復縁屋・別れさせ屋は詐欺?違法?返金できる?裁判例を弁護士が解説!

  • 「大好きだった元彼と復縁したい」
  • 「元妻と今の旦那を別れさせたい」

このような思いを抱いていいる方もいらっしゃるでしょう。

復縁屋、別れさせ屋といった職業があることはご存知でしょうか?

  • 「復縁屋」って何やら怪しい、違法ではないか?
  • 「別れさせ屋」に頼んだのに何もしてくれなかったから返金してほしい
  • 復縁屋に頼んだら数百万円の高額な利用料金を請求された

このようなお悩みを持っている方もいらっしゃると思います。

結論から言うと、弁護士としての経験上、復縁屋、別れさせ屋は違法である可能性が高く、利用すべきではないと考えています。

また、復縁屋、別れさせ屋に支払ってしまった料金は返金請求できる可能性があります!

当法律事務所の弁護士にも、「復縁屋・別れさせ屋に騙された、依頼したお金を返金して欲しい」といったご相談があります。

実際に、復縁屋・別れさせ屋に対して、裁判を起こして、支払った工作費用の返金請求訴訟で勝訴して返金に成功した事例もあります

この記事では、復縁屋・別れさせ屋について、その業務内容、詐欺に該当する可能性があるのか、違法性、払ってしまった料金の返金請求、関連する判例などについて、解説をしていきます。

まずは、YouTubeの解説動画をご覧ください。

復縁屋・別れさせ屋とは

復縁屋とは、別れてしまったパートナーとの復縁を工作する仕事をいいます。

別れさせ屋とは、付き合っているカップル・夫婦などを別れさせる仕事をいいます。

  • 大好きだったあの人と復縁したい
  • 離婚を求めてくる別居中の夫と復縁したい
  • 元彼と今の彼女を別れさせて欲しい
  • 妻と不倫相手を別れさせて欲しい

などの要望に応えるべく、復縁や別れさせる工作をする仕事をする人たちがいます。

探偵業の届出を出した探偵や調査会社が復縁屋・別れさせ屋の仕事をしていることが多いです。

そして、この復縁屋・別れさせ屋については、多くのトラブルが発生しています。

  • 多額の料金を支払ったのにもかかわらず、復縁できなかった
  • 復縁工作が対象者にバレて連絡すらブロックされてしまった
  • 必ず別れさせると説明を受けたが実際には別れていない
  • 高額な着手金を支払ったが何もしてくれない

など。

復縁屋・別れさせ屋は詐欺か?

当法律事務所の弁護士には、復縁屋・別れさせ屋に騙された!詐欺ではないのか?といった相談も寄せられています。

詐欺罪とは、嘘をついて、その嘘に騙された人からお金などの財物を交付させる罪です。

復縁屋・別れさせ屋の事案においても、嘘をついて、料金を交付させていた場合には、詐欺罪に該当します。

例えば、実際には成功事例がほとんどないにもかかわらず、嘘をつき、過去の実績からして確実に成功しますなどと言って、復縁工作などにかかる費用・報酬を払わせた場合には、詐欺罪に該当するでしょう。

(詐欺)
第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

刑法

復縁屋・別れさせ屋の違法性と公序良俗

復縁屋・別れさせ屋は違法なのでしょうか?

また、復縁屋・別れさせ屋に支払った料金等の返金請求、損害賠償請求はできるのでしょうか?

解説をしていきます。

復縁屋・別れさせ屋の業務そのものが、公序良俗に反し違法だとの見解もあります。

公序良俗とは、公の秩序又は善良な風俗の略称で、社会一般の道徳観念のことをいいます。

社会一般の道徳観念に反するような契約などの法律行為は無効となります。

(公序良俗)
第九十条 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。

民法

一般社団法人日本調査業協会は、復縁屋・別れさせ屋が公序良俗に違反することなどを理由として、これらの業務の依頼を受けないこと、広告をしないことなどの自主規制をしております。

一般社団法人日本調査業協会HPより引用

また、別れさせ屋が工作対象者との間でトラブルになり、殺人事件まで発展してしまった事件の裁判では、裁判長は、別れさせ屋について「不法のそしりや社会的非難を免れないもので、金目当てにそのような工作に及ぶ者や、目的のため手段を選ばずそのような工作を依頼する者が存在すること自体が甚だ遺憾なことだ」と述べており、この裁判長の見解は、別れさせ屋が公序良俗に違反するとの見解だと思われます。

他方で、後述する大阪地裁の判例では、具体的な事実関係を考慮して、当該別れさせ屋の業務について、公序良俗に違反しないと判断しています。

復縁屋・別れさせ屋と探偵業法

復縁屋・別れさせ屋は、探偵業法の届出を出している探偵や調査会社が営んでいることが多いです。

探偵業法では、探偵業務とは、依頼を受けた特定の人の所在などについての面接による聞込み、尾行、張込みなどの調査・報告と定められています。

別れさせる工作や、復縁をさせる工作については、探偵業法の定める探偵業務の範囲外と言えるでしょう。

また、探偵業法では、探偵業を行う上では、人の生活の平穏を害する等個人の権利利益を侵害することがないようにしなければならないと定められており、復縁や別れさせる工作において、対象者の生活の平穏やプライバシー権などの権利を侵害するような工作は同条項に違反することになると考えられます。

