借用書の書き方|主な項目と5つのポイント【テンプレート(雛形)付】

借用書の書き方について主な項目と5つのポイント【テンプレートあり】

「借用書を作りたいけど、何を書けばよいかわからない」

「個人で借用書を作成する際には、どのような点に注意すればよいのだろうか?」

「借用書のテンプレートや雛形が欲しい」

借用書は、一言で言えば、お金の貸し借りがあったことを証明する書類です。

借用書を作成しておけば、お金の貸し借りをしたことやその具体的な内容などを明確にすることができます。

それゆえ、借用書は貸主と借主との間の金銭トラブルを回避するために必要不可欠なものとまでいえます。

ただし、借用書を作成する際には、記載すべき項目や注意すべきポイントがあります。

したがって、それらをしっかりと理解して作成することが大切です。

本記事では、

・借用書とはどのようなものか

・借用書に記載すべき主な9項目

・借用書の書き方で注意すべき5つのポイント

などについて、わかりやすく解説します。

借用書のテンプレート(雛形)も掲載しておりますので、お金の貸し借りをする際の参考にしてみてください。

1 借用書とは

借用書とは、お金の貸し借りをする際に作成する書類で、お金の貸し借りがあったことを証明するために利用される書類になります。

お金の貸し借りは、法律上は「金銭消費貸借契約」と呼ばれるため、借用書のことを「金銭消費貸借契約書」と呼ぶこともあります。

ただ、お金の貸し借りは口約束でも法的には有効であるため、借用書を作成しなければ金銭消費貸借契約が成立しないというわけではありません。

とはいえ、借用書を作成することで、以下のようなメリットが得られます。

・お金の貸し借りをした内容が明確になる

・借主に返済義務のあるお金であることを認識させることができる

・金銭トラブルが生じたときの証拠として利用することができる

逆に言えば、口約束だけでもお金の貸し借りはできてしまいますが、それでは後日トラブルが生じる危険性があります。

そのため、お金の貸し借りをする際には、必ず借用書を作成することをオススメします。

2 借用書の書き方|記載すべき主な9項目

借用書を書く時に記載をしておくべき9つのポイント

お金の貸し借りに関する将来のトラブルを回避するためにも、借用書には、最低限、以下のような項目を記載しておくべきです。

2-1 タイトル(表題)

タイトル(表題)は、どのような文書であるかを示すために必要になります。

お金の貸し借りに関する文書であれば、「借用書」「金銭消費貸借契約書」などと記載するのが一般的です。

2-2 貸し付けた金額

貸主が借主に対して、どのくらいの金額を貸し付けたのかを記載します。

お金の貸し借りの合意をしたことを明確にすることで、借主から「このお金はもらったものだ」という反論を封じることができます。

【記載例】

甲は、乙に対し、○年○月○日、金○○万円を貸し付け、乙はこれを借り受けた

2-3 利息

貸主が借主に対して、利息を請求するためには利息の合意が必要になります。

そのため、利息の合意をした場合には、その内容を明確にするため利息に関する条項を設けます。

ただし、利息の利率については、利息制限法により上限が定められている点に注意が必要です。

元金上限金利
10万円未満年20%
10万円を超え100万円未満年18%
100万円以上年15%

【記載例】

本貸付金の利息については、以下のとおりとする

①利率      年○%

支払時期  元金と一括

2-4 返済時期・返済方法

返済時期を定めずにお金の貸し借りをすることもできますが、当事者間で返済時期を定めた場合には、返済期日を記載します。

※ 返済時期を定めなかった場合には、相当の期間(1週間程度)を定めて催促し、その期間が経過すれば返還請求が可能になります。

また、どのような方法(手渡し・振込)で返済するかについても明記します。

返済方法が振込の場合には、振込先口座を指定して、振込手数料をどちらが負担するかを明らかにします。

【記載例】

1 乙は、甲に対し、○年○月○日までに本貸付金全額および利息の合計額を返済する

2 乙は、甲に対し、前項の期日までに甲の指定する銀行預金口座(○○銀行○○支店 普通預金 口座番号○○○○○○○)に振り込む方法により返済する。ただし、振込手数料は乙の負担とする

