもあります。
判決だと相手から自発的な支払いが期待できない場合もありますが、和解であればお互いが譲歩し合うものであることから、和解内容に応じた支払いを行ってくれる可能性が高いといえます。
強制執行の申立て
強制執行とは、債務者の財産を差し押さえて、そこから強制的に債権回収を行う手続きです。
裁判で勝訴判決が出たにもかかわらず任意に支払いに応じてくれない場合には、強制執行の申立てを行う必要があります。
強制執行の対象となる財産には、主に以下のようなものが挙げられます。
・預貯金
・給与
・不動産
・動産
・自動車
ただし、対象財産は、債権者の側で調査・特定して強制執行の申立てをしなければなりません。
裁判所が自ら職権で調査・特定して、財産の差し押さえをしてくれるわけではありませんので注意が必要です。
差し押さえについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。
債権回収には差し押さえが有効!差し押さえの対象財産や流れを解説
債権回収は消滅時効に注意が必要
債権回収をする際には消滅時効に注意が必要です。
消滅時効とは
消滅時効とは、一定期間権利の行使がない場合に、その権利を消滅させる制度をいいます。
つまり、一定期間が経過し、消滅時効が完成してしまうと、債務者に消滅時効を主張されることで債権回収ができなくなってしまうことになります。
消滅時効に必要な期間については、2020年4月施行の改正民法により、新たに以下のようなルールが定められました。
・権利を行使することができることを知ったときから5年
・権利を行使することができるときから10年
上記の期間のうち、いずれか短い方の期間が経過したときに時効が完成します。
長期間支払いが滞った状態で放置している債権がある場合には、消滅時効の完成を阻止すべく、すぐに債権回収に着手する必要があります。
債権の消滅時効を回避する方法(手段)
債権の消滅時効の完成が迫っているという場合には、以下のような方法で時効の完成を回避することができます。
時効の完成猶予
時効の完成猶予とは、時効期間の進行をストップし、一定期間時効の完成を先延ばしにする制度です。
消滅時効期間が経過する前に時効の完成猶予事由が発生すれば、消滅時効の完成は猶予され、権利の消滅を防ぐことができます。
ただし、あくまでも一定期間時効の完成を先延ばしにするだけですので、後述する時効の更新のように時効期間がリセットされるわけではありません。
時効の完成猶予事由に該当するものとしては、以下のものが挙げられます。
時効の完成猶予事由 | 説明 |
裁判上の請求 | 訴えの提起により時効の完成が猶予される訴えの却下や取り下げのときから6か月間時効の完成が猶予される |
強制執行 | 強制執行の申立てにより時効の完成が猶予される申立ての取り下げのときから6か月間時効の完成が猶予される |
仮差押え | 仮差押えの手続きが終了したときから6か月間時効の完成が猶予される |
協議を行う旨の書面による合意 | 協議を行う旨の合意を書面でした場合、・合意から1年 ・合意で定めた協議期間 ・協議の続行拒絶通知から6か月 のいずれか早いタイミングまで時効の完成が猶予される |
催告 | 催告をしたときから6か月間時効の完成が猶予される |
なお、時効の完成猶予事由を発生すべくもっとも利用される手段が、催告に該当する内容証明郵便の送付となります。
時効の更新
時効の更新とは、時効期間の進行をリセットし、新たにゼロからスタートさせる制度です。
時効の更新事由が生じれば、時効の完成が迫っている債権でもまた時効の進行を振り出しに戻すことができます。
時効の完成猶予が一時的な制度であるのに対して、時効の更新は確定的な制度ですので、こちらの方がより強力な時効回避措置といえます。
時効の更新事由に該当するものとしては、以下のものが挙げられます。
時効の更新事由 | 説明 |
裁判上の請求 | 確定判決により権利が確定すると時効が更新される更新後の時効期間は10年となる |
強制執行 | 強制執行の手続きが終了したときに時効が更新される |
承認 | 債務者による承認があったときから時効が更新される |
なお、承認とは、債務者が債権者に対して債務の存在を認めることをいいます。
たとえば、債務者から債権の一部でも支払いがあれば、債権全体について承認があったとみなされることになります。
したがって、消滅時効の完成が迫っている場合には、少額でも債務者に支払いをさせることが時効を更新させる有用な手段といえます。
