日系企業が集めた31億円、ほぼ償還不能 NZで詐欺か

ニュース内容

ニュージーランド(NZ)で、日系企業が投資目的などで顧客から集めた計4500万NZドル(約31億円)の大半が、償還不能になっていることが分かった。200人以上いる顧客の大半は日本人で、同社は清算手続き中。捜査当局も事態を把握し、詐欺事件として立件が可能か調べている。

問題の企業は、NZの最大都市オークランドに本社があったイーストウィンドグループ。資産運用や移住支援などのサービスを掲げる7社からなる。顧客から集めたお金を一括してNZの銀行に預ける「グループ定期預金」を掲げ、個人名義の口座よりも高い年率3~9%の利息を受け取れるなどと宣伝。日本円とNZドルの間の為替の変動を見ながら両替を繰り返して運用益を出す、とうたった金融商品も売り出していた。

7社はいずれも同じ日本人男性が実質的にワンマン経営しており、この男性が今年2月に病気で死亡したことで、経営が行き詰まった。気づいた顧客らが自分たちの資産回収をしようとして、問題が発覚した。

顧客らの申し立てを受けた裁判所は、同グループの清算人として2人を選任。その1人のティモシー・ダウンズ氏によると、同グループに債権を持つ顧客は約220の個人・法人で、そのうち8割以上が日本に住む日本人だった。債権の総額は計4500万NZドルだが、清算人の調査では、同グループに残っている資産は、NZ国内の銀行に預けていた計103万NZドル(約7千万円)だけだという。

同グループは、NZの法律で義務づけられる金融サービス業者登録もしていなかった。ダウンズ氏は「『ポンジ・スキーム』と呼ばれる詐欺であることは明らかだ」と指摘する。集めたお金を運用した利益を還元するとうたいながら運用をせず、新たな顧客から集めたお金で以前からの顧客に利息や配当金などと偽って渡す投資詐欺の一つだ。

金融事件や詐欺事件を扱う重大不正調査局(SFO)の報道官は、清算人や債権者から苦情を受け付けているとして「捜査するかどうかを決めるため、調査している」と答えた。

2019年11月30日22時10分 朝日新聞デジタル

弁護士からのコメント

今回のニュースにある「ポンジ・スキーム」とは、投資詐欺の一種で、「出資してもらった資金を運用し、その利益を出資者に(配当金などとして)還元する」などと言っておきながら、言っていることとは異なって実際には資金運用を行わず、後から参加させる別の出資者から新たに集めたお金を以前からの出資者に『配当金』などと偽って渡すことで、あたかも資金運用が行われ利益が生まれてそれが配当されているかのように装う詐欺のことを意味します。

名前の由来は、約100年前にチャールズ・ポンジという詐欺師がはじめに行ったことから名づけられました。
「ポンジ・スキーム」の特徴は、上記記載のとおり実際には資金運用を行っていないので、後から参加する出資者がいなければ配当を渡せないことから、いわゆる自転車操業の状況に陥り,最終的には破綻する点にあります。

「ポンジ・スキーム」によって投資詐欺を集める手口としては、まず元本保証や高利率・高配当を謳うことで資金を集めに行きます。

しかし、当初は実績がないことから、あえて少額の出資を勧めます
そして、少額でも投資をしてくれた出資者には、出資してくれたお金の一部から、資金を運用した結果と偽って約束どおりの高利率や高配当の金額を渡します

そこで、出資者は、実際に高利率や高配当を受け取ったこともあって信用し、より多額の出資を行ってきます
ただ、実際には資金を運用していない以上、新たな出資者が集まらない限り、いずれ出資されたお金はなくなるということになります。

破綻する流れとしては、支払期限が遅れたり、また、支払額が予定していた金額より少なかったりすることから始まります。
その後、問い合わせても、何かと言い訳をつけてまともに回答されることも徐々になくなっていきます。
結果、最終的に連絡することもできなくなることが一般的です。

「ポンジ・スキーム」をはじめ投資詐欺に遭わない対策としては、まずそもそも「投資」とは、成功すればリターンが返ってくる一方、失敗すればリスクがあることを理解しておくのが何より重要です。
そして、リスクが少なくなればなるほど、その分リターンも少なくなるのが当たり前です。

ところが、投資詐欺を働く者は、ローリスクかつハイリターンであることを装って騙してくるのが通常です。
ですので、集めた資金をどのように投資し運用するのかを確認し、少しでもおかしなところがあれば投資しないようにすべきです。

また、仮に少額の出資を行ってしまい、実際に高利率や高配当を受け取っていたとしても、安易に信用したりせず、どのように資金を運用したのか納得のいく具体的な説明がない限り、解約を求め、ましてや追加の出資は行わないようにすべきです。

最後に、「ポンジ・スキーム」や「投資詐欺」に遭ったかもと思った際には、遠慮なく当事務所にご相談ください。

Bio

弁護士 刈谷龍太

グラディアトル法律事務所代表弁護士。
中央大学法科大学院修了。2012年弁護士登録。
離婚・労働・ネット・消費者被害など一般向けのトラブルから、企業法務や経営サポートなど幅広く担当。