(定義)
第二条 この法律において「探偵業務」とは、他人の依頼を受けて、特定人の所在又は行動についての情報であって当該依頼に係るものを収集することを目的として面接による聞込み、尾行、張込みその他これらに類する方法により実地の調査を行い、その調査の結果を当該依頼者に報告する業務をいう。

(探偵業務の実施の原則)
第六条 探偵業者及び探偵業者の業務に従事する者(以下「探偵業者等」という。)は、探偵業務を行うに当たっては、この法律により他の法令において禁止又は制限されている行為を行うことができることとなるものではないことに留意するとともに、人の生活の平穏を害する等個人の権利利益を侵害することがないようにしなければならない。

探偵業法(探偵業の業務の適正化に関する法律

前述の日本調査業協会においても、復縁屋や別れさせ屋が行う工作について、探偵業務とは認めていないと明言しております。

一般社団法人日本調査業協会はこの種の「・・工作」は、探偵業務とは認めておりません。
今後、関係機関と連携を保ち「・・工作」等の根絶を図ってまいります。
消費者の皆様方もこうした事案については、依頼することのないようにしてください。

一般社団法人日本調査業協会HPより引用

復縁屋・別れさせ屋に対する返金請求方法

以上で見てきたように、復縁屋・別れさせ屋については、公序良俗に違反する可能性、探偵業法に違反する可能性があります。

公序良俗に違反する場合には、復縁屋・別れさせ屋との間の契約は無効になりますから、支払った着手金等の工作費用の返金請求ができます。

そのほか、契約内容についての説明義務に違反した場合や、契約した内容をきちんと履行しない場合などには、債務不履行に基づく契約の解除や損害賠償請求ができます。

(債務不履行による損害賠償)
第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

民法

復縁屋・別れさせ屋の判例

ここでは、復縁屋・別れさせ屋に関する二つの判例を紹介します。

一つ目は、別れさせ屋の業務が公序良俗に反しないとして、別れさせ屋からの残代金請求を認めた大阪地裁の判例(大阪地判平成30年8月29日)です。

この判例は、前述したように、本件で問題となっている別れさせ屋の具体的な業務内容を検討し、この内容であれば公序良俗に違反するものではないと判断しました。

具体的には、以下のような工作内容です。

  • 手法:女性工作員が男性と食事をするなどで、関係者間の自由な意思で行われる範囲にとどまる
  • 関係者:いずれも未婚
  • 関係者の人格や尊厳を傷つけたり、意思に反して接触したりするものではない

この判決の考慮要素から反対解釈をすると、その手法において、別れさせ工作の対象者と肉体関係を持つなどその工作手法が対象者の貞操権を侵害するようなものである場合や、工作対象者が既婚者でありその婚姻関係の平穏を害するようなものである場合、工作行為が対象者や関係者の人格や尊厳を傷つけるものや、その自由意思を制限するようなものである場合には、別れさせ工作が公序良俗に違反する可能性があります。

もう一つは、復縁屋に対して支払った着手金の返金を認めた東京高裁の判例(東京高判平成30年11月15日)です。この裁判は、グラディアトル法律事務所の弁護士が原告側の代理人として勝訴した判決です。

この事件は、復縁屋に依頼をして、100万円超の工作代金を支払った原告が、その代金の返金を請求した事件です。

原告としては、被告との間の復縁工作を定める委任契約が公序良俗に反し無効であること、仮に有効だとしても被告が契約通りの業務を行なっていなかったことから反対債務である代金支払請求権も消滅したことを主張して訴訟提起したものです。

一審の東京地裁は、原告の主張を認め、公序良俗等について判断するまでもなく被告は返還義務を負うとして請求を認容しました。

この一審判決に対して、被告である復縁屋が控訴をしましたが、東京高裁は、控訴を棄却し、原告の勝訴が確定しました。

復縁屋・別れさせ屋のまとめ

復縁屋・別れさせ屋については、大阪地裁の裁判例のように、その具体的な業務内容によって違法性を判断するという考え方もあります。

他方で、別れさせ屋殺人事件での東京地裁の裁判官や、一般社団法人日本調査業協会のように、業務内容の有無にかかかわらず、違法であるという考え方もあります。

いずれにせよ、復縁屋・別れさせ屋については、違法となる可能性が高く、利用しない方がよいでしょう。

また、利用してしまったが、その料金を返金して欲しいなどの状況であれば、返金の成功事例もありますし、弁護士に相談することをお勧めします。

Bio

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。
東京弁護士会所属(登録番号:50133)
男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。