1.事案の概要~弁護士との相談に至るまで~
相談者は大阪に住む20代女性。
相手方はスクール等の運営会社。
相談者は正社員として会社に勤めていましたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により会社の売上が目に見えて減少。
このままでは会社から人員整理の対象とされたり、場合によっては倒産もあるかもしれないと不安に感じはじめました。
他方、相談者は、かねてからいずれは起業したいとの夢を持っていました。
そこで、この機に会社に何があっても生きていけるように、起業に向けた勉強をはじめようと一念発起。
インターネットで諸々調べていると、とあるSNSにて、起業のノウハウを学べ、かつ起業後も仕事を提供したり紹介したりなどサポートするスクールの投稿を発見。
早速問い合わせると、担当者から連絡が。
詳細を説明したいので、ぜひいちど会ってお話しできませんかと。
相談者は承諾し、実際に会うことにありました。
担当者曰く、起業についてはもちろん、起業後のマーケティングやブランディング、投資などについて学べるプログラムがあるとのこと。
また起業後についてもサポートがあり、特にテレワークで対応可能なビジネスモデルについては手厚く仕事を提供・紹介できると。
相談者が考えていたビジネスモデルが、ちょうどテレワークで行うものであったこともあり、契約を申し込むことを決断。
プログラムの受講やサポートなど含めた契約代金150万円を相手方に振り込みました。
しかし翌日、相手方の会社名やプログラム名をネット検索してみると、「スクール詐欺」や「投資詐欺」であるとの投稿が。
読んでみると、「巷の本に書いていることしか教えてくれない」や「仕事の提供・紹介も何かと理由をつけて全然してくれない」などの内容。
相談者は、詐欺に遭ったかもしれないと慌てて相手方に連絡。
契約書面に記載のあったクーリングオフを伝えるも、「あなたの件はクーリングオフの対象ではない」と一蹴されました。
本当にクーリングオフできないのか疑問に思い、無料相談可能な法律事務所を探していたところ、当事務所のHPを見つけ相談に来られました。
2.弁護士との相談~方針決定~
弁護士は、SNSの投稿、契約書類などを確認。
今回の契約は、いわゆる業務提供誘引販売取引(特定商取引法51条)に該当すると判断しました。
ですので、法律上クーリングオフ(特定商取引法58条)が認められていると回答。
すると相談者は安堵するとともに、「私が言ってもまともに相手してくれなかったので、代わりにお願いできませんか」とご依頼いただくことに。
方針としては、まずは相手方に代理人として受任通知およびクーリングオフを伝える内容証明を送付することにしました。
3.受任後の弁護士の活動~解決に至るまで~
早速、相手方に送付する内容証明文案を作成することに。
作成に際し、相手方の法人登記を取得したところ、契約書類の住所記載と異なっていることが判明。
そこで、内容証明には受任通知およびクーリングオフを伝えることにくわえ、契約書面に虚偽記載があるとして交付義務違反(特定商取引法55条・71条1号)で刑事事件化も含めた法的措置も視野に入れることを追加。
内容証明が相手方に到着するや否や、相手方から連絡が。
クーリングオフを受け入れ、全額返金、今からすぐに振り込むとのこと。
無事全額の振込を確認し、依頼を受けてから3日でのスピード解決となりました。
4.弁護士からのコメント
近年、働き方改革の流れから起業や副業をターゲットにしたスクール詐欺や投資詐欺が横行しています。
勧誘の手口としては、特にSNSをメインに利用し、甘い言葉で勧誘するものが多い傾向にあります。
具体的には、「最低でも年収が倍増」や「楽して稼げる」などの夢や希望を語り、成功事例として高級ホテルや高級車などを背景にした写真を投稿していたりします。
しかし現実問題、そう簡単に年収が倍増したり楽して稼げるものなんてありません。
もし本当にあるなら、まず他人に教えることはないでしょう。
他人に教えてしまうと、競合が増える結果となり、自分の利益が少なくなるからです。
したがって、甘い言葉の勧誘であればあるほどスクール詐欺や投資詐欺を疑い、慎重に判断すべきです。
また今回のケースは、契約書にクーリングオフができるとの記載があったにもかかわらず、クーリングオフを拒否されました。
実際、このように根拠なくクーリングを拒否したり、クーリングオフに対応するにしても何かと理由をつけて少額しか返金しない悪徳業者が少なからず存在します。
たいていの消費者は法律に詳しくないであろうことを見越して、強く言えば泣き寝入りすると考えているからです。
ですので、クーリングオフにまともに応じてくれない相手方の際には、弁護士に相談すべきといえます。
今回の事例のように弁護士が内容証明を送ることで、手のひらを返したようにクーリングオフに応じるケースが往々にしてあるからです。
というのも、相手方がスクール詐欺や投資詐欺の詐欺師や悪徳業者である場合、特定商取引法をはじめとした様々な法律に違反した行為で利益を上げようとしていることが通例です。
そうであるがゆえに、弁護士から法律違反はもちろん、場合によっては刑事事件化まで指摘されることで、相手方は大ごとになることを避けるべく態度を翻すということです。
最後にスクール詐欺や投資詐欺はもちろん、詐欺被害に遭ったかもと思った際には、遠慮なく当事務所にご相談ください。