債権回収を成功させるための3つのポイント
債権回収を成功させるためには、以下の3つのポイントを押さえておくことが大切です。
迅速に債権回収に着手する
債権回収を成功させるためには、債務者が支払いを怠った時点で迅速に債権回収に着手する必要があります。
前述のとおり債権には時効がありますので、債権回収を始めるタイミングが遅れると消滅時効の完成により権利が消滅するリスクがあります。
また、時間の経過とともに債務者の財産状態は悪化していくケースが多く、タイミングを逃すと、債務者の手元にほとんど財産が残っておらず債権回収が困難になることもあります。
したがって、債権回収に着手するタイミングが早ければ早いほど、債権回収を実現できる可能性が高いといえることになります。
強制執行まで見据えて事前に債務者の資産状況を調査する
債務者が自発的に支払いに応じてくれない場合には、最終的に強制執行の手続きにより債権回収を行うことになります。
強制執行は、債務者の財産を差し押さえて、そこから強制的に債権回収を実現することができる強力な手段ですが、債権者の側で差押えの対象となる財産を特定して申立てをする必要があります。
債務者の財産がわからない状態では強制執行の手続きを利用することができません。
したがって、債権回収を成功させるためには、強制執行まで見据えて事前に債務者の資産状況を調査する必要があります。
状況に応じて最適な債権回収の方法(手段)を選択する
債権回収の方法(手段)には、上記のとおり主に9つの方法があります。
いずれも異なる特徴やメリット・デメリットがありますので、状況に応じて最適な債権回収の方法を選択することが重要です。
たとえば、債務者相手が話し合いに応じる可能性がない場合には、早期に訴訟を提起して、強制執行の申立てを行った方がよい事案が多いでしょう。
他方、債務者が支払いに応じる意向を示しているのであれば、話し合いを継続した方が早期解決が見込めます。
また、債務者が財産を処分・隠匿するおそればある場合は、一刻も早く仮差押えの申立てを検討すべきです。
このように状況に応じて選択すべき手段が異なりますので、どのような手段を選択したらよいかわからないときは専門家である弁護士に相談するとよいでしょう。
債権回収はグラディアトル法律事務所にお任せください
債権回収に関してお悩みの方は、グラディアトル法律事務所までご相談ください。
最適な債権回収の方法(手段)を提案できる
グラディアトル法律事務所では、これまで多くの債権回収の事案を解決に導いてきた豊富な実績があります。
債権回収にはさまざまな方法がありますが、豊富な実績と経験を踏まえて、具体的な状況に応じた最適な方法を提案することができます。
債権回収に関する相談は、初回無料で対応していますので、どうぞお気軽にご相談にお越しください。
迅速に債権回収を行える
債権回収は、タイミングを逃してしまうと勝訴判決を得たとしても、債務者の財産が残っておらず債権回収が困難な状況になることも残念ながらあります。
そのため、債権回収に着手するのであれば、迅速に対応することが重要になります。
弁護士が少人数しかいない法律事務所では、他の案件で忙しく、依頼しても後回しにされてしまうこともあり得ます。
しかし、当事務所では、債権回収の経験豊富な弁護士が複数在籍していますので、いつでも迅速に債権回収に着手することが可能です。
法的手段により効率的に債権回収を実現できる
債権回収の方法には、大きく分けて債務者との交渉による裁判外の回収方法と法的手段となる裁判上の回収方法の2種類があります。
債務者との交渉による債権回収の方法であれば、債権者個人であっても対応可能です。
しかし、法的手段となる裁判上の債権回収の方法だと、やはり専門的知識や経験がなければ対応するのが難しいといえます。
債務者との交渉では債権回収が難しいと感じたときは、すぐに当事務所までご相談ください。
経験豊富な弁護士が迅速に法的手段に着手し、効率的に債権回収を実現します。
まとめ
債権回収は、適切なタイミングかつ適切な方法(手段)を選択することが重要です。
タイミングや方法選択を誤ると、債権回収が著しく困難になるリスクもあります。
そのようなリスクを回避し、債権回収の可能性を高めるためには、債権回収に詳しい弁護士のサポートが不可欠です。
グラディアトル法律事務所では、債権回収の経験豊富な弁護士が多数在籍しています。
債権回収でお困りの方は、まずは当事務所までお気軽にご相談ください。