2-5 遅延損害金

借主が返済期限までにお金を返済しないときは、貸主は、借主に対して、返済が遅れたことに対するペナルティとして遅延損害金を請求することができます。

遅延損害金の定めがないときは、法定利率が適用されますが、それとは異なる利率を定めるためには、遅延損害金に関する定めが必要になります。

【記載例】

乙は、甲に対し、本契約による返済をしなかったときは、返済期日の翌日から完済するまでの間、年○%の割合による遅延損害金を支払う

2-6 連帯保証

連帯保証人を付けておけば、万が一借主が借りたお金を返してくれなかったとしても、貸主は、連帯保証人に返済を求めることができます。

連帯保証人を付ける場合には、貸主と連帯保証人との契約になりますので、連帯保証人の署名押印も必要になります。

【記載例】

丙は、乙が本契約にて負担する一切の債務について、乙と連帯して履行することを保証する

2-7 期限の利益喪失条項

分割返済の定めを設けた場合、借主が当月の支払期限までに返済をしなかったとしても、当然に一括返済を求められるわけではありません。

返済を求めることができるのは、あくまで当月の分割返済分のみとなります。

たとえば、100万円を貸して、毎月25日を支払期限とした10万円の分割返済とした場合、最初の月から支払いがなかったとしても、その月に請求できるのは10万円のみです。

そして、その翌月も翌々月も支払いがなかったとしても、翌々月に請求できるのは3か月分の30万円のみとなります。

しかし、約束を守らず信用のなくなった借主に対しては、一刻も早く全額回収に動きたいことでしょう。

そこで、このような借主に対して、滞納分はもちろん支払時期の到来していない部分も含めた全額を一括で請求するようにできる条項が、期限の利益の喪失条項です(期限の利益の喪失約款と呼ぶこともあります)。

これを定めておくことで、借主が当月の支払期限までに分割返済をしなかった(債務の履行を怠った)場合、一括返済を求めることが可能となります。

このように、いわば不真面目な借主に対して、滞納分含め残額を一括で請求できる条項ですので、分割返済の場合には定めておくことに越したことはありません。

借主に対して、期限の利益を喪失してしまうと残額を一括で支払わなければなくなるというプレッシャーを与えられるものですので、支払期限を守った返済を促す副次的効果もあるからです。

【記載例】

乙について以下の各号のいずれかに該当する事由が発生した場合には、甲から何らの催告を要することなく、乙は本貸付の期限の利益を失い、直ちに元利金全額を弁済する

①本契約に基づく債務の履行を怠ったとき

②乙が本契約の定めに違反したとき

③乙に支払い停止または破産手続開始、民事再生手続開始の申立てがあったとき

2-8 借用書の作成日

金銭消費貸借契約がいつ成立したのかを明らかにするために、借用書の作成日を記載します。

2-9 貸主・借主の住所氏名・押印

借用書が当事者の合意に基づいて作成されたものであることを明らかにするために、貸主・借主が住所氏名を記入し、押印します。

印鑑の種類については、法律上の決まりがあるわけではありません。

ただ、実印での押印を要求することがベターです。

実印であれば、通常本人しか持っていないものであるため、借主から「勝手に作成された借用書だ」という反論を封じることができるからです。

3 借用書のテンプレート(雛形)

