ニュース内容
不正に取得した「ヤフージャパン」の会員IDを使ってTポイントをだまし取るなどしたとして親子が逮捕された事件で、さいたま地検は24日、電子計算機使用詐欺の罪で、札幌市豊平区西岡4条11丁目、無職の息子(28)をさいたま地裁に起訴した。母親(56)については不起訴処分とした。裁定主文や処分理由は明らかにしていない。
2019/12/25 08:11 埼玉新聞
起訴状などによると、息子は昨年3月から今年6月にかけて、不正に取得した虚偽のIDを使って同社のキャンペーンを利用するなどし、Tポイント計約30万円相当をだまし取ったとされる。県警は10、11月、電子計算機使用詐欺容疑で、息子と母親を逮捕していた。
弁護士からのコメント
今回は、少し趣旨を変えて、ニュース自体というより、「電子計算機使用詐欺」という罪に重点を置いて解説いたします。
「電子計算機使用詐欺」(刑法246条の2)とは、①人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は②財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、③財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた場合に成立し、刑罰として10年以下の懲役に処せられる罪です。
この罪において作成・供用の対象となる「財産権の得喪若しくは変更に係る」電磁的記録とは、その作出・更新により事実上直接に財産権の得喪・変更が生じるものをいいます。
例を挙げると、銀行の顧客元帳ファイルの預金残高記録やプリベイトカード等の残度数・残額の記録になります。
今回の事件でいえば、Tポイントのポイント記録に該当します。
そして、本罪の行為態様として、①の作成パターンと②の供用パターンで2つあるので、以下説明いたします。
①の作成パターンは、簡単にいえば、コンピューターに「虚偽の情報」または「不正な指令」を与えることによって、財産権の得喪・変更にかかわる不実の電磁的登録を作成することで不法に利得を得る行為であり、積極的に利得する場合と、債務を免脱する場合があります。
「虚偽の情報」及び「不正な指令」とは、内容が真実に反する情報や与えられるべきでない指令であって、結果として不実の電磁的記録を作出するものをいいます。
積極的に利得する場合の例は、架空入金データの入力や盗んだクレジットカードの情報をインターネット上で利用した電子マネーの取得があげられます。
一方、債務を免脱する場合の例は、プログラムを改変し支払うべき料金をなくしたり過小に変更したりする行為があげられます。
今回の事件では、Tポイント計約30万相当をだまし取ったとあるので、積極的に利得する場合に当てはまります。
②の供用パターンは、財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供することで不法に利得を得る行為です。
たとえば、偽造したクレジットカードを使用して不法に有償のサービス提供を受ける場合があげられます。
なお本罪は、人を介さずコンピューターの事務処理を不正に利用した詐欺罪ですので、事務処理の間に人が介在し、人を欺いて錯誤に陥れ、その錯誤に基づいて財産上の利益を交付させた場合には、通常の詐欺利得罪が成立します。