ニュース内容
荻原博子 経済ジャーナリスト
『婦人公論』2019年12月24日・1月4日号
ターゲットは被災者。甘い言葉には乗らないで!
2019年9〜10月に日本列島を襲った台風で、多くの地域が被害を受けました。以前、このコラムで「自然災害での被害は火災保険で補償される」と書きましたね。ところが、これを逆手に取った「火災保険詐欺」が被災地で横行していたのです。
代表的な手口を紹介しましょう。詐欺犯は修理業者を名乗り、被害に遭った家庭を訪問し「火災保険を使って、無料で住宅の修繕をしませんか?」と持ちかけます。家が破損して途方に暮れていた人にとっては、心強い申し出に思えることでしょう。
そこで「よろしくお願いします」というと、業者は「この際、古くなった屋根も保険で直しませんか」などと提案し、見積金額が吊り上がる。さらに、保険会社との交渉に必要だからと、「請求手続代行契約」や「申請サポート契約」なども結ばされます。
たしかに風水害などの被害では「火災保険」が適用されるものの、老朽化した家屋の修繕費用までは補償されません。後日、「保険が適用されなかった」と詐欺業者は高額を請求してきます。そこで修理を断ろうとしても、「もう契約済みです。50%のキャンセル料を払ってください」と、法外な金額をふっかけてくるケースが多発しています。
火災保険を使って修繕したければ、直接保険会社に電話すればいいのです。すぐに対応してくれますし、手数料も取られません。
国民生活センターによると、災害修繕のトラブル相談はここ10年で約30倍に増加。被害者の半数が60歳以上だそうです。みなさん、甘い言葉にはくれぐれも気をつけましょうね。
弁護士からのコメント
「火災保険詐欺」とは、自宅が自然災害に見舞われた人に対し、修理・リフォーム業者を名乗って火災保険が利用できると持ち掛けて契約させ、保険が下りようが下りまいが高額な修理費用を事前に支払わせたにもかかわらず実際には修理しなかったり、保険が下りずに修理を断れば高額な解約手数料を支払わされたりなどする詐欺のことをいいます。
近年、自然災害が発生するたびに被災地で「火災保険詐欺」が横行し、その件数も増加の一途をたどっています。
実際、当事務所においても「火災保険詐欺」やそれに類する「リフォーム詐欺」の相談が増えております。
「火災保険詐欺」は、被災で困っているところに乗じて詐欺を行うがゆえに、被災者とすれば、被災にくわえて詐欺被害という二重の被害にも遭わせる点で悪質といえます。
また、真っ当な修理・リフォーム業者が許容範囲以上の修理依頼を受けられない状況につけ込んで詐欺を行っていることから、修理・リフォーム業界全体の評判を落とす点で質が悪いともいえるでしょう。
「火災保険詐欺」の手口としては、いきなりの訪問のほか、電話、中にはチラシのポスティングまでして勧誘を行います。
そして、火災保険を使えば修理代金が実質無料、被災以外の部分も火災保険でまかなえる、面倒な保険金請求もサポートするなどの甘い言葉で誘って、契約するように促します。
しかし、いざ契約すると、以下のような事例が複合的に発生し、トラブルに発展しています。
・見積書や契約書など特定商取引法で義務付けられている書面ですらもらえなかった。
・虚偽の理由で保険金を申請するよう促され、結果として保険金詐欺の片棒を担がされた。
・「自己負担ゼロ円」と説明されたが、実際には大半が保険金支払いの対象でなく、自己負担になってしまった。
・修理代金を前払いさせられた上、修理が着工されなかったり、ずさんな工事が行われたりした。
・解約時に違約金手数料などの名目で高額な料金を請求された。
「火災保険詐欺」に遭わない対策としては、そもそも保険が下りるかどうかは保険会社が審査してはじめて決定されるものだと理解することが重要です。
ですので、いくら修理・リフォーム業者が火災保険を利用できるといっても推測でしかありません。
それゆえ順序としては、自らが加入している火災保険会社に連絡して、必要な手続・審査が済み、保険金を現実に受け取ってから修理・リフォーム業者に修理依頼をかけるべきです。
そして依頼する際には、真っ当な業者もいれば残念ながらずさんな業者や詐欺業者もいますので、何社か相見積もりをとり、評判なども調べて慎重に判断しましょう。
最後に、「火災保険詐欺」やそれに類する「リフォーム詐欺」 に遭ったかもと思った際には、遠慮なく当事務所にご相談ください。