一般的な借用書のテンプレートを用意しましたので、実際の貸し借りの条件に応じて、適宜修正してご活用ください。

借用書のサンプル

4 借用書の書き方で注意すべき5つのポイント

借用書の書く際に注意するべきポイント

借用書を作成する際には、以下の5つのポイントを踏まえて作成するようにしましょう。

4-1 鉛筆書きはNG!消えないボールペンなどを使用する

手書きで借用書を作成する際には、鉛筆や消えるボールペンなどは避けてください。

鉛筆や消えるボールペンを使って借用書を作成すると、借用書が改ざんされてしまうリスクがあるからです。

そのため、借用書を作成する際に用いる筆記具は、消えないボールペンなどを使用するようにしましょう。

なお、手書きの借用書の効力を具体的に知りたい方は、下記記事をご参照ください。

手書きの借用書にも効力がある?借用書を作成する際のポイントを解説 

4-2 改ざん防止のため数字は漢数字を使用する

手書きで借入金額などを記入する際には、普段使っているアラビア数字や簡単な漢数字ではなく、「大字(だいじ)」と呼ばれる難読な漢字を利用するようにしましょう。

アラビア数字や漢数字だと、後から書き加えることで簡単に数字を書き換えることができてしまうからです。

数字大字(漢数字)
1
2
3
10
100
1,000
10,000

4-3 PCで作成する場合でも署名は必ず自署する

借用書は手書きではなくPCで作成することもできます。

手書きの借用書だと、文字の癖で判別困難になったり、間違えた場合の修正も大変ですので、手書きよりもPCで作成した方が便利です。

ただし、PCで借用書を作成する場合、署名欄については空欄にしておき、当事者が自署するようにしましょう。

署名欄までPCで作成してしまうと、借主から「勝手に作られた借用書だ」との反論をされるリスクが生じるからです。

そのような反論を封じるためにも、署名は必ず自署で行うようにしてください。

4-4 貸付金額が1万円以上なら収入印紙が必要

借用書に記載する貸付金額が1万円以上だと、印紙税法上、収入印紙の貼付が必要になります。

ただ、収入印紙を貼らなかったとしても、借用書自体が無意味になる(金銭消費貸借契約が無効になる)ということはありません。

当該借用書を証拠として、借主に返還請求をすることは可能です。

とはいえ、印紙税法に違反することにはなり、本来貼付すべき印紙税額に加えて過怠税を支払わなければなりません。

したがって、1万円以上を貸す借用書作成の際には、下記表を参考に印紙を貼り忘れないように注意しましょう。

なお、印紙代については、貸主・借主それぞれで負担するのが一般的です(借用書を2通作成し、1通ずつ保管しあうため。)。

貸付金額収入印紙
1万円超~10万円以下200円
10万円超~50万円以下400円
50万円超~100万円以下1000円
100万円超~500万円以下2000円
500万円超~1000万円以下1万円
1000万円超~5000万円以下2万円
5000万円超~1億円以下6万円

4-5 滞納のトラブルを回避するには公正証書化を検討する

借用書を作成することで契約内容を明確にし、将来のトラブルを回避することができます。

しかし、借主が期限までに返済をしてくれないおそれがある場合には、当事者間で借用書を作成するだけでは不十分といえます。

借主の滞納によるトラブルを回避するには、借用書を執行認諾文言付の公正証書で作成することも検討しましょう。

公正証書とは、公証役場の公証人により作成された公文書です。

それゆえ、当事者間で作成された借用書よりも強い証明力が備わっています。

そして、執行認諾文言付の公正証書にすることで、より確実に債権回収がしやすいというメリットもあります。

執行認諾文言とは、字のごとく強制執行を受けることを認める文言です。

この文言が付いた公正証書の場合、通常であれば裁判で勝訴判決を得てはじめて強制執行が可能となるところ、裁判手続を経ることなく直ちに借主の財産を差し押さえる強制執行が可能となります。

5 実際にあった借用書の書き方にまつわるトラブル事例

5-1 返済期日の設定トラブル事例

娘夫婦の新居の頭金として婿に貸した300万円が・・・

【事例】

娘夫婦に子どもができ、借りている家も手狭になるとのことで、マンションを買いたいと娘から相談が。

ただ、頭金を出せるほど家計に余裕がなく、どうしたものかと。

娘、そしてもうすぐ生まれてくる初孫のためになるならと、300万円を婿に貸すことに。

そして、一応かたちだけでもと借用書を作成し、家族だからいつでも返してくれればと返済期日を10年後に設定。

ところが2年後、婿の不倫が発覚し、娘夫婦は離婚することになり、せっかく買ったマンションも売ることになりました。

それなら、貸した300万も返してくれと婿に伝えると、返済期日はまだ8年後だから返さないとトラブルに・・・

【解説】

返済期日につき、いついつまでに返してもらうということが明確に決まっている場合は、問題はありません。

また返済期日を決めなかった場合も、法律上、相当の期間を定めて催告(民法591条1項)、たとえば1か月後に返済してくださいなどと伝えれば、その1か月後が基本的に返済期日となりますので、これも問題ありません。

他方問題となることが多いのは、この事例のように親族や親友など信頼関係が強い場合で、とりあえず5年後や10年後などの長期間で返済期日を設定するケースです。

そして何が問題になるかというと、たとえば貸主側に急きょお金が必要になったり、借主との関係性が悪化したなどの事情があっても、その長期間の返済期日がくるまで借主には返済する義務がないからです。

これを借主側の立場からすれば、法律上、定めた返済期日までは返済しなくてよいという「期限の利益」(民法136条1項)があるということになります。

ですので、上記のような返済期日前に返済してもらいたい事情が出てきて、返済してほしい旨を借主に伝えたとしても、借主がそれに応じて返済してくれないかぎりは、返済期日まで待つほかありません。

