1.事案の概要~弁護士との相談に至るまで~
相談者は40代男性。
相手方とはある知り合いがきっかけに。
近日、投資に関するセミナーがあると誘われて参加。
セミナーにおいて、相手方は、講師をしており、海外の投資運用会社で資金を運用するとのこと。
具体的には、元本を保証し、月あたり2%(年24%)の運用益を出すとの内容。
相談者は興味を持ち、より詳細に説明を聞きたいと考え、別日に相手方と会うことに。
実際に会うと、最低限の資金として500万円が必要で、また、入会金や初期手続費用などに約20万がかかってくるとのこと。
その際、相手方は、投資詐欺など怪しい噂がインターネット上で書き込まれているが、同業者からの嫌がらせで、ご安心くださいとの案内も。
相手方が正直に話してくれたこともあって信頼し、その場で申込み、入会金や初期手続費用など支払うことに。
しかし、翌日不安になり、自らインターネットで検索すると、数多くの書き込みが。
そして、よくよく調べると、ポンジ・スキームという投資詐欺の疑いが濃厚とのこと。
早速、相手方に解約したい旨連絡すると、解約せずに追加でいくらでも説明するので一旦保留してくださいとの一点張り。
このままでは解約もできず、500万円も支払わされるのではないかと思い、 弊所のHPを見つけ相談に来られました。
2.弁護士との相談~方針決定~
まず前提として、紹介やセミナーを通じた投資話には、その金銭や成功に関する欲を巧みに利用し、詐欺を働く人間が少なからずいることを説明しました。
そして投資詐欺を行う者の常套手段として、まず紹介や人数限定など世間にまだ出回っていない情報とアピールすることで、今すぐ投資すべきと焦らせる傾向にあります。
また、そのため容易かつ確実に短期間で儲けることが可能と伝え、投資に対する抵抗・ハードルも下げさせてきます。
さらに、セミナー等で周りの人間と仲間意識を持たせることで、安心感を与えます。
まさに今回のケースも、元本保証かつ運用益が月2%(年24%)と高利率で、知り合いの紹介をきっかけとしたセミナーであったことから、投資詐欺の可能性が高いことを告知しました。
相談者は、入会金等については自らにも落ち度があるし最悪返金されなくてもいいが、少なくとも解約し500万は支払いたくないとのことでご依頼をいただくことに。
方針としては、相手方はいつでも電話に出るとのこと、また、投資詐欺の可能性もあり迅速に行動すればするほど回収可能性が高くなることを踏まえ、早急に電話で交渉をすすめていくことに。
なお、契約書や取引履歴、今までのメールなどのやり取りは、訴訟の可能性も踏まえて、すべて保存しておくことを依頼者に伝えました。
3.受任後の弁護士の活動~解決に至るまで~
早速、受任した当日に相手方に電話で交渉。
こちらの要望としては、解約するとともに入会金や初期手続費用などの返金を求めました。
相手方としては、いったん検討するが誠実に対応する意向であるとのこと。
すると、相手方から翌日電話があり、諸々の処理で約1か月かかるが、解約及び入会金等の返金には応じると。
そこで、依頼者に報告し、約1か月後、解約した旨の書類と入会金等の返金が。
これにて、解約と全額返金してもらい、事件は終結するに至りました。
4.弁護士からのコメント
投資の話については、いつの時代も残念ながら詐欺を働く者がいることが過去の歴史から証明されています。
投資詐欺を働く者は、時代に合わせて、投資の対象や内容、連絡手段などを変え、騙し取る被害者を探し出しています。
近年では、日本だけでなく海外での投資運用などを対象に、SNSやセミナーを用いて探している傾向が多く見受けられます。
投資詐欺に遭わない対策としては、まずそもそも「投資」とは、成功すればリターンが返ってくる一方、失敗すればリスクがあることを理解しておくのが何より重要です。
そして、リスクが少なくなればなるほど、その分リターンも少なくなるのが当たり前です。
ところが、投資詐欺を働く者は、ローリスクかつハイリターンであることを装って騙してくるのが通常です。
今回のケースでも、相手方は、元本保証でローリスクを伝えるとともに、運用益が月2%(年24%)とハイリターンであることもを伝えてきています。
特に、元本保証は、正規に認可された金融機関でない限り原則禁止とされており、認可ない場合には出資法違反に問われる可能性があるので、まず疑ってかかった方がいいでしょう。
出資法違反となるのは、誰もが元本保証を謳い投資を募集するとなると、容易に詐欺を行うことが可能になり、結果として詐欺被害が増加してしまうからです。
また、インターネットの書き込みにある自らの弱みをあえて伝えることで、信頼感を与えるというのも詐欺師のよくある手口です。
このように、ローリスクかつハイリターンであったり、あえでデメリットを伝え信頼感を与えるような場合は、投資詐欺の疑いが高いのでより注意が必要でしょう。
一方、今回のケースは、入会金や初期手続費用を支払っただけで、実際には投資前に交渉にて解決できた事例でした。
ここでは推測となりますが、仮に投資まで行っていた場合には、同様に解決できたかは不明であらざるを得ないのが現実といえます。
というのも、投資を行ってしまうと、一定程度の期間は解約できないや解約できるとしても違約金がかかるなどの規定があることが想定されるからです。
また、実際問題、お金を受け取ってしまった以上、相手方もお金を返金したくないとの心情に働くからです。
今回は依頼者が早く気付いたことにより投資前の段階でしたので、相手方としてもそこまでの金額を受け取っておらず、変に大ごとにするのもリスクがあることから、解約含め入会金等すべての返金に応じたのではと考えられます。
このように詐欺全般にいえることですが、いかに早く詐欺に気づくかによって被害金額の回収可能性が大きく異なってきます。
その意味で、上記の状況から、即座に相手方に電話で交渉したことが功を奏した事例でした。
最後に、もしポンジ・スキーム(※)や投資詐欺に遭ったかもと思った場合には、遠慮なく当事務所にご相談ください。
※ポンジ・スキームについては下記の解決事例 4.弁護士からのコメントにて説明が掲載されています。