「貸したお金が返ってこない」
「法的手段を検討しているが、自分だけでできるか不安」
「支払督促という手続きを検討中だが、どのような流れで進めればよいかわからない」
債務者が任意にお金の支払いに応じてくれないときには、法的手段により債権回収を行うことになります。
法的手段として利用できる債権回収にはさまざまな方法があります。
そのなかで、簡易かつ迅速に債権回収の問題を解決できる手段として「支払督促」というものがあります。
支払督促は、債権者個人でも利用可能な手続きですので、どのような流れで手続きをすればよいかをしっかりと理解しておきましょう。
本記事では、
- 支払督促制度の概要
- 支払督促を利用した場合の手続きの流れ
- 債務者から異議申立てがあった場合の訴訟移行の流れ
などについてわかりやすく解説します。
支払督促をお考えの方は、ぜひ最後までお読みください。
支払督促制度の概要
支払督促とは、債権者からの書面による申立てのみに基づいて、簡易裁判所の書記官が債務者に対して金銭の支払いを命じる手続きです。
債務者が任意にお金の支払いに応じてくれない場合、一般的には民事訴訟の手続きを利用して債権回収を行うことになります。
とはいえ、民事訴訟の手続きは、時間や労力がかかる上、法的な主張立証も必要になるため、普通の人はなかなか利用できないのが実情です。
そのため、法的な債権回収を躊躇してしまうケースも少なくないことでしょう。
しかし、支払督促であれば、書面による審査だけで済みます。
ですので、債権者が直接裁判所に出頭する必要はなく、証拠による主張立証も必要ありません。
また、最終的に後述する仮執行宣言付き支払督促が発布されれば、民事訴訟による確定判決と同様の効果を得ることができます。
すなわち、仮執行宣言付き支払督促に基づいて強制執行を行うことも可能になります。
このように支払督促は、自ら債権回収の法的手段を取りたい方にとって、簡便かつ利用しやすい手続きといえます。
支払督促の手続きは、金額の多寡にかかわらず、以下のようなお金(債権)の支払いを求めるケースで利用できます。
- 貸金、立替金
- 売買代金
- 給料、報酬
- 請負代金、修理代金
- 家賃、地代
- 敷金、保証金
なお、支払督促の利用の際の注意点として、債務者の氏名・住所を把握している必要があります。
後に述べるよう支払督促の効力を発生させるには、債務者に支払督促正本が送達されることが要件となっているからです。
支払督促の流れ
支払督促の利用を検討中の方は、支払督促の手続きの流れをしっかりと押さえておくことが大切です。
以下では、支払督促の流れについて説明します。
支払督促の申立て
支払督促を利用して債権回収をする場合、まずは、債務者の住所地を管轄する簡易裁判所に支払督促の申立てを行います。
※どこの簡易裁判所に申し立てればいいかは、「債務者の市町村(例:○○市) 簡易裁判所」でウェブ検索すれば、管轄区域表という裁判所のHPが表示されますので、それをご参照ください。
支払督促の申立てにあたっては、以下の書類などが必要になります。
- 支払督促の申立書
- 手数料(収入印紙)
- 郵便切手
- 登記事項証明書(申立人が法人の場合)
なお、支払督促の申立書については、簡易裁判所の窓口に備え付けてありますし、下記裁判所のホームページからもダウンロードすることができます。
参照:裁判所の支払督促申立書のダウンロードページ
参照:裁判所の支払督促申立書の書式例のダウンロードページ
支払督促の発付
支払督促の申立てがなされると、簡易裁判所の書記官が申立書の内容を審査します。
審査内容としては、申立書の記載にミスがないか、手数料の金額が正しいか、請求内容に金銭債権以外が含まれていないかなどの確認がメインとなっています。
通常訴訟のように証拠により債権の存在が認められるかどうかは、審査の対象外です。
そして訂正が必要になる際は、訂正申立書を提出しなければなりません。
参照:裁判所の訂正申立書のダウンロードページ
参照:裁判所の訂正申立書の書式例のダウンロードページ
簡易裁判所の書記官による書類審査の結果、申立てが適法かつ理由があると認められると、支払督促が発布されます。
支払督促正本の送達
簡易裁判所の書記官により支払督促が発布されると、債務者に対して裁判所から支払督促正本が送達されます。
債権者が申立書に記載した債務者の住所に送達ができない場合には、債権者は、2か月以内に別の送達先を申し出る必要があります。
※送達ができない場合の一例:転居(引越し)している
期間内に別の送達先の申し出がなければ、支払督促の申立てを取り下げたものとみなされるので注意が必要です。
なお、債務者は、支払督促に不服がある場合には、支払督促正本の送達から2週間以内であれば異議申立てを行うことができます。
仮執行宣言の申立て
債務者が支払督促正本を受け取った時点で、支払ってくれればよいのですが、それでも支払わない場合には仮執行宣言の申立てが必要になります。
仮執行宣言とは、当初の支払督促を強制執行が可能な状態にするために必要になる手続きです。
つまり、債権者としては、「支払督促の申立て」と「仮執行宣言の申立て」の2段階の申立てを行わなければならないということになります。
仮執行宣言の申立ては、債務者に支払督促正本が送達されてから2週間以内に異議申立てがない場合に行うことができます。
参照:裁判所の仮執行宣言申立書のダウンロードページ
参照:裁判所の仮執行宣言申立書の書式例のダウンロードページ
ただし、債務者の異議申し立て期間の翌日から30日以内に仮執行宣言の申立てを行わなければ、支払督促の効力までが失われてしまいますので注意が必要です。
仮執行宣言の発付
債権者による仮執行宣言の申立てがなされると、簡易裁判所の書記官が申立書の内容を審査します。
簡易裁判所の書記官による書類審査の結果、申立てが適法であると認められると、仮執行宣言が発付されます。
仮執行宣言付支払督促正本の送達
簡易裁判所の書記官により仮執行宣言が発布されると、債務者に対して裁判所から仮執行宣言付支払督促正本が送達されます。
なお、債務者は、仮執行宣言付支払督促に不服がある場合には、仮執行宣言付支払督促正本の送達から2週間以内であれば異議申立てを行うことができます。
仮執行宣言付支払督促の確定
仮執行宣言付支払督促正本が債務者に送達されてから2週間以内に異議申立てがなければ、仮執行宣言付支払督促が確定します。
確定した仮執行宣言付支払督促は、確定判決と同様に債務名義になりますので、それに基づいて強制執行の申立てを行うことが可能になります。
※債権回収における強制執行について、詳しく知りたい方は以下の記事をご参照ください。
債権回収には差し押さえが有効!差し押さえの対象財産や流れを解説
支払督促の異議・訴訟移行の流れ/相手方(債務者)が異議を申し立てた場合の流れ
支払督促の手続きにおいては、支払督促および仮執行宣言に対して、債務者による異議申立てが可能です。
異議申立ての内容は、たとえばお金の貸し借りの場合、借りたものではなくもらったものだ、借りたけどもう返しているといったものです。
債務者から異議申立てがあった場合にどのような手続きになるのでしょうか。
以下では、債務者から異議申立てがあった場合の流れについて説明します。
仮執行宣言発付前の異議申し立ての場合
債務者に支払督促正本が送達されてから2週間以内に異議申立てがあった場合、支払督促は効力を失い、民事訴訟の手続きに移行します。
債権者の請求内容については、通常の民事訴訟の手続きで審理されることになります。
ですので、債権者は、証拠に基づいて事実関係を主張立証していかなければなりません。
支払督促の手続き自体は、簡単な手続きですが、債務者の異議申立てにより民事訴訟の手続きに移行してしまうため、そうなると解決までに時間と労力がかかります。
そのため、債権者が債権の存在を否定しているような事案では、ほぼ確実に異議申立てがなされますので、最初から民事訴訟の手続きを検討した方がよいでしょう。
仮執行宣言発付後の異議申し立ての場合
債務者に仮執行宣言付支払督促正本が送達されてから2週間以内に異議申立てがあった場合、民事訴訟の手続きに移行するという点は、仮執行宣言発付前の異議申立ての場合と同様です。
しかし、この段階での異議申立てでは、当然に支払督促の効力が否定されません。
そのため、債権者としては、債務者から異議申立てがあったとしても、仮執行宣言付支払督促に基づいて強制執行の申立てをすることが可能です。
ただし、債務者から異議申立てとともに強制執行停止の申立てがあった場合には、仮執行宣言付支払督促に基づいて強制執行を申し立てることはできません。
