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高齢の夫婦が金融機関の窓口で出金し、特殊詐欺グループに現金を渡してだまし取られる被害が今月に入って相次いでいる。詐欺グループは「夫婦2人そろっての出金」を指示するなど、具体的な行動や受け答えを高齢者に迫って翻弄(ほんろう)する。年末は近年、詐欺被害が急増する傾向があり、静岡県警は金融機関などへの注意喚起を強化している。
2019/12/14 08:01 静岡新聞
「上着を置引され、1千万円の小切手をなくした。現金を用意しないと」-。5日、島田市内の80代夫婦宅に、孫をかたる男から電話があった。男の指示は「夫婦で金融機関に行き、それぞれの名義口座から出金するように」といった内容。夫婦は慌てて近隣の金融機関に向かった。
窓口で夫婦は「家のリフォーム代で必要。詐欺じゃない」などと出金の理由を強調した。2人合わせれば600万円余になる出金希望のうち、計400万円分を小切手化する提案を夫婦が受け入れたことなどから、金融機関側は「まさかそろってだまされていることはないだろう」と捉え、警察には通報しなかった。その直後、夫婦は自宅を訪れた男に260万円を渡した。
湖西市では4日、80代夫婦が市内の複数金融機関の窓口で現金を引き出した上、息子を名乗る男らの指示に従って神奈川県内の駅に向かい、約1千万円を手渡した。職員が詐欺を指摘しても、強く否定した。島田市では4日から数日間にかけ、別の80代夫婦も類似の手口で約2千万円の被害に遭った。
県警生活安全企画課によると、最近は詐欺グループが被害者に対し、怪しまれないよう一連の言動を詳細に指示するケースが増えているという。夫婦での出金を求める理由について、担当者は「出金額を夫婦で分散させることで、金融機関側の警戒を弱める狙いもあるのでは」とみる。
今年最後の年金支給日に合わせた県内一斉キャンペーンの13日、静岡市葵区の静清信用金庫城北支店でも静岡中央署員や地域安全推進員らが啓発活動を展開した。同支店の中村尚樹支店長は「100万円を超える出金依頼にはかなりしつこく理由を聞いている。地道な声掛けを続けるしかない」と話した。
弁護士からのコメント
オレオレ詐欺を代表とする「特殊詐欺」は、手口の多様化・巧妙化がすすんでいます。
最近では、下記ページのように振り込ませるのではなくキャッシュカード自体をすり替えたり、信用させるために実際に会うことになる人間(いわゆる「受け子」)を高年齢の者にする手口が見受けられています。
今回のニュースも、「夫婦そろって騙されることはないだろう」と金融機関側の警戒が緩む心理につけ込んで、あえて夫婦を対象にして騙しにかかっています。
本来、いずれか1人だけを対象にした方が、騙しやすいことに違いはありません。
夫婦を対象にすることで、一方が「特殊詐欺」なのではと気づく可能性があるからです。
しかし、金融機関側も対策や警戒を強めていて、高額の振込や出金については「特殊詐欺」ではないかと利用者に対する確認を強化しています。
そうすると、特殊詐欺グループ側からすれば、せっかく騙せても実際に振込や出金がなされなければ元も子もありません。
それゆえ今回の事件は、金融機関の警戒・対策を緩めるために、夫婦そろって騙すことが可能なマニュアルを、特殊詐欺グループが新たに作成・利用したものと推測されます。
「特殊詐欺」に遭わない対策としては、電話がかかってきた時点の対応がとても重要です。
少しでも不審な点があればいったん電話を切り、すぐに名乗っている子どもや孫などに対して、自らが登録している連絡先に連絡しましょう。
もしつながらない場合は、「こんな電話がかかってきたんですが・・・」と警察に相談すべきです。
なお、特殊詐欺の電話への対策は、下記ページにも記載しておりますのでご参照ください。
最後に、「特殊詐欺」に遭ったかもと思った際には、遠慮なく当事務所にご相談ください。