債権回収には仮差押えが有効!仮差押えの流れや注意点を解説

債権回収に有効な仮差押えの流れと注意点を解説

「仮差押えとはどのような手続きなのだろうか?」

「裁判をすると時間がかかるため、その間に財産を処分されてしまうのではないかと心配」

「仮差押えをする際にはどのような点に注意すればよいのだろうか?」

いわゆる強制執行にて債権回収をするためには、原則として裁判にて勝訴判決を得る必要があります。

しかし、裁判で勝訴判決を得るまでには、半年から1年程度の期間がかかってしまうのが通例です。

ただ、その裁判中に債務者が財産を処分や隠匿してしまったり、破産などしてしまうと、事実上債権回収が困難になります。

そのようなリスクを回避するべく、裁判前の法的手続として利用されるのが「仮差押え」です。

仮差押えは、簡単に言うと、債務者による財産処分などを禁止し、財産を保全する暫定的な措置です。

それゆえ、仮差押えをしておくことで債権回収の可能性を高めることが可能ということができます。

本記事では、

・仮差押えの概要

・債権回収に向けた仮差押えの流れ

・債権回収のために仮差押えを利用する際の注意点

などについてわかりやすく解説します。

仮差押えは債権回収において重要な役割を担っているものです。

ですの、早めに弁護士に相談して、仮差押えの手続を進めていくことをおすすめします。

債権回収に必要となる仮差押えとは?

債権回収に必要な仮差押えとは

仮差押えを利用すると債権回収の確実性をより高めることができます。

以下では、債権回収に必要となる仮差押えの概要を説明します。

仮差押えとは

仮差押えとは、裁判所の命令により、対象の財産について債務者による処分を禁止することができる手続です。

売掛金や貸金の滞納が生じ、債務者から任意に支払いがなされない場合、裁判をして強制執行に必要となる債務名義(確定判決)を獲得する必要があります。

しかし、債権者が勝訴判決を得て、強制執行に着手するまでには、ある程度の期間がかかりますので、その間に、債務者により財産を処分・隠匿されてしまうリスクがあります。

債務者により財産が処分・隠匿されてしまうと、裁判で勝っても債権の回収ができないという事態になってしまいますので、債権回収は事実上困難となります。

そこでこのような事態を防ぐために、利用できる制度が「仮差押え」です。

仮差押えを利用すれば、債務者による財産処分が禁止されますので、その財産を保全することが可能となります。

したがって、仮差押えは、債権回収の確実性をより高めることができる手続といえます。

仮差押えの要件

仮差押えの手続を利用するためには、以下の2つの要件を満たす必要があります。

【被保全権利】

被保全権利とは、仮処分によって保全される権利のことをいいます。

仮差押えの手続では、金銭債権またはこれに換えられる債権を有していることが必要になります。

仮差押えの被保全権利に該当するものとしては、以下の債権が挙げられます。

・売掛金債権

・貸金債権

・売買代金債権

債権者は、仮差押えの手続きにおいて、被保全権利の存在を「疎明」しなければなりません。

疎明とは、裁判のような証明までは必要ではなく、裁判官に一応確からしいとの推測をさせる程度で足ります。

【保全の必要性】

保全の必要性とは、仮差押えをしなければ、債務者が財産の処分・隠匿を行い、将来の債権回収が著しく困難になるおそれがあることをいいます。

債権者は、取引先の信用状態が悪化しており、財産の処分・隠匿のおそれがあることを疎明しなければなりません。

仮差押えの効力

仮差押えには、「財産の処分を禁止する」という法的効力と「債務者に心理的圧力を与える」という事実上の効力があります。以下では、仮差押えをすることで生じる2つの効力を説明します。

財産の処分を禁止する効力

裁判所により仮差押え命令が発令されると、債務者による財産処分が禁止されるという法的効力が生じます。

たとえば、不動産の仮差押えを行うとその旨の登記がなされ、仮差押えがなされていることが公示されます。債務者が当該不動産を第三者に売却したとしても、仮差押えをした債権者が優先しますので、当該不動産に対して強制執行を行うことができます。

このように仮差押えをすることで将来の強制執行をより確実なものにすることができます。

債務者に心理的圧力を与える効力

仮差押えは、債務者に心理的な圧力を与えて、債務の弁済を促すという事実上の効力もあります。

たとえば、債務者の預貯金債権を仮差押えすると、債務者は、預貯金口座から自由にお金を動かすことができなくなり、生活や事業に支障が生じてしまいます。「裁判が終わるまで、預貯金口座を自由に使えないのは困る」と考えた債務者から、任意の弁済がなされる可能性もあります。

仮差押えにより心理的な圧力を与えることができれば、裁判や強制執行の手続きをすることなく債権回収を実現できるかもしれません。

債権回収に向けた仮差押えの流れ

債権回収に向けた仮差押えの流れ

仮差押えを利用する場合には、以下のような流れで手続きを進めていきます。

仮差押えの申立て

仮差押えは、債務者の住所地を管轄する裁判所または財産の所在地を管轄する裁判所に仮差押えの申立てをすることで始まります。

仮差押命令申立書では、仮差押えの要件である「被保全権利の存在」と「保全の必要性」に関する事情をしっかりと記載し、疎明していくことが大切です。

裁判官との面接

仮差押えは、債務者にバレないように進めなければ意味がありませんので、債務者への審尋(意見陳述の機会)は行われません。

基本的には債権者から提出された申立書や疎明資料に基づく書面審理が行われ、事案によっては裁判官との面談が行われることもあります。このあたりの手続きは、申立てをする裁判所によって異なりますので、仮差押えの手続きを依頼した弁護士に確認してみるとよいでしょう。