【弁護士からのアドバイス】

返済期日の設定は慎重に決めるべきであって、だいぶ先の返済でもいいと思っている場合は、むしろ定めずに空欄にしておくのがベターといえます。

5-2 氏名・住所の記載トラブル事例

自分からすすんで借用書を書くからと言うから信用したのに・・・

【事例】

マッチングアプリで知り合った男性と付き合うことに。

付き合って1か月後、会社の事業資金がどうしても回らないから100万円を貸してほしいと。

男性の方から、ちゃんと借用書も書いて渡すからと。

好意もあったので、100万円を貸すことにしました。

ところが、そこから会う頻度も少なくなり、会ってもケンカばかりするように。

もうこれじゃあ付き合っててもと思い、別れを切り出すとともに100万円を返してほしいと催促。

すると、音信不通になり、借用書に記載のあった住所が架空のものと判明・・・

【解説】

この事例のようにマッチングアプリなどで知り合い、関係性の浅い場合にありがちなケースですが、氏名・住所が虚偽の内容を書かれるというものです。

氏名でいえば名字が違ったり、住所が架空のものや他人のものだったりするケースです。

この手の借主の意図は、そもそも踏み倒す気持ちでお金を借りて、いずれは行方をくらますことを考えているのが通例です。

そして虚偽の氏名や住所が記載されると、法的には契約の有効性が問題となりうるうえに、実際にも相手を探そうとしても虚偽であるがゆえ見つけられないということにもなりかねず、結果として泣き寝入りせざるを得ないこともあり得ます。

【弁護士からのアドバイス】

お金を貸す際には、必ずマイナンバーカードや免許証・パスポートなど顔写真入りの公的な身分証を確認したうえで契約し、可能であればその写メやコピーなども保管しておきましょう。

6 借用書の書き方でお困りの方はグラディアトル法律事務所にご相談を

借用書の書き方でお困りの方はグラディアトルへ

借用書の書き方でお困りの方は、グラディアトル法律事務所までご相談ください。

6-1 具体的な事案に応じた借用書を作成できる

本記事では、借用書のテンプレート(雛形)を紹介していますが、あくまでも一般的なものであるため、それぞれの事案に応じて適宜修正していく必要があります。

しかし、具体的にどの部分をどのように修正すればよいかについては、法的知識がなければやはり対応が困難といえます。

また、借主から修正の要望があった場合、それを本当に受け入れてよいのか判断がつかないこともあり得ます。

そのため、借用書の作成をお考えの方は、弁護士に相談・依頼しながら進めていくのが安心です。

弁護士に依頼すれば、個別の事情に応じた借用書の作成が可能ですし、修正についても適宜対応することができます。

6-2 将来のトラブルを回避するための公正証書作成のサポートができる

借主が滞納した場合のリスクに備えた借用書を作成したいという場合には、執行認諾文言付の公正証書の利用を検討しましょう。

公正証書の作成といっても一般の方では、何から手を付ければよいかわからないことと思います。

ですので、まずは弁護士に相談するのがおすすめです。

弁護士であれば、将来のトラブルを回避するための公正証書作成のサポートができますので、安心してお任せください。

6-3 滞納発生時には債権回収を任せることができる

借主が貸したお金を返してくれないという場合には、以下のような方法で債権回収を進めていくことになります。

・借主との交渉

・内容証明郵便の送付

・訴訟の提起

・強制執行の申立て

弁護士に依頼をすれば、一般の方では負担の大きい債権回収の手続をすべて任せることが可能ですので、時間や労力を大幅に軽減することができます。

グラディアトル法律事務所では、債権回収に関する豊富な実績がありますので、債権回収を弁護士に任せたいという方はぜひご相談ください。

7 まとめ

お金の貸し借りをする際には、借用書を作成することで、貸し借りの内容が明確になり将来のトラブルを回避することができます。

しかし、必要な項目が漏れていたり、内容が曖昧だったりすると、トラブルを防ぐことができず、反対にトラブルの原因になってしまうこともあります。

法的に確実かつ有効な借用書を作成するためには、やはり専門家である弁護士のサポートが必要です。

借用書の作成をお考えの方は、グラディアトル法律事務所までお気軽にご相談ください。

Bio

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。
東京弁護士会所属(登録番号:50133)
男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。