支払督促の異議申し立てについては下記の関連記事も併せてご覧ください。
「支払督促に対して異議申し立てがあった場合の流れや対処法を解説」
支払督促に関するよくあるご質問(FAQ)
弁護士へご相談ください。
弁護士であれば、過去の住所や電話番号などから現住所を判明できる可能性があります。
「不在」が理由の通知の場合は、夜間や休日などでの再送達を裁判所に申し出てください。
一方、「転居」など住所不明の場合は、通知から2か月以内に新たな送達場所を申し出てください。
なお、新たな送達場所がわからない場合は、弁護士へご相談ください。
仮執行宣言は申立て期間内に申し立てないと、支払督促自体の効力が失効します。
ですので、たとえば申立て期間終了の2週間前を支払期限とし、それまでに支払われなければ、仮執行宣言は申し立てた方がよいでしょう。
絶対にできないわけではありませんが、専門的な知見が必要で、相当の時間・労力がかかることが見込まれます。
したがって、弁護士への相談・依頼は検討した方がよいといえます。
強制執行も絶対にできないわけではありませんが、やはり専門的な知見が必要で、相当の時間・労力がかかることが見込まれます。
また、そもそも債務者の財産、たとえば預貯金や不動産などを特定できていなければ不可能です。
したがって、弁護士への相談・依頼は検討した方がよいといえます。
債権回収をグラディアトル法律事務所に依頼するメリット
債権回収でお困りの方は、グラディアトル法律事務所にご相談ください。
最適な債権回収の方法を選択できる
支払督促は法的な手続きとして個人でも利用できる債権回収の方法です。
ただし、債務者から異議申し立てがあると通常の民事訴訟の手続きに移行してしまうというデメリットもあります。
そのため、債務者からの異議申し立てが予想されるようなケースについては、最初から通常の民事訴訟を提起した方が解決までの期間を短縮することができます。
このように債権回収は、具体的な状況によって選択すべき方法が異なります。
したがって、より適切な債権回収の方法を選択するためにもまずは弁護士に相談するのがおすすめです。
グラディアトル法律事務所では、債権回収に関する豊富な実績がありますので、最適な債権回収の方法を提案することができます。
訴訟に移行した場合の対応も任せられる
上記のとおり、支払督促は債務者から異議申し立てがあると、通常の民事訴訟の手続きに移行することになります。
それゆえ、裁判所に支払いを命じてもらうためには、証拠に基づいて主張立証を行っていかなければなりません。
しかし、通常の民事訴訟の手続きに移行してしまうと、専門的な知識や経験のない個人での対応はなかなか困難であるのが実情です。
債務者からの異議申立てにより通常の民事訴訟の手続きに移行してしまったという場合には、グラディアトル法律事務所までご相談ください。
債権回収の経験豊富な弁護士が強制執行に必要となる債務名義の獲得に向けて全力でサポートいたします。
財産調査により債務者の財産を明らかにできる
債務者が任意に支払いに応じてくれないときは、強制執行により債権回収を実現することになります。
しかし、強制執行にあたっては、債権者の側で債務者の財産を特定して申立てを行わなければなりません。
債務者の財産を把握していなければ、裁判で勝っても回収できず泣き寝入りという事態になるケースもあります。
グラディアトル法律事務所では、債務者の財産を特定するための財産調査の方法を熟知しています。
ですので、債務者の財産を把握していないというケースであったとしてもお任せください。
金融機関への全店照会、財産開示手続、第三者からの情報開示手続などの手段を利用して、債務者の財産を特定し、泣き寝入りにはさせません。
まとめ
支払督促は、簡易かつ迅速に強制執行に必要となる債務名義を取得することができる法的な手続きです。
債権者個人でも利用できますが、債務者からの異議申立てがあると、通常の民事訴訟の手続きに移行してしまいます。
そうなると、まず弁護士のサポートが必要となってきます。
ですので、より確実に債権回収を実現するためには、初めから弁護士に相談することが最も有効な手段といえます。
最後に、債権回収をお考えの方は、まずはグラディアトル法律事務所までご相談ください。