担保金の決定・供託

裁判官が書面審理および面接により、仮差押えの要件が疎明されたと判断すると、担保金の決定がなされます。

仮差押えは、裁判のように相手方に反論の機会を与えることなく、債権者側の一方的な主張に基づいて行われます。そのため、誤った判断により債務者の財産処分を不当に制限してしまうと、債務者には大きな不利益が生じます。

そのような不利益をカバーするために必要になるのが担保金です。

担保金の金額は、被保全債権や仮差押えの対象となる財産の種類によって異なりますが、おおむね仮差押えの対象財産の価額の10~30%の範囲で裁判官が決定します。

裁判官により担保金の決定がなされたら、債権者は、決められた担保金を法務局で供託しなければなりません。

仮差押え命令の発令

債権者による担保金の供託が完了すると、裁判所は、仮差押え命令を発令します。

裁判所による仮差押え命令は、債務者および第三債務者に送達され、第三債務者に送達された時点で効力が生じます。

なお、不動産に対する仮差押えであれば、裁判所書記官による仮差押えの登記に基づいて、登記官により仮差押えの登記が行われます。

債権回収のために仮差押えを利用する際の注意点

債権回収の仮差押えをする際の注意点

債権回収のために仮差押えを利用する際には、以下の点に注意が必要です。

担保金の準備が必要

仮差押えは、債務者に生じる可能性のある損害をカバーするために担保金の供託が必要になります。供託をした担保金は、後日取り戻すことができますが、一時的にまとまったお金を準備しなければなりません。

特に、仮差押えの対象が不動産だった場合、不動産価額の10~30%を担保金として供託しなければなりませんので、不動産の価額によっては大きな負担となるケースもあります。

ただし、担保金の金額は、被保全債権の金額が上限となります。

債務者にバレないように手続きを進める

仮差押えの手続きを進めていることが債務者にバレてしまうと、裁判所による仮差押え命令発令の前に、対象となる財産を処分または隠匿されてしまうおそれがあります。

このような事態を回避するためにも、仮差押えの手続きは、債務者に秘密で進めるようにし、手続きが完了するまでは、外部に情報が漏れないように注意しなければなりません。

仮差押えの対象財産には優先順位がある

仮差押えは、債務者の所有するすべての財産が対象になりますが、対象財産の選択にあたっては、優先順位があります。なぜなら、仮差押えは、裁判前に暫定的に行われる処分ですので、債務者に与える影響を最小限に抑えなければならないからです。

たとえば、不動産の仮差押えは、不動産の売却などに制限が生じますが、今までどおり使用・収益を行うことができますので、債務者に生じる影響は少ないといえます。しかし、預貯金口座の仮差押えだと、当該口座を自由に利用することができなくなるため、事業や生活に支障が生じてしまいます。また、売掛金債権の仮差押えでは、取引先に対して信用不安を与えるリスクも生じてしまいます。

そのため、まずは不動産に対する仮差押えを検討し、不動産がない場合に債権(預貯金や売掛金)への仮差押えが可能となります。

仮差押えにより債務者が破産するリスクがある

預貯金口座が仮差押えをされたという事情は、一般的に期限の利益の喪失事由として定められています。そのため、債務者が金融機関から融資を受けている場合、預貯金口座に仮差押えがなされると期限の利益を喪失し、一括返済を求められる可能性があります。

通常は、一括返済の対応できる経済的余裕はありませんので、債務者が破産するリスクが顕在化してしまいます。

債務者が破産手続きを開始すると、債権者の仮差押えの効力が失われてしまうため、債権回収は困難になるでしょう。

債権回収のための仮差押えはグラディアトル法律事務所にお任せください

債権回収のための仮差押えはグラディアトルへお任せを

債権回収の確実性を高めるための手段として仮差押えは、非常に便利な手段といえます。

しかし、仮差押えをするためには、債権者の側で債務者の財産を特定して申立てをしなければなりませんので、正確な財産調査が重要になります。また、仮差押え命令の発令を受けるためには、「被保全債権の存在」と「保全の必要性」という要件を疎明しなければなりませんので、法的知識がなければ適切な対応が困難です。

グラディアトル法律事務所では、債権回収に関する事案についての豊富な解決実績がありますので、仮差押えの手続きについても迅速かつ適切に対応することができます。長期間かけて裁判をした労力を無駄にしないためにも、まずは当事務所までご相談ください。

まとめ

仮差押えは、債務者による財産処分を禁止する制度ですので、基本的には債権回収の前提として利用される手続きです。しかし、仮差押えが認められると、債務者に心理的な圧力を与えることができますので、早期に債権回収を実現できる可能性も期待できます。

このように仮差押えは、債権回収の手段の一つとして利用することも可能ですので、債務者から支払いがないという場合には、早めに弁護士に相談をして、仮差押えの手続きを検討してみるとよいでしょう。

債権回収の手段として仮差押えをご検討中の方は、まずはグラディアトル法律事務所までお気軽にご相談ください。

Bio

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。
東京弁護士会所属(登録番号:50